ベルギーにあるリドレー本社工場ベルギーにあるリドレー本社工場 自転車競技を国技とするベルギー。この国は、“キング・オブ・クラシック”と賞されるツール・ド・フランドルに代表されるように、石畳の路面と悪天候によって世界でも有数の厳しいレース環境として知られる。ロードレースは日本では想像しがたいほど身近にあり、平日でもケルメスと呼ばれる周回レースが開催され、人々が近所のカフェでロードレースの話題に興じるのは当たり前の光景だ。ファンの選手を見る目はどの国よりも肥えており、不甲斐ない走りをすれば批判され、勇敢な走りには讃辞を惜しまない。厳しいレース環境とファンが選手を育て、ひたむきに勝利を目指す選手が機材を育てる。そんなロードレースの環境において、しっかりと根を張っているブランドがリドレーである。

柔軟な発想による最先端のバイク作り

ここ数年、有力プロチームへのバイク供給によりレース界ではではひとつの“顔”にもなっているリドレーだが、同社の歴史は新しい。1990年にジョシム・アールツがブリュッセル北東の街、テッセンデルロで塗装会社を創業したのがリドレーの始まりだ。
その息子であるヨキム・アールツは、当たり前のように12歳から自転車競技を行ない、以後18歳まで活躍する。当時、ロードレース界ではアルミフレームが台頭しはじめていた。それまでのクロモリに比べて、軽さと剛性を高いレベルで両立できるアルミフレームこそ次代のロードバイクを担うと確信したヨキムは、それに乗ってベルギーの選手に活躍して欲しいという思いから、フレーム製造に乗り出す。

リドレーを駆るシクロクロス2010世界チャンピオン、ズデネク・スティバー(ベルギー)リドレーを駆るシクロクロス2010世界チャンピオン、ズデネク・スティバー(ベルギー) Photo:CorVos 2010年までリドレーがバイクを供給したチームカチューシャ。トップチームから得られるフィードバックがバイク開発に生きる2010年までリドレーがバイクを供給したチームカチューシャ。トップチームから得られるフィードバックがバイク開発に生きる

彼の先見に狂いはなく、ロードバイクはアルミフレームの時代となり、リドレーは国内チームのスポンサードを足がかりに着実に実績を残してユーザーを獲得する。そして、近年ではロットやカチューシャといった世界屈指のプロチームにバイク供給を行なうまでになり、わずか十数年で世界を代表するブランドに成長した。

エアロダイナミクスを追求したディーンのフォルムエアロダイナミクスを追求したディーンのフォルム リドレーが短期間でこれだけの発展を遂げたのは、柔軟な発想による先端的な自転車作りが大きな要因といえるだろう。例えば、最新のロードバイクで多用される上下異径ヘッドチューブは、同社の出世作とも言われるダモクレスがその先鞭を付けたといっても過言ではない。そして、今では珍しくない角断面のチューブも“エッジチュービング”としていち早く取り入れている。

そして、最新モデルに目を向けると、なんといってもエアロロードのノアとTTバイクのディーンに代表される空力技術だ。通常、エアロバイクは前面投影面積を小さくするため、乗り心地が悪くなる傾向がある。特に石畳の路面が多いベルギーにおいて、快適性の悪いバイクは死活問題となる。快適性を犠牲とせずにエアロダイナミクスを追求するという難題を克服するために、リドレーではオーバルコンセプト社との共同開発により、理想的な形状を導き出した。

空気抵抗軽減のためのスリットが入った「R-Flowジェットフォイル」テクノロジー採用のフォーク空気抵抗軽減のためのスリットが入った「R-Flowジェットフォイル」テクノロジー採用のフォーク それがノアやディーンに採用される「R-Flowジェットフォイル」テクノロジーだ。フロントフォークやシートステーにスリットを設け、フィンの役割を持たせることで、ホイールの回転時にスポークが起こす乱気流の抑制に成功し、空気抵抗削減を実現している。同時にブレード部分に設けられたスリットは、路面からの振動を分散させて乗り心地を高める効果も期待できる。

