2010/12/29(水) - 13:52
自転車競技を国技とするベルギー。この国は、“キング・オブ・クラシック”と賞されるツール・ド・フランドルに代表されるように、石畳の路面と悪天候によって世界でも有数の厳しいレース環境として知られる。ロードレースは日本では想像しがたいほど身近にあり、平日でもケルメスと呼ばれる周回レースが開催され、人々が近所のカフェでロードレースの話題に興じるのは当たり前の光景だ。ファンの選手を見る目はどの国よりも肥えており、不甲斐ない走りをすれば批判され、勇敢な走りには讃辞を惜しまない。厳しいレース環境とファンが選手を育て、ひたむきに勝利を目指す選手が機材を育てる。そんなロードレースの環境において、しっかりと根を張っているブランドがリドレーである。
その息子であるヨキム・アールツは、当たり前のように12歳から自転車競技を行ない、以後18歳まで活躍する。当時、ロードレース界ではアルミフレームが台頭しはじめていた。それまでのクロモリに比べて、軽さと剛性を高いレベルで両立できるアルミフレームこそ次代のロードバイクを担うと確信したヨキムは、それに乗ってベルギーの選手に活躍して欲しいという思いから、フレーム製造に乗り出す。
彼の先見に狂いはなく、ロードバイクはアルミフレームの時代となり、リドレーは国内チームのスポンサードを足がかりに着実に実績を残してユーザーを獲得する。そして、近年ではロットやカチューシャといった世界屈指のプロチームにバイク供給を行なうまでになり、わずか十数年で世界を代表するブランドに成長した。
リドレーが短期間でこれだけの発展を遂げたのは、柔軟な発想による先端的な自転車作りが大きな要因といえるだろう。例えば、最新のロードバイクで多用される上下異径ヘッドチューブは、同社の出世作とも言われるダモクレスがその先鞭を付けたといっても過言ではない。そして、今では珍しくない角断面のチューブも“エッジチュービング”としていち早く取り入れている。
そして、最新モデルに目を向けると、なんといってもエアロロードのノアとTTバイクのディーンに代表される空力技術だ。通常、エアロバイクは前面投影面積を小さくするため、乗り心地が悪くなる傾向がある。特に石畳の路面が多いベルギーにおいて、快適性の悪いバイクは死活問題となる。快適性を犠牲とせずにエアロダイナミクスを追求するという難題を克服するために、リドレーではオーバルコンセプト社との共同開発により、理想的な形状を導き出した。
それがノアやディーンに採用される「R-Flowジェットフォイル」テクノロジーだ。フロントフォークやシートステーにスリットを設け、フィンの役割を持たせることで、ホイールの回転時にスポークが起こす乱気流の抑制に成功し、空気抵抗削減を実現している。同時にブレード部分に設けられたスリットは、路面からの振動を分散させて乗り心地を高める効果も期待できる。
そして、空気抵抗を削減するもう1つの技術が「R-Surface」だ。これは、表面を微粒子状に加工した細いテープをフレームの一部に貼ることで層流を増加させ、空気抵抗を軽減する。
これらエアロダイナミクスへの取り組みはリドレーだけの技術であり、同社の開発に対する柔軟な姿勢があってこそ実現されたものといえるだろう。2011年モデルでは従来のディーンとノアに加え、これらの技術を搭載するディーンRS、ノアRSの2機種が新たに加わり、ラインアップが一層強化されている。
軽さやエアロダイナミクスがどんなに優れていても、過酷なベルギーの路面を走る上で壊れたり、快適性を損ねたりするものは決して取り入れられない。プロ選手、ホビーサイクリスト問わず、安全かつ快適に走れるバイクこそが第一であるとリドレーは考えている。
ラインナップの多さもリドレーのセールスポイントの1つだ。一見すると価格帯がかぶるように思えるラインナップ構成。しかし、リドレーが考えるバイク選びは価格以上に、ライダーのレベルと目的を第一とする。したがって、プロ選手に供給されるバイクひとつとっても、バリエーションにあふれている。
空力を重視したディーン、軽量性に秀でたヘリウム、高速巡航性と快適性のバランスに優れるダモクレス、そして軽量性と快適性を併せ持つエクスカリバーなど、レースのタイプや選手の好みに応じてバイクを選択することができる。実際に供給プロチームのバイクを見ると、かなり細かな使い分がされている。
つまり、リドレーのバイクは価格による序列というものはなく、全てがフラッグシップともいえる商品構成を誇っているのだ。
豊富なラインナップという点においては、シクロクロスバイクの品揃えが充実しているのも見逃せない。ベルギーはこの競技が世界で最も盛んな国。世界最強のフィディアを筆頭に、サンウェブといったシクロクロスの専門プロチームがリドレーを駆っている。リドレーはロードバイクのみならず、シクロクロスの世界でもリーディングメーカーとして知られている。
最先端の性能を積極的に取り入れる柔軟性な開発能力に加え、豊富なバリエーションを揃えるリドレー。生産性や在庫のリスクだけを考えれば決してデメリットも少なくない。それを行ない続けるのは、ヨキムがアルミフレームを製作することを決意した「優れたバイクに乗って活躍してほしい」という、ただ1つの思いに過ぎない。理想を追いかけ、厳しいレース環境に鍛えられ、リドレーはこれからもライダー本位のバイク作りを続けて行く。
柔軟な発想による最先端のバイク作り
ここ数年、有力プロチームへのバイク供給によりレース界ではではひとつの“顔”にもなっているリドレーだが、同社の歴史は新しい。1990年にジョシム・アールツがブリュッセル北東の街、テッセンデルロで塗装会社を創業したのがリドレーの始まりだ。その息子であるヨキム・アールツは、当たり前のように12歳から自転車競技を行ない、以後18歳まで活躍する。当時、ロードレース界ではアルミフレームが台頭しはじめていた。それまでのクロモリに比べて、軽さと剛性を高いレベルで両立できるアルミフレームこそ次代のロードバイクを担うと確信したヨキムは、それに乗ってベルギーの選手に活躍して欲しいという思いから、フレーム製造に乗り出す。
彼の先見に狂いはなく、ロードバイクはアルミフレームの時代となり、リドレーは国内チームのスポンサードを足がかりに着実に実績を残してユーザーを獲得する。そして、近年ではロットやカチューシャといった世界屈指のプロチームにバイク供給を行なうまでになり、わずか十数年で世界を代表するブランドに成長した。
リドレーが短期間でこれだけの発展を遂げたのは、柔軟な発想による先端的な自転車作りが大きな要因といえるだろう。例えば、最新のロードバイクで多用される上下異径ヘッドチューブは、同社の出世作とも言われるダモクレスがその先鞭を付けたといっても過言ではない。そして、今では珍しくない角断面のチューブも“エッジチュービング”としていち早く取り入れている。
そして、最新モデルに目を向けると、なんといってもエアロロードのノアとTTバイクのディーンに代表される空力技術だ。通常、エアロバイクは前面投影面積を小さくするため、乗り心地が悪くなる傾向がある。特に石畳の路面が多いベルギーにおいて、快適性の悪いバイクは死活問題となる。快適性を犠牲とせずにエアロダイナミクスを追求するという難題を克服するために、リドレーではオーバルコンセプト社との共同開発により、理想的な形状を導き出した。
それがノアやディーンに採用される「R-Flowジェットフォイル」テクノロジーだ。フロントフォークやシートステーにスリットを設け、フィンの役割を持たせることで、ホイールの回転時にスポークが起こす乱気流の抑制に成功し、空気抵抗削減を実現している。同時にブレード部分に設けられたスリットは、路面からの振動を分散させて乗り心地を高める効果も期待できる。
そして、空気抵抗を削減するもう1つの技術が「R-Surface」だ。これは、表面を微粒子状に加工した細いテープをフレームの一部に貼ることで層流を増加させ、空気抵抗を軽減する。
これらエアロダイナミクスへの取り組みはリドレーだけの技術であり、同社の開発に対する柔軟な姿勢があってこそ実現されたものといえるだろう。2011年モデルでは従来のディーンとノアに加え、これらの技術を搭載するディーンRS、ノアRSの2機種が新たに加わり、ラインアップが一層強化されている。
ライダーのニーズに応える豊富なバリエーション
こうした一方で、堅実なバイク作りもリドレーの大きな特徴だ。リドレーのフレームには「テスト・オン・パヴェ」のデカールが貼られ、全てのモデルは石畳の路面でテストされ、振動吸収性や堅牢性が厳しくチェックされる。軽さやエアロダイナミクスがどんなに優れていても、過酷なベルギーの路面を走る上で壊れたり、快適性を損ねたりするものは決して取り入れられない。プロ選手、ホビーサイクリスト問わず、安全かつ快適に走れるバイクこそが第一であるとリドレーは考えている。
ラインナップの多さもリドレーのセールスポイントの1つだ。一見すると価格帯がかぶるように思えるラインナップ構成。しかし、リドレーが考えるバイク選びは価格以上に、ライダーのレベルと目的を第一とする。したがって、プロ選手に供給されるバイクひとつとっても、バリエーションにあふれている。
空力を重視したディーン、軽量性に秀でたヘリウム、高速巡航性と快適性のバランスに優れるダモクレス、そして軽量性と快適性を併せ持つエクスカリバーなど、レースのタイプや選手の好みに応じてバイクを選択することができる。実際に供給プロチームのバイクを見ると、かなり細かな使い分がされている。
つまり、リドレーのバイクは価格による序列というものはなく、全てがフラッグシップともいえる商品構成を誇っているのだ。
豊富なラインナップという点においては、シクロクロスバイクの品揃えが充実しているのも見逃せない。ベルギーはこの競技が世界で最も盛んな国。世界最強のフィディアを筆頭に、サンウェブといったシクロクロスの専門プロチームがリドレーを駆っている。リドレーはロードバイクのみならず、シクロクロスの世界でもリーディングメーカーとして知られている。
最先端の性能を積極的に取り入れる柔軟性な開発能力に加え、豊富なバリエーションを揃えるリドレー。生産性や在庫のリスクだけを考えれば決してデメリットも少なくない。それを行ない続けるのは、ヨキムがアルミフレームを製作することを決意した「優れたバイクに乗って活躍してほしい」という、ただ1つの思いに過ぎない。理想を追いかけ、厳しいレース環境に鍛えられ、リドレーはこれからもライダー本位のバイク作りを続けて行く。
リドレー2011ニューモデル ホビーライダーたちのインプレッション
ロードレースやタイムトライアル、そしてシクロクロスなどコンペティションモデルにおいて幅広いラインナップを誇るリドレー。2011年に新たにモデルチェンジするバイクを中心にバイクジャーナリスト吉本司と読者モデル3人が乗り比べを行った。異なる脚質、レベル、好みを持つ4人は、果たして何を感じ取るのだろう?リドレー2011モデル インデックス
ROAD
圧倒的な空気抵抗軽減を誇るオールラウンダー
NOAH
エアロダイナミック形状ながら1,075gと軽く、山岳もこなせるオールラウンドフレーム。流体力学に焦点をあて、OVAL CONECT社との共同開発により作り出された「R-Flowジェットフォイル」は、フロントフォークとシートステーに設けられたスリットに、「R-Surface」はヘッドチューブ/ダウンチューブ/シートチューブに貼られた微粒子のテープに代表される技術だ。これらの技術で得たNOAHの空力特性は、スプリント時において2km/hの優位性を持つ。
また、上下異径のヘッドパーツを採用することでヘッド周りの剛性を上げ、ハンドリング性能を向上。50、40、30トンのカーボン素材を適材適所に使い分ける事で、走りの軽さとともに振動吸収性も高めている。
また、上下異径のヘッドパーツを採用することでヘッド周りの剛性を上げ、ハンドリング性能を向上。50、40、30トンのカーボン素材を適材適所に使い分ける事で、走りの軽さとともに振動吸収性も高めている。
