DMTが3Dニット生地とマイクロファイバーを組み合わせたハイブリッドロードシューズ"SH10"を2023モデルとしてラインアップ。前モデル"SH1"よりもフィット感が向上し、ホールド感もアップしたビンディングシューズをインプレッションしていく。



DMT SH10(Black/Black) photo:Michinari TAKAGI

タデイ・ポガチャルらトッププロ選手が着用するKR SLやKR0のテクノロジーを多く受け継ぐDMTのセカンドグレード「SH1」がモデルチェンジし、後継モデルSH10としてラインアップされている。SH1と同様にハイブリッド3Dエンジニアードニット生地とマイクロファイバーを組み合わせたアッパーを採用しているが、3Dニット生地の範囲が広範囲になり、よりニット素材特有のフィット感が向上したことが大きな変更点だ。

クロージャーシステムに用いられたBOAダイヤル2個という構成はSH1同様だが、足首側とつま先側それぞれブラッシュアップが施されている。マイクロファイバー製ストラップと組み合わせ固定力を高めた足首側はダイヤルをアッパー側に移設され、つま先側はワイヤーのループを8の字にすることでフィット感の向上を狙っている。BOAダイヤルはL6だ。

SH1の後継モデルであるSH10 photo:Michinari TAKAGI

ワイヤールーティングがより広範囲に photo:Michinari TAKAGI

マイクロファイバー構造のヒールカップを採用 photo:Michinari TAKAGI

セカンドグレードといえどもアスリートのペダリングパワーを受け止められるほどの高い剛性を備えるアナトミックカーボンアウトソールが搭載され、レーサーが好むビンディングシューズに仕上がっている。また、8mmの可変クリートマウントによってクリート位置の自由度は高くなっている多くのサイクリストに合うはずだ。

踵にはマイクロファイバーを使用したヒールカップを採用。さらにシューズ内側にグリッパーを施し踵のホールド力を高めているため、力強いペダリングでも足がずれにくく、安定かつ効率の良いペダリングを実現している。

高剛性なアナトミックカーボンアウトソール photo:Michinari TAKAGI
8mmの可変クリートマウント photo:Michinari TAKAGI


シューズの内側にグリッパーを搭載 photo:Michinari TAKAGI

インソールに無数のパンチング加工で通気性が向上 photo:Michinari TAKAGI
インソール裏にサイクリストと道をデザイン photo:Michinari TAKAGI


カラーはBlack/WhiteとBlack/Blackの2色展開で、タンの位置と踵にオレンジのDMTロゴが挿し色で入るシンプルなデザインでウェアコーディネートしやすい。側面のブランドロゴとモデル名"SH10"の反射プリントが施され、被視認性も考慮しているため、安全性にも優れる。

重量は前モデル"SH1"が245g(42サイズ)だったのに対し、新モデル"SH10"は220g(42サイズ)と25gも軽くなっている。サイズは37~44(ハーフサイズ40.5~43.5)の豊富なサイズ展開となっている。価格は39,600円(税込)。



ー編集部インプレッション

KR0とSH1をインプレッションしてきたCW編集部の高木がテストしていく photo:Gakuto Fujiwara

今回、DMT SH10をインプレッションするのはCW編集部の高木。足のサイズは27.0cm、普段のレースやトレーニングで着用しているジャイアントのシューズは42サイズ。シマノやスペシャライズドでは42サイズ、ジロを履く場合は43サイズを選択している。また筆者の足は土踏まずのアーチは高め、親指の厚みがあり、母指球から小指球まで幅があるため、横幅が広めのブランドのシューズとの相性が良い。

これまでにDMTのロードシューズではKR0とSH1をインプレッションしてきたが、両モデル共に42.5サイズがぴったり。今回は42.5と43サイズを借り受け、履き比べてみたが、前モデル"SH1"と同様のサイズ感で今回も42.5サイズがジャストサイズだった。

ニット素材はしなやかで、ソックスを2枚重ねするような履き心地 photo:Gakuto Fujiwara

DMTのニットシューズは共通してくるぶしソックスを履くかのような着用感で、まるでソックスを2枚重ねているかのような履き心地となる。SH10もつま先部分がニット、踵部分がマイクロファイバーというハイブリッドながら、つま先部分の包み込むようなフィット感がDMTらしいところ。具体的にはしなやかなアッパーが足の甲の形に合わせて馴染む印象がそう思わせる。

さらにSH10では3Dニットの範囲が前作よりも後方、くるぶしの下まで広がったことで、ペダリング時の足首の動きを前作以上に追従してくれるようになった。気持ちよくペダリングが可能となっている。

前足部のしなやかさが際立つのと同時に、SH10ではつま先部分のワイヤールーティングが変更されたことで、前足部の締め付けを強くすることが可能となっている。ホールド力も確保されていることも魅力だ。

非常に薄手の生地なので見た目からの第一印象として、BOAダイヤルが足に食い込みそうなイメージを持つかもしれないが、その心配は必要なく、BOAダイヤルが足に当たる不快感は一切ない。

BOA L6ダイヤルの側面はグリップが搭載され操作しやすい photo:Gakuto Fujiwara

つま先にグリッパーがないため、ペダルキャッチしやすい photo:Gakuto Fujiwara

今回は埼玉の平地を抜け、秩父の山々を超える150kmのテストライドを行った。この時期の強い北風に立ち向かうようなパワフルなペダリングでも、パワー伝達性能に優れるカーボンアウトソールのおかげで、一踏み一踏みが確実に推進力になっている感覚があった。

また、上りで踏み込みながらも、引き足を強く使うヒルクライムシーンでは、ニット素材が足首の動きに追従してくれるため、足全体を使ったダイナミックなペダリングが可能だ。自然なフィーリングでペダリングできることがSH10の良さだ。

引き足でもストラップのおかげでニットアッパーが伸びすぎない photo:Gakuto Fujiwara

インドアサイクリングでもテストを実施してみた。スマートトレーナーにバイクが固定された状態だと実走よりも引き足の比重が高くなり、アッパーの強度などが重要となってくるが、マイクロファイバーのストラップのおかげでニット素材が伸びすぎるのを防いでくれるため、思い切ったペダリングが可能だった。

通気性に関しては、アッパーがニット素材のため、全体的に満遍なく風が抜けていく印象。さらに、インソールがアップデートされ、全体的にパンチング加工が施されている。アウトソールはつま先部分に通気口が設けられ、風が入り込み、インソールを抜け、シューズ内は蒸れることなく快適な状態が保たれていた。

高剛性なカーボンソールによりパワー伝達に優れる photo:Gakuto Fujiwara

SH1はKR0などにつぐモデルながら、今回のテストでフラッグシップモデルと言える性能を備えたシューズに感じた。SH10はホールド感を求め、引き足を多用するサイクリストにぴったりなシューズである。また、足の甲が高い方にも合うシューズなので、シューズで悩んでいる方に是非お勧めしたい。



DMT SH10
カラー:ブラック、ホワイト
サイズ:37~44(40.5~43.5までハーフサイズあり)
重量:220g(42サイズ)
価格:39,600円(税込)

text:Michinari TAKAGI
photo:Michinari TAKAGI&Gakuto Fujiwara
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