実戦仕様のバイク作りでサイクリストを魅了し続けるリドレー

ロンド・ファン・フラーンデレンでミュールを行くフィリッポ・ポッツァート。厳しい環境下で鍛え上げられたブランド、それがリドレーだロンド・ファン・フラーンデレンでミュールを行くフィリッポ・ポッツァート。厳しい環境下で鍛え上げられたブランド、それがリドレーだ ベルギーの国技は自転車競技。日本で生活をしていると国技の重みを忘れがちだが、海外の国々は自国の国技に心からの誇りを持っている。したがって、その誇りに対して偽物は決して認められない。リドレーとはそんな自転車メーカーにとってハードルの高い国で産声を上げた。

1990年ジョシム・アールツがブリュッセルの北東に位置する街、テッセンデルロで前身となる塗装会社を創業。後に15歳からレースを始めた息子のヨキム・アールツの意見により自転車メーカーとしての道を歩み始める。当時ベルギーにはなかったアルミフレームこそが、次代を担うと確信したヨキムは、ベルギーにこのフレームをもたらし、新しい勢力として名を上げ、斬新な発想でバイクの開発に取り組んでいくことになる。

リドレーのバイクは常にレースを意識した実戦仕様が信条だ。石畳の路面が多いコース、寒くて雨の多い気象条件など、ベルギーのレース環境は特に厳しいことで知られている。こうしたレースで活躍できる強さと軽さの両立、そして快適性を備えた高い基本性能はさることながら、リドレーの特筆すべき点はライダーの好みやレースの特性によって車種を選べることが挙げられる。

現世界チャンピオンのカデル・エヴァンスが率いたサイレンス・ロットもリドレーを使用現世界チャンピオンのカデル・エヴァンスが率いたサイレンス・ロットもリドレーを使用 多くのメーカーのラインナップは、価格の違いで序列が付けられているが、リドレーの場合それとは一線を画す。例えば「ノア」はエアロダイナミクスを重視した高い高速巡行性、「ヘリウム」は軽量性を生かした軽快なヒルクライム性能を誇る。そして、ダモクレスは高速域巡航性と乗り心地の優れたバランスといった特徴がある。

現在リドレーはロシアのスーパープロチーム、カチューシャを筆頭に、スペインのコンテントポリス・AMPOなど多くのチームバイクを供給しているが、興味深いのがそれぞれが使用するモデルだ。例えばカチューシャではノアを中心に、グランツールの山岳レースではヘリウムが投入される。

また、選手の好みによっても使用されるバイクは異なり、スピードマンであるS・イワノフはノアを好み、イタリアチャンピオンでパヴェのレースも得意とするF・ポッツァートは「ダモクレスISP」を好んで使用している。

そして、コンテントポリス・AMPOは上りの多いスペインのレースに対応するために「エクスカリバー」を選んでいる。

多くのメーカーでは各種のモデルが展開されるが、プロに供給されるモデルというのは、価格で見るとだいたい上から1、2モデルのフラッグシップというのが通常だ。リドレーのようなバリエーションを持っているのは希有な存在だ。こうした事実を見ると価格の違いはあれど、ここに挙げた4モデルはコースやライダーの脚質に合わせて開発される実戦仕様であり、その全てがフラッグシップであるという見方もできるだろう。

「キアラ」の入れ墨で日本でもお馴染みのフィリッポ・ポッツァート。愛用のバイクはダモクレスISP「キアラ」の入れ墨で日本でもお馴染みのフィリッポ・ポッツァート。愛用のバイクはダモクレスISP フィリッポ・ポッツァートのバイクはイタリアチャンピオンカラーに彩られたフィリッポ・ポッツァートのバイクはイタリアチャンピオンカラーに彩られた

セルゲイ・イワノフはリドレーを駆って2009年のクラシック戦線、グランツールなどで大活躍した。ツール・ド・フランス2009第14ステージでは逃げグループからアタックし、独走で区間優勝を決めた(写真)セルゲイ・イワノフはリドレーを駆って2009年のクラシック戦線、グランツールなどで大活躍した。ツール・ド・フランス2009第14ステージでは逃げグループからアタックし、独走で区間優勝を決めた(写真) Photo: Makoto Ayano
モデル数を増やすのは在庫リスクや生産の手間がかかり、会社を経営するという面で考えるとデメリットも多い。しかし、それをあえて行なうのは、自転車競技を国技とする土地から発信されるブランドのプライド、そして本物のレーシングバイクを見抜く選球眼に長けたベルギーのサイクリストの要求を満たすためだろう。そんなライダー本意の真摯な自転車作り、それがリドレーというメーカーだ。こうした事実を見る限り、同社がここ10年で急成長を遂げたのも納得できるといえるだろう。

インプレッション

リドレーのラインナップにおいて中核をなすミドルグレード4モデルに、2人のバイクジャーナリストが徹底試乗。目利き・脚利きの2人の辛口ライダーは各モデルに対してどんな印象を持ったのだろう?インプレは各モデル紹介部をクリック!

