10月1日にオーストラリア・ジーロング行われたU23世界選手権ロードレースは、50人ほどのゴーススプリントの争いとなり、マイケル・マシューズ(オーストラリア)が制し、U23王者の座についた。日本勢は3名が出走し、平塚吉光が2分40秒遅れの70位で完走した。

34カ国・122名の選手たちがスタート34カ国・122名の選手たちがスタート photo:Kei Tsuji

二冠を狙うタイラー・フィニー(アメリカ)二冠を狙うタイラー・フィニー(アメリカ) photo:Kei Tsuji最後尾でスタートを切る内間康平(鹿屋体育大学)と小森亮平(ヴァンデU)最後尾でスタートを切る内間康平(鹿屋体育大学)と小森亮平(ヴァンデU) photo:Kei Tsuji

プロへの登竜門として最高の舞台であるロード世界選手権U23ロードレース。日本勢からは平塚吉光(シマノレーシング)、小森亮平(ヴァンデU)、内間康平(鹿屋体育大学)の3名がエントリーした。

スタート直後、最初の1kmでアタックを決めたのはベンジャミン・キング(アメリカ)。1周目には40秒のリードを持って淡々と独走を続ける。集団はこれを黙認。タイム差はその後2分30秒前後で安定。レースが半分を消化する5周回を終えても独走を続けていた。

独走で「チャランブラ・クレセント」を駆け上がるベンジャミン・キング(アメリカ)独走で「チャランブラ・クレセント」を駆け上がるベンジャミン・キング(アメリカ) photo:Kei Tsuji追走グループを形成するベンジャミン・キング(オーストラリア)、アンドレイ・クラシルニカウ(ベラルーシ)、チェン・キンル(香港)追走グループを形成するベンジャミン・キング(オーストラリア)、アンドレイ・クラシルニカウ(ベラルーシ)、チェン・キンル(香港) photo:Kei Tsuji


キングを追走したのはモレノ・モゼール(イタリア)、アンドレイ・クラシルニカウ(ベラルーシ)、チェン・キンル(香港)、ベンジャミン・キング(オーストラリア)の4人。※逃げるベンジャミン・キング(アメリカ)と追うベンジャミン・キング(オーストラリア)は同姓同名。これにアレックス・ダウセット(イギリス)が合流し、5人の追走集団を形成した。

先頭のキングを抜いて独走を開始したモレーノ・モゼール(イタリア)先頭のキングを抜いて独走を開始したモレーノ・モゼール(イタリア) photo:Kei Tsuji追走集団はその後ペースが合わずに分解し、モレノ・モゼール(イタリア)が単独で前を行くキングを追い、合流した。後方集団とは依然2分30秒程度の差。

2人になったモゼールとキングはしばらく協調しあうが、ジロ・デ・イタリア覇者、そして1977年世界選手権ロードチャンピオンのフランチェスコ・モゼールの甥というモレノ・モゼールは力強いペダリングでスピードをあげる。するとキングはついていくことができずに遅れてしまった。

フィニーらとともに急勾配の上りをこなす内間康平(鹿屋体育大学)フィニーらとともに急勾配の上りをこなす内間康平(鹿屋体育大学) photo:Kei Tsuji快調に逃げ続ける長身のモゼール(イタリア)。後方集団はオーストラリアの選手が先頭に立ち、徐々にペースを上げ始める。タイム差は1分15秒前後。

残り2周、集団のペースが非常に速くなり、モゼールとの差はみるみる縮む。オーストラリアはスプリンターのマイケル・マシューズをエースに他の全員がアシストに回る走りを見せる。他にベルギーなども先頭牽引に加わり、モゼールを捕まえる。

モゼールが捕まったと同時にカウンターアタックをかけて飛び出したのはコフィディス所属のプロ選手トニー・ガロパン(フランス)。しかしガロパンの逃げもラスト1周に近づくに連れて動きに激しさを増す集団に飲み込まれてしまう。

「クイーンズパーク」の上りをこなすメイン集団「クイーンズパーク」の上りをこなすメイン集団 photo:Kei Tsuji

オーストラリアがコントロールするメイン集団がモゼールを追うオーストラリアがコントロールするメイン集団がモゼールを追う photo:Kei Tsujiラスト1周に入ると先頭集団は一列棒状に伸びる。スピードが上がり、あちこちで中切れを起こしながら集団を分断する動きが起こる。この動きで日本勢としてはひとりメイン集団内で粘っていた平塚はラスト1周で遅れることになった。

残り12kmでジャン・ルー・パイアニ(フランス)がアタック。そしてチャランブラ・クレセントの上りでヘスス・エラダ・ロペス(フランス)がアタック。しかし頂上までに再びトニー・ガロパンがアタックして追走。合流。しかし集団もペースが上がり続け、逃げるのは困難な状況になる。スプリントに持ち込みたいドイツのジョン・デゲンコルブやオーストラリア勢の攻防で、集団は50人ほどに絞られながらも一団となってゴールを目指す。

