インテグラルシートピラーや大口径BB、極端なエアロ化には目もくれない。かといって古臭い設計に固執するわけではなく、斬新な左右非対称設計を全身にまとう。フレームには自転車業界最高レベルの超高弾性カーボンを贅沢に使用する。これがピナレロのトップモデル、ドグマの“今”である。

マイヨ・ジョーヌ仕様のドグマを駆り、シャンゼリゼの周回コースを走ったブラドレー・ウィギンズマイヨ・ジョーヌ仕様のドグマを駆り、シャンゼリゼの周回コースを走ったブラドレー・ウィギンズ photo:Makoto.Ayano
湾曲したオンダフォークを備えたマグネシウム合金/カーボンバックのドグマは、ピナレロのトップモデルとして2002年にデビュー。年々改良を受けながら進化を続けていたが、2010年にフレーム素材をカーボンとし、ドグマ60.1としてモデルチェンジした。

世の潮流がどうなろうと金属フレームこだわってきたピナレロのトップモデルが、ついにカーボンフレームに!とファンを驚かせたカーボン版ドグマのデビューだが、素材が変われどその性能はトップクラス。使われていたカーボン繊維は、当時ピナレロに独占供給されていた自転車業界最高の東レ60トングレードだった。自転車界初となる「完全左右非対称設計」を採用したことも大きな話題を呼んだ。

ヘッドチューブには上:1-1/8インチ、下:1-1/2インチの上下異径タイプを採用し、ピナレロらしい正確なハンドリングを実現ヘッドチューブには上:1-1/8インチ、下:1-1/2インチの上下異径タイプを採用し、ピナレロらしい正確なハンドリングを実現
トップチューブには、東レ65トンカーボンを使用している証が。ピナレロのトップモデルだけに許されるロゴであるトップチューブには、東レ65トンカーボンを使用している証が。ピナレロのトップモデルだけに許されるロゴである
フォーククラウン部をフィン状としてダウンチューブとの隙間を埋め、乱流の発生を防いで空力性能の向上を狙うフォーククラウン部をフィン状としてダウンチューブとの隙間を埋め、乱流の発生を防いで空力性能の向上を狙う


ドグマの進化は止まらない

その後、ドグマはフレーム形状をブラッシュアップして左右の剛性バランスを煮詰めたドグマ2へとアップデート。ヘッドの下ワンが1.5インチとなり(ドグマ60.1は1-1/4インチ)、フォークのクラウン部にフィンを設けることで空力性能も改善された。ドグマ60.1の圧倒的な動力性能に加え、素晴らしい剛性バランスを持っていたドグマ2も高い評価を得ることになる。

ピナレロが取り入れる左右非対称設計。このシートステーも左右で形状や太さが異なっているピナレロが取り入れる左右非対称設計。このシートステーも左右で形状や太さが異なっている シートチューブは翼断面形状。シートピラーも専用となる。インテグラルピラー非採用でサドル高の微調整が可能シートチューブは翼断面形状。シートピラーも専用となる。インテグラルピラー非採用でサドル高の微調整が可能 ヘッドチューブのフィンはピナレロカーボンフレームの特徴の一つ。機械式コンポ用の台座も用意されているヘッドチューブのフィンはピナレロカーボンフレームの特徴の一つ。機械式コンポ用の台座も用意されている

そして2013年モデルとして発表されたのが、ドグマ65.1 think2である。フレーム形状は前作ドグマ2とほぼ同じ。違いはフレーム素材にある。フレームに使われているカーボンの中で最も高いグレードのものを、前作ドグマ2の60トンから65トンへと上げたのである。ドグマ2でもトップクラスの性能を持っていたが、新型ドグマはさらに実力をアップさせたことになる。その高いパフォーマンスを証明するように、2012年のツール・ド・フランスではこのドグマ65.1を駆ったブラドレー・ウィギンズが総合優勝に輝いている。

ピナレロ ドグマ65.1 Think2ピナレロ ドグマ65.1 Think2
モノステー形状から始まるシートステー。独特のONDAステーもピナレロを代表する造形だモノステー形状から始まるシートステー。独特のONDAステーもピナレロを代表する造形だ 電動コンポーネント用のバッテリーは、使い勝手を考慮してボトルケージの邪魔をしないBB下部に装着される電動コンポーネント用のバッテリーは、使い勝手を考慮してボトルケージの邪魔をしないBB下部に装着される

車名末尾の“Think2”とは、アウター受け部分の小物を交換式として、一本のフレームで機械式コンポーネントと電動コンポーネントの両方に対応していることを意味する。素材をアップグレードしながら価格が下げられたことも嬉しいニュースである。