驚異的なコストパフォーマンスに優れたORIONが
フルモデルチェンジを果たし復活
フルモデルチェンジを果たし復活
ORION
一見すると2009年までのORIONを受け継ぐフレーム形状だが、ダウンチューブのボリュームを下げ、従来に比べてしなやかさを強調している。一方でチェーンステーは前作よりも外径をアップ、BBエリアの断面積も広くすることで、ハンガー部分からリヤホイールまでの剛性アップしパワー伝達効率が向上した。
そして前作のORIONで特徴になっていたT字断面のトップチューブは、新たに五角形の断面になり、しなやかさを増しながら必要な剛性レベルが確保されている。さらにシートステーはモノステーに変更され、チューブ自体の外径も細くすることで、より振動吸収性能を向上させている。
そして前作のORIONで特徴になっていたT字断面のトップチューブは、新たに五角形の断面になり、しなやかさを増しながら必要な剛性レベルが確保されている。さらにシートステーはモノステーに変更され、チューブ自体の外径も細くすることで、より振動吸収性能を向上させている。
2009年イタリアチャンピオン、
フィリッポ・ポッツァートがこよなく愛したバイク
フィリッポ・ポッツァートがこよなく愛したバイク
DAMOCLES ISP
RIDLEYの代名詞「エッジチュービング」を採用するDAMOCLES ISP。スプリンター向けの味付けがなされたオールラウンダーモデルだ。ダウンチューブのヘッドチューブ側を縦に変形させヘッドチューブとの接合部分を増やすことで剛性を上げ、BB側は横へ変形させ剛性を上げることで、各部分にかかる力を推進力に変える。
カーボン素材とシートチューブのみでチェーンステー、BBエリアをモノコック製法で軽量化し、その他はチューブtoチューブ製法を用いることにより強靭な安定感と走行性を誇っている。また、リアエンドはアルミ削りだしにより、薄く、しかも堅いため、チェーンクリアランスが十分にとれ、トラブルの心配を減らしてくれる。加えて上下異径のヘッドパーツにより、ヘッド周りの剛性をアップ、ハンドリング性能を向上させている。
カーボン素材とシートチューブのみでチェーンステー、BBエリアをモノコック製法で軽量化し、その他はチューブtoチューブ製法を用いることにより強靭な安定感と走行性を誇っている。また、リアエンドはアルミ削りだしにより、薄く、しかも堅いため、チェーンクリアランスが十分にとれ、トラブルの心配を減らしてくれる。加えて上下異径のヘッドパーツにより、ヘッド周りの剛性をアップ、ハンドリング性能を向上させている。
リドレーの代名詞 エッジチュービングを受け継ぐエントリーバイク
COMPACT
上位モデルDAMOCLESでも採用されている、RIDLEYの代名詞エッジチュービングはエントリーモデルのCOMPACTにも受け継がれている。7000系アルミをハイドロフォーミングを用いてエッジチューブフレームに仕上げられたCOMPACTは、ヘッドチューブ側を縦に、BBエリア側を横に変形させ、溶接設置面を多く確保し、直進安定性、走りの軽さを生み出している。
直線的に伸びるシートステーは、三角形に近い断面に加工されたチューブが採用され、シャープな加速と乗り心地がバランスよく加味されている。扁平タイプでわずかなアールが与えられたエアロ形状のフロントフォークは振動吸収性も高く、乗り心地の向上に大きく貢献。エントリーモデルながら細部にまでRIDLEYのテクノロジーが注ぎ込まれたモデルだ。
直線的に伸びるシートステーは、三角形に近い断面に加工されたチューブが採用され、シャープな加速と乗り心地がバランスよく加味されている。扁平タイプでわずかなアールが与えられたエアロ形状のフロントフォークは振動吸収性も高く、乗り心地の向上に大きく貢献。エントリーモデルながら細部にまでRIDLEYのテクノロジーが注ぎ込まれたモデルだ。
TT
シクロクロス
インプレライダーのプロフィール
提供:JPスポーツグループ 企画/制作:シクロワイアード