2010年9月11日に開催されたブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIヒストリカル)第14ステージは、マイヨロホを着るアントン(エウスカルテル)が落車でリタイアする残念な結果に。ペーニャ・カバルガの頂上ゴールを制したのはロドリゲス(カチューシャ)。ステージ2位のニーバリ(リクイガス)がアントンに代わって総合首位に立った。

逃げグループを形成するデーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ)、ニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)、デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)逃げグループを形成するデーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ)、ニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)、デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) photo:Unipublicブエルタの総合争いはこの第14ステージからの山岳3連戦でおおよその行方が決まる。3つのカテゴリー山岳を越えた先に登場するペーニャ・カバルガは、大西洋を望む標高565mの切り立った山。距離こそ6kmに満たないが、平均勾配は9.2%。局所的に勾配が19%に達するという急坂だ。

この日もスタート直後からアタックの応酬で、逃げグループ形成までに1時間を要した。ハイスピードなアタック合戦を切り抜け、単独で飛び出したのはニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)。赤白青のオランダチャンピオンジャージを着るテルプストラは、2日連続の逃げを敢行した。

メイン集団をコントロールするサーヴェロ・テストチームメイン集団をコントロールするサーヴェロ・テストチーム photo:Cor Vosメイン集団では遅れてデーヴィット・ミラー(イギリス)とデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ)がカウンターアタック。ガーミン・トランジションズに所属する経験豊富な2人は、チームTT状態でテルプストラを追走。64km地点で合流した。

逃げた3名はいずれも総合成績で1時間以上遅れている。つまりマイヨロホを擁するエウスカルテルの脅威にならない。メイン集団が追走の気配を見せなかったため、ゴールまで73kmを残してタイム差は最大12分55秒まで広がった。

樹々の生えない荒涼としたカラコル峠樹々の生えない荒涼としたカラコル峠 photo:Cor Vos俄然逃げ切りが有利な展開。逃げたミラーはレース後「タイム差が12分を超えたときは、逃げ切れると思った」と回想している。しかしレース後半にかけてサーヴェロ・テストチームやケースデパーニュが集団コントロールを開始すると、タイム差は縮小の一途をたどった。

ゴール52km手前に位置する2級山岳カラコル峠でレースは動いた。エウスカルテルのアシスト体制を切り崩すべく、メイン集団からルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)とアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)がアタック。リードを45秒まで広げたこの2人を、エウスカルテルが追う展開。

2級山岳カラコル峠でメイン集団から飛び出したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)とアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)2級山岳カラコル峠でメイン集団から飛び出したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)とアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ) photo:UnipublicしかしLLサンチェスとコロブネフは劇的にタイム差を広げることが出来ず、20kmに渡る挑戦を終えてメイン集団に戻った。

やがて先頭グループからザブリスキーが脱落し、ミラーとテルプストラが協力してエスケープを継続。メイン集団はカチューシャが猛烈にペースアップ。ゴールまで10kmを残して先頭2名のリードは3分にまで縮まった。

そしてゴール7km手前で悲劇が起きた。ペーニャ・カバルガに向けて激しいポジション争いが繰り広げられていたメイン集団の中で落車が発生。下り基調の直線路を80km/hほどのハイスピードで走っていた選手たちが地面に投げ出された。

飛び出したLLサンチェスとコロブネフを追うエウスカルテル飛び出したLLサンチェスとコロブネフを追うエウスカルテル photo:Unipublic
その犠牲者の中には、マイヨロホを着るイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)や、チームメイトのエゴイ・マルティネス(スペイン)、そして総合6位のマルツィオ・ブルセギン(イタリア、ケースデパーニュ)の姿も。破れたマイヨロホの間から血が滴るアントンは、チームカーの助手席に腰掛ける。親指を立てて大事には至っていないことをアピール。しかしそのままリタイアに追い込まれた。

ペーニャ・カバルガに向かってメイン集団のペースを上げるカチューシャペーニャ・カバルガに向かってメイン集団のペースを上げるカチューシャ photo:Unipublicアントン落車後もレースは止まらない。マイヨロホを欠く総合バトル。勾配のキツいペーニャ・カバルガの上りが始まると、リクイガスがメイン集団の先頭に。ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)のペースがメイン集団を10名にまで絞り込んだ。

ゴールまで2kmを残してメイン集団からエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)がアタック。それまで諦めずに逃げ続けていたテルプストラを抜いて、モスケラが単独先頭に立つ。

ペーニャ・カバルガでメイン集団のペースを作るロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)ペーニャ・カバルガでメイン集団のペースを作るロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) photo:Unipublic続いて満を持して飛び出したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)は、先行するモスケラを抜き去って先頭へ。これにホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が合流し、2人で観客の詰めかけた急坂を駆け上がった。

ラスト1kmを切り、一段と勾配が増したところでロドリゲスがアタックを仕掛けると、堪らずニーバリが脱落。独走に持ち込んだロドリゲスがニーバリを20秒、モスケラを22秒引き離してゴール。今大会初勝利を飾った。

世界屈指のクライマーとして知られるロドリゲスは、これが自身3度目のステージ優勝。今年のブエルタでは第10ステージでマイヨロホを獲得しながらも、翌第11ステージのアンドラ頂上ゴールでブレーキがかかって1分のタイムロス。しかしこの日の勝利で再び総合戦線に返り咲いた。

「アンドラと同じ間違いは冒さない。アンドラでは自信過剰になっていたんだと思う。今日は頭を使って、出来るだけ長く集団内でチャンスを待ち続けた。それが功を奏したよ」。

ペーニャ・カバルガで最後まで生き残ったニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)ペーニャ・カバルガで最後まで生き残ったニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム) photo:Unipublicペーニャ・カバルガでアタックを仕掛けるダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)ペーニャ・カバルガでアタックを仕掛けるダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア) photo:Unipublicペーニャ・カバルガでモスケラを抜いて先頭に立つヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)ペーニャ・カバルガでモスケラを抜いて先頭に立つヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Unipublic

右目を押さえてゴールに飛び込むホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)右目を押さえてゴールに飛び込むホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosアントンに代わってマイヨロホを手にしたのは、ステージ2位のニーバリ。しかし総合2位ロドリゲスとのタイム差は僅かに4秒だ。ロドリゲスは「明日のコバドンガではニーバリに警戒しなければならない。でもライバルはニーバリだけじゃない。まだブエルタで総合優勝を狙える選手は数人いる。アントンがこんな不運な形でブエルタを終えるのは残念だ。上りの手前はどのチームも集団のポジションをキープするのに躍起だった」とコメントしている。個人TTを得意とするニーバリに対し、ロドリゲスは続く山岳2ステージで総合リードを広げる必要がある。

20秒遅れのステージ2位に入るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)20秒遅れのステージ2位に入るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vosマイヨロホに袖を通したニーバリは「アントンのリタイアは残念だ。落車でリーダージャージを失う悲しみは、今年のジロ・デ・イタリアで経験した。もっと違った形でこのマイヨロホを受け取りたかった。今日はクロイツィゲルに助けられたよ。ステージ優勝を狙っていたけど、山岳ポイントのアーチとゴールを混同してしまった。そのミスに気付いた時、ロドリゲスに追いつかれていた。そこからは自分のリズムで走ろうと心がけた」とコメント。

ステージ優勝を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ステージ優勝を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Unipublic「明日も特別な山岳ステージだ。クライマーたちに食らいついて、そのあとの個人TTに備えたい」。ニーバリは翌日からマイヨロホを守る立場。ロドリゲス、モスケラ、トンドらがニーバリに対して攻撃を仕掛けてくるだろう。

マイヨロホに袖を通したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)マイヨロホに袖を通したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vos落車したアントンは再スタートを切れず、そのままリタイアに追い込まれた。「路面の穴か障害物か何かに接触して一人で落車した。ハンドルから腕が外れ、地面に投げ出された。立ち上がってようやく自分が全身血だらけということに気付いた。今自分がどこにいるのか、何をしているのか分からなかったけど、本能的にバイクに跨がろうとしたんだ。それで気がついた。右肘が曲がらない。チームドクターが飛んできて、僕の腕を診てこう告げた。『もうレースのことは忘れろ。折れている』と」。

アントンは2008年のブエルタでも落車で勝機を失っている。当時総合6位に付けていたアントンは、アングリル頂上ゴールの上り手前で落車。腰の骨を折り、再起まで1年を要した。「(終盤の上り手前で落車する)こんな状況を繰り返している。今年のブエルタは勝てると思っていた。こんな形でレースを去ることになってしまって残念だ。また勝つためにブエルタに戻ってくる。2011年は今年同様強いチームメイトを従えてリベンジを目指すよ」。エウスカルテルは同時にマルティネスがリタイア。受難の一日となった。

エウスカルテルと同様に、不運に見舞われたのがケースデパーニュ。積極的にレースを展開していたが、ゴール7km手前の落車が全ての計算を狂わせた。総合6位につけていたブルセギンは両腕に怪我を負いながらも走り続け、17分02秒遅れでゴール。完全に総合争いから脱落した。ブルセギンは病院に搬送され、合計19針を縫っている。

同じ落車に巻き込まれた総合8位リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)は、肩を痛めながらも走り、3分遅れで総合12位に転落。総合7位ルーベン・プラサ(スペイン、ケースデパーニュ)だけが辛うじて総合トップ10を守っている。

翌第15ステージは登坂距離12.5km・平均勾配7.2%のラゴス・デ・コバドンガにゴール。再び総合成績にシャッフルがかけられるはずだ。

選手コメントはレース公式リリースより。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第14ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)       4h26'42"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       +20"
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)     +22"
4位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)         +33"
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)    +34"
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)       +35"
7位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)    +39"
8位 ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)      +43"
9位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)   +45"
10位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) +1'29"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)    60h55'39"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)        +04"
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)    +50"
4位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)  +2'11"
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)     +2'12"
7位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)  +2'29"
8位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) +3'29"
9位 ルーベン・プラサ(スペイン、ケースデパーニュ)       +3'41"
10位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)  +3'52"

ポイント賞(プントス)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) 111pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)   90pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       74pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)        45pts
2位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)  36pts
3位 ゴンサロ・ラブニャル(スペイン、シャコベオ・ガリシア)    25pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)        11pts
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)      12pts
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)    15pts

チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ       182h19'55"
2位 カチューシャ          +2'28"
3位 サーヴェロ・テストチーム    +7'50"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic

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