春のクラシックシーズンが終わると、いよいよグランツールが立て続けに開催されるシーズン最盛期へ。5月のジロ・デ・イタリア、6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネやツール・ド・スイス、そして7月のツール・ド・フランスに至る怒濤の3ヶ月をプレイバック!

5月

逃げグループを率いる別府史之(オリカ・グリーンエッジ)逃げグループを率いる別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Riccardo Scanferla「ピンク色のレース」と呼ばれる「コルサローザ」ことジロ・デ・イタリアは、史上初めて北欧デンマークで開幕した。

ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla序盤戦を盛り上げたのは、プロローグを制したアメリカのテイラー・フィニー(BMCレーシングチーム)をはじめ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)ら、英語圏出身選手たち。2年連続出場の別府史之は、チームメイトのマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)のスプリント勝利をお膳立て。チームメイトをアシストし、自身も第7ステージで逃げた別府は、2年連続ジロ、そして3度目のグランツール完走を果たしている。

チームタイムトライアルで優勝し、総合争いにおいて一歩リードしたのはガーミン・バラクーダ(現ガーミン・シャープ)。ライダー・ヘジダル(カナダ)が獲得したマリアローザを、聖地アッシジで優勝したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が奪い取り、その5日後にはヘジダルが奪い返すという展開に。

コルティーナ・ダンペッツォアルペ・ディ・パンペアーゴステルヴィオ峠にゴールするドロミテステージで再びリードしたのはロドリゲス。しかししかし、ミラノでの最終個人タイムトライアルで逆転が起こり、ヘジダルがカナダ人初のグランツール総合優勝に輝いた。

アメリカ最大のステージレースであるツアー・オブ・カリフォルニアでは、頂上ゴールを制したロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が総合優勝。ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が最終ステージを含む圧巻の5勝をマークした。


6月

ステージ優勝と総合ジャージを手に入れた伊藤雅和(愛三工業レーシング)ステージ優勝と総合ジャージを手に入れた伊藤雅和(愛三工業レーシング) photo:Sonoko TANAKAアジアでは愛三工業レーシングチームが活躍。インドネシアで開催されたツール・ド・シンカラ第1ステージで伊藤雅和が優勝し、リーダージャージを獲得。伊藤はその後3日間リーダージャージを着続けた。さらに第6ステージでは中島康晴が逃げ切り優勝を飾り、平井栄一(日本ナショナル)がステージ2位。総合では山本元喜(日本ナショナル)が8位に入った。

ツール・ド・ロマンディでゴールスプリントを制したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ツール・ド・ロマンディでゴールスプリントを制したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiツール・ド・フランスの準備レースとして知られる4月のツール・ド・ロマンディで総合優勝したのは、虎視眈々とマリアローザを狙うブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)だ。持ち前のスピードでスプリント勝利を飾り、最終山岳タイムトライアルでステージ2勝目&逆転総合優勝。順調な仕上がりを見せた。

ウィギンズの好調ぶりに6月に入っても陰りを見せず、いわゆるツール前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、土井雪広(アルゴス・シマノ)が逃げた第1ステージで早速総合首位に立つと、タイムトライアルで圧勝。チームスカイが鉄壁の走りで、ウィギンズの大会連覇を演出した。

もう一つの前哨戦ツール・ド・スイスでは、ツール参加を表明している怪童ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が脅威のステージ4勝をマークし、ポイント賞を獲得。終盤の難関山岳ステージでフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)の攻撃を抑え込んだルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)が総合優勝に輝いた。


7月

敢闘賞のプレートを手に笑顔を浮かべる新城幸也(ユーロップカー)敢闘賞のプレートを手に笑顔を浮かべる新城幸也(ユーロップカー) photo:Makoto Ayanoツール・ド・フランスはファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)の最速タイムでスタートした。ベルギー・リエージュで開幕し、カンチェラーラがマイヨジョーヌを着てフランスへ。結局カンチェラーラは1週間にわたって総合リーダーとして走り続けた。

ハルクのポーズ?でゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ハルクのポーズ?でゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vos第1週目で存在感を見せたのは、ステージ3勝を飾ったペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)、そして第4ステージで逃げて敢闘賞を獲得した新城幸也(ユーロップカー)だ。サガンは初出場ながらマイヨヴェール(ポイント賞)獲得を果たしている。

表彰台に上がったブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)表彰台に上がったブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos4月に手首を骨折しながらも、3度目のツール出場を果たした新城。日本人選手として初めてゴール後の表彰台に上がり(敢闘賞獲得は別府に続く2人目)、その後も何度も何度も逃げを試みた。超級山岳グラン・コロンビエール峠を越える第10ステージではトマ・ヴォクレール(フランス)と一緒に逃げてステージ優勝をアシスト。さらにピレネー山脈を駆ける第16ステージで再びヴォクレールと逃げ、超級山岳オービスク峠でエースを発射するなど大活躍。ヴォクレールは最終的にマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を獲得した。

ゴール前で飛び出したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ゴール前で飛び出したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto Ayano総合争いは、下馬評通り、チームスカイがリードする形で進んで行く。山岳初戦の第7ステージではクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が優勝し、ウィギンズがマイヨジョーヌを獲得。ウィギンズは第9ステージ第19ステージの個人タイムトライアルで連勝し、山岳ステージではライバルのアタックを封印する。

安定感抜群のウィギンズは、チームメイトのフルームを3分21秒、最後まで抵抗し続けたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)を6分19秒引き離してパリにフィニッシュ。実に2週間にわたってマイヨジョーヌを着続け、イギリス人選手として初めてシャンゼリゼの表彰台中央に登った。

また、チームメイトのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)がシャンゼリゼステージで4年連続優勝。ステージ優勝は3勝に終わったが、カヴェンディッシュは山岳ステージでウィギンズのために働くなど、選手として新たな一面を披露。2013年、カヴェンディッシュは自身のチャンスを狙うためにオメガファーマ・クイックステップに移籍する。

イギリス人の活躍が目立った第99回ツール・ド・フランス。その一方で、地元フランスの26歳ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)や22歳ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)がそれぞれ山岳ステージで優勝し、総合8位と総合10位でフィニッシュ。そして24歳のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)が総合5位&新人賞に輝くなど、若手の活躍も目立った。

text:Kei Tsuji

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