総合優勝候補のサイモン・カーが逃げに乗ったツール・ド・ランカウイ第3ステージ。勝負は3日連続の集団スプリントに持ち込まれ、注目の若手スプリンターであるジョージ・ジャクソン(ニュージーランド、ボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリング)が制した。



リラックスした表情でスタートを待つチューダー・プロサイクリングチーム photo:Tour de Langkawi

JCLチーム右京が参戦するアジア最高峰のステージレース、ツール・ド・ランカウイ(UCI2.Pro)は3日目。その戦いの場は海岸線を離れ、マレー半島の内陸を走る183.1kmで争われた。ジュリを出発した直後に緩斜面の2級山岳と1級山岳を越え、一度下ってから2級山岳をクリア。終盤にも3級山岳が設定されているが、頂上地点が残り38km地点のため集団スプリントが濃厚と見られた。

この日は中国籍のコンチネンタルチームであるジャイアント・サイクリングチームの選手たちを乗せたバスがホテルからスタート地点に向かう途中で事故にあい、出走時間に間に合わないトラブルが発生。そのためチームは3名を欠くペンガイ・デング(中国)ただ一人という状況のなか、午前10時17分にスタートが切られた。

逃げにサイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)が入るサプライズ photo:Tour de Langkawi

獲得標高差3,600mに達するステージで逃げグループを形成したのは、ゼッケン1のサイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)を含む10名。その中にグリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネは2名を送り、トレック・セガフレードから今年チューダー・プロサイクリングチームに移籍したシモン・ペロー(スイス)も入った。

一方のメイン集団はボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリングなどが牽引する。逃げの10名は山岳を越える度に人数を減らしながら、カテゴリー山岳の頂上はペローが先頭通過して山岳賞ジャージを獲得。カーやペローを含む6名となった逃げグループは、スプリンターが脱落して50名程度に減ったプロトンに対し、残り20km地点を1分差で通過した。

プロトンはスプリントに持ち込みたいボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリングなどが牽引した photo:Tour de Langkawi

スプリンターたちが遅れるなか、JCLチーム右京は山本大喜と小石祐馬がプロトンに残る photo:JCL Team UKYO

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)を兄に持つアッティリオで勝負したいチーム・コラテックが牽引に本腰を入れ、逃げとの差は一気に縮小する。そしてフィニッシュ手前8kmで逃げが吸収され、怪我のため下部チームに所属し、来年よりトップチームに復帰するミケル・ヴァルグレン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックを試みる。

しかしこれは集団によって引き戻され、グリーンプロジェクトが先頭に人数を固めながら最終ストレートに突入。そして3日連続のスプリントはここまで5位、3位と勝利に迫っているエンリーコ・ザノンチェッロ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)がスプリントを開始。だが勝利は、トップスピードでザノンチェッロを上回った、ジョージ・ジャクソン(ニュージーランド、ボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリング)が手に入れた。

スプリントを制したジョージ・ジャクソン(ニュージーランド、ボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリング) photo:Tour de Langkawi

今季3勝目を飾ったジョージ・ジャクソン(ニュージーランド、ボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリング) photo:Tour de Langkawi

長髪がトレードマークのジャクソンは今年プロデビューをした23歳のスプリンター。「この勝利にかなり興奮している。逃げを追いかけてくれたチームメイトに感謝したい」と喜ぶ。ジャクソンは直前(9月14〜17日)に中国で行われたツアー・オブ・チンハイレイク(UCI2.Pro)では区間2勝(+総合優勝)を挙げ、その勢いをランカウイでも発揮した。

JCLチーム右京は日本王者の山本大喜と小石祐馬が先頭集団でフィニッシュし、総合争いで好位置をキープしている。
ツール・ド・ランカウイ2023第3ステージ結果
1位 ジョージ・ジャクソン(ニュージーランド、ボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリング) 4:14:13
2位 エンリーコ・ザノンチェッロ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)
3位 カルロス・カナル(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
4位 ヘイス・ファンフッケ(ベルギー、ヒューマンパワードヘルス)
5位 イェロン・メイヤース(オランダ、トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)
25位 山本大喜(JCLチーム右京)
46位 小石祐馬(JCLチーム右京)
個人総合成績
1位 エンリーコ・ザノンチェッロ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ) 12:55:05
2位 ジョージ・ジャクソン(ニュージーランド、ボルトンエクイティース・ブラックスポークプロサイクリング) +0:04
3位 サイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:06
4位 カルロス・カナル(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
5位 ジョアン・ボウ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
その他の特別賞
ポイント賞 アーヴィッド・デクレイン(オランダ、チューダー・プロサイクリングチーム)
山岳賞 シモン・ペロー(スイス、チューダー・プロサイクリングチーム)
チーム総合成績 グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ
text:Sotaro.Arakawa
photo:Tour de Langkawi