ジャイアントのレーシングロードモデルラインナップである「TCR」シリーズ。その中で中堅モデルに当たるのが今回のテストバイクCOMPOSITE 0(コンポジット ゼロ)だ。上級モデルのテクノロジーを踏襲しつつ、リーズナブルな価格を実現したこのマシンに迫っていく。

ジャイアント TCR COMPOSITE 0ジャイアント TCR COMPOSITE 0 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

言わずと知れた、世界ナンバーワンの規模を誇る巨大台湾ブランド、ジャイアント。数多くのヨーロッパ/アメリカブランドのOEM生産を手がけることで規模を拡大したことはあまりにも有名だ。その過程で培った技術は、もちろん自社ブランドを纏うバイクにも投入される。

そのロードバイクラインナップはピュアレーシングモデルのTCRシリーズと、振動吸収性を高めたエンデュランス系モデルのディファイ、そして女性用モデルのアヴェイルと計3つのカテゴリーに分けられる。今回のテストバイクは、TCRシリーズのミッドレンジフレームに、アルテグラDi2を搭載するコンポジット ゼロだ。

シートピラーはエアロ形状の専用パーツを用いる。フレームとのデザインも合わせているシートピラーはエアロ形状の専用パーツを用いる。フレームとのデザインも合わせている シートチューブは上位モデルより受け継ぐ涙滴状断面でエアロを求めたシートチューブは上位モデルより受け継ぐ涙滴状断面でエアロを求めた 細身ながら十分な剛性を確保したフロントフォーク細身ながら十分な剛性を確保したフロントフォーク


電動コンポーネントを奢りながら、完成車で346,500円という圧倒的なコストパフォーマンスを実現するコンポジット ゼロ。しかし上級モデル譲りのテクノロジーを搭載することや、アッセンブリーパーツにも妥協は見られず、ロードバイク入門機にフルカーボンという選択肢を加える「世界戦略モデル」としての地位を築く。

使用されるカーボンは、T600グレード。最高峰モデルのTCR ADVANCED SLに使用されるカーボンからは2つグレードを下げるが、価格以上の軽量性と高剛性、信頼性を手に入れている。上位モデルに採用されるモノコック工法に準じながらも化粧カーボンを採用しない点も、ライディングの本質的な性能に影響を与えずにコストダウンを狙ったポイントだ。

トップチューブからシートステーは緩やかなラインでつながる。上位モデルと大きく異るポイントだトップチューブからシートステーは緩やかなラインでつながる。上位モデルと大きく異るポイントだ 上下異型テーパードヘッドチューブを採用。トップチューブは三角形断面だ上下異型テーパードヘッドチューブを採用。トップチューブは三角形断面だ


薄く幅広で、空力を求めた形状をとるダウンチューブ薄く幅広で、空力を求めた形状をとるダウンチューブ ヘッド周りはボリューム感高く、剛性を追求しているヘッド周りはボリューム感高く、剛性を追求している


レースビギナーをターゲットとしたモデルだが、積極的に新規格を各部に取り入れていることもトピックスの一つ。ややスリムなBBシェルにはプレスフィットBB86方式のBBがインストールされ、ヘッドはベアリング径1-1/8"-1-1/4"の上下異型テーパードヘッドチューブを採用する。

後端をえぐったエアロ形状のシートチューブや専用シートポストこそ上位モデルより引き継がれるが、全体のシェイプは同じTCRシリーズながら大きく異る。トップチューブは縦方向に湾曲させ、各チューブのボリュームを増しているなど、快適性と安定感を高める設計意図が見て取れる。ジオメトリーは上位モデルに比べて若干トップチューブが短く、リラックスしたポジションが可能だ。

チェーンステーは、内側が盛り上がる複雑なラインを描くチェーンステーは、内側が盛り上がる複雑なラインを描く ステムやハンドルはジャイアントのオリジナルパーツとし、統一感を図るステムやハンドルはジャイアントのオリジナルパーツとし、統一感を図る


ホイールやハンドルなどは全てジャイアントブランドでまとめられ、コストパフォーマンスの向上と共に全体のマッチングを図っていることもポイントだ。サドルは定評の高いアリオネ、シートクランプはダブルボルトのものを使うなど実用性も高い。Di2対応フレームではないためにコード類が外装となる点は、製造コストを考えれば妥当といえるだろう。

ストレート形状を採用したシンプルなバックステーストレート形状を採用したシンプルなバックステー ブレーキアーチはモノステーとし、全体の剛性感を高めているブレーキアーチはモノステーとし、全体の剛性感を高めている シートチューブ後端をえぐり、空力を追求したシートチューブ後端をえぐり、空力を追求した


コンポジット ゼロは、上級者を納得させる高い走行性能と、ロードレースビギナーをサポートするパーツアッセンブルながら破格のバリュープライスを実現した一台。このバイクをテストライダー両氏がどう評価するのか興味は尽きない。さっそくインプレッションに移ろう。





―インプレッション

「ダンシングの振りの軽さが際立つ。不安感無く長く付き合える」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)

このバイクの一番良いのはダンシングが非常に軽いこと。恐らくフレームの形状やヘッド周りの剛性の高さから来る軽さがあって、左右に振った際にとても軽快なフィーリングがあります。最上級モデルではありませんので重量が軽い訳ではないのですが、乗って分かる「上りでの軽さ」が感じられました。

