スペイン北部、ナバラ州のパンプローナで開幕するブエルタ・ア・エスパーニャ第67回大会。頂上ゴールが10ステージも登場し、「山岳の比重が極めて高い」というのが専らの前評判。ここではバスクやアンドラの山岳を駆ける前半ステージのコースを紹介する。

8月18日(土) 第1ステージ
パンプローナ〜パンプローナ 16.5km(チームTT) →コースマップ


第1ステージ・コースプロフィール第1ステージ・コースプロフィール image: Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ第67回大会は、スペイン北部、ナバラ州のパンプローナで開幕する。有名な「牛追い祭り(サンフェルミン祭)」の開催地として、そしてツール・ド・フランス5勝のミゲール・インドゥラインの生誕地として知られる人口20万人の州都だ。今年も3週間の闘いはチームタイムトライアルで始動する。カスティーリョ広場をスタートする市街地コースはほぼ真っ平ら。終盤にかけて「牛追い祭り」と同じコースを走り、闘牛場の中にゴールする。

出走する9名の中で、5番目にゴールラインを駆け抜けた選手のタイムがチーム成績となる。ステージ優勝チームの先頭でゴールした選手に、栄えあるマイヨロホ(レッドジャージ)が授与。山岳決戦を見据えてクライマーを揃えるチームは苦戦することになりそうだ。


8月19日(日) 第2ステージ
パンプローナ〜ビアナ 181.4km →コースマップ


第2ステージ・コースプロフィール第2ステージ・コースプロフィール image: Unipublic大会主催者は合計6ステージを「平坦ステージ」にカテゴライズしているが、現実的にスプリンター向きのステージはそれよりも少ない。数少ないチャンスを巡って、スプリンターチームは早速激しいバトルを繰り広げることになりそうだ。

ナバラ州南部を駆ける181.4kmコースには、3級山岳が一つ設定されているものの、重量級スプリンターにも問題のない難易度。ワイン畑が広がる丘陵地帯を抜け、初めてブエルタのゴールを迎え入れるビアナに向かう。3級山岳で今大会最初の山岳賞ジャージ着用を懸けて争った逃げ選手たちは、よほどのアクシデントがない限り、スプリンターチームに飲み込まれる運命にあると言える。十中八九、勝負は大集団スプリントに持ち込まれるだろう。


8月20日(月) 第3ステージ
ファウスティーノV〜エイバル(アラーテ)155.3km(頂上ゴール) →コースマップ


第3ステージ・コースプロフィール第3ステージ・コースプロフィール image: Unipublic主催者が用意した頂上ゴールは合計10ステージ。昨年久々の登場に沸いたバスク州に、ブエルタは再び脚を踏み入れる。2年連続スタート地点を迎え入れるファウスティーノVのワインセラーを発ち、緑豊かなバスクの山岳地帯を縫うように北上する。

レース序盤から2級、3級、3級のカテゴリー山岳を立て続けにクリア。さらにゴールの僅か2km手前で1級山岳アラーテ峠を越える。オレンジ色に身を包んだバスクファンの声援を受けながら、総合狙いのオールラウンダーたちが躍動するだろう。コースは大会最短クラスの155kmだが、大会3日目にして今大会のボスが誰なのか明らかになるかも知れない。


8月21日(火) 第4ステージ
バラカルド〜エスタシオン・デ・バルデスカライ 160.6km(頂上ゴール) →コースマップ


第4ステージ・コースプロフィール第4ステージ・コースプロフィール image: Unipublicブエルタはバスク州に別れを告げ、ラ・リオハ州に向かう。レース前半に登場する1級山岳オルドゥニャ峠は、バスク一周レースに登場する定番の登りだが、ゴールまで100km以上離れているため、勝負どころにはならない。

ゴール地点は標高1550mの1級山岳バルデスカライ・スキーリゾート。登坂距離13.4km・標高差695m・平均勾配5.2%の登りでビッグネームが再び動くだろう。この1級山岳は登り始めの勾配がきつく、頂上に向かって緩やかになる。ゴール前はほぼフラット。難易度としては低いが、そのぶんハイスピードな展開となるだろう。ブエルタに登場するのは22年ぶり5度目で、前回登場した際にはショーン・ケリーやペドロ・デルガドが競り合った。


8月22日(水) 第5ステージ
ログローニョ〜ログローニョ 168km →コースマップ


第5ステージ・コースプロフィール第5ステージ・コースプロフィール image: Unipublic2日間辛抱を強いられたスプリンターたちは、ワインの産地として有名なラ・リオハ州の州都ログローニョを発着する第5ステージで、再び輝きを放つ。点から点へのラインレースではなく、グランツールにしては珍しく周回コースが用意された。

選手たちは21kmの周回コースを8周。緩やかな登りを含むが、主催者は「完全にフラットな一日」と謳っている。ログローニョの中心地に向かって、スプリンターチームがトレインを組んで突っ込むはず。今から5年前、ログローニョがゴール地点として最後に登場した際の勝者はオスカル・フレイレ(スペイン)だった。


