ドグマK(旧コブ)でロングライド志向のハイエンドモデルをリリースしたピナレロは、その開発過程で得られたノウハウを用いて、ミドルグレードにドグマKの弟分となるロクを投入した。

ピナレロ ロクピナレロ ロク

複雑な形状のヘッドチューブ。トップ~ヘッド~ダウンチューブに波型のリブが入っていることが分かる複雑な形状のヘッドチューブ。トップ~ヘッド~ダウンチューブに波型のリブが入っていることが分かる ボリュームのあるBB周り。ここにも深いリブが刻まれる。ダウンチューブはBB幅いっぱいに広げられているボリュームのあるBB周り。ここにも深いリブが刻まれる。ダウンチューブはBB幅いっぱいに広げられている

しかし、「ただカーボンの弾性率を下げたコンフォートバイクとは違う」とのメーカーコメントの通り、あくまでハイレベルな基本性能を大前提としたバイクとなっているのが特徴だ。30トンカーボンを使ってロングライドをメインに楽しむホビーサイクリストに最適な剛性感としながらも、ヘッドチューブやダウンチューブに波型の強化リブを設け、しっかりと横剛性を確保する設計となっている。

高い走行性能をベースとした扱いやすさ

しかし、やはり設計の主眼は快適性と安定性にある。最高峰モデルであるドグマKの設計をベースとしているロクは、ドグマKと同じセンチュリーライドジオメトリを採用。これは、通常のロードフレームよりヘッド角を寝かせ、フォークオフセットを増すことで高い直進安定性をもたせたもの。シートステーはドグマK同様に下に向かって湾曲したセンチュリーライドシートステーとなる。これは、突っ張り棒として機能しているシートステーをあえてたわみやすくすることで、リアホイールからの突き上げを緩和しようという意図によるものだ。

ロク最大の特徴が、このセンチュリーライドシートステー。他のチューブに比べて細く、快適性を追求しているロク最大の特徴が、このセンチュリーライドシートステー。他のチューブに比べて細く、快適性を追求している ドグマK同様、タイヤクリアランスは大きい。28Cを入れて、ロングライド専用マシンとして楽しむのもありドグマK同様、タイヤクリアランスは大きい。28Cを入れて、ロングライド専用マシンとして楽しむのもあり ロク専用となるフロントフォーク。ブレードを何回も湾曲させることで、快適性とハンドリングを両立させたロク専用となるフロントフォーク。ブレードを何回も湾曲させることで、快適性とハンドリングを両立させた

フロントフォークはピナレロのアイコン、オンダフォーク。これは他モデルからの流用品ではなく、このロクのために設計された専用品。上位モデルと同じく、ヘッド下ワンには1.5インチの大口径ベアリングを採用し、負荷のかかるダンシングやダウンヒルでも安定したハンドリングを確保。ロードバイクの操作に慣れていないビギナーでも不安感なく走ることができ、精神的なストレスの低減にもつながっている。もちろん、フレーム全体に左右非対称設計が取り入れられ、優れた剛性バランスを持っている。

下側ヘッドベアリングは上位グレードと同じ1.5インチ径を採用。不安のないハンドリングを獲得している下側ヘッドベアリングは上位グレードと同じ1.5インチ径を採用。不安のないハンドリングを獲得している ダウンチューブに「ピナレロ」、シートチューブに「ロク」のロゴが入る右側。左側はその反対となる珍しいグラフィックダウンチューブに「ピナレロ」、シートチューブに「ロク」のロゴが入る右側。左側はその反対となる珍しいグラフィック


トップチューブを湾曲させることで快適性を高める構造を採用。リアブレーキワイヤーは中通しされるトップチューブを湾曲させることで快適性を高める構造を採用。リアブレーキワイヤーは中通しされる 大きなボリュームを持つBBシェル。ペダリングパワーの効率良い伝達に貢献する大きなボリュームを持つBBシェル。ペダリングパワーの効率良い伝達に貢献する


販売は完成車のみで、シマノ・アルテグラ仕様とシマノ・105仕様の2種類が用意される。ステムやハンドル、サドル、ピラーなどにはピナレロのオリジナルパーツがアッセンブルされ、バイク全体の統一感は価格を越えた仕上がり。ピナレロらしく、所有する喜びも満たしてくれる。

ピナレロ ロク(シマノ 105完成車)

サイズ45SL, 48SL, 51.5SL, 54SL, 55.5SL, 57SL, 59SL(C-T)
マテリアルCarbon 30HM12K
フォークOnda ROKH Carbon 30HM12K 1” 1/8 1” 1/2 Asymmetric integral system
リアステイCentury Ride Carbon 30HM12K Asymmetric
ボトムブラケットMOst Croxover (ITA規格)
フレーム重量約1,225g(サイズ52、ベア重量)
ホイールシマノ R500
価 格279,000円(税込)

インプレッション

「決して快適性だけのバイクではない」 白川賢治

CW:さて、注目のロクです。コンフォートバイクというコンセプトからはフワフワのバイクを想像してしまいますが、実際走ってみてどうでした?

白川:マイペースで行く「大陸横断」的な走りに最適なバイクですね。イメージとして振動吸収がいいフレームを期待している人が多いんでしょうが、決して快適性だけが優れているわけではありません。従来のピナレロらしさとは少しテイストが違うかもしれませんが、負荷一定で自分のペースで長く走る、という乗り方に最適化されている印象。常にビタッと安定しており、ハンドリングが落ち着いています。

「決して快適性だけのバイクではない」 白川賢治「決して快適性だけのバイクではない」 白川賢治
CW:快適性だけではなく、ロクの勘所は安定性だと。

白川:そうですね。全ての路面の凹凸をいなしてくれる、という走行感を想像するとちょっと違うかな。負荷一定でペースを維持するには最適。時速50km超のハイペースで走り続けなければならない平坦レースにも意外とマッチするかもしれません。そこを狙っているフレームではないのでしょうが。

CW:基本はしっかりしているわけですね。

「高いケイデンスを維持すればヒルクライムも得意」 二戸康寛

CW:二戸さんの感想は。

「高いケイデンスを維持すればヒルクライムも得意」 二戸康寛「高いケイデンスを維持すればヒルクライムも得意」 二戸康寛 二戸:同等グレードのクアトロとは対照的ですね。ロングライドやツーリングに向けて開発されていることが、設計からも走行感からもうかがえます。ダンシングをするとまったり感があり、加速も上位機種に比べるとワンテンポ遅れるんですが、シッティングで軽いギアでペースを維持するのがものすごくラク。負荷を変化させず、ずーっと同じようなペースで淡々と走る人にはすごく向いていると思います。

CW:多くの人が、ピナレロらしいクアトロやFPチームに目が行ってしまうのでは、と思うのですが、どういう人にオススメできますか?

白川:人と競って走るのではなく、自分の好きなときに好きなペースで好きなだけ走るという人。そういう人にとっては、レース向けに作られた乗り手を選ぶバイクより、ロクのようなライダーをサポートしてくれるバイクのほうをオススメしたい。下りの安定感も高いですし。昔ランドナーに乗っていたような人が最新のカーボンを楽しむには最高の一台ですね。

二戸:まったりと言いましたが、アップライトなポジションで軽いギアで回すぶんにはネガはそれほど感じません。乗り方次第ではヒルクライムでも十分に使えますよ。

白川:世の中にはレースバイクもたくさんありますが、長く乗ったときのことを考えると、ロクのようなバイクのほうが楽しみが広がることも多いです。エントリーバイクとしては決して安いものではありませんが、特性を理解して選ぶのであれば、納得の価格だと思います。
編集:シクロワイアード 提供:カワシマサイクルサプライ