シマノロード用12速コンポーネンツとして唯一の機械式変速が設定されているシマノ105。ワイドなギア比で走れるシチュエーションの幅を広げる12速変速が身近に感じられるR7100系シマノ105をテストした。



待望の機械式変速も登場したシマノ105 R7100系

世界最高峰のレースで鍛え上げられた技術や知見を身近にする存在として位置付けられるシマノ105。上位機のテクノロジーを受け継ぎながら価格を抑えることで、ロードバイクのスピード、反応性を十分に楽しめるコンポーネンツとしてレーサーとホビーサイクリストから支持される存在だ。

シマノ105も上位機のDURA-ACE、ULTEGRAが12速化を果たした後のフルモデルチェンジで12速コンポーネンツへと進化を遂げた。R7100系デビュー当時は先述の上位機と同様に電動変速のDI2のみが展開されることで世界中を驚かせたが、その1年後にシマノは機械式変速モデルをリリースし、シマノ105のラインアップを完成させた。

DURA-ACEとULTEGRAが電動変速オンリーとなった今、シマノ105はこれまでの機械式変速開発で培った技術が最大限に活用されたと言っても過言ではない。そこに12速化に伴って得た知見が加えられたことで、機械式変速を求める方にとっては最良の選択肢となっている。

ブラケット、レバー共に新形状とされている

溝によってグリップ力を高めている

機械式変速機構と油圧ディスクブレーキシステムが同居するデュアルコントロールレバーのブラケット部分は、可能な限りシェイプアップが図られて、かつエルゴノミクスに配慮した形状に仕上げられた。手が小さな方でもフィットしやすいブラケットを実現。またレバー形状も新たな形とすることで、どこからでも指をかけやすく、ブレーキも引きやすさを高めた。

新たに12速用として設計された機械式ディレイラーもシマノのテクノロジーが詰め込まれている。最も変速回数が多く、素早い変速が求められるリアディレイラーのRD-R7100は、これまでシマノが培ってきた機械式変速のフィーリングをそのままに12速化へ。そして、外側が張り出しが少なく、トラブルの可能性を低減してくれるシャドウデザインが採用されている。最大ローギアは36T。

スムーズな変速を実現するトグルリンク構造が採用されたフロントディレイラー

シャドウデザインによって張り出しが小さくなっているリアディレイラー

フロントディレイラーの"FD-R7100"には、シマノのDI2システム開発で得たトグルリンク構造が採用されていることが特徴。ケーブルが内装されることが多い現代のバイクでも、インナーからアウターにチェーンを掛ける際も非常に少ない力で変速が可能となっている。

クランクとカセットスプロケットはDI2と共通のFC-R7100、CS-R7101-12が採用される。これらは12速用に再設計が行われたHGテクノロジーが用いられているため、ディレイラーと合わせてスムーズな変速を実現する。

機械式変速も登場したシマノ105 R7100系

パッドクリアランスが10%拡大されたBR-R7170

チェーンリングのラインアップは50-34Tと52-36Tの2種類で、スプロケットは11-34Tと11-36Tの2種類。これらの組み合わせでギア比1:1以下にも設定できるため、激坂もクリアできる可能性が高まり、ライダーの可能性を広げてくれるはずだ。またクランク長はクランク長は160~175mmまでで、172.5mmも用意されている。

ブレーキキャリパーもDI2と共通のBR-R7170が採用されている。このキャリパーは旧モデルからパッドクリアランスが10%も拡大しており、ライド中にパッドとローターが接触しにくいことが特徴だ。ブレーキのコントロールエリアも広くなっているため、制動力のコントロールが行いやすくなっている。

そんなシマノ105機械式変速をインプレッション。なるしまフレンドの代表鈴木淳さん、そしてシマノ105 DI2のテストも担当したシクロワイアード編集部の高木三千成が新型シマノ105をテストした。



−インプレッション
「機械式ならではの"わかりやすさ"が心地よい」鈴木淳(なるしまフレンド)

「機械式ならではの『わかりやすさ』が心地よい」鈴木淳(なるしまフレンド)
なんだか久しぶりに機械式変速に触った気がしますが、この「わかりやすさ」はメカニカルならではですよね。まず、レバーごとの機能が変わらないというのは大きい。電動コンポーネントだと、割当てを変更してしまうことも出来るじゃないですか、それはもちろんメリットなんですけど、初心者にとっては覚えづらかったりする面もあると思うんですよね。

それと、レバーの操作感もわかりやすい。しっかりと操作したことのフィードバックがあります。特にこれからの時期、ロングフィンガーのグローブが必須になりますけども、操作ミスはまず起きないでしょう。

そういった機械式変速の良い点はしっかりと残しつつ、電動コンポーネントの良い所も取り入れていると感じました。例えばブラケットの形状も、以前に比べると薄くなっていて握りやすくなっているように感じました。DI2と比べればもちろん太いのですが、その使い心地に近づけようとしているのだと思います。

逆に大きいことによるメリットもありますよ。例えば頭の部分が大きいので、手がすっぽ抜けづらいのは安心感がありますよね。グラベルやシクロクロスではもちろん、オンロードでも予期せぬ段差でハンドルを取られることがありますが、そういった時でもハンドルから手が外れる危険性も小さくなります。

変速性能についても、機械式の中では非常に速いし軽いと思います。ただ、電動コンポーネントがここまで市民権を得ていることを考えると、やはり重い部分はありますね。特に手が小さかったり、力が弱い方が使うのであれば、電動が良いでしょう。

「レバーはコンパクトになって握りやすくなった」鈴木淳(なるしまフレンド)

ブレーキ周りは基本的にDI2と共通ですし、ストッピングパワーもコントロール性も問題ありません。機械式STIならではのブレーキレバーの横への動きは少し気になるところもありますが。

総じて、12速コンポーネントを身近にしてくれるという意味では非常に重要な役割を持っている存在だと思います。ギア比のワイドレンジ&クロスレシオ化をはじめ、12速のメリットというのは確かにありますし、仲間とホイールの貸し借りがしやすくなったりといった要素もありますよね。そういった要素を重要視する方へ向けた12速時代への入り口として、必要とされる性能を確保しつつ間口を広げたコンポーネントと言えるでしょう。

「上位グレードに匹敵するような変速性能を備えたモデル」高木三千成(シクロワイアード編集部)

「ダンシングでもシフトレバーにリーチしやすい」高木三千成(シクロワイアード編集部)

旧世代のDURA-ACEやULTEGRAの機械式変速に匹敵するような変速性能を実現しており、驚きました。申し分ない性能どころか、機械式変速であればシマノ105で上位グレードが抜けた穴をカバーできていると言っても過言ではありません。

今回テストを行ったバイクはリドレーのFenix SLiCで、ケーブルはハンドルの内部を通るフル内装として組み上げられていました。ハンドルやフレームの内側にケーブルを通すために窮屈なワイヤリングをしてしまうと変速性能はどうしても低下しがちですが、今回のテストバイクでは変速で不満を感じることはありませんでした。

シフターのクリックがはっきりとしているので、リアのギアを上げ下げする時に操作感がわかりやすく、シフターを押し込むとスッと素早く変速が決まってくれるので気持ちが良かったです。変速が重くなりがちなフロントはレバーとギアチェンジどちらとも力を必要としないかのように軽いフィーリングでした。

パリ〜ルーべを走るレーサーがあえて機械式を選択したり、ペーター・サガンが好んで使っていたりするように、機械式変速は操作のクリック感や、間違いのない確実な操作を好む方に向いています。ハードに機材を使うシクロクロッサーにはうってつけじゃないでしょうか。実際に自分もシクロクロスバイクには機械式変速/油圧ディスクブレーキのULTEGRAを使っていますし、そこで12速変速を使いたい場合はシマノ105という選択肢はありだと思います。

「ダンシングでも重量感を感じないブラケットとなっている」高木三千成(シクロワイアード編集部)

旧来のハイグレードとの比較ではブラケットがシェイプアップされているのも美点でした。だいぶ細くなって握りやすなっています。これはブラケットが大きかった105同士で比較するとその差は大きなものとなっているはずで、手が小さな方でもブラケットを扱いやすいサイズ感になりました。

旧モデルはブラケットの先端が非常に大きくて、ダンシングをしてバイクを左右に振った時に重量を感じやすいことがネックだったのですが、新モデルでは重量感はありつつも、先端部分がスリムとなったおかげでダンシングの影響は減っていて、上りなどでストレスに感じにくくなっていると思います。

それに合わせてレバーの形状も人差し指、中指がかかりやすく、どこを握っても確実に操作が行えるようになっています。特にブラケットフードを握るポジションでもレバー操作を軽く行えて、もちろんハンドルのドロップ部からも指をかけやすく、全体的に扱いやすさは増しましたね。

シマノ105ではチェーンリングの最大サイズが52Tで、スプロケットは34Tもしくは36Tの設定です。このギア比があればアウターローで登り切れる場面は多くなると思いますし、インナーであれば1:1に迫るギア比となるので激坂でも対応しやすくなるはずです。ロー側のギアが11速よりもクロスレシオとなることで、ギアの使い方も11速と12速では変わり、その恩恵は受けられるでしょう。



インプレッションライダーのプロフィール

鈴木淳(なるしまフレンド)鈴木淳(なるしまフレンド) 鈴木淳(なるしまフレンド)

日本屈指のスポーツバイクショップとして知られるなるしまフレンドを代表として率いる。ツール・ド・台湾に参加するなど実力派レーサーとして知られ、MTBやシクロクロスでも活躍。今はサイクリングを楽しみつつ、トライアスロンにも参加中。24年の目標は富士ヒルクライムでブロンズを獲得すること。

なるしまフレンド神宮店
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高木三千成(シクロワイアード編集部)高木三千成(シクロワイアード編集部) 高木三千成(シクロワイアード編集部)

学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。


text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
シマノ105 メカニカル変速モデル スペック一覧
タイプ 品番 税込価格
リアディレイラー RD-R7100 12-Speed - 7,687円
フロントディレイラー FD-R7100 バンドタイプ φ34.9mm - 5,525円
フロントディレイラー FD-R7100 バンドタイプ φ31.8mm - 5,584円
フロントディレイラー FD-R7100 直付 - 5,286円
カセットスプロケット CS-R7100 11-34T - 7,700円
カセットスプロケット CS-HG710 11-36T - 10,230円
デュアルコントロールレバー ST-R7120 R7120 左 - 24,438円
デュアルコントロールレバー ST-R7120 R7120 右 - 24,438円
油圧ディスクブレーキ BR-R7170 フロント - 8,690円
油圧ディスクブレーキ BR-R7170 リア - 8,140円
クランクセット FC-R7100 50X34T、52×36T 160、165、170、172.5、175mm 21,010円
ディスクローター SM-RT70 140mm - 4,354円
ディスクローター SM-RT70 160mm - 3,816円
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