そして、空気抵抗を削減するもう1つの技術が「R-Surface」だ。これは、表面を微粒子状に加工した細いテープをフレームの一部に貼ることで層流を増加させ、空気抵抗を軽減する。

これらエアロダイナミクスへの取り組みはリドレーだけの技術であり、同社の開発に対する柔軟な姿勢があってこそ実現されたものといえるだろう。2011年モデルでは従来のディーンとノアに加え、これらの技術を搭載するディーンRS、ノアRSの2機種が新たに加わり、ラインアップが一層強化されている。

ライダーのニーズに応える豊富なバリエーション

BB付近にある「Tested on pave」のデカールBB付近にある「Tested on pave」のデカール こうした一方で、堅実なバイク作りもリドレーの大きな特徴だ。リドレーのフレームには「テスト・オン・パヴェ」のデカールが貼られ、全てのモデルは石畳の路面でテストされ、振動吸収性や堅牢性が厳しくチェックされる。

軽さやエアロダイナミクスがどんなに優れていても、過酷なベルギーの路面を走る上で壊れたり、快適性を損ねたりするものは決して取り入れられない。プロ選手、ホビーサイクリスト問わず、安全かつ快適に走れるバイクこそが第一であるとリドレーは考えている。

ラインナップの多さもリドレーのセールスポイントの1つだ。一見すると価格帯がかぶるように思えるラインナップ構成。しかし、リドレーが考えるバイク選びは価格以上に、ライダーのレベルと目的を第一とする。したがって、プロ選手に供給されるバイクひとつとっても、バリエーションにあふれている。

空力を重視したディーン、軽量性に秀でたヘリウム、高速巡航性と快適性のバランスに優れるダモクレス、そして軽量性と快適性を併せ持つエクスカリバーなど、レースのタイプや選手の好みに応じてバイクを選択することができる。実際に供給プロチームのバイクを見ると、かなり細かな使い分がされている。

つまり、リドレーのバイクは価格による序列というものはなく、全てがフラッグシップともいえる商品構成を誇っているのだ。

豊富なラインナップという点においては、シクロクロスバイクの品揃えが充実しているのも見逃せない。ベルギーはこの競技が世界で最も盛んな国。世界最強のフィディアを筆頭に、サンウェブといったシクロクロスの専門プロチームがリドレーを駆っている。リドレーはロードバイクのみならず、シクロクロスの世界でもリーディングメーカーとして知られている。

最先端の性能を積極的に取り入れる柔軟性な開発能力に加え、豊富なバリエーションを揃えるリドレー。生産性や在庫のリスクだけを考えれば決してデメリットも少なくない。それを行ない続けるのは、ヨキムがアルミフレームを製作することを決意した「優れたバイクに乗って活躍してほしい」という、ただ1つの思いに過ぎない。理想を追いかけ、厳しいレース環境に鍛えられ、リドレーはこれからもライダー本位のバイク作りを続けて行く。


リドレー2011ニューモデル ホビーライダーたちのインプレッション

ロードレースやタイムトライアル、そしてシクロクロスなどコンペティションモデルにおいて幅広いラインナップを誇るリドレー。2011年に新たにモデルチェンジするバイクを中心にバイクジャーナリスト吉本司と読者モデル3人が乗り比べを行った。異なる脚質、レベル、好みを持つ4人は、果たして何を感じ取るのだろう?

左から西井敏次さん、佐藤光国さん、木下大輝さん左から西井敏次さん、佐藤光国さん、木下大輝さん バイクジャーナリスト 吉本司バイクジャーナリスト 吉本司

リドレー2011モデル インデックス

ROAD

圧倒的な空気抵抗軽減を誇るオールラウンダー

NOAH

エアロダイナミック形状ながら1,075gと軽く、山岳もこなせるオールラウンドフレーム。流体力学に焦点をあて、OVAL CONECT社との共同開発により作り出された「R-Flowジェットフォイル」は、フロントフォークとシートステーに設けられたスリットに、「R-Surface」はヘッドチューブ/ダウンチューブ/シートチューブに貼られた微粒子のテープに代表される技術だ。これらの技術で得たNOAHの空力特性は、スプリント時において2km/hの優位性を持つ。

