アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)にとってキャリアハイのシーズンとなった2022年。パリ〜ルーベ・ファムを含む春のクラシックやジロ・ツール・ブエルタの3つのステージレース、世界選手権などを主要レースを中心に振り返ります。



ファンフルーテンを振り切りロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)が勝利ファンフルーテンを振り切りロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)が勝利 (c)RCS Sport
コロナ禍でカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースが2年連続の中止となったため、今年も砂埃舞う未舗装路を走るストラーデビアンケ(3月5日)で幕開けした2022年のUCIウィメンズワールドツアー。最後の石畳坂で仕掛けたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)に食らいつき、スプリント力で上回ったロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)が初優勝を飾った。

春のクラシック前半戦で活躍が目立ったのは2021年ロード世界選手権王者エリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)。24歳の若きスプリンターはマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)を下したヘント〜ウェヴェルヘム(3月27日)を含め、ワールドツアー3連勝と世界王者の強さをアピールした。

アルカンシエルも強さを十二分に見せつけたエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)アルカンシエルも強さを十二分に見せつけたエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
集団スプリントでは無敵と言っていい強さを誇ったロレーナ・ウィーベス(オランダ、チームDSM)集団スプリントでは無敵と言っていい強さを誇ったロレーナ・ウィーベス(オランダ、チームDSM) photo:CorVos
しかし、集団スプリントではロレーナ・ウィーベス(オランダ、チームDSM)の強さが頭一つ抜けていた。ロンド・ファン・ドレンテ(3月13日)でバルサモとの直接対決を制したウィーベスは、ライド・ロンドンクラシック(5月27〜29日)の3戦全勝を皮切りにシーズン21勝と手がつけられない強さを誇示。自身初となるヨーロッパ選手権制覇に加え、ツール・ファムで区間2勝を飾った23歳は圧巻の一言だった。

今年最も名を上げた選手といえば、アムステルゴールドレース(4月10日)を独走勝利したマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJスエズ・フチュロスコープ)だろう。2018年に弱冠20歳にしてイタリアロード選手権を制したカヴァッリは、ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌでファンフルーテンのアタックに追従し、最後は差し切り優勝。シーズン序盤にワールドツアー2勝を挙げ、ジロ・デ・イタリア ドンネの総合優勝に挙げられる活躍を見せた。

ファンフルーテンを抑えラ・フレーシュ・ワロンヌを制したマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJスエズ・フチュロスコープ)ファンフルーテンを抑えラ・フレーシュ・ワロンヌを制したマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJスエズ・フチュロスコープ) photo:CorVos
重いトロフィーを掲げるエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)重いトロフィーを掲げるエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
第2回を迎えたパリ〜ルーベ・ファム(4月16日)を制したのは、トレック・セガフレードに2年連続優勝をもたらしたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)だった。イタリア王者ジャージを着て臨んだロンゴボルギーニは残り33km地点で飛び出し、そのまま独走勝利。またロンゴボルギーニにとって今年はワールドツアーのウィメンズツアー(6月6〜11日)で総合優勝を飾り、直後のイタリアTT選手権で3連覇を達成するなど成功のシーズンとなっている。

次世代が活躍を見せるシーズン前半戦だったものの、今シーズン最も目立ったのはファンフルーテンで間違いない。共に数々の名勝負を生んだアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)が昨年引退したこともあってか、女子レース最高峰と言われるジロ・デ・イタリア ドンネを総合2位に2分差近くつける大差で総合優勝を決めてみせた。

凱旋門を横目に駆け抜ける凱旋門を横目に駆け抜ける photo:CorVos
4賞ジャージ着用者を先頭に最終日のスタートを待つ4賞ジャージ着用者を先頭に最終日のスタートを待つ photo:CorVos
今年の女子ロードレース界最大のトピック言えば、初開催されたツール・ド・フランス ファム アヴェク ズイフト(7月24〜31日)だろう。男子ツールの最終日直前に、パリのシャンゼリゼ通りで行われた初日をロレーナ・ウィーベス(オランダ、チームDSM)が制し、2日目をフォス、3日目をプロトン屈指の人気選手であるセシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJスエズ・フチュロスコープ)が区間優勝を挙げ、大会を多いに盛り上げた。

