かつてピナレロには、FP3というミドルグレード完成車があった。形状はプリンスカーボンに似ており、フレーム素材は30トンカーボン。素晴らしい振動減衰性と走る楽しさを持ち、多くのエントリーライダーをピナレロファンにしてしまった名作であった。華やかなルックスも人気に拍車をかけた。

ピナレロ FPクアトロピナレロ FPクアトロ
そのFP3に左右非対称デザインを加えたニューモデルが、2011年に登場したクアトロ・カーボンである。ピナレロは、「多くのアマチュアサイクリストには、トップスプリンターが求める程の剛性は必要ない」と考えた。そこで、ドグマ譲りの左右非対称設計によって必要な個所にはしっかりと剛性を持たせたうえで、クアトロ・カーボンを必要以上に硬くせず、ビギナーでも扱いやすい剛性バランスに調整したのである。

ピナレロのロードバイク全車が採用するオンダフォーク。ピナレロ史における最重要発明機構の一つピナレロのロードバイク全車が採用するオンダフォーク。ピナレロ史における最重要発明機構の一つ
ステムやハンドル、サドル、ピラーなどにはピナレロオリジナルパーツがアッセンブルされる。高級感は群を抜くステムやハンドル、サドル、ピラーなどにはピナレロオリジナルパーツがアッセンブルされる。高級感は群を抜く
ヘッドの下側ベアリングが上側より大口径化される上下異径ヘッドに進化したFPクアトロ。性能に磨きがかけられたヘッドの下側ベアリングが上側より大口径化される上下異径ヘッドに進化したFPクアトロ。性能に磨きがかけられた


幅広い用途に対応する完成度の高さ

2012年モデルでクアトロ・カーボンははやくもフルモデルチェンジし、FPクアトロと改名した。素材は同じ30トンカーボンながら、フロントフォークが一新されてヘッドの下側ベアリング径が1.5インチに。これによってスタビリティとハンドリング性能が向上。ケーブルも内蔵化を果たすなど、パリと同等の進化を遂げ、さらに完成度の高いオールラウンドバイクへと進化を遂げた。

電動コンポーネント仕様には専用の「iReady」フレームが採用され、ケーブル類はフレームに内蔵される電動コンポーネント仕様には専用の「iReady」フレームが採用され、ケーブル類はフレームに内蔵される ペダリング時にかかる力は左右で異なる。応力バランスを均一にするために各パイプを左右非対称にペダリング時にかかる力は左右で異なる。応力バランスを均一にするために各パイプを左右非対称に

好評のFPクアトロは2013シーズンも続投される。フレーム販売は設定されないが、5種類の完成車をラインナップ。機械式コンポーネントはコストパフォーマンスに優れたシマノ・105、人気のあるシマノ・アルテグラ、11スピードとなるカンパニョーロ・アテナの3種類。

フレーム素材は、最新鋭旅客機ボーイング787にも多く使われている30トングレードのHMカーボンフレーム素材は、最新鋭旅客機ボーイング787にも多く使われている30トングレードのHMカーボン
ライダーの力を余すことなく後輪へ伝えるオーバーサイズボトムブラケット。BBはイタリアン規格で汎用性に優れるライダーの力を余すことなく後輪へ伝えるオーバーサイズボトムブラケット。BBはイタリアン規格で汎用性に優れる
ハの字を描くチェーンステーは、衝撃吸収性を増し乗り味の向上に貢献するハの字を描くチェーンステーは、衝撃吸収性を増し乗り味の向上に貢献する


最新の電動制御変速システムであるシマノ・アルテグラDi2やカンパニョーロ・アテナEPS仕様もラインナップしており、予算や好みに応じてチョイス可能だ。なお、電動コンポ搭載モデルには電動専用の「iReady」フレームが採用され、コネクトケーブル類は全てフレームに内蔵される。グレードによって選べるカラーは限定されるが、実に9パターンものカラーリングが用意されている。