また、上下異径のヘッドパーツを採用することでヘッド周りの剛性を上げ、ハンドリング性能を向上。50、40、30トンのカーボン素材を適材適所に使い分ける事で、走りの軽さとともに振動吸収性も高めている。
NOAHのフィードバックを受けた空力特性を誇る
コストパフォーマンスの高いオールラウンダー

NOAH RS

上位機種NOAHのエアロダイナミック形状を受け継いでいるオールラウンドフレーム。NOAHの「R-Flowジェットフォイル」「R-Surface」テクノロジーをよりリーズナブルに味わえる。中でも「R-Flowジェットフォイル」のスリットはスポーク間で生じる乱気流を整流する効果を発揮し、6.4%の空気抵抗軽減につながっている。さらにワイヤーをフレームに内蔵し、空気抵抗軽減を図っているのもNOAH同様の特徴だ。
驚異的なコストパフォーマンスに優れたORIONが
フルモデルチェンジを果たし復活

ORION

一見すると2009年までのORIONを受け継ぐフレーム形状だが、ダウンチューブのボリュームを下げ、従来に比べてしなやかさを強調している。一方でチェーンステーは前作よりも外径をアップ、BBエリアの断面積も広くすることで、ハンガー部分からリヤホイールまでの剛性アップしパワー伝達効率が向上した。

そして前作のORIONで特徴になっていたT字断面のトップチューブは、新たに五角形の断面になり、しなやかさを増しながら必要な剛性レベルが確保されている。さらにシートステーはモノステーに変更され、チューブ自体の外径も細くすることで、より振動吸収性能を向上させている。
プロレベルの上位機種HELIUMのフィードバックを受け継ぐ、
ハイパフォーマンスフレーム

EXCALIBUR

カーボン素材は違えどISP(シートチューブ一体型)ではないHELIUMと言って過言ではないEXCALIBUR。大きなボリュームをもつチェーンステーやカーボン材質によって、乗り心地を犠牲にすることなく切れのいいレスポンスを可能にした。

リアステーは横方向に扁平加工された"フレキシブルシートステー"が衝撃吸収に貢献。大きなチェーンステー、BBユニット、リアエンドをモノコック成形することで、剛性アップと軽量化を果たしている。なかでもカーボン化されたリアエンドは圧巻だ。
2009年イタリアチャンピオン、
フィリッポ・ポッツァートがこよなく愛したバイク

DAMOCLES ISP

RIDLEYの代名詞「エッジチュービング」を採用するDAMOCLES ISP。スプリンター向けの味付けがなされたオールラウンダーモデルだ。ダウンチューブのヘッドチューブ側を縦に変形させヘッドチューブとの接合部分を増やすことで剛性を上げ、BB側は横へ変形させ剛性を上げることで、各部分にかかる力を推進力に変える。

カーボン素材とシートチューブのみでチェーンステー、BBエリアをモノコック製法で軽量化し、その他はチューブtoチューブ製法を用いることにより強靭な安定感と走行性を誇っている。また、リアエンドはアルミ削りだしにより、薄く、しかも堅いため、チェーンクリアランスが十分にとれ、トラブルの心配を減らしてくれる。加えて上下異径のヘッドパーツにより、ヘッド周りの剛性をアップ、ハンドリング性能を向上させている。
コストパフォーマンスに優れたプロレベルバイク

DAMOCLES

DAMOCLES ISP同様に、RIDLEYの代名詞「エッジチュービング」を採用するDAMOCLES。DAMOCLES ISPとの違いはシートチューブ一体型のISPではなく、通常のシートピラーを採用していることのみ。ポジション調整を容易にしつつ、プロレベルを体感できるバイクだ。
リドレーの代名詞 エッジチュービングを受け継ぐエントリーバイク