8月23日(木) 第6ステージ
タサソナ〜ハカ 175.4km(頂上ゴール) →コースマップ


第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール image: Unipublicブエルタはフランス国境にまたがるピレネー山脈に挑む。とは言っても山岳はラスト25km手前に限定されており、それまではひたすらフラットだ。まずは勾配の緩い3級山岳オロエル峠をラスト13km地点でクリア。そこから一旦下り、続いて標高1050mの3級山岳ハカを駆け上がってゴールを迎える。息をつかせないハイスピードな展開になるだろう。

いずれもカテゴリーは低いが、最後の3級山岳ハカは8%ほどの勾配が続くパンチの効いたもの。最大勾配は14%をマークする。ピュアクライマーだけでなく、アルデンヌ・クラシックで活躍するパンチャー系の選手にもチャンスがある。サスペンスとサプライズに溢れたレースになるだろう。


8月24日(金) 第7ステージ
ウエスカ〜アルカニス/モーターランドアラゴン 164.2km →コースマップ


第7ステージ・コースプロフィール第7ステージ・コースプロフィール image: Unipublicアラゴン州を南下する一日。同地方特有の風が吹けば集団が分裂する可能性も有るが、コースは基本的に平坦基調。スプリンターが鼻息を荒げて勝利を狙ってくるだろう。早くもスプリンターに残されたチャンスは少なくなってきた。

ゴール地点は、MotoGPやルノーワールドシリーズの開催地として知られるアルカニスのモーターランド・アラゴン。2009年に開業した全長5.3kmのサーキットがブエルタに登場するのは初めて。ラスト4.3kmでサーキットに入り、緩いアップダウンをこなす。ゴールに向けて突進するスプリンターチームの闘いに注目だ。


8月25日(土) 第8ステージ
リェイダ〜アンドラ/コリャーダ・デラ・ガリーニャ 174.7km(頂上ゴール) →コースマップ


第8ステージ・コースプロフィール第8ステージ・コースプロフィール image: Unipublicカタルーニャ州のリェイダから山岳地帯に向けて北上。徐々に標高を上げていき、135km地点で国境を越えてアンドラ公国に入る。終盤に登場する2つの山岳で総合は動くだろう。

まずは2級山岳コメーリャ峠をクリア。そこから休む間もなく1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャに挑む。アンドラの山岳と言えば、標高がありながらも勾配が緩い峠のイメージが強いが、ブエルタ初登場のコリャーダ・デラ・ガリーニャは急勾配。登坂距離7.2kmで標高差580m。平均勾配は8%で、頂上の手前4kmは10%近い勾配が続く。前半戦最大の山場であり、そろそろ本命がマイヨロホを手にする頃だ。


8月26日(日) 第9ステージ
アンドラ〜バルセロナ 196.3km →コースマップ


第9ステージ・コースプロフィール第9ステージ・コースプロフィール image: Unipublicパンプローナでの開幕から9日間ぶっ通しで走り続けた選手たちが、カタルーニャ州の州都、ならびにスペイン第二の都市バルセロナを目指す。隣国アンドラからカタルーニャ州に入り、地中海に向けて徐々に標高を下げる。途中3級山岳クラーラ峠を越え、キリスト教の聖地モンセラート山を横目に見て、賑やかな喧噪のバルセロナへ。

ゴール手前の3級山岳モンジュイックの丘がこの日一番の勝負どころだ。バルセロナの街を見下ろす標高165mの丘に向かって、登坂距離1.1km・平均勾配8.1%のヒルクライム。ゴール3.4km手前の頂上から一旦下り、ラスト1kmから登り返してバルセロナ五輪スタジアム横にゴールする。登りに強い軽量スプリンター、もしくはパンチャー向きのコースレイアウトだ。


8月27日(月) 休息日


8月28日(火) 第10ステージ
ポンテアレアス〜サンシェンショ 190km →コースマップ


第10ステージ・コースプロフィール第10ステージ・コースプロフィール image: Unipublic第9ステージを終えた選手たちはすぐに空路でイベリア半島を横断。地中海沿いのバルセロナから大西洋に近いポンテアレアスに移動する。その距離じつに1150km。大会スタッフやチームスタッフにとって、休息日は移動日を意味する。

そんな大移動の翌日は、スプリンター向きの平坦ステージ。複雑に入り組んだ美しい湾(リアス式海岸)を縫うように走り、海沿いの街サンシェンショにゴールする。雨が降りやすく、霧が発生しやすいガリシア州の沿岸部で勝つのはスプリンターか、それとも逃げ切り狙いのルーラーか。翌日の個人タイムトライアルに備え、総合上位陣は集団内でこのガリシアステージをやり過ごす。


8月29日(水) 第11ステージ
カンバドス〜ポンテベドラ 39.4km(個人TT) →コースマップ


第11ステージ・コースプロフィール第11ステージ・コースプロフィール image: Unipublic2012年大会唯一の個人タイムトライアルが、ちょうど折り返し地点の第11ステージで行なわれる。山岳の比重が高いブエルタにおいて、TT系オールラウンダーがリードを広げる貴重なチャンス。レース中盤に登坂距離10kmの3級山岳が設定されているが、平均勾配は4.4%。TTスペシャリストたちはアウターを踏んで登りを突き進むだろう。

主催者による優勝予想タイムは52分前後。2年連続ゴールを迎え入れるポンテベドラで、総合成績に今一度シャッフルがかけられる。総合を狙うクライマーたちはタイムロスを最小限に抑えなければならない。

text:Kei Tsuji

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