ラスト6kmを切ってトニー・ガロパン(フランス)が再びアタックし、独走開始。ポルトガルの選手が追走するが、それにピッタリマークに入るのはフランスのチームメイトであるロマン・アルディ。フランスにとって有利な展開だが、集団には逃げ切らせてはもらえない。

9周目、モゼール吸収後にアタックしたトニー・ギャロパン(フランス)9周目、モゼール吸収後にアタックしたトニー・ギャロパン(フランス) photo:Kei Tsuji集団内で上りをこなす平塚吉光(シマノレーシング)集団内で上りをこなす平塚吉光(シマノレーシング) photo:Riccardo Scanferla集団前方で上りを進む内間康平(鹿屋体育大学)集団前方で上りを進む内間康平(鹿屋体育大学) photo:Riccardo Scanferla

ラスト1km、最終コーナーを抜けて優勝候補として期待のかかるTTチャンピオンのタイラー・フィニー(アメリカ)が3番手に上がってくる。その後ろにマイケル・マシューズ(オーストラリア)がつける。ゴールまでは軽い上りのスプリント合戦だ。先頭集団に残ったのは45人。

スプリントで先行したのはもう一人の優勝候補ドイツのデゲンゴルブ。しかし長すぎたそのスパートはラスト100mで伸びたマイケル・マシューズに交わされる。マシューズは力強い伸びを見せ続け、デゲンゴルブを4,5車身離す圧倒的な力でフィニッシュラインを駆け抜けた。

先行するジョン・デーゲンコルブ(ドイツ)を抜いてマイケル・マシューズ(オーストラリア)が先頭に先行するジョン・デーゲンコルブ(ドイツ)を抜いてマイケル・マシューズ(オーストラリア)が先頭に photo:Riccardo Scanferla

マシューズの勝利に歓喜する最終コーナーの観客たちマシューズの勝利に歓喜する最終コーナーの観客たち photo:Kei Tsuji何度もガッツポーズを繰り出すマイケル・マシューズ(オーストラリア)何度もガッツポーズを繰り出すマイケル・マシューズ(オーストラリア) photo:Riccardo Scanferla


表彰台、左から2位ジョン・デーゲンコルブ(ドイツ)、優勝マイケル・マシューズ(オーストラリア)、3位ギョーム・ボワヴァン(カナダ)とタイラー・フィニー(アメリカ)表彰台、左から2位ジョン・デーゲンコルブ(ドイツ)、優勝マイケル・マシューズ(オーストラリア)、3位ギョーム・ボワヴァン(カナダ)とタイラー・フィニー(アメリカ) photo:Kei Tsuji歓喜する弱冠20歳のマシューズ。つい5月のツアー・オブ・ジャパンにチームジャイコ・スキンズのメンバーのひとりとして来日して、第1ステージ堺の個人タイムトライアルで優勝、第5ステージ富士山ではスプリンターながら驚きの4位でフィニッシュしている。

大好きなジュエリーで身を飾る個性的な選手で、あだ名はBling(ブリング)。わずか20歳の選手が地元オーストラリアの地でU23王者に輝いた。2位はドイツのデゲンゴルブ、3位はタイラー・フィニー(アメリカ)とギョーム・ボワヴァン(カナダ)が写真判定の結果同着となり、3位が二人という結果に。表彰式で用意された銅メダルはひとつのみ。しかし表彰はふたりという、前代未聞のポディウムとなった。

銅メダルを一緒に受け取ったギョーム・ボワヴァン(カナダ)とタイラー・フィニー(アメリカ)銅メダルを一緒に受け取ったギョーム・ボワヴァン(カナダ)とタイラー・フィニー(アメリカ) photo:Riccardo Scanferlaマイケル・マシューズ(オーストラリア)のコメント
「言葉が見つからない。なんと言っていいか分からない。本当に夢がかなった。夢はいつだって叶うもんじゃない。信じられない。大きなプレッシャーがあった。僕もかれもが僕をマークしてやっつけようとしているように感じたけど、ことは僕の有利に運んだ。

最後は本当にうまく発射して、ゴールできた。これ以上何も言うことができないよ。チーム皆のおかげだ。皆が僕のために走ってくれた。前で働いてくれた。水、補給食、望むままに走らせてくれた。チームのみんな無しでやり遂げることはできなかった」。


ロード世界選手権2010 U23ロードレース結果
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア)  4h01'23"
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)
3位 タイラー・フィニー(アメリカ)同着ギョーム・ボワヴァン(カナダ)
4位 アルノー・デマル(フランス) 
5位 ソニー・コルブレリ(イタリア)
6位 ローレン・デヴリーゼ(ベルギー)
7位 セバスティアン・ランデル(デンマーク)
8位 フアン・ホセ・ロバト・デ・バジェ(スペイン)
9位 ビアチェスラブ・クズネトソフ(ロシア)
10位 ルーク・ロウ(イギリス)

70位 平塚吉光(シマノレーシング)       +2:40
DNF 小森亮平(ヴァンデU)
DNF 内間康平(鹿屋体育大学)

photo:kei.Tsuji,Riccardo Scanferla
text:Makoto.AYANO