逃げ・追走・周回賞そしてゴールまで取った佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が桁違いの力で圧勝。2年目のツール・ド・フクオカは、走り・ブースともにパワーアップ。

国際色豊かなフクオカ

今年で2年目のツール・ド・フクオカ。これはプロクリテリウムを中心にしたクリテリウム、シティライドそしてベロタウンで構成されるイベントの総称だ。今年は11月20日(日)に行われた。

会場はアイランドシティ。エキスパートクラス会場はアイランドシティ。エキスパートクラス photo:Hideaki.TAKAGI
11月19日(土)の前夜祭は、博多港隣りのベイサイドプレイス博多で行われた。プロクリテリウム参加チームからも監督や選手たちが来場、プロ選手たちと身近に接することのできる機会に参加者は大喜び。

そして特色は韓国からの参加者が大変に多いこと。博多港から高速船ビートルで釜山との間がたった2時間55分で、気軽に行き来できる。そして大会が、アジアを代表するスポーツ観光事業を目指しているので、必然的なことだろう。

ツール・ド・フクオカは3つのイベントの総称

翌11月20日(日)がツール・ド・フクオカ当日。
まずはシティライド・フクオカ。
これは自宅を出発して自由なルートで会場のアイランドシティにたどり着くもの。途中で特典つきのチェックポイントや、エイドステーションもある。親子での参加者も。

アジアを代表するスポーツ観光事業を目指し韓国からたくさんの人がサイクリングにアジアを代表するスポーツ観光事業を目指し韓国からたくさんの人がサイクリングに photo:Hideaki.TAKAGIもちろん博多ラーメンの出店ももちろん博多ラーメンの出店も photo:Hideaki.TAKAGI



高島宗一郎福岡市長の愛車はサーヴェロ。これで会場まで走ってきた高島宗一郎福岡市長の愛車はサーヴェロ。これで会場まで走ってきた photo:Hideaki.TAKAGIそしてベロタウンは、会場のアイランドシティ内に設けられたブースやステージで構成。自転車関係の出店はもちろん、楽しみな博多ラーメンやカレー、タコスなど食事が充実。むしろ食事は用意せずに、ここであれこれ食べるのが楽しい。

クリテリウムレースは、朝から市民レースとして各クラスが行われた。車いすレースのプロレースも行われた。そしてそれらの締めは企業対抗のチームリレー。

このころにはぞくぞくとシティライドを終えた人たちが会場に集まってくる。高島宗一郎福岡市長もそのひとり。
高島市長は「自転車は車両。福岡市ではこれから歩車分離を進めていく。今、自分が道路を走ってきて感じたことがたくさんある。歩行者、自転車、車、それぞれの立場で安全な街づくりのための整備に取り組む」と発言。いきなりの登場でサイクリストに嬉しい話に、会場からは拍手が。
ちなみに当日使用した自転車は、借り物でなく自費購入したサーヴェロだ。高島市長の本気度がうかがえよう。

全選手が招待のプロ・クリテリウム

プロクリテ スタートプロクリテ スタート photo:Hideaki.TAKAGIクリテリウムのプロレースは全10チームで1チーム最大5名。1周1.45kmの長方形コースを30周する。
このプロクリテは全チームが招待であること、そして賞金がたくさん出ることが特色のひとつ。ロードシーズンのほぼ最後にあたるこの時期だが、この手厚い歓迎ぶりに選手たちのモチベーションはとても高い。
各チームが集まるテント周辺では、チームを越えて選手たちがなにやら作戦会議を。でもそれら小細工?をひとりでひっくり返してしまう力を持つのが佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)。レースはこの佐野を擁するNIPPOに、アタッカーやスプリンターがどう戦うかが注目された。

1周目から一列棒状1周目から一列棒状 photo:Hideaki.TAKAGI10チーム43名が、いきなりダッシュでスタートから1周目を走る。5周ごとの周回賞を取るか、最後の着順を取るかで作戦が変わってくる。多くのチームは周回賞狙いで動いていく。1回目の周回賞は、タイミングよく抜け出した永良大誠(マトリックスパワータグ)が獲得。ここからポイントレースのように榊原健一(西日本学生選抜、中京大学)が抜け出し独走。これを山本元喜(鹿屋体育大学)がかわして先頭へ出る場面も。追走の先頭は佐野が多い。2回目の周回賞はその佐野が取る。

動きが目立つ選手は佐野、榊原、山本のほか、澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)、初山翔(宇都宮ブリッツェン)、西川昌宏(Esperance Stage/WAVE ONE)、中根英登(西日本学生選抜、中京大学)、小村知之(西日本学生選抜、環太平洋大学)ら。これら選手たちの逃げは続いても2周までだ。3回目の周回賞は再び佐野が取る。

もっともアタックして独走したのは榊原。その榊原が4回目の周回賞を取る。そろそろゴール勝負を考えるチームの動きが活発になる。NIPPOは昨年優勝の藤岡でゴールを、ブリッツェンは辻善光で狙う。佐野は追走に回ったり、仕掛ける動きに回る。ブリッツェンは3名参加だが初山に加え若杉厚仁が動く。辻自身が動く場面も。そのなか5回目の周回賞は中根が取る。

8周目、逃げていた榊原健一(西日本学生選抜、中京大学)をかわす山本元喜(鹿屋体育大学)8周目、逃げていた榊原健一(西日本学生選抜、中京大学)をかわす山本元喜(鹿屋体育大学) photo:Hideaki.TAKAGI26周目、佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、北津留翼(VC福岡)らが逃げる26周目、佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、北津留翼(VC福岡)らが逃げる photo:Hideaki.TAKAGI


絶対的な強さで佐野淳哉が優勝

ゴールに向けてペースが上がり、各チームの思惑も交錯する。ラスト2周で佐野が先頭でペースを上げると2番手以降が千切れて車間が空く。「思ったより空いたので踏み込んだ」という佐野がここで独走を開始。ゴールへ向けて走り続ける。後方はけん制状態の中から山本そして辻らが追走。しかし佐野が驚異の粘りを見せて優勝。辻は届かず2位に。

優勝の佐野は「今日は自分が勝つのではなく、スプリントのリード役をやろうと思った。ボクが動けば周りを消耗させられるので」
「ラスト2周で先頭に立ったとき、後ろが意外に離れたのでそのまま行った。スプリント狙いの藤岡も落車に巻き込まれたので結果的には正しかったのかも。最後は鹿屋の山本選手にだいぶ詰められたけれどもリードを保てたままゴールできた。平坦で風の強いレースならばボクが誰よりも有利だと思う」と語る。

優勝の佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)優勝の佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Hideaki.TAKAGI


周回賞を2回取った西日本学生選抜や鹿屋体育大学など若手が積極的にアタックする姿が目立ったレース。だがそれらをものともしない佐野の強力な走りは、ほか全選手とは明らかにレベルの違うものだ。「来シーズンは早めにヨーロッパへ渡ってそこで活躍したい」と語る佐野の今後に注目だ。

このプロクリテのレース中にはたくさんの観客がコースを埋め尽くした。シティライドのゴールをこのプロクリテのタイミングにあわせたためだ。プロの力強い走りを間近で体験し(音と風が違う!)、選手の側もたくさんの観客の前でモチベーションが上がる。おまけに賞金がかかっているからなおさら真剣。この時間帯は間違いなく日本全国で一番熱いエリアになった。


結果
クリテリウム プロレース 30周43.5km
1位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) 1時間02分50秒
2位 辻善光(宇都宮ブリッツェン)
3位 向川尚樹(マトリックスパワータグ) +1秒
4位 山本元喜(鹿屋体育大学) +2秒
5位 山根理史(湘南ベルマーレ)
6位 中西重智(西日本学生選抜、龍谷大学)
7位 北津留翼(VC福岡)
8位 野口正則(鹿屋体育大学)
9位 紺野元汰(湘南ベルマーレ)
10位 岡崎陽介(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)

周回賞
5周目 永良大誠(マトリックスパワータグ)
10周目 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
15周目 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
20周目 榊原健一(西日本学生選抜、中京大学)
25周目 中根英登(西日本学生選抜、中京大学)

photo&text:高木秀彰