ダンジェロ&アンティヌッチィ・NIPPOチームへ合流すべくイタリアへと渡り、早いもので半年が経った大西恵太メカ。今ではチーム選手、他のスタッフからも名前を覚えてもらい、徐々にチームにも溶け込めている。レースの現場で修行に励む大西メカの手記をお届けしよう。

大西恵太メカニックとアンジェルチャベス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・NIPPO)大西恵太メカニックとアンジェルチャベス・ルビアーノ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・NIPPO) photo:Keita.Oonishi5月、初めて1人で挑んだ欧州レース

2月末より西勉メカニック(以下西メカ)と共にイタリア国内レースを転戦してきましたが、同時に2ヶ月半の間、西メカから洗車や自転車の積み下ろし、機材の扱い方等々……数多くのことを教わり学びました。とにかく同じ種類のパーツやアイテムが数多くあり、ハンドルなどのサイズを有するものや、タイヤなど消耗品の維持・管理に追われている日々でもありました。

5月初旬、日本でのツール・ド・熊野、全日本選手権参戦のため、西メカが帰国することとなり、イタリア国外3ステージレースとイタリア選手権のチームメカニックを託されることとなりました。

レース中にメイン集団の横を通過するレース中にメイン集団の横を通過する photo:Keita.Oonishiまずは、アイルランドで開催されていた「An pos Ras」という5選手8ステージからなるレース遠征から始まり、「ツール・ド・スロバキア」「ツール・ド・スロベニア」と約2ヶ月間通してレースが続きました。
これらのレースにメカニックは自分1人で帯同することとなりました。

現場では、選手がレースに集中できるような環境作りをすることもスタッフの役割の1つですが、その中でもレースを行うにあたり一番重要な道具である自転車の管理をすることがメカニックとしての最大の役割です。
選手が自転車に関して不安やストレスを持たぬよう最善を尽くすのです。選手は各自のポジションや自転車の状況を細かく伝えてきます。時には何度も試行錯誤をしたりと時間の掛かることもありますが、納得できる状態にするよう努めます。

レース中のメカニック席(左側走行の時のもの)レース中のメカニック席(左側走行の時のもの) photo:Keita.Ohnishiチームスタッフとの協力体制が大切

メカニックは道具を必要とする仕事です。自分で持っていない道具に関しては、借りるか現地調達です。洗車時のホースや電気ケーブルを準備できなかった場合にも、他チームに分けてもらい自然と貸し借りの関係ができています。

また、スタッフ同士の関係にも新たな発見があります。レースでは、マッサージャーとの完全分業ではなく、スタッフ同士協力し合いうまく現場を回していきます。
車両移動などの関係で、メカニックである自分自身が補給地点でサコッシュを持つこともあります。

ただ、選手の軽食やウエアの管理はマッサージャーがします。メカニックの手は基本的に汚れているのでそういったものには触らないようにします。そして、スタッフはすべて監督を中心として働いています。

監督が選手と一緒に練習に行く時などの準備もスタッフの仕事の1つです。監督はレースだけではなく往復の交通から宿の手配、選手や機材のオーガナイズなどたくさんの仕事をしています。

レース中はオメガファーマ・ロットのメカニックたちとも助け合ったレース中はオメガファーマ・ロットのメカニックたちとも助け合った photo:Keita.Oonishiこれらの行った国では英語で現地の人々とコミュニケーションを取るのですが、英語が話せるとはとても言えるレベルではない自分が、水や電気などの必要なものは必ず手に入れなければいけないため、必死でとにかく話すことを覚えました。母国を離れたイタリアチーム員たちもどうやら苦戦している様子でした。


レースに帯同するチームカーの仕事

所属しているダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOはコンチネンタルチームですが、プロツアーやコンチネンタルプロチームと同じレースを走ることもあります。見ているとチームの規模に少し差があります。わかりやすいのはチームが使用している車両です。

自分のチームでは、チームカー2台にバンが1台、トラック2台と大型バスが1台でコンチネンタルチームとしてはかなり車両を所有しているチームです。特に大型バスはコンチネンタルチームでは珍しいようです。

ダンジェロ&アンティヌッチィ・NIPPOの機材トラック(右)とチームカー(左)ダンジェロ&アンティヌッチィ・NIPPOの機材トラック(右)とチームカー(左) photo:Keita.Oonishiバイクを積んだ状態のチームカーバイクを積んだ状態のチームカー photo:Keita.Oonishi

ランプレISDのチームカーに振られたナンバー。これは7台目を意味するランプレISDのチームカーに振られたナンバー。これは7台目を意味する 有名なプロツアーチームのチームカーを見るとカーナンバーが振ってあります。そして、自分が今まで見た中では「19」というのが最大でした。さすがにこれには驚きました。これだけ車両があると、維持管理が大変ではないかと思います。

チームカーの仕事を紹介します。基本的には2台のチームカーが集団の後ろを走っています。それぞれすべての車両に番号が決められており、隊列から外れて戻って来た場合にはその番号の順に戻ります。乗車しているのは監督とメカニックの2人が基本ですが、カメラマンやスポンサー関係者などが乗車するときもあります。
車内ではレースのオフィシャル情報を聞くためのラジオツールがあり、パンクや落車などのトラブルだけでなく、タイム差や逃げている選手の情報を常に把握することができます。逃げている選手のナンバーを記録するのもメカニックの仕事です。そのためイタリア語の数字は早めに覚えられました。

レース中に選手と監督が話をしているリクイガスレース中に選手と監督が話をしているリクイガス photo:Keita.Oonishi「道に油が浮いているため注意されたし!」「今日はパーティが19時半からありますよ」「一週間無事にレースができたのは選手を始め全ての関係者のおかげだ、ありがとう。来年もまた会おう」などといった珍しい連絡!?も入ります(笑)

初めてチームカーに乗った時には選手との近さに驚きました。ボトルや防寒着を渡すときはモチロン、監督と話をするときは選手自らが寄ってくるので何とも思いませんが、第2チームカーが逃げ集団に行く時など車両の位置をあげていく際にはメイン集団の横をすり抜けていきます。これは非常に近いです!! 近すぎて選手が声を出す時があるぐらいですが、このすり抜けはレース中普通に行われることです。

通常チームカーの上にはスペアバイクが7台から8台積んであります。もちろん飾りではなく、しっかりと整備されている自転車です。何かのトラブル時、その場で修理不可能な場合には、スペアバイクと交換します。
自転車を積んでいるキャリアにはメーカーがいくつか存在し、自転車を積むレイアウトやアタッチメントにもいくつか種類があり、レース会場で他のチームが使っているアイテムを見るのも1つの楽しみにしています。

他チームが使用する珍しいバイクキャリア他チームが使用する珍しいバイクキャリア photo:Keita.Oonishiレバー操作だけで自転車を積みおろしできるレバー操作だけで自転車を積みおろしできる photo:Keita.Oonishi

女子のレースにも帯同

メカニックが扱う1チーム分のバイク機材メカニックが扱う1チーム分のバイク機材 photo:Keita.Oonishi先日はチームをスポンサードしているNIPPOからの指令で、フランスで行われた女子レースのツール・ド・リムザンに参戦するサイクルベースあさひレーシングに帯同してきました。
ルクセンブルク女子チャンピオンなどのトップ選手も参加する4ステージのレースで、2日目は個人タイムトライアルでした。

各チームのバイクやウエアはピンクや黄緑など鮮やかなカラーを使っているチームが多く、小さいサイズのバイクが多いので、ぱっと見た会場の印象は男子のレースとずいぶん違います。
テクニカルなコーナーや下り坂などは、日本国内で行われている女子レースでは見ることのできないほど高いレベルでレースが進んでいきました。タイムトライアルではその差がタイムとして確実に出てきている印象でした。

フランスでのレースはスタートが午後2時くらいと遅いことが多いので、会場に着いてから時間に余裕があります。スタート前に他チームの小さいバイクのセッティングやパーツを見ることができました。


text.photo:Keita.Oonishi
photo:本人提供,Sonoko.Tanaka

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