インプレライダー紹介

今回のインプレライダー、吉本司氏(写真左)と仲沢隆氏今回のインプレライダー、吉本司氏(写真左)と仲沢隆氏 吉本 司(よしもと つかさ)
自転車専門誌の編集部員を経てフリーの自転車ジャーナリストとなる。ロードバイクを中心に執筆するが、執筆範囲はMTBから電動アシスト自転車まで幅広い。主にハードウエアのインプレッション、製品記事を得意とし、現在も自転車専門誌で試乗記事を担当する。

仲沢 隆(なかざわ たかし)
ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。07年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。


INDEX

ph_idx_damocles01.jpgリドレーの魅力を詰め込んだ定番モデル

DAMOCLES

サイズ/XXS、XS、S、M
カラー/911C(ブラック系)、911A(ホワイト系)限定
完成車価格/35万4900円

04年に処女作が発表され、リドレーブランドの飛躍に大きく貢献した存在が《ダモクレス》。2代目となるこのモデルは、30tのハイモジュラスカーボン素材を採用し、フラッグシップである「ノア」の08年モデルの技術が反映させており、いい意味でのトップダウンが行なわれた好例ともいえる1台だ。シートポストには汎用性の高いノーマルタイプを採用することで、多くの人が使いやすい仕様になっている。リドレーの代名詞でもある断面形状が三角に近い「エッジチュービング」をダウンとトップチューブに配し、特徴的な外観を形成すると共に、ヘッドとBB部分の的確な剛性コントロールが行われる。これによりスプリンター向けのオールラウンドフレームとしての立場を明らかにした。フレーム重量は1100gで、レースにおいて実用的かつ安心できる範囲に収めている。コンポーネントはシマノ・105をフル搭載し、ホイールにフルクラム・R7を使うなど評価の高いパーツで構成される。フレームサイズはXXS〜Mが展開され、インテグラルシートポスト仕様の「ダモクレスISP」よりもサイズ展開が多いのがうれしい。[→インプレッションへ
ph_idx_damocles_isp01.jpgF・ポッツァート愛用のプロスペック

DAMOCLES ISP

サイズ/XS、S、M
カラー/1003A(ホワイト×ブルー)
フレーム価格/24万9900円

ダモクレスをベースにインテグレーテッドシートポストを搭載したモデルが《ダモクレスISP》。ダモクレス同様、08年モデルの「ノア」から構造や技術をフィードバックして製作されている。インテグレーテッドシートポストを採用するだけに、こちらの方がよりノアに近いモデルといえるだろう。使用する素材は30tのハイモジュラスカーボンで、1100gのフレーム重量に仕上げられており、一体型シート部を採用する分、こちらの方が軽量化される。そして特筆すべきは、09年のイタリアナショナルチャンピオンである、フィリッポ・ポッツァートが好んで愛用している点だろう。でありながら、その価格にも驚かされる。上下異系ヘッドチューブ形状やインテグレーテッドシートポストなど、現在のレーシングバイクに必要不可欠な仕様を搭載し、一流選手が使用する実績を持ちつつも約25万円という価格は、現在のプロモデルが40万円を超えることを考えると非常にコストパフォーマンスが高いといえる。限定モデルでチームカチューシャのカラーリングを施した仕様もあるのでこちらもファンにとっては注目の1台だ。[→インプレッションへ
ph_idx_excalibur01.jpgヘリウムのDNAを受け継ぐ軽さが魅力

EXCALIBUR

サイズ/XS、S、M
カラー/1004A(ホワイトxレッド)、MCEGIR09(ホワイトxレッ ドxブラック)限定
フレーム価格/24万9900円

2代目となったエクスカリバーは、ダモクレスと同じ30tグレードのハイモジュラスカーボンファイバーを使って製作される。しかし、丸断面の大径チューブで前三角を構成するなど、ダモクレスと価格は同じながらも別の性格が与えられている。前作ではアーチシェイプのシートステーによって振動吸収性を高める工夫がされてきたが、今作は扁平加工を横方向に施した「フレキシブルシートステー」を搭載して同様の効果をねらっている。こうしたフレームの造型を見る限り、エクスカリバーはヘリウムに近い存在と見ていいだろう。ミッドレンジのモデルとしては軽量に仕上げられた950gという重量もしかりだ。この軽量性は、ヘリウム直系の走りの軽さを演出するには大きな要素といえる。ヘッドパーツの下ワンにワンポイントファイブのベアリングを使用したテーパードヘッドチューブも搭載するなど、トレンドもしっかり取り入れられている。09年はブエルタ・ア・エスパーニャで活躍したスペインのプロコンチネンタルチーム、コンテントポリス・AMPOにも使用されており、プロレースでの実績も十分なモデルだ。[→インプレッションへ
ph_idx_compact01.jpg質のいいエントリーフルアルミ

COMPACT

サイズ/XS、S、M
カラー/911C(ブラック系105仕様のみ)、902A/601R/602A(限 定)(チームカラー Tiagra仕様のみ)
完成車価格/21万9450円(105仕様)、16万6950円(ティアグラ仕様)

日本でラインナップされるモデルで、唯一のアルミロードバイクとなるのが《コンパクト》。入門機ではあるが、あたかもダモクレスのように見える一体感のある美しい作りが魅力だ。それもそのはず、7000系のアルミチューブは、「エッジチュービング」形状のハイドロフォーム加工(液圧成型)が施され、リドレーのアイデンティティを受け継ぐフレームを作り出している。そのダウンチューブはヘッドチューブ側を縦に、一方のBB側を横に変形させることで、直進安定性とこぎ出しの軽さが演出されている。フレーム重量もこのクラスとしては軽量な部類といえる1300gに収めているので実用性は十分といえるだろう。そして、カーボン製のフロントフォークは、購入層となるユーザーのことを考え、振動吸収性に優れハンドリングにクセの少ないベンドタイプを組み合わせている。コンポーネントの異なる2モデルが用意され、それぞれシマノ・105と同・ティアグラを搭載する。105を装備して20万円前半の価格は、本格的なロードライドを目指すユーザーにとって十分すぎるほどの作りとパッケージといえるだろう。[→インプレッションへ
提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード