マヴィックから新たなエアロカーボンホイール、COMETE 50が登場。内幅23mmの最新のリムプロファイルに加え、極薄の流線型カーボンスポークを採用し、あらゆる条件下で優れたエアロダイナミクスと反応性、そして前後ペア1,315gという軽量性を実現したハイパフォーマンスモデルのインプレッションをお届けする。



マヴィック COMETE 50 (c)マヴィックジャパン

130年以上の歴史を持つ老舗ホイールブランド、マヴィック。ここ数年は、ロード用カーボンホイールをCOSMIC、アルミホイールをKYSIRUMとAKSIUMに絞るシンプルなラインアップを敷いてきた。

そこに新たなシリーズとして加わるのがCOMETEだ。今現在も、ディスクホイールとして用意されているが、純粋なロード用ホイールとしてその名が使われるのは久方ぶり。直近でラインアップされていた時期では、COSMICよりもリムハイトの高いディープリムのエアロモデルに位置付けられてきた。

ジュネーブの風洞施設で徹底的なテストと開発が行われた (c)マヴィックジャパン

久々の復活となるCOMETE 50だが、今作のリムハイトは50mmとオールラウンドモデルであるCOSMIC 45とほぼ変わらず。エアロモデルのCOSMIC 65よりもローハイトとなり、以前とは少し異なる立ち位置となる。

COSMICシリーズとの最もわかりやすい違いは、カーボンスポークを採用したという点。厳密にはCOSMIC ULTIMATEもカーボンスポークモデルだが、ハブにスポークが接着される一体構造ではなく、一般的な構造のままブレード部のみをカーボンとしたエアロ形状のスポークを採用した。

14本+7本、計21本のスポークで組み上げられる photo:Naoki Yasuoka

カーボンスポークは交差部分でもお互い接触しないような設計とされている photo:Naoki Yasuoka
インゴットから削り出されるハブボディ。コンパクトなデザインで27gの軽量化を実現 photo:Naoki Yasuoka



このカーボンスポークによって、従来のステンレススポークから約40%の軽量化を実現。空力面でも有利な極薄のプロファイルを採用し、一般的なカーボンスポークに対して18%のアドバンテージをもたらすことが風洞実験で証明されている。

更に、スポーク本数を21本へと削減しつつ2:1組とすることで、均一なスポークテンションと軽量化、そして空力性能の向上を図っている。カーボンスポークかつ少スポーク構成でありながら、剛性や耐衝撃性、耐久性といった面においても、マヴィックの品質基準をクリアした一本だ。

スポークが脱落しないようにロックインスポークヘッド構造を搭載 photo:Naoki Yasuoka

このスポークが組み合わせられるハブも完全新設計に。アルミインゴットから削り出されるハブボディは、従来から一回りコンパクトになり、前後合わせて27gの軽量化を実現。ホイールの土台となるハブにふさわしい高い剛性も与えられている。

更に、カーボンスポーク採用ホイールで起きやすい、アクシデント時のスポーク脱落を防ぐ「ロックインスポークヘッド」構造を採用。ハブ内部から挿入されたスポークはアクスルとカバーで固定されており、大きな衝撃を受けても抜け落ちるリスクを排除することで安全性を大幅に高めた。

独自のセラミックベアリングを標準で搭載。高い耐久性と低転がり抵抗を実現する photo:Naoki Yasuoka

ベアリングの性能を最大限に引き出す高剛性かつ高精度のハブには、マヴィックが独自開発したセラミックベアリングが搭載され、更に転がるホイールに仕上げられた。ラチェットには定番のINSTANT DRIVE360を採用。40ノッチの面ラチェットが高い駆動効率を実現する。

ホイールの性能に大きな影響を与えるリムも完全新規開発。外幅30mm、内幅23mmのワイドプロファイルは、現在プロトンで主流の28mmタイヤに最適化されたもの。スポークと同じく、ジュネーブの風洞施設において徹底的なR&Dの結果生み出されており、純粋な向かい風からヨー角のついた横風まで、あらゆるシーンで優れたエアロダイナミクスを発揮する。

リムの必要な部分に必要なだけ積層するアダプティブレイアップ (c)マヴィックジャパン

T700、T1000、3Kという3種類のカーボン繊維を使い分け、かつニップルホールなど強度が必要な部分に重点的に積層するアダプティブレイアップによって、剛性と重量、そして振動減衰性能を最適化。安定した運用が可能なフックドリムかつ、チューブレス仕様となる。なお、リムベッドにホールは空けられており、リムテープは必要となる。

全ての要素を完全新設計としたCOMETE 50は、風洞実験において最も優れた他社製品に対し、最大5Wのアドバンテージが確認されており、実走データに基づくシミュレーションでは、COSMIC SLR 45に対し50kmあたり最大12秒のゲインを実現。さらに、重量面でも長足の進歩を果たしており、ペア1,315gと50mmハイトホイールの中でも軽量と胸を張れるスペックを実現した。

マヴィック COMETE 50 (c)マヴィックジャパン

レースにおいてもその実力は証明されており、フランスの女子プロチーム、サン・ミッシェル・マヴィック・オーベル93のアリソン・ジャクソンや、2024年に銀メダルを獲したパラサイクリストのハイディー・ゴーガンらが、フランス選手権での好成績を筆頭に、ビッグレースでの使用実績を重ねている。

130年の歴史の中で、マヴィックが絶やすことなく灯し続けてきたレーシングホイールの血脈。その最新の姿にして、究極の一本となるCOMETE 50。誇り高いフレンチブランドの最前線への帰還を知らせる渾身の一作を、数々のカーボンスポークホイールをテストしてきたシクロワイアード編集部の高木がインプレッションしていく。



数多くのカーボンスポーク採用ホイールをテストしてきた高木がインプレッションを担当する photo:Naoki Yasuoka

「走りが軽いマヴィック」とは良く言ったもので、走ってみると驚くほど速い。一方で、このキャッチコピーには言外に「重量は重いけど……」という注釈がついてきたわけだが、実際のところCOMETE 50に関しては前後で1,315gと重量も軽い。

今回実測してみたところ、フロントが634g、リアが735g、合計1,369gという結果に。これは純正の分厚いチューブレステープが貼られた状態の重量なので、1本25g程度とするならほぼカタログ重量通りとなる。なので、このCOMETE 50に関して言えば、「普通に軽いマヴィック」というのが正しいところ。

マヴィック COMETE 50 photo:Naoki Yasuoka

リムハイト50mm、内幅23mm、外幅30mmのワイドリムを採用 photo:Naoki Yasuoka
リムベッドにはホールがある一般的なデザイン。リムテープが必要だが、それでもチューブレス運用が容易なのはマヴィックの美点。 photo:Naoki Yasuoka



と言いつつも、マヴィックの良い所というのは、そのキャッチコピーに象徴されるようにカタログスペックではなかなか分かりづらいところに多く存在している。その一つがチューブレス運用のしやすさで、どのタイヤとも嵌めやすく、ビードも上がりやすい。このCOMETE 50もご多分に漏れず、一発でビードが上がる。チューブレスタイヤの運用に挫折した、という人は是非マヴィックを選択肢に入れてみてほしい。

欲を言えばリムテープレスのリムベッドを採用してほしいところだったけれど、VONOA製のカーボンスポークとの兼ね合いもあるのだろう、FOREカーボンテクノロジーを搭載したCOMETE SLR 50は今後に期待というところだが、実際の走りにおいては、既にCOMETE 50はこれで完成されている。

1,315gの軽さは登りで顕著に効果を発揮する。これまでのマヴィックホイールとは一線を画す軽快感だ photo:Naoki Yasuoka

冒頭に述べた通り、とにかく軽くて速い。ここ数年で一気に普及したカーボンスポークホイールは、ロヴァールやカデックス、ヴィジョン、そしてルンやスコムなど、様々なブランドやグレードのホイールをテストしてきたが、その中でもトップレベルの加速感を持った一本だ。

カーボンスポークホイールに共通するのが「足当たりの柔らかさ」。その特徴はこのCOMETE 50でも感じられる。踏み込んだ時に一旦しなってパワーを溜めて、その力が解放されて加速に繋がるようなイメージだが、他の一般的なカーボンスポークよりも薄く平べったい形状のスポークが影響しているのか、COMETE 50は特にその加速感が鋭く、かつ長く続く印象だ。

踏み込んだ際のタメからの加速感が他のカーボンスポーク採用ホイールと比較しても強く、鋭い photo:Naoki Yasuoka

例えば、撮影で何度もゼロ発進を繰り返すのだが、全然苦にならない。これが重ったるいホイールだと、何度もリテイクしてくるカメラマンにちょっと殺意が湧く……というのは冗談だけども、COMETE 50だと、何テイクでも良いですよ!と自然と心が広くなってしまうほど。それくらい気持ちよく、楽しい加速感を味わえるホイールだ。そして、一旦スピードに乗ってしまえば、巡航速度の維持しやすさはマヴィックホイールがもとより得意とするところ。セラミックベアリングの軽い転がりと更に進化したエアロ性能も合わさって、スピード維持という領域を越えて、更に速度が乗っていくようなハイスピードホイールだ。

カーボンスポークのしなりやすさというのは横方向にも感じる部分で、中にはコーナーで倒しこんだ時にアンダーが出るようなモデルもある。COMETE 50に関して言えば、確かに少ししなり自体は感じるものの、慣れの範囲といったところ。むしろライダーのミスをカバーしてくれるような懐の広さにつながる、ちょうどいい塩梅の柔らかさとも言え、ビギナーや中級者にとっては扱いやすく感じるのではないだろうか。

ダウンヒルでバイクを傾けてもコントローラブル。レーシングホイールとして、目立たないが重要な性能だ photo:Naoki Yasuoka

これまでのマヴィックのホイールは、確かにフィーリングは軽くて、よく転がりスピード維持もしやすい一方で、登りなどでは重量の影響を感じるものも多かった。COSMIC ULTIMATEまで行けばネガティブな部分も解消されるけれど、一体構造がもたらす乗り味の異質な感覚もあった。もちろん、価格的な面もネックであったことは間違いない。

このCOMETE 50は、ちょうどCOSMIC SLRとULTIMATEの良い所どりをしたような立ち位置で、今現在のレーシングホイールの最前線に立つに相応しいパフォーマンスを備えている。加えて、40万円前半という戦略的な価格設定と、どんなバイクにもマッチするグラフィック、そして長い歴史に裏打ちされたブランドへの信頼、そういった要素を考慮すれば、これからのレースシーンで、COMETE 50を見かける機会は増えてくるだろう。

おかえり、マヴィック。



マヴィック COMETE 50
リムハイト:50mm
リム外幅:30mm
リム内幅:23mm
推奨タイヤサイズ:28mm
リム形式:フックドチューブレス
スポーク:マヴィックエアロカーボンスポーク
スポーク数:21本
ハブ:アルミ削り出し、ロックインスポークヘッド構造
ベアリング:マヴィックセラミック
フリーボディ:IShimano HG-R 11/12速、SRAM XDR 12/13速、Campagnolo N3W
重量:ペア 1,315g(フロント 600g / リア 715g)
発売日:2026年7月24日(金)※先行販売50セット限定
価格:434,500円(税込)


text&photo:Naoki Yasuoka
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