混沌の集団スプリントを制したティム・メルリールは「プレッシャーを振り払った」と安堵した。スプリンター勢や、「進化する暑熱対策によって2022年大会より体温を低く保てている」と語るポガチャルのコメントと共に紹介する。
ステージ優勝 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

「プレッシャーを振り払う」ポーズでフィニッシュするティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos
レース直後インタビュー
今回のスプリントが完璧だったかどうかは分からない。混沌としたスプリントで、位置取りも難しかった。それでも良い位置につけたのはチームのおかげだ。今日は僕らとアルペシン・プレミアテックしか、逃げを引き戻そうとしなかった。だからこそ、その2チームから勝者が出てよかった。
ヤスペル(ストゥイヴェン)の後ろになかなかつけず、どの選手の背後につくべきか、まるでカジノのような状態だった。そこでヤスペルの後ろに戻るため、自力で番手を上げていった。その後は前が開き、脚を休ませる余裕も生まれた。だが残り600m付近で再び囲まれてしまった。それでも「フィニッシュまで戦い抜くんだ」と自分に言い聞かせた。そんな状況から勝つことができて、本当に嬉しいよ。
僕にとって今回が3度目のツール・ド・フランス出場で、そのすべてで区間優勝を挙げたことになる。誇りに思うよ。
表彰式後インタビューにて

チームメイトと勝利を喜ぶティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos
─昨日、リードアウトのベルト・ファンレルベルへ(ベルギー)を失った。
彼がいてくれれば、と少し思った。だが、彼の不在はこれからのステージで徐々に大きく感じるようになるのだろう。信頼しているチームメイトで、彼がいればもっと楽に位置取りができただろう。なにせ彼は大きいからね。
ガビリアが内側(右側)から上がってきたので、行き場を失った僕は前の選手たちのスリップストリームに入った。残り距離は把握できていなかったが、そこからスプリントを始めた。そして幸運にも、勝つだけの脚があった。
膝の故障でシーズンインが遅れた。だが復帰2戦目で勝つことができた。そこからツールに向けた2カ月間の準備に入ったが、不安もあった。それでも厳しいステージを終えた後で、スプリント力が衰えていなかったことが嬉しいよ。
─フィニッシュ後、両肩の埃を払うようなパフォーマンスには、どのような意図があったのか。
大会初日のチームタイムトライアル直前、チームバスのミーティングで、CEOのユルゲン・フォレから少しプレッシャーをかけられすぎたんだ。今回は勝利できたので、そのプレッシャーを振り払ったのさ。

今大会初勝利を挙げたティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.
最初の集団スプリントで3位に入り、スプリントの機会は残り4〜5回しかないと分かっていた。また、ひとたび勝利を挙げると、その後も勝ち続ける選手は多い。だから今回のスプリントを前に、確かに怖さも感じていた。だからこそ、3度目のツールで再び勝つことができて本当に嬉しい。
僕が小さい頃、ツールにはもっと多くのスプリントステージがあった。新聞には、今大会はスプリンターにとって最も厳しいツールだと書かれている。ここにいるスプリンターなら、誰もが非常に厳しい3週間だと思うはずだ。残りの選手人生でもグランツールを走り、勝負できる機会があってほしい。そうでなければ、僕らスプリンターが自転車競技で生きていくのは難しくなってしまう。
今回の勝利を、小さい頃に兄と一緒に自転車レースに連れて行ってくれた恩人のベルトラン・キーザーに捧げたい。開幕前にも電話で話した彼の体調が急激に悪化していることを分かっていて、僕がフィニッシュしてから今日の午後(レース中)に亡くなったことを知ったんだ。ジュニアカテゴリーに上がるまでずっとレースに連れていってくれた彼が、僕のレースを見守ってくれたと信じているよ」
ステージ5位に甘んじたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)
良い位置につけていて、実際にスプリントに加わることはできたけれど、スピードが足りなかった。チーム全体が完璧なプレーをしていただけに残念だ。体調が良くなることを願っているけれど、現状を受け入れるしかない。もちろんまだ多くのチャンスは残っていて、もっと脚の状態が良くなればそれらのチャンスを活かせるはず。
ステージ9位&マイヨヴェール マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)

中間スプリントでポイントを稼いだマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がヴェールを維持 photo:A.S.O.
中間スプリント争いはかなりうまくいった。だがフィニッシュスプリントでは、4位から9位までがホイール半分ほどの差に収まる僅差だった。もう少しうまくいけば5位に入れたかもしれない。集団スプリントは僕の得意分野ではないので、この結果には満足している。
ステージ23位 オラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)
橋を越えたあたりで位置を下げてしまった。その後は隊列が入り乱れる中、残り1kmから前へ上がろうとしたのだが、集団先頭までは届かなかった。この後はみんなと映像を見返し、振り返りたい。だが気持ちはすでに明日に向いているよ。
マイヨジョーヌ&マイヨアポワ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)

危なげなくマイヨジョーヌを守ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
─最後に山岳で敗れた2022年大会に比べ、何が向上しているのか。
身体能力は多少なりとも向上していると思う。また精神面でも成長を続け、経験も積んできた。だがチームとして劇的に変わったのは、レース中の水分・栄養補給だろう。例えば今大会は地獄のように暑いが、2022年と比べれば僕の体温は低く保たれていると思う。それだけ体温を下げることに注力しているからね。
─長年、担当の栄養士を務めているゴルカ・プリエト氏について話してくれ。
彼は僕にとって初めての栄養士であり、栄養士の中でもトップクラスだと聞いている。他のチームでは6人がかりで30人ほどの選手を管理するところを、ゴルカは何年も1人でこなしていたのだからね。それに彼は、フィードゾーンでの補給を指示するアプリを開発し、僕らの走りを支えてくれている。良い友人でもある。
text:Sotaro.Arakawa
photo:A.S.O., CorVos
ステージ優勝 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

レース直後インタビュー
今回のスプリントが完璧だったかどうかは分からない。混沌としたスプリントで、位置取りも難しかった。それでも良い位置につけたのはチームのおかげだ。今日は僕らとアルペシン・プレミアテックしか、逃げを引き戻そうとしなかった。だからこそ、その2チームから勝者が出てよかった。
ヤスペル(ストゥイヴェン)の後ろになかなかつけず、どの選手の背後につくべきか、まるでカジノのような状態だった。そこでヤスペルの後ろに戻るため、自力で番手を上げていった。その後は前が開き、脚を休ませる余裕も生まれた。だが残り600m付近で再び囲まれてしまった。それでも「フィニッシュまで戦い抜くんだ」と自分に言い聞かせた。そんな状況から勝つことができて、本当に嬉しいよ。
僕にとって今回が3度目のツール・ド・フランス出場で、そのすべてで区間優勝を挙げたことになる。誇りに思うよ。
表彰式後インタビューにて

─昨日、リードアウトのベルト・ファンレルベルへ(ベルギー)を失った。
彼がいてくれれば、と少し思った。だが、彼の不在はこれからのステージで徐々に大きく感じるようになるのだろう。信頼しているチームメイトで、彼がいればもっと楽に位置取りができただろう。なにせ彼は大きいからね。
ガビリアが内側(右側)から上がってきたので、行き場を失った僕は前の選手たちのスリップストリームに入った。残り距離は把握できていなかったが、そこからスプリントを始めた。そして幸運にも、勝つだけの脚があった。
膝の故障でシーズンインが遅れた。だが復帰2戦目で勝つことができた。そこからツールに向けた2カ月間の準備に入ったが、不安もあった。それでも厳しいステージを終えた後で、スプリント力が衰えていなかったことが嬉しいよ。
─フィニッシュ後、両肩の埃を払うようなパフォーマンスには、どのような意図があったのか。
大会初日のチームタイムトライアル直前、チームバスのミーティングで、CEOのユルゲン・フォレから少しプレッシャーをかけられすぎたんだ。今回は勝利できたので、そのプレッシャーを振り払ったのさ。

最初の集団スプリントで3位に入り、スプリントの機会は残り4〜5回しかないと分かっていた。また、ひとたび勝利を挙げると、その後も勝ち続ける選手は多い。だから今回のスプリントを前に、確かに怖さも感じていた。だからこそ、3度目のツールで再び勝つことができて本当に嬉しい。
僕が小さい頃、ツールにはもっと多くのスプリントステージがあった。新聞には、今大会はスプリンターにとって最も厳しいツールだと書かれている。ここにいるスプリンターなら、誰もが非常に厳しい3週間だと思うはずだ。残りの選手人生でもグランツールを走り、勝負できる機会があってほしい。そうでなければ、僕らスプリンターが自転車競技で生きていくのは難しくなってしまう。
今回の勝利を、小さい頃に兄と一緒に自転車レースに連れて行ってくれた恩人のベルトラン・キーザーに捧げたい。開幕前にも電話で話した彼の体調が急激に悪化していることを分かっていて、僕がフィニッシュしてから今日の午後(レース中)に亡くなったことを知ったんだ。ジュニアカテゴリーに上がるまでずっとレースに連れていってくれた彼が、僕のレースを見守ってくれたと信じているよ」
ステージ5位に甘んじたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)
良い位置につけていて、実際にスプリントに加わることはできたけれど、スピードが足りなかった。チーム全体が完璧なプレーをしていただけに残念だ。体調が良くなることを願っているけれど、現状を受け入れるしかない。もちろんまだ多くのチャンスは残っていて、もっと脚の状態が良くなればそれらのチャンスを活かせるはず。
ステージ9位&マイヨヴェール マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)

中間スプリント争いはかなりうまくいった。だがフィニッシュスプリントでは、4位から9位までがホイール半分ほどの差に収まる僅差だった。もう少しうまくいけば5位に入れたかもしれない。集団スプリントは僕の得意分野ではないので、この結果には満足している。
ステージ23位 オラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)
橋を越えたあたりで位置を下げてしまった。その後は隊列が入り乱れる中、残り1kmから前へ上がろうとしたのだが、集団先頭までは届かなかった。この後はみんなと映像を見返し、振り返りたい。だが気持ちはすでに明日に向いているよ。
マイヨジョーヌ&マイヨアポワ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)

─最後に山岳で敗れた2022年大会に比べ、何が向上しているのか。
身体能力は多少なりとも向上していると思う。また精神面でも成長を続け、経験も積んできた。だがチームとして劇的に変わったのは、レース中の水分・栄養補給だろう。例えば今大会は地獄のように暑いが、2022年と比べれば僕の体温は低く保たれていると思う。それだけ体温を下げることに注力しているからね。
─長年、担当の栄養士を務めているゴルカ・プリエト氏について話してくれ。
彼は僕にとって初めての栄養士であり、栄養士の中でもトップクラスだと聞いている。他のチームでは6人がかりで30人ほどの選手を管理するところを、ゴルカは何年も1人でこなしていたのだからね。それに彼は、フィードゾーンでの補給を指示するアプリを開発し、僕らの走りを支えてくれている。良い友人でもある。
text:Sotaro.Arakawa
photo:A.S.O., CorVos
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