ツール・ド・九州第2ステージが、熊本県の南小国町から南阿蘇村までの108kmで行われ、残り10kmを切って単独先行したアンドレイ・ゼイツが優勝。アントニオ・ニバリが2位となり、アスタナ・カザクスタンチームの1-2フィニッシュとなった。3位に留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)が入り、新人賞を獲得した。



スタートラインに揃った4賞ジャージ ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

くまモンが応援に駆けつけた ©️ツール・ド・九州2023実行委員会
マイナビ ツール・ド・九州2023の第2ステージは、熊本県の阿蘇山周辺でのレース。南小国町の滝の本レストハウスをスタートし、阿蘇山のカルデラの中を抜け、後半は南阿蘇村にある道の駅「あそ望の郷くぎの」前をフィニッシュとする1周11.5kmの周回コースを5周する。序盤にスプリントポイントが1ヶ所、カルデラの中を進んだ箱石峠に1級山岳、周回コースに入ってからはケニーロードへの登りが1級山岳に指定され、計6回の1級山岳を通過することになる。周回コース部分は前半が登り、後半は下りとなり、登り区間は3kmで高低差200mを一気に駆け上がる。頂上に近づくほど道幅が狭まって斜度がきつくなり、集団の人数がかなり絞られることが予想される。

大雨の中スタート ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

雨に煙る阿蘇山 ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

前日までの天気から一転して朝から大雨。標高の高い阿蘇山周辺は通常でも気温が低めだが、南小国町ではスタート1時間前にこの日の最低気温13.6℃を記録。選手達はレインウェアと防寒対策をしてスタートラインに並んだ。

序盤に形成された先頭集団 ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

阿蘇山のカルデラの中を集団が行く ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

14.7km地点に設定されたこの日唯一のスプリントポイントは、総合首位でありポイント賞首位でもある兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が先頭通過。その後、26.8km地点の1級山岳・箱石峠へ向けて第1ステージでも逃げに乗った横塚浩平(VC福岡)と、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が飛び出す。そこにロニラン・キータ(ゴーフォアゴールド・フィリピン)と、ニコラス・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタンチーム)の2名が合流して4名の先頭集団が形成される。

箱石峠の山岳賞は横塚が先頭通過。20秒ほどの差でメイン集団が続く。その後の下りでメイン集団が先行する4名を捉え、ひとつの集団となって周回コースに入っていく。

ひとつの集団となって周回コースの登りに入った photo:Satoru Kato

1級山岳・ケニーロードへの登りは上に行くほど斜度がきつくなる ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

1回目の1級山岳・ケニーロードは留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)が先頭通過。集団はバラバラになり、1周目を終えるまでに12名が先行する。メンバーは以下の通り。

アントニオ・ニバリ、アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタン)
石上優大(愛三工業レーシングチーム)
ウィリアム・イープス(ARAスキップ・キャピタル)
門田祐輔、留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)
ベンジャミ・プラデス、ネイサン・アール(JCLチーム右京)
ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)
ジャンバルジャムツ・センベイヤール(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)
ベンジャミン・ダイボール、レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)

木立の中を登っていく集団 ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

「何度かジャブを打ってみた」と言う留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) photo:Satoru Kato
リーダージャージを着る兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)は集団内で走行 photo:Satoru Kato


終盤、先頭集団の前で動く留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

3周目にアタックしたライアン・カバナ(キナンレーシングチーム) photo:Satoru Kato

3周目、12名の中からカバナがアタックして30秒のリードを築く。4周目に入ると、ニバリ、ゼイツ、留目ら7名が合流。後続との差は1分近くまで広がり、勝負は8名に絞られた。

残った8名で最終周回へ photo:Satoru Kato

最終周回、アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム)が単独先行 ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

最終周回の5周目、登り区間に入ってゼイツが加速すると、8名の集団は崩壊。最後の1級山岳をゼイツ、ニバリ、留目の順に通過するも、ゼイツはリードを広げてケニーロードを下っていく。そのままフィニッシュまで独走したゼイツが第1ステージ優勝。2位は留目を下したニバリが入り、アスタナ・カザクスタンチームが1-2フィニッシュ。今大会唯一のワールドチームの力を見せつけた。

3位の留目が日本人最高位のベスト・ジャパニーズライダー賞を獲得。総合3位に浮上し、新人賞ジャージも獲得した。

残り10kmを独走したアンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタン)が優勝 photo:Satoru Kato

1-2フィニッシュを決めた2人に囲まれたアレクサンドル・ヴィノクロフ(アスタナ・カザクスタンチーム) ©️ツール・ド・九州2023実行委員会
総合首位 アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム) photo:Satoru Kato


第2ステージ優勝 アンドレイ・ゼイツ 表彰式でのコメント
「人生初めての日本に来られてたことを嬉しく思う。ヨーロッパと7時間の時差があるのでこの数日はよく眠れていなかった。今日は天気が悪かったけれど、良い結果を残すことが出来た。明日も首位を守っていきたい。このレースに招待していただいたことと、たくさんの応援に感謝します」


新人賞 留目夕陽「世界選手権の頃からずっと調子が良い」

留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)が新人賞ジャージを獲得 photo:Satoru Kato

個人的には周回の登りで集団の人数を減らして、4、5人に絞られたところで飛び出す作戦だった。レースは予想していた通り周回が進むごとに人数が減っていき、残ったメンバーは各チーム2人ずついたこともあって牽制状態になってしまうことが何度かあったので、後ろに追いつかれるのはもったいないので、ジャブを打ってみようと何度かアタックしてみた。山岳賞も欲しかったのもあるけれど、結局はラスト1周の登りでアスタナに行かれてしまい、ついて行けなかった。

3位でフィニッシュする留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) photo:Satoru Kato

自分は暑い日でも寒い日でも大丈夫なので、今日はとにかく着込んで低体温にならないようにしてスタートした。お腹にビニール袋を巻くとか、小さいことだけれどそれが今の自分のコンディションにも繋がっていると思う。

世界選手権の頃から調子が良くて、ラヴニール、キャンセルになってしまったツール・ド・北海道、JBCFのレースと、ずっと調子が良い状態が続いている中でこのレースを迎えた。ベストではないけれど9割方仕上がっていると思う。

明日はどちらかと言うと平坦寄りなコースなので、あまり活躍できないステージになってしまうかもしれないが、少しでも総合順位を上げられるようにしたい。チームにはスプリンターがいないけれど、小集団の逃げを作るとか、手はあると思う」


ポイント賞 兒島直樹「明日はチーム一丸でポイント賞を守り抜く」

ポイント賞は兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が維持 photo:Satoru Kato

最初のスプリントポイントまではチームでコントロールしようかと考えていたが、思った以上にみんなバンバン行って下りもすごい勢で行くのでちょと怖かった。でも最初のスプリントポイントは獲りたかったので、窪木(一茂)さんと松田(祥位)さんに牽引してもらった。スプリントポイントの場所をみんな間違えていて残り250mでみんなやめてしまい、でも残り200mの看板があったのでまだ先だと思ってモガいて、1人先行していた選手をギリギリ差して1位通過した。

周回に入ってからは先頭について行きたかったけれど、1周目からあまりにも速くて心が折れてしまった。でも同じ集団にアスタナの選手が4名いてペースメイクしてくれ、窪木さんもいたので、大きく遅れることなくレースを終えられた。

明日のコースは比較的平坦に近いレイアウトでスプリントポイントとフィニッシュあわせて4回。松田さんが今日降りてしまったので5人で戦うことになるが、チーム一丸となってポイント賞を守り抜きたい。



最終日の第3ステージは大分県でのレース。オートポリスをスタートし、日田市内の周回コースでフィニッシュする。留目や兒島のコメントにもある通り、日田の周回コース部分はアップダウン控えめで平坦に近い。個人総合の1位・2位を占めたアスタナ・カザクスタンが徹底したコントロールを見せるか。3位留目と2位ニバリとの差は2秒しかなく、中間スプリントのボーナスタイムで逆転の可能性もある。しかしポイント賞堅守を目標とする兒島直樹とチームブリヂストンサイクリングが動くと思われ、留目の2位浮上は難易度が高そうだ。

一方で、山岳賞は首位ベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)と2位留目との差が2ポイント。周回コースに入る前に設定された4級山岳と3級山岳は、激しい争いとなりそうだ。
マイナビ ツール・ド・九州2023 第2ステージ結果(107km)
1位 アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン) 2時間57分12秒
2位 アントニオ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム、イタリア) +21秒
3位 留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム、日本) +21秒
4位 ウィリアム・イーブス(ARAスキップ・キャピタル、オーストラリア) +25秒
5位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京、スペイン) +25秒
6位 ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島、オーストラリア) +44秒
7位 レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島、ベネズエラ) +44秒
8位 ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム、オーストラリア) +1分13秒
9位 石上優大(愛三工業レーシングチーム、日本) +2分9秒
10位 谷 順成(宇都宮ブリッツェン、日本) +2分24秒
個人総合成績
1位 アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン) 6時間15分50秒
2位 アントニオ・ニバリ(アスタナ・カザクスタンチーム、イタリア) +25秒
3位 留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム、日本) +27秒
4位 ウィリアム・イーブス(ARAスキップ・キャピタル、オーストラリア) +33秒
5位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京、スペイン) +35秒
6位 レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島、ベネズエラ) +54秒
ポイント賞
1位 兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング、日本) 31p
2位 アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン) 25p
3位 ジャンバルジャムツ・セインベヤール(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム) 25p
山岳賞
1位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテ(JCLチーム右京、スペイン) 44p
2位 留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム、日本) 42p
3位 アンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム、カザフスタン) 31p
チーム総合成績
1位 EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム 18時間58分36秒
2位 JCLチーム右京 +1分59秒
3位 ボルトンエクイティース・ブラックスポーク +7分1秒

text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato, ツール・ド・九州2023実行委員会


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