12月12日、滋賀県野洲市のビワコマイアミランドでシクロクロス全日本選手権が開催される。砂セクションが多用されたコースで、辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)は9連覇の牙城を守り抜くことが出来るか。女子は豊岡英子(パナソニックレディース)が6連覇を狙う。

琵琶湖マイアミ名物のビーチセクション琵琶湖マイアミ名物のビーチセクション photo:Kei Tsuji今年のシクロクロス全日本選手権は、琵琶湖の東岸、滋賀県野洲市のマイアミランドで開催される。

“マイアミ”とは非常に聞こえが良いが、実際は「砂地獄」と畏怖されるほどの難コース。琵琶湖に面したビーチと、テクニカルな松林セクションを組み合わせた一周2.9kmのコースが使用される。

シクロクロス全日本選手権コースマップシクロクロス全日本選手権コースマップ image:京都府自転車競技連盟起伏がほとんどないフラットなレイアウト。細かい砂に覆われた全長200mほどのビーチが名物で、この長い「砂地獄」を乗車でクリア出来るかどうかがラップタイムに大きく影響する。砂セクションは合計4カ所に設定される予定だ。

砂対策として太めのチューブラーを使用し、空気圧を極限まで落とすのが昨年までのトレンドだった。しかし今年はUCI(国際自転車競技連合)のルール変更に伴い、タイヤ幅が従来の35mm以下から33mm以下に限定される(タイヤの表記ではなく、実際の太さが計測される)。深く沈む細いタイヤで、どれだけ砂地をクリア出来るかが勝負を左右する。

エリートレースには72名がエントリーしており、最初の砂セクションの進入順位が後の展開に大きく影響しそう。なお、UCIレース同様、全日本選手権も「80%ルール」が適用される。80%ルールとは、トップ選手のラップタイムの+80%のタイムを経過して周回を終えた選手は、降車が指示されるというもの。例えばトップのラップタイムが8分の場合、トップから6分24秒遅れの時点で降車となる。

9連覇を狙う辻浦 王座を揺るがす丸山や小坂

辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc日本のシクロクロス界には、8年間に渡って頂点に君臨するチャンピオンが存在する。2002年の全日本選手権で優勝し、以降8年連続で全日本チャンピオンに輝いている辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)だ。

ドイツで開催される世界選手権に照準を合わす辻浦は、もちろんこの全日本で前人未到の9連覇に挑む。しかし今シーズンは序盤に体調を崩していた影響もあり、世界選手権のセレクションレースは関西シクロクロス第2戦マキノの1勝にとどまっている。セレクションランキングでは暫定3位だ。

丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS) photo:Kei Tsuji絶好調とは言えない辻浦だが、砂地での走行には定評がある。昨年UCI公認レースとしてマイアミランドで開催された関西シクロクロス第3戦で、辻浦は下位を1分半以上引き離して優勝した。長い砂セクションをバイク乗車で踏破出来るのは辻浦だけと思えるほどの圧勝だった。

そんな辻浦の9連覇に待ったをかけるのが、今シーズン何度も優勝争いを演じている丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTS)と小坂正則(スワコレーシング)。

小坂正則(スワコレーシングチーム)小坂正則(スワコレーシングチーム) photo:Kei Tsuji丸山は関西シクロクロス第2戦マキノの試走中に転倒し、鎖骨にヒビを負った。しかし1週間前に開催された信州シクロクロス第5戦霧ヶ峰で、他を寄せ付けずに優勝。セレクションレースで2勝を飾り、ランキングトップに立っている。「入念に試走して挑みたい。優勝を狙って走る」。元全日本チャンピオンの三船雅彦監督(マスター選手権に出場予定)の指揮の下、初タイトルを狙う。

47歳の小坂はベテラン中のベテランで、世界選手権出場の経験も豊富。昨年も2位に入る走りを見せたが、全日本のタイトルはまだ手にしたことが無い。

C1 4番手で粘りの走りを見せる小坂光(宇都宮ブリッツェン)C1 4番手で粘りの走りを見せる小坂光(宇都宮ブリッツェン) photo:Kei Tsujiそんな小坂の息子、小坂光(宇都宮ブリッツェン)も、今や日本を代表するシクロクロスレーサーに成長した。直前の信州シクロクロス霧ヶ峰では2位に入っており、調子が良いのは間違いない。

更に、池本真也(和光機器タムラクラブ)や山本聖吾(スワコレーシングチーム)、平野星矢(チームブリヂストン・アンカー)らが上位に絡んでくるだろう。地元関西の松井正史(シマノドリンキング)らが信州や関東の選手を迎え撃つ。

C1 徐々に順位を上げる畑中勇介(シマノレーシング)C1 徐々に順位を上げる畑中勇介(シマノレーシング) photo:Kei Tsujiヨーロッパから帰国した竹之内悠(Team Eurasia Museeuw Bikes)は、まだ帰国後日本で本領を発揮出来ていない。ヨーロッパで磨いた走りを全日本の大舞台で見せてほしい。

ダークホースとして注目は、今シーズンもシクロクロスに精力的に参戦している畑中勇介(シマノレーシング)だ。今シーズンはまだ優勝争いに加わったことが無いが、Jサイクルツアー年間王者&ジャパンカップ3位の脚がフラットなコースで火を噴く可能性も。テクニカルなセクションをうまくこなすことが出来れば、上位に絡んでくるだろう。シマノレーシングからは村上純平も出場予定だ。

同じくロードレース組として、筧五郎(イナーメ信濃山形)や大塚潤(GRUPPO ACQUA TAMA)の走りにも期待したい。

マキノ大会10位の木村圭祐(京都産業大学)マキノ大会10位の木村圭祐(京都産業大学) photo:Hideaki.TAKAGI同時出走のU23は?
1989年から1992年生まれ対象のU23はエリートと同時出走。今年から竹之内悠や小坂光らが抜け、混戦模様だ。
この中では11月21日のマキノ大会で10位と健闘した木村圭祐(京都産業大学)が有力だ。秋田謙監督のもと、入念な準備と練習で本番に臨む。
またロードでは湘南ベルマーレで活躍する武田耕大はARAI-MURACAで出場。さらにはいずれも兄弟選手の弟である伊澤広大(Bee Club 138)と伊勢洋人(大阪産業大学)も出場する。

6連覇が懸かった豊岡を止めるのは?

豊岡英子(パナソニックレディース)豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Kei Tsuji日本のシクロクロス女子を牽引する豊岡英子(パナソニックレディース)は、今年の全日本選手権で6連覇を狙う。ここまで危なげない走りを見せており、大一番でも持ち前の強さを発揮してくれるだろう。

Ready Go JAPANの武田和佳(ARAI MURACA)や、福本千佳(Ready Go JAPAN大阪履正社)が豊岡の対抗馬か。武田は現在セレクションランキングでトップに立っている。同ランキング2位の宮内佐季子(CLUB viento)も上位争いに加わるはず。

1週間前にシクロクロスバイクデビューを飾った片山梨絵(SPECIALIZED)も出場する。MTB全日本チャンピオンの片山はロード、トラックに続き、シクロクロスで新境地を拓くことが出来るだろうか。そのポテンシャルは未知数だ。

JCF公認のジュニア選手権が初開催

沢田時(ENDLESS/ProRide)沢田時(ENDLESS/ProRide) photo:Kei Tsuji今年のトピックは、これまでAJOCC(日本シクロクロス競技主催者協会)が開催していたジュニアレースがJCF(日本自転車競技連盟)公認になったこと。1993年と1994年生まれの男子が対象となる。

注目は、関西シクロクロスのC1に時間制限有りで出場し、上位争いに絡む走りを見せている沢田時(ENDLESS/ProRide)。他にも、将来を担う若手選手たちが初代ジュニアチャンピオンの座をかけて闘う。

JCFの公認レースではないが、マスター選手権も同日開催される。1週間前の関西シクロクロス2010第3戦由良川で2年ぶりにレースに出場した三船雅彦の走りに注目。関西の岩本雅秀(チーム泥んこプロレス)や大河内二郎(シルクロード)、ビンセント・フラナガン(PEDALFORTH.com)らが三船に挑む。

トップレーサーの力走を間近で!会場アクセス方法

会場のビワコマイアミランドは琵琶湖東部に位置する。地理的には大津と米原の中間だ。湖周道路沿いなので、ビワイチ(琵琶湖一周サイクリング)の経験者なら一度は通っている場所。普段オートキャンプ場として営業している場所なので、トイレの心配は無い。

駅から距離があるので、クルマでのアクセスが便利。駐車台数には限界があるので乗り合いが望ましい。電車の場合は、JR東海道本線野洲駅からタクシーに乗る(近くにバス停は無い)。

観戦にあたり、レース中にバイク交換が行なわれるピットエリアは入場禁止。メインの砂セクション手前の芝生エリアはバイク乗車禁止になっている。コースを横切る際は、数カ所設けられた横断ポイントを通ること。

ロードレースよりもレーススピードが遅いシクロクロスでは、選手との距離が近い。テクニカルなコースを巧みなハンドルさばきでクリアする選手の躍動を間近で見ることが出来る。ぜひ現地に脚を運んで砂バトルをその目で見てほしい。

レーススケジュール
12月11日(土)
関西シクロクロス
12:00 C2スタート
13:00 CM2・CL2スタート
13:50 CY・CL3・CM3スタート
14:20 CK2スタート
14:40 CK1スタート

14:00〜15:00 全日本選手権受付(ビワコマイアミランド会場)
17:30〜  チーム代表者会議(ラフォーレ琵琶湖)

12月12日(日)
全日本選手権
9:00 ジュニア スタート
10:00 エリート女子 スタート
11:00 エリート男子 スタート

関西シクロクロス
12:30 マスタースタート
13:30 C3Aスタート
14:20 C3Bスタート

text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Hideaki Takagi

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