しかしその一方で、それ以外ではとても落ち着いていてマイルドな性格があります。シッティングやダウンヒルでも挙動が安定しているため、あまり気を遣うシチュエーションがありませんでした。全体的な性能バランスがとれていながらも、ダンシングの軽さがあるバイクですね。

「ダンシングの振りの軽さが際立つ。不安感が無く長く付き合える」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)「ダンシングの振りの軽さが際立つ。不安感が無く長く付き合える」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)

そのため、リズム良くダンシングを多用して、長い上りを走るのが好きなライダーにはベスト。ギアがどこに掛かっていても軽快感は変わらないため、スピードを付けたまま上る短い登坂も得意だと言えます。ビギナーだと「ふらつき」とも取れますが、慣れの範疇に収まっています。

先ほども述べましたが、下りでの安定感や、荒れた路面で顕著に突き上げを食らうこともありませんね。狙ったラインも良い感じでトレースできますし、恐らくその性格はカーボンの素材とジオメトリーから出ていると想像できました。ビギナー向けですが、乗ってみるとカーボンの肉厚な感じも受けません。

ロングライドにも向いていますが、レースに持ち込んでも全く不安感はありません。性格的にダンシングを多用するようなクリテリウムや、テクニカルなサーキットコースだと真価を発揮できるでしょう。集団内を走っている際は高い安定感があることから不安も無いと思います。

ダンシングの軽さをより引き出すなら、軽くて剛性の高いホイールが良いでしょう。あまり軽量ホイールだとふらつきが出ると思いますので、例えばカンパニョーロのシャマルなどはベストかもしれませんね。

価格以上の走りをしてくれるフレームですので、コンポーネントのアップグレードも見込めると思います。アッセンブルに関しては唯一コードをテープで抑えているのが気になりますが、コストを考えれば仕方ないかもしれませんね。造りもしっかりしていて不安感が無いのでずっと長く付き合えるバイクだと感じました。


「ビギナーモデルながらガッチリと硬派な乗り味のバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

かなりがっちりとしたバイクだなという第一印象を持ちました。剛性感が高く、エントリーモデルと言えど決してコンフォートに振られているバイクではありません。性能バランスは取られているため、トルクを掛けて踏み込んだ際にどこかがよれたり、コーナリングでぶれたりすることもありません。結構硬派な乗り味だと思います。

もちろんアルミバイクに比べれば振動吸収性は高くて快適です。ジオメトリーもコンフォート系に味付けされていますので、少し楽なポジションでロングライドを楽しむライダーに向けたバイクだと感じます。ハンドリングに関しては煮詰められたイメージで、あまり癖がありません。フロントフォークは細身ですがしっかりしていて、上り坂で前荷重になった際にも引っかかるようなイメージがありませんでした。

「ビギナーモデルながらガッチリと硬派な乗り味のバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「ビギナーモデルながらガッチリと硬派な乗り味のバイク」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

対してリアバックやBB周りはかなりガッチリとして信頼感が高い一方、荒れた路面を飛ばしていくと雑味が出ます。走行ラインや路面のコンディションに対して常に集中しないといけないのかな、と思いました。デメリットとするとその辺りでしょう。

ハンドリングとペダリングのリズムが取りやすいので、ギアを掛けてスプリントした際の掛かりやスピードの伸びも問題無いと言えます。引きずるようなリアの重たさもありません。ある程度高めのケイデンスで走らせるのが一番適しているでしょう。コンパクトギアのアッセンブルは正しいですね。

全体的にどっしりした雰囲気ですので、下りでの安定感は高く、細かい操作を必要としないライダーなら問題ありません。その点も踏まえてやはりビギナーに適しているでしょう。上りは軽いギアで回していくのが適していますね。長い上りでのペース維持は得意だと感じます。

このアッセンブルで34万円なら非常にお求めやすいと思います。ただビギナーが買うとなると、少し値段設定は高いですね。105アッセンブルで16万円の下位グレード(TCR COMPOSITE 2)がありますが、フレームの性格を踏まえると本当にビギナーにお薦めなのはそちらと言えるかもしれません。こちらはDi2モデルということで、その中でもよりリッチな走りを求める方に向くバイクですね。Di2を使うことがまず条件で、できるだけ買いやすいモデルを探している人には最高です。


ジャイアント TCR COMPOSITE 0ジャイアント TCR COMPOSITE 0 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp


ジャイアント TCR COMPOSITE 0
サイズ:430(XS)、 465(S)、 500(M)、 535(ML)mm
重 量:7.8kg (465mm)
フレーム:GIANT Composite、 VECTOR Composite Seat Pillar
フォーク:GIANT Composite、 Full Composite OverDrive Column
コンポーネント:シマノ アルテグラDi2
チェーン:KMC X10
ホイール:GIANT P-SL1
タイヤ:GIANT P-R3 700x23C
価 格:346,500円(税込)





インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。

OVER-DOバイカーズサポート


諏訪孝浩諏訪孝浩 諏訪 孝浩(BIKESHOP SNEL)
バイクショップSNEL代表。自転車歴26年、過去にオランダのアマチュアチームに3シーズン在籍しクリテリウムに多数参戦。オランダクラブ内クリテリウム選手権3位など。
2008年3月に東京都大田区にショップをオープン。オランダで色々なショップを見てきた経験を元に、独自のセンスでショップを経営中。主にシクロクロスをメインに参戦し、クラブ員の約半数がシクロクロスに出場している。

BIKESHOP SNEL


ウェア協力:biciBISLEY 


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano
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