COMPACT

上位モデルDAMOCLESでも採用されている、RIDLEYの代名詞エッジチュービングはエントリーモデルのCOMPACTにも受け継がれている。7000系アルミをハイドロフォーミングを用いてエッジチューブフレームに仕上げられたCOMPACTは、ヘッドチューブ側を縦に、BBエリア側を横に変形させ、溶接設置面を多く確保し、直進安定性、走りの軽さを生み出している。

直線的に伸びるシートステーは、三角形に近い断面に加工されたチューブが採用され、シャープな加速と乗り心地がバランスよく加味されている。扁平タイプでわずかなアールが与えられたエアロ形状のフロントフォークは振動吸収性も高く、乗り心地の向上に大きく貢献。エントリーモデルながら細部にまでRIDLEYのテクノロジーが注ぎ込まれたモデルだ。

TT

流体力学に焦点を当て開発されたTTバイク

DEAN

ロードモデルであるNOAHにも採用されている、「R-Flowジェットフォイル」「R-Surface」テクノロジーが用いられたタイムトライアルフレームがDEAN。
「R-Flowジェットフォイル」はスポーク間で生じる乱気流をスリットにより整流し、7.5%の空気抵抗を軽減。また、R-Surfaceは、ヘッドチューブ、ダウンチューブ、シートチューブに設けられた微粒子状のテープで、4%の空気抵抗を軽減することに成功している。

さらに50、40、30トンのカーボン素材を適材適所に使い分ける事で、走りの軽さはもちろん、振動吸収性を高めている。
上位機種DEANのテクノロジーを受け継ぐTTバイク

DEAN RS

リーズナブルな価格設定ながら、DEANと同様に「R-Flowジェットフォイル」「R-Surface」テクノロジーを採用。「R-Flowジェットフォイル」は6.4%の空気抵抗軽減を、「R-Surface」は、3.6%の空気抵抗軽減を実現する。
フレームに内蔵されたワイヤーも空気抵抗軽減につながっており、専用エアロシートポストの採用で、サドルの上下も容易になっている。

シクロクロス

ニールス・アルベールが勝利したバイク

X-FIRE

メインフィールドであるシクロクロスレース以外に、チームカチューシャが2010年のパリ・ルーベなどの石畳や悪路のレースでも使用したX-FIRE。
採用の理由はタイヤ25mmを使用してもクリアランスが確保でき、ホイールベースが3cm長くなるため、パヴェ(石畳)では安定性が向上する、と言う大きな利点があるためだ。2010年モデルよりヘッドチューブ下側のサイズが1.5インチに変更され、更にハンドリング性能が良くなった。

インプレライダーのプロフィール

吉本 司
よしもと つかさ
71年生まれ。スポーツサイクル歴は25年。自転車専門誌の編集者を経てフリーランスの自転車ライターとなる。主にロードバイク関連の執筆が多いが、MTBから電動アシスト自転車まで幅広いジャンルのバイクに造詣が深い。これまで30台を上回るロードバイクを所有してきた。身長187センチ、体重71㎏。
佐藤 光国
さとう みつくに
78年生1月生まれ。32歳。ラバネロ所属。ロードレース歴は2年。今年から実業団登録。東日本実業団ERクラス19位。JCRCロード四日市Bクラス2位(現在はAクラスで走る)。上りを得意とするが、レースのリザルトはクリテリウムの方が成績はよいとか。
木下 大輝
きのした だいき
94年11月生まれ。16歳。千葉経済大学付属高校の自転車競技部所属。ロードレース歴は2年だが、今年は8月に三週間ベルギーに遠征して海外ロードレースを初体験。脚質はパンチャータイプ。今年の戦績は新人戦ポイントレース優勝。3000m個人追い抜き2位。
西井 敏次
にしい としつぐ
54歳。大福屋所属。元日本ハムファイターズの外野手として7年間活躍。体力アップのためにスポーツバイクを2年目にはじめ、休日などにチーム練習会や長距離を走るファンライダー。昨年ツール・ド・ジャパン西湖でロードレースデビュー。


提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード