アメリカ、サンディエゴで行われた新生女子チーム「スペシャライズド・ルルレモン」のプレゼンテーションと合宿の様子をお伝えする。チーム名称は変わるが、最強を誇るHTCハイロードの継続チームだ。

トレーニング合宿が行われたサンディエゴの郊外、カールスバッドのホテルトレーニング合宿が行われたサンディエゴの郊外、カールスバッドのホテル photo:Sonoko TANAKA来シーズンから始動する女子チーム「スペシャライズド・ルルレモン」が、12月中旬にアメリカ西海岸・サンディエゴの郊外でトレーニング合宿を行った。2週間の日程のうち、最後の3日間を各国メディアに公開。新生チームがベールを脱ぐと同時に、彼女たちのトレーニングに同行することができた。

UCI登録の女子チームって?

男子チームはご存知のとおり、プロ、プロコンチネンタル、コンチネンタルと3つのディビジョンに分類されているが、女子チームは1つのカテゴリーで活動している。つまりUCI登録をしているかどうかで、2011シーズメディア向けに行われたチームプレゼンテーションメディア向けに行われたチームプレゼンテーション photo:Sonoko TANAKAンはヨーロッパや北米を中心とした28チームがUCIに登録されていた。

世界選手権やオリンピックを除くと、女子ロードレースの頂点は全8戦(2012シーズン)で競われるワールドカップになる。男子のワールドツアーに当たるもので、これに出場できるのはUCIチームとナショナルチームのみ。そのほかにも2月のツアー・オブ・カタールや、春のベルギーでのクラシックレースなど、世界各国でたくさんのワンディレースやステージレースが開催され、プロの女子選手は男子選手同様に世界中のレースを転戦する生活を送っている。

日本人の女子選手は、過去に沖美穂選手がイタリアのUCIチームで活躍していたが、現在UCIチームに所属する選手は残念ながら1人もいないのが現状だ。

真っ青な空のアメリカ西海岸でトレーニングを行うスペシャライズド・ルルレモン真っ青な空のアメリカ西海岸でトレーニングを行うスペシャライズド・ルルレモン photo:Sonoko TANAKA


HTC・ハイロードの女子チームが生まれ変わった

今回誕生したスペシャライズド・ルルレモンの母体になっているのは、2011シーズンのHTC・ハイロードの女子チーム。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)など多くのスター選手を抱えていた同チームだったが、スポンサーの撤退によりチームは解散。男子選手はそれぞれ新しいチームに移籍したが、女子チームは新しいスポンサーを獲得できたため、チームは解散せずに残ったという経緯だ。そのため大部分の選手やスタッフはHTC・ハイロードからのメンバーになっている。

笑顔で選手と話すチームオーナーのクリスティ・スクリンジャー笑顔で選手と話すチームオーナーのクリスティ・スクリンジャー photo:Sonoko TANAKAそして、そのチームが、スペシャライズドとカナダのバンクーバーを拠点とするヨガやランニングのウエアブランド、ルルレモン・アスレチカ、2つのメインスポンサーを迎えて、より女性に特化したチームとして新しく生まれ変わった。

チームオーナーのクリスティは「私たちは本当に幸運だったの」と話す。彼女はHTC・ハイロードのマネージメントや広報を務めていたスタッフで、元オーストラリアのロードレースチャンピオン。「もちろん、チームを存続させることができたという意味でもそうだし、2つの素晴らしい会社、素晴らしいバイクとアパレルが私たちをバックアップしてくれることを嬉しく思っているんです」と続けた。


世界屈指の女性用モデル スペシャライズド「S-Works Amira SL4」

チームが乗るのはスペシャライズド「S-Works Amira SL4」。昨シーズンからの継続となるが、「このバイクに乗れるから、このチームを選んだの!」とまで選手たちから絶賛されるマシンだ。FACT 11rカーボンを使用した女性専用設計で、チーム仕様としてシマノDi2、HEDのホイールなどがアッセンブルされている。

スペシャライズド・ルルレモンのチームバイク、スペシャライズド「S-Works Amira SL4」スペシャライズド・ルルレモンのチームバイク、スペシャライズド「S-Works Amira SL4」 photo:Sonoko TANAKA

コンポーネントはシマノDi2、SRMも使われているコンポーネントはシマノDi2、SRMも使われている photo:Sonoko TANAKAチームキットに合わせてデザインされたチームカラーフレームチームキットに合わせてデザインされたチームカラーフレーム photo:Sonoko TANAKA

サドルはスペシャライズド「Women's Oura Expert Gel 」サドルはスペシャライズド「Women's Oura Expert Gel 」 photo:Sonoko TANAKAタイヤはコンチネンタルを採用、トレーニング合宿ではGPアタックを使用していたタイヤはコンチネンタルを採用、トレーニング合宿ではGPアタックを使用していた photo:Sonoko TANAKA


急成長ルルレモン・アスレチカのアパレルにも注目

朝は1時間のヨガから始まる朝は1時間のヨガから始まる photo:Sonoko TANAKAもう1つの冠スポンサー、ルルレモン・アスレチカは北米で圧倒的な人気を誇るヨガやランニングウエアのブランドで、現在、同社はサイクリング向けのウエアを開発中。チームをサポートする一番の目的は「トップの女性アスリートからのフィードバックを得られること」だと言う。黒と白の個性的なチームジャージはルルレモンのデザイナーによるものだ。

さらにルルレモンは、BMCレーシングチームのスポンサーでもある。どちらのチームでも、ルルレモンはチーム合宿にヨガのインストラクターを派遣し、毎朝約1時間、ヨガのプログラムを提供している。「ヨガをやることで、身体的にも精神的にもいい効果が得られているとBMCレーシングチームからは喜ばれているんですよ」と担当者。

スタイリッシュで機能的。素材にこだわり、身体の動きに自然と馴染む同社のアパレルは、ヨガやランニング以外でも、すべてのシーンで心地よさを提供してくれる。現在、日本に直営店はないが、オンラインストアから購入可能。(ルルレモンHP http://www.lululemon.com/

合宿最終日は、サンディエゴの郊外のショップにチームが招かれ、100ドル相当のギフトカードがプレゼントされ、超過分は15%オフという条件で、ショッピングを楽しむアクティビティが用意された。「すでに山のようなアパレルを彼女たちには渡しているんだけどね」と担当者は苦笑いを浮かべたが、買い物をする選手たちの目は真剣そのもの。「レシートは怖いから見たくないの。あ、でもこのクレジットカード、ママのカードなんだけどね」と笑うのはオーストラリア人のクロエ。選手の女の子らしい素顔が見られた瞬間だった。


真剣に試着をするリサ・ブレンナー(ドイツ)真剣に試着をするリサ・ブレンナー(ドイツ) photo:Sonoko TANAKAルルレモン・アスレチカでショッピングを楽しむクロエ・ホスキング(オーストラリア)ルルレモン・アスレチカでショッピングを楽しむクロエ・ホスキング(オーストラリア) photo:Sonoko TANAKA


シーズン65勝、世界のタレントが集うチーム


美味しそうにケーキを食べるローレン・ラウニー美味しそうにケーキを食べるローレン・ラウニー photo:Sonoko TANAKA2011シーズン、チームは65勝を誇り、ワールドカップランキング、UCIランキングともに世界2位の結果を残している。2012シーズンは「予定されている年間110日ほどの全レースで勝ちにいく、トレーニングのためのレースはないの!」とクリスティは力強く話す。アメリカ、ドイツ、オーストラリア、スウェーデン、カナダ、オランダ、イギリス、7ヶ国から13名の優秀な選手が集まったチームにとって、最も重要なタイトルは、来季から開催される世界選手権での“チーム”タイムトライアルだという。彼女たちは世界トップの女子選手であることに間違いはないが、いつも笑顔が絶えず、バイクから離れると、非常にかわいらしい印象を受けるのも事実だ。