ピナレロ FPクアトロ(シマノ アルテグラDi2完成車)

サイズ42.5EF, 44SL 46.5SL, 50, 51.5, 53, 54, 55, 56, 57.5, 59.5
マテリアルCarbon 30HM12K
フォークOnda FPK1 Carbon 30HM12K 1” 1/8 1” 1/2 Asymmetric integral system
リアステイOnda FPK Carbon 30HM12K Asymmetric
ボトムブラケットMOst Croxover (ITA規格)
フレーム重量約1,100g (サイズ54、ベア重量)
ホイールMOst Wildcat G3
価 格448,000円(税込)

インプレッション

「“ピナレロ・レーシングの世界”へようこそ!」 白川賢治

「ピナレロ・レーシングの世界を具現化したレーサーバイク!」 白川賢治「ピナレロ・レーシングの世界を具現化したレーサーバイク!」 白川賢治 白川:僕の好きなピナレロらしさがありました。レーシーで機敏なのに、路面に吸い付いてシルキーに走る。

二戸:FPクアトロ、いいですよね。反応がよく軽快感があります。試乗車に付いていたホイールは決して軽いものではないんですが、なぜか加速がよくて乗っていてものすごく楽しい。剛性感は「ほどよい」の一言。硬すぎないのにキレがある。一踏み目から高速域まで、気持ちよく加速できます。

白川:印象としては、このFPクアトロから「レーシングの世界」に入ると感じました。ハンドリングも適度にクイック。硬く感じる人もいるかもしれませんが、脚にきてしまう硬さではなく、気持ちよく走れる硬さ。

CW:では、レースで本気でいい成績を目指すなら、FPクアトロ以上ということでしょうか?

白川:ですね。ピナレロのレーシングマシンはFPクアトロ以上。もちろんFPウノもFPチームもいいロードバイクなんですが、本格的なレースユースという意味では、FPクアトロからでしょう。

二戸:うん。これから本格的にレースを始めたいという人にオススメできますね。

CW:ピナレロのラインナップの中ではミドルグレードなので、どちらかといえばビギナー向けなのかなと思ってしまいがちですが。

白川:「ミドルグレード」とひとくくりにするにはもったいないバイクです。上位機種に明確に劣る箇所もなく、完成度が高い。快適性も悪くないので、サンデーライダーでも「速く走る気持ちよさ」を感じることができるでしょう。

「走り屋を満足させるオールラウンダー」 二戸康寛

CW:価格が近いFPチームと比べてどうですか?

白川:このFPクアトロのほうがレース向けですね。FPチームにはいい意味でのしなやかさがあります。ビギナーが楽しく乗れるのはFPチームでしょう。でも、「本物が欲しい」という想いが強いならFPクアトロをオススメしたい。レーサーレプリカというイメージです。

「走り屋を満足させるオールラウンダー」 二戸康寛「走り屋を満足させるオールラウンダー」 二戸康寛
CW:20万円台後半の105完成車から55万弱のアテナEPS仕様まで、かなり幅広いラインナップを展開していることも特徴ですね。

二戸:フレームが幅広い層に対応できる性能を持っている証拠でしょう。それがパーツアッセンブルにも表れている。「とりあえずは105から」でもいいし、「せっかくなら電動にいっちゃいます」でもいい。バリバリの走り屋も満足させてくれるオールラウンダーです。

白川:確かに。アテナEPSでもシマノのDi2でも、パーツに比べてフレームが劣るという感じはまったくありません。ホイールをしっかりと剛性のあるモデルに替えればもっともっとよくなるでしょう。マヴィックのキシリウムとか、フルクラムのレーシング1とか。

二戸:ですね。フレームがしっかりしているので、シマノのC35クリンチャーなら慣性を利用して高速走行に対応できますし、軽量チューブラーにすればもっと軽快感が出るでしょうし。

白川:例えレースで負けても、FPクアトロなら機材が言い訳にはなりません。
編集:シクロワイアード 提供:カワシマサイクルサプライ