北欧ノルウェーを舞台にしたツアー・オブ・ノルウェーが閉幕。4日間に縮小しながらも、豪華メンバーが集った大会最終日で地元アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)が勝利。ベン・トゥレット(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が総合優勝を手にした。



北欧ノルウェーで開催されたツアー・オブ・ノルウェー photo:CorVos

ジロ・デ・イタリアの第3週目にあたる5月26日〜29日にかけ、北欧ノルウェーで開催された「ツアー・オブ・ノルウェー(UCI.Pro)」。今年は昨年の6日間から全4日間にスケールダウンしたものの、ワールドチームが計8チーム出場するなどその豪華さは健在。昨年総合優勝を飾ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)は不在ながら将来を嘱望される若手選手たちが集った。

レースは初日のプロローグ(個人タイムトライアル)から1日目〜3日目まではフィヨルドの複雑な地形を生かした丘陵コースが主。そのためクライマーやピュアスプリンターではなく、オールマイティな脚質を持ったマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)やヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)などが顔を揃えた。

初日プロローグをベン・トゥレット(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が勝利 photo:CorVos

初日プロローグの7.4km個人TTを制したのはベン・トゥレット(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)だった。小柄ながらもTTも得意なトゥレットは、コース後半に設定されたフロイエン山(距離3.5km/平均8.8%)を軽快に駆け上がり、14分28秒のトップタイムをマーク。それにはチームメイトのシェフィールドも僅か1秒届かず、トゥレットがプロ通算2勝目と共にリーダージャージに袖を通した。

悪天候のため206kmから85.2kmの短縮コースで争われた第1ステージ。雨が降る序盤にハイス・レームライゼ(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)ら4名が逃げたものの、イネオス・グレナディアーズが先導するメイン集団によって早々に吸収される。勝負は緩斜面での集団スプリントに持ち込まれ、マイク・トゥーニッセン(オランダ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)がトビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、チームDSM)とヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)とのハンドル投げを制した。

第1ステージ:悪天候でコース短縮の2日目をマイク・トゥーニッセン(オランダ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が制す photo:Tour Des Fjords

第2ステージ:登坂スプリントを制したティボー・ネイス(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:CorVos

第2ステージはスタート直後に1級山岳(距離21.9km/平均3.6%)を登り、勾配の緩い2級山岳を経て最後は距離1km/平均5.5%の丘を登る丘陵ステージ。ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)やケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、チームDSM)らワールドチームのメンバーを含む9名が逃げグループを形成し、イネオスがプロトンを先導して追う展開に。

残り30km地点でデボントとヴェルマークら3名が逃げ集団から抜け出しフィニッシュを目指したものの、残り2kmであえなく吸収。最後の丘でノルウェー国内王者のラスムス・ティレル(ウノエックス・プロサイクリングチーム)が仕掛けたもののストゥイヴェンによって引き戻され、その後ろから飛び出したティボー・ネイス(ベルギー、トレック・セガフレード)が2日目の勝者に輝いた。偉大なシクロクロス王者、スヴェンを父に持つティボー・ネイスにとっては今年1月のトレック・セガフレード加入後プロ初勝利。シクロクロスで既にU23世界タイトルなど実績をあげている二世が、ロードでも大きな一勝を掴んでいる。

大会最終日の舞台は、過去にハンマーシリーズの開催地となった北海沿岸の港湾都市スタヴァンゲル。前日に続きデボントが逃げたものの残り24kmで吸収され、散在的なアタックもイネオスが潰す。コーナーが連続するテクニカルなコースに集団は一列棒状となり、アシストを失い単騎のスプリントエースたちが最終ストレートで一斉に腰を上げる。しかし、勝利したのは唯一リードアウトを残したウノエックス・プロサイクリングチームのエース、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)だった。

第3ステージ:大会最終日の集団スプリントをアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)が勝利 photo:CorVos

移籍後初勝利を挙げたアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム) photo:CorVos

ツアー・オブ・ノルウェー2023総合表彰台:2位シェフィールド、1位トゥレット、3位ネイス photo:CorVos

アンテルマルシェから今年母国チームに移籍後2勝目を飾ったクリストフは「一日を通して良い走りを見せたチームメイトに感謝。地元で優勝することができ、心から誇りに思う」と語った。

そして総合優勝は、初日のプロローグ勝利からリーダージャージを譲ることなくキープしたトゥレットの手に。「ステージレースで初めて挙げた総合優勝が意味するものは大きい。僕の将来の目標は総合順位を争う選手になること。どんな未来が待っているかはわからないが、この結果は将来に向けたモチベーションとなる」とトゥレットは喜んだ。総合2位にトゥレットと同じ21歳のシェフィールドが入ったため、イネオスにとっては若手が活躍する大成功の大会となった。
プロローグ(5月26日)結果
1位 ベン・トゥレット(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 14:28
2位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) +0:01
3位 アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ユンボ・ヴィスマ) +0:20
第1ステージ(5月27日)結果
1位 マイク・トゥーニッセン(オランダ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) 1:58:30
2位 トビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、チームDSM)
3位 ヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)
第2ステージ(5月28日)結果
1位 ティボー・ネイス(ベルギー、トレック・セガフレード) 4:18:33
2位 エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:01
3位 ベン・トゥレット(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
第3ステージ(5月29日)結果
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム) 3:19:17
2位 トビアスルンド・アンドレースン(デンマーク、チームDSM)
3位 ヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)
個人総合成績
1位 ベン・トゥレット(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 9:50:45
2位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) +0:05
3位 ティボー・ネイス(ベルギー、トレック・セガフレード) +0:23
その他の特別賞
ポイント賞 ティボー・ネイス(ベルギー、トレック・セガフレード)
山岳賞 ジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ヤングライダー賞 ベン・トゥレット(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
チーム総合成績 EFエデュケーション・イージーポスト
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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