イナヨーコ・テウテンベルグ(ドイツ)イナヨーコ・テウテンベルグ(ドイツ) photo:Sonoko TANAKAキャプテンは通算100勝を誇るドイツ人選手

チームのキャプテンを務めるのは、ドイツチャンピオンのイナヨーコ。37歳、ベテランの彼女は通算100以上という勝利数を誇るスプリンターで、クラシックレースも得意とする。「数え切れないほどのレースを走ってきたけど、オリンピックでは成績を残せていない。前回の北京もパンクで完走できなかった。だから、ロンドンでは何としてもメダルがほしい。若い選手たちには特にテクニックを教えてきたいね」と語る、姉御肌。


カナダのスーパーアスリート、クララ・ヒューズ

アメリカTTチャンピオン、エヴリン・スティーヴンスアメリカTTチャンピオン、エヴリン・スティーヴンス photo:Sonoko TANAKAさらに注目を集めているのが、カナダのスター、クララ・ヒューズの加入だ。彼女は夏季と冬季(スピードスケート)どちらのオリンピックでもメダルを獲得しているスーパーアスリート(自転車競技:96年アトランタ五輪でロードレースと個人タイムトライアルで銅メダル。スピードスケート:06年のトリノ五輪で5000mで金、チームパシュートで銀、10年のバンクーバー五輪で5000mで銅メダルを獲得)。現在、タイムトライアルのカナダチャンピオンでもある。趣味は日本の版画だと話すクララはとても明るく、チャーミングな女性だ。

「チームに入らないか?という話をもらったときは本当に嬉しかったの。チームオーナーのクリスティとはかつトレーニングで先頭を走るクララ・ヒューズ(左、カナダ)トレーニングで先頭を走るクララ・ヒューズ(左、カナダ) photo : Sonoko TANAKAて同じチームで走っていたこともあるし、39歳という年齢で再びプロチームに入れることって素晴らしいでしょ?

バンクーバー五輪を最後にスピードスケートは引退して、いまは自転車競技だけ続けているの。キツすぎるのよ、スケートは!笑 来年の目標はやはりロンドン五輪。とくにタイムトライアルでベストリザルトが出せるようにトレーニングしていく予定よ。オフトレーニングとして、ウェイトリフティングやスノーシューなどもやっているけど、間違ってもスケートだけはやらないわ。笑」

また3年前までウォール街で働いていたというエヴリン・スティーヴンスはアメリカのタイムトライアルチャンピオン。そんな各国のチャンピオンクラスの選手たちと、若い才能豊かな女子選手たちでチームは構成されている。

「来年はぜひ、日本人選手もチームに迎えたいと思っているのよ」と最後に付け加えたクリスティ。さらにルルレモン・アスレチカも、日本再進出(2008年に撤退している)に強い興味を示している。チームの活躍とともに、ワールドワイドな元気な女子チームに、日本人選手が加入することを強く期待したいと思う。

フォトセッションで撮った写真はすぐにプリントアウトされるフォトセッションで撮った写真はすぐにプリントアウトされる photo:Sonoko TANAKAディナー会場で行われたフォトセッションディナー会場で行われたフォトセッション photo:Sonoko TANAKA


サンディエゴ郊外のルルレモン・アスレチカの直営店サンディエゴ郊外のルルレモン・アスレチカの直営店 photo:Sonoko TANAKAスペシャライズド・ルルレモン選手リスト
Charlotte Becker (ドイツ)
Lisa Brennauer (ドイツ)
Katie Colclough (イギリス)
Emilia Fahlin (スウェーデン)
Chloe Hosking (オーストラリア)
Clara Hughes (カナダ)
Amber Neben (アメリカ)
Loren Rowney (オーストラリア)
Ally Stacher (アメリカ)
Evelyn Stevens (アメリカ)
Ina-Yoko Teutenberg (ドイツ)
Ellen van Dijk (オランダ)
Trixi Worrack (ドイツ)


Report & Photo : Sonoko TANAKA