プロ選手も愛用する驚きのプライスパフォーマンス

ロードレースもさることながら、シクロクロス競技においても熱狂的なファンが多いベルギー。リドレーがサポートするフィデアをはじめ、ベルギーにはシクロクロスのプロチームや選手は珍しい存在ではない。そして、ジュニアの選手たちは、ロードレースと並行してシクロクロスを走ってライディングスキルを磨くのが普通だ。

こうしたお国柄を反映して、リドレーはシクロクロスバイクのラインナップが豊富だ。世界チャンピオンのズデネク・スティバールが乗るXナイトを筆頭に現在は4モデルをラインナップする。その中でもセカンドグレードに位置し、最もプライスパフォーマンスに優れる人気モデルが「Xファイア」だ。09年のシクロクロス世界チャンピオン、ニールス・アルベルトも愛用していたモデルでもある。

リドレー X-FIREリドレー X-FIRE
ボックス型に成型された大径のダウンチューブ。高いねじれ剛性を発揮して正確なバイクコントロールに貢献ボックス型に成型された大径のダウンチューブ。高いねじれ剛性を発揮して正確なバイクコントロールに貢献
前後シフトワイヤ、後ブレーキのワイヤは、泥汚れを避けるためにトップチューブ上側に沿って配置される前後シフトワイヤ、後ブレーキのワイヤは、泥汚れを避けるためにトップチューブ上側に沿って配置される


24Tのハイモジュラスカーボンを素材とするフレームは、角断面のダウンチューブが印象的だ。ねじれに強い角断面を採用により、悪路での直進性に加えコーナーでのふらつき感を防止して、バイクの安定したコントロールが追求されている。

トップチューブは乗り心地の向上と、担ぎやすさを配慮して横方向に扁平加工が施されている。シートステーは路面からのショックを吸収すべく細身のモノステー。さらに、トップチューブとシートステーの一体成型によってこの部分のねじれが抑えられ、コーナーの立ち上がりでも後輪が路面を確実に捕らえるロスのない走りを可能にしている。

フロントフォークはストレートタイプ。ボリューム感あるクラウン部分によってブレのないハンドリングを実現フロントフォークはストレートタイプ。ボリューム感あるクラウン部分によってブレのないハンドリングを実現 ヘッド部は下ワンのみ1-1/2インチに設計した上下異径タイプを新たに採用。より安定したハンドリングを提供するヘッド部は下ワンのみ1-1/2インチに設計した上下異径タイプを新たに採用。より安定したハンドリングを提供する トップチューブと同じ幅で作られたモノステー上部。一体感のある作りによって、ねじれ剛性と乗り心地を両立するトップチューブと同じ幅で作られたモノステー上部。一体感のある作りによって、ねじれ剛性と乗り心地を両立する

フロントフォークはストレートタイプ。これは泥や砂地でのハンドリング性能を俊敏にするための設計だ。特に2011年モデルのXファイアでは、ヘッドチューブ下部のベアリング径を1-1/2インチに拡幅。これによりヘッド周辺の剛性が増して、さらに正確なハンドリングをサポートしてくれる。

その他、細かな部分では、ワイヤ類を泥汚れから守るトップチューブ3連仕様。フロントディレーラーのワイヤリングは、シートチューブに滑車を備えたタイプにしてロード用コンポが使える設計にするなど、シクロクロスレースを走る機材としてぬかりのない仕様だ。しかもフレーム重量は1200gという軽さに仕上げられており、ミッドレンジのロードバイクと比べても遜色のないスペックを備えているのも驚かされる。

その優れたスペックとパフォーマンス故に、Xファイアはプロロードレースにも投入されている。石畳の路面を走り「北の地獄」の異名をとる過酷なロードレース、パリ〜ルーベでは供給チームの選手の多くが使用している。

カーボン素材はハイモジュールタイプの24Tを使用する。衝撃に対する耐久性なども考慮に入れた選択と言えるだろうカーボン素材はハイモジュールタイプの24Tを使用する。衝撃に対する耐久性なども考慮に入れた選択と言えるだろう 前シフトのワイヤリングには滑車を用いる。トップ引きにしないのはロード用のディレーラーを使用するため前シフトのワイヤリングには滑車を用いる。トップ引きにしないのはロード用のディレーラーを使用するため シートステーはモノタイプを採用する。32Cのタイヤを履いても余裕のクリアランスが確保されているシートステーはモノタイプを採用する。32Cのタイヤを履いても余裕のクリアランスが確保されている

通常よりも太い25Cクラスのタイヤを履いてもクリアランスが確保できる理由に加え、ホイールベースが長いので乗り心地を高めることができ、操作性も安定するからだ。パリ〜ルーベは荒れた路面を走るレースだが、その平均速度40㎞を上回る速さだ。シクロクロスバイクであるXファイアはロードレースに使われるのは、このバイクがレースでハンディにならない運動性能を持つ裏付けだ。

こうしたスペックと実績を持ちつつも、驚かされるのが10万円台中盤に設定された価格。これだけ手頃ならば人気車種になるのも当然のことだろう。昨年あたりから日本でもシクロクロスレースの人気が高まりを見せているが、本格的にレースにチャレンジするなら絶対に選択肢から外せない1台だ。

インプレッション

バイクの中心に乗車している感覚が強いので、ダートで走るときに必要とされる横の動きに対応しやすい(吉本司)バイクの中心に乗車している感覚が強いので、ダートで走るときに必要とされる横の動きに対応しやすい(吉本司)

驚くほどに快適に乗れるマルチパーパスバイク

シクロクロスバイクは悪路での踏み出しの軽さや、ペダリング時の障害物との接触を避けるために、そのハンガー下がりはロードバイクに比べて5〜10㎜程度高くなるが、このXファイアも57㎜(48サイズ)に設定されている。ハンガー下がりを上げると踏み出しは軽いが、その分安定感を欠くようになる。だが、Xファイアにそうした部分はない。

リドレー全車に共通することだが、バイクの中心に乗車している感覚が強いので、ダートで走るときに必要とされる横の動きに対応しやすい。また、ハンドリングも適度な直進性安定性を持たせつつも、しっかりと入力に対して反応してくれる。轍に入った時のハンドリングの補正、レーンチェンジもストレス無く決まる。

正直、もっと気を遣うバイクかと思ったが、かなり快適性が高いことに驚いた。乗り心地については空気量の大きなタイヤが大きな役割を果たすものの、カーボンの良さを体感できるのはスピードがかかり、大きめのギャップが連続するような時にもバイクの挙動が乱れにくいことだろう。固いアルミフレームだとはねのけられてしまうようなシーンでも、自分の行きたい方向に収まってくれる感覚がある。

軽量ゆえ、担ぎも楽に行える(吉本司)軽量ゆえ、担ぎも楽に行える(吉本司) 加速性能についても、踏み出しはとても軽い。鋭いというより、少ない力で軽やかに加速する感覚だ。ダートはもとより、舗装路でもその軽さは体感できる。フレーム剛性はガチガチというレベルではないが、ヘッドやハンガーという力が掛かりやすい部分には必要な剛性が与えられ、その他の部分は振動をいなし、ペダリングなどのリズムを作ってくれるしなやかさがある。

X-FIREは、タイヤをオンロード用に履き替えれば、ロードバイクとしても十二分に楽しめる性能を備えている。それこそ、プロ選手がパリ〜ルーベでも使用する程だから、オンロードでの高い走行性能は、私があえて言わずとも納得できるだろう。

したがって、決してシクロクロス競技に出場せずとも、レクリエーショナルバイクとして、オンロードのロングライドから里山レベルのダート走行まで、マルチパーパスに楽しめるモデルだ。手が届きやすい価格も実に魅力的だ。

リドレー X-FIRE

リドレー X-FIREリドレー X-FIRE
PRICE¥166,740(税込) フレームセット
FRAME24tonハイモジュラスカーボンファイバー
WEIGHT1200g
COLOR1014A
SIZE48cm,52cm
提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード