後方から超ロングスパートを仕掛けたティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が、ライバル全員を抜き去って2日連続のステージ優勝をマーク。ツール・ド・フランスの区間優勝回数を5回に伸ばすことに成功した。



7月11日(土)第8ステージ
ペリグー〜ベルジュラック 走行距離180.4km/獲得標高1,150m(平坦)


前日5位のリベンジを狙うヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) photo:A.S.O.
前日優勝を叶えたティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.


サッカーW杯ノルウェー代表を応援するウノエックス・モビリティ photo:A.S.O.

スプリンターを抱えるチームにとっては残り3つとなった勝負の日で、スプリンターを抱えないチームにとっては足休めの日。ペリグーからベルジュラックまで「コ」の字を描く180.4kmコースは平坦路で、中盤には2つの4級山岳を含むもののスプリンターを振り落とすものではなく、勝負予想は2日連続の集団スプリントだ。

ラスト500mから最終ストレートが始まり、その前には3つの直角コーナーをこなすのみ。前日優勝したティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)や、タイミング合わずに沈んだヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)など、世界最高峰のスプリンターによるスピードバトル第3ラウンドが繰り広げられた。

第8ステージ ペリグー〜ベルジュラック image:A.S.O.

フランス南西部に位置するヌーヴェル=アキテーヌ地域圏を駆け抜けるこの日、短いアタック合戦を経て、集団からリードを得たのはリアム・スロック(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)だった。累積逃げ距離と敢闘賞獲得回数で見ると他チームを圧倒しているロット・アンテルマルシェに所属する25歳に対し、昨日も逃げたヤコブ・オトルバ(チェコ、カハルラル・セグロスRGA)とティボー・ゲルナレック(フランス、トタルエネルジー)が合流。気温34度に達する酷暑の中、快調にローテーションを回す先頭3名は集団をぐいぐいと引き離していった。

アルノー・ドゥリー(ベルギー)の体調不良リタイアによって戦略変更を強いられたロット・アンテルマルシェと、主催者招待枠で出場を決めたトタルエネルジーとカハルラル・セグロスRGAが一人ずつ送り込んだ逃げグループ。総合成績でたっぷり1時間半前後(スロックは約2時間遅れの総合173位/176人中)遅れている3名は、すぐにリードを得て所属チームのアピールに努めた。

ペリグーの街を出発する第8ステージ。この日も暑さがプロトンを襲った photo:A.S.O.

逃げるリアム・スロック(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)たち photo:A.S.O.

総合勢にとっては平穏な一日。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が集団内で走る photo:A.S.O.

「主催者枠で出場した僕たちのチームにとっては、できる限り逃げにメンバーを乗せることが重要。僕もチームメイトも常にベストを尽くそうとしている」と話すのは、2日連続逃げのオトルバ。メイン集団は昨日と同じくスーダル・クイックステップとアルペシン・プレミアテックがコントロールを担い、昨日と同じくスーダルのパスカル・エインコールン(オランダ)とアルペシンのシルヴァン・ディリエ(スイス)が2人で長時間牽引を行う。かつてオランダとスイスのナショナルチャンピオンに輝いた証である国旗を袖口に巻く、2人の平坦スペシャリストが、3名の逃げグループとの差を最大2分半で押さえ込む。

照りつける太陽の下、スプリンターチームがハイペースを刻んで逃げを追走した。逃げる3名の中で強さをみせたのはスロックで、102km地点の美しい小村に設定された4級山岳「コート・ド・ドム」で他2名を下して1位通過し(街に入る城門が狭すぎたため、1分半後に到達したメイン集団後方が大渋滞になる場面も。)、20km続く中間スプリントではオルトバに差し込まれたものの、2つ目の4級山岳「ル・ビュイソン=ド=カドゥアン」では再び先頭通過。さらにここからオルトバとゲルナレックを置き去りにして独走を開始した。

4級山岳「コート・ド・ドム」で先行するリアム・スロック(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)。この後通過したメイン集団では狭い城門で渋滞するシーンも photo:A.S.O.

シルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・プレミアテック)とパスカル・エインコールン(オランダ、スーダル・クイックステップ)が2日連続の長時間コントロールを披露 photo:A.S.O.

2つ目の4級山岳で抜け出し、ラスト1kmまで逃げたリアム・スロック(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ) photo:A.S.O.

フィニッシュ勝負を見据えるメイン集団は中間スプリントでポイント争いが勃発。例によってXDSアスタナ勢がマックス・カンター(ドイツ)を従えてリードアウトトレインを動かしたものの、フィリプセンがマイヨヴェールを着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)とカンターを押さえ込んで先着。全体の4位通過によって14ポイントを獲得することに成功している。

4級山岳「ル・ビュイソン=ド=カドゥアン」では、このままスプリント勝負に収束するのは面白くないチームが動きを見せた。ピンクが目立つEFエデュケーション・イージーポストがミケル・ヴァルグレン(デンマーク)とカスパー・アスグリーン(デンマーク)を使って15名程度の分断を行ったものの、フィリプセンのアシストを担うマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)が厳しくチェックに回る。結局動きを作り出すことはできず、再びスーダルとアルペシンの牽引に戻った。

念願のツール初出場を叶えたスロックは単独になってもなお平均45km/hのハイペースを維持した。残り10kmで1分リードを維持し、集団の予想を覆す走りを披露していたものの、脚を温存していた各チームのスピードマンが一気にタイム差を縮めてくる。「残り30kmから15kmの間はあまりタイムロスしていなかったので(逃げ切りに)自信を持っていたけれど、幹線道路に入ってからかなりタイムロスしてしまった。その時点で厳しいだろうと悟ったよ」と言うスロックのリードは残り5kmで25秒に。残り1.3kmで踏みやめたスロックは、実にレース距離の99%を逃げるという勇敢な走りで敢闘賞を獲得(ロットにとっては2日連続の敢闘賞)している。

ジャンプアップを狙ったXDSアスタナは連携が取れずに沈み、やはりスーダルとアルペシンを先頭にラスト1kmのフラムルージュを通過する。もう一度主導権を取ろうとXDSが先頭に出たものの、最終ストレートに繋がるラスト500mの直角右コーナーの立ち上がりで、フィリプセンを従えたファンデルプールが発進した。

後方からのロングスプリントを成功させたティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

チームメイトに感謝するティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

連続コーナーによって縦に引き伸ばされたメイン集団先頭を、ラスト200mまでファンデルプール列車が爆走したものの、肝心のフィリプセンはスプリントのタイミングが遅れ、右からオラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)に、左からは後方から一気にポジションを上げたティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)に塞ぎ込まれて失速してしまう。コーイやビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)たちが対抗したものの、既にトップスピードに乗せきったメルリールを捉えるには至らなかった。

最終盤のコーナーで封じ込められて遅れ、ファンデルプールがリードアウトしていた時点で10車身以上も離れていたメルリールが2日連続ステージ優勝をもぎ取った。「ポジション争いで窮地に立たされて危うく転びそうになった。一瞬レースが終わったと思ったけれど、先頭に追いつこうと思って踏み込んだ。ラスト50mでもう無理だと思ったけど、フィニッシュラインが見えてもう一度気合が入った」と振り返るメルリール。ラスト500mの最終コーナーを抜けてからは完全に自力。ロングスプリント中に中切れを埋め、そのまま全員を抜き去るという圧巻の勝利だった。

2連勝をマークしたティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

総合順位に変動なし。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がマイヨジョーヌを堅守している photo:A.S.O.
中間スプリントポイントで加点したことでマイヨヴェールを守ったマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック photo:A.S.O.


敢闘賞はリアム・スロック(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ) photo:A.S.O.

やはり追い上げるスプリントを披露したギルマイが2位に入り、3位はコーイ。今ひとつ本調子に乗せられないフィリプセンは絶好のリードアウトを活かせず4位に甘んじる結果に。報道陣を振り切ってチームバスに戻ったフィリプセンの代わりにインタビューに答えたチーム代表のクリストフ・ルードホフトは「スプリントのタイミングが遅すぎた。昨日は早すぎて、今日は遅すぎた。中間スプリントでうまくポイントを得ることができたのは良い兆候だ」と冷静なコメントを残している。
ツール・ド・フランス2026第7ステージ結果
1位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 3:52:50
2位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)
3位 オラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)
4位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)
5位 パヴェル・ビットネル(チェコ、ピクニック・ポストNL)
6位 リック・プルイマース(オランダ、チューダープロサイクリング)
7位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ジェイコ・アルウラー)
8位 クレマン・リュソ(フランス、グルパマFDJユナイテッド)
9位 マックス・カンター(ドイツ、XDSアスタナ)
10位 ミラン・フレティン(ベルギー、コフィディス)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 28:49:07
2位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +2:42
3位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +3:27
4位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +3:30
5位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +3:34
6位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +3:55
7位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) +4:00
8位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +4:21
9位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) +4:57
10位 セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +7:10
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 228pts
2位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 213pts
3位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム) 203pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 28pts
2位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 19pts
3位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) 16pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) 28:52:34
2位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) +0:07
3位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +0:28
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 86:16:50
2位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +27:01
3位 UAEチームエミレーツXRG +27:08
text:So Isobe
photo:CorVos, A.S.O.

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