ピナレロ ドグマ65.1 Think2

サイズ42SL, 44SL, 46.5SL, 50, 51.5, 53, 54, 55, 56, 57.5, 59.5, 62
マテリアルCarbon 65HM1K Nanoalloy™ Torayca
フォークOnda 2 Carbon 65HM1K 1"1/8 1"1/2 integral system
リアステイOnda 2 Carbon 65HM1K
ボトムブラケットMost Croxover (ITA規格)
価 格449,000円(フレームセット)

インプレッション

「前作よりリニアに進むようになり、どんどん踏める」 白川賢治

CW:まずはモデルチェンジしたばかりのトップモデル、ドグマ65.1Think2からいきます。どうでしたか?

二戸:前作(ドグマ2)と見た目はほぼ一緒なんですが、走りは全然違いますね。ドグマ2よりパリッとしていて、レスポンスがよくなっている。明らかに硬くなっていると思います。

白川:変わってますね。前モデルより反応がよくなっている気がします。前作が加速の後押しをするような感覚だったのに対し、新作はもっとリニア。ダンシングでも踏めば踏むほど進んでくれる。

「前作よりリニアに進むようになり、どんどん踏める」 白川賢治「前作よりリニアに進むようになり、どんどん踏める」 白川賢治
CW:メーカーは『無駄な剛性アップはしていない』とアナウンスしていますが、そこまで剛性感が変わっているとは意外ですね。これはいい変化なんでしょうか?

二戸:短距離のレースや、強度がコロコロと変わるクリテリウムだと、レスポンスがいいこのドグマ65.1Think2のほうが確実に上でしょう。低速から高速まで、どこで踏んでも反応がいい。

白川:ハイスピードでビッグギアをかけて踏むような場面では本当に楽。でも、このドグマには優しさもあるんですよ。ガチガチに硬すぎるという感じはせず、ペダリングのリズムを合わせやすく、どんどん踏める。これ以上硬いとキレイに回すペダリングスキルが必要になるだろうし、これ以上ウィップさせると重いギアを踏んだときに柔らかく感じるだろうし。ダンシングで踏み込んでもシッティングでクルクル回してもOK。ものすごく絶妙な味付けですね。これならどんなレースにも対応できます。ハンドリングはクイック気味でしょうか。すぐに慣れてしまうと思いますが。

二戸:確かにハンドリングはキビキビしてますね。安定感のあるドグマKとは対照的。でも乗りこんでいる人であれば使いこなせるでしょう。コーナリングでもダウンヒルでも常にビシッと安定しています。しかも快適性も悪くない。驚きますね。

白川:悪路でも跳ねることなく、剛性が高いのに、縦方向の振動は上手く吸収してくれるというオンダフォークの効果を感じますね。常にビタッと路面に吸い付いてくれるような感じ。

「生粋のレーシングフレームを求めている人に」 二戸康寛

「生粋のレーシングフレームを求めている人に勧めたい」 二戸康寛「生粋のレーシングフレームを求めている人に勧めたい」 二戸康寛 CW:安定感やハンドリングなど従来のピナレロらしさは残しつつも味付けは変化した、と。

二戸:従来のピナレロのイメージとは少し違いますね。従来の重厚な走りのイメージから、軽量・高剛性という方向に振ってきている。生粋のレーシングフレームが欲しい人には最適でしょう。

白川:真のレース向け。実戦で使ってみたい。とにかく軽く走れます。でも、レースをしないようなそれほど脚力がない人でも「こんなに進んでくれるのか!」と驚けると思います。ロングライドに使ってもいいと思いますよ。

CW:では、「自分はまだ初心者だから…」と遠慮する必要はないということですね。予算に余裕があるなら。

白川:その通り。いきなりコレにいっちゃっても楽しめますよ。どんな人にも向く。硬くて乗れない、というイメージは全くない。脚力に自信のないライダーでも、これに乗れば思わず笑っちゃうと思います。それほどまでにいい。そういう意味では今までの「レーシングフレーム」とはちょっと違いますね。

CW:お話を聞いている限りでは…「完璧」ということですね。

白川:そう、完璧と言ってしまっていいでしょう。欠点がないですね。これを買っておけば間違いない、という一台です。

二戸:シンク2という時代の流れに即した作り(電動コンポと機械式コンポの両方に対応)になっていますし、性能を考えるとコストパフォーマンスも文句なしにいいですね。
編集:シクロワイアード 提供:カワシマサイクルサプライ