だが、やはりこの大会も主役はファンフルーテンだった。2023年限りでの引退を発表しているファンフルーテンは、3つの1級山岳が組み込まれた第7ステージで60kmの大逃げを敢行してマイヨジョーヌを獲得。クイーンステージと目された最終第8ステージでも圧巻の登坂力を見せつけ、ダメ押しの2連続勝利と共に初代ツール・ド・フランス・ファムの総合優勝に輝いた。

その後もマイヨジョーヌを射止めたファンフルーテンの勢いは止まらず、セラティジット チャレンジ by ブエルタも総合優勝したことで、マリアローザとマイヨジョーヌ、そしてマイヨロホという3つのメジャーステージレースを全制覇する快挙を成し遂げた。

3年振りにマリアローザを獲得したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)3年振りにマリアローザを獲得したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ) photo:CorVosマイヨロホを射止めたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)マイヨロホを射止めたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ) photo:CorVos

ツール・ファムで総合優勝を決めたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)ツール・ファムで総合優勝を決めたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ) photo:CorVos
大会を通して先頭集団に食らいついた與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)大会を通して先頭集団に食らいついた與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス) photo:Human Powered Health総合表彰台に上がった與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)総合表彰台に上がった與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス) photo:EF Education-TIBCO-SVB

日本人で唯一欧州トップレースに参戦している與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)は、昨年の手術とリハビリを経て3月9日よりシーズンイン。その後は徐々にコンディションを上げ、フランスのステージレースであるCICツール・フェミナン・アンテルナショナル・デ・ピレネー(8月5〜7日)で総合2位の快挙を成し遂げた。ロード全日本選手権こそ2位で終わったものの、所属チームとも契約延長して2023年への期待高まるシーズンとなった。

今年の女子シーズンを締めくくるロード世界選手権がオーストラリア・ウロンゴンで開催された。先んじて行われた個人タイムトライアル(9月17日)は、不得手とするテクニカルなコースにも関わらず持ち前のスピードでエレン・ファンダイク(オランダ)が2年連続3回目の優勝。そしてロードレースではその3日前のチームTTで右肘を骨折したファンフルーテンが、ラスト1kmで先頭集団に合流し、虚を突くスプリントでロードでは2度目となるアルカンシエルを射止めた。

2位:グレース・ブラウン(オーストラリア)、1位:エレン・ファンダイク(オランダ)、3位:マーレン・ローセル(スイス)2位:グレース・ブラウン(オーストラリア)、1位:エレン・ファンダイク(オランダ)、3位:マーレン・ローセル(スイス) photo:CorVos
ロードで2枚目、個人TTも含めれば4枚目のアルカンシエルに袖を通したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)	ロードで2枚目、個人TTも含めれば4枚目のアルカンシエルに袖を通したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ) photo:CorVos
2023年はツアー・ダウンアンダーが女子ワールドツアーに昇格するため、選手たちは1月15日からシーズンが始まることに。また女子版UAEツアーの開始や第2回目のツール・ド・フランス・ファム、開催されれば4年ぶりとなる中国での2連戦(ツアー・オブ・チョンミンアイランド&ツアー・オブ・グワンシー)など、着実に規模を拡大している来年の女子レースに注目だ。
2022年シーズン女子ロード 主要レース結果
開催日 レース名 勝者
3月5日 ストラーデビアンケ ロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)
4月3日 ロンド・ファン・フラーンデレン ロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)
4月10日 アムステルゴールドレース レディースエディション マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJスエズ・フチュロスコープ)
4月20日 ラ・フレーシュ・ワロンヌ フェミニーヌ マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJスエズ・フチュロスコープ)
4月24日 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ファム アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)
6月30日-7月10日 ジロ・デ・イタリア ドンネ 総合優勝:アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)
7月24日-7月31日 ツール・ド・フランス ファム アヴェク ズイフト 総合優勝:アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)
9月7日-9月11日 セラティジット チャレンジ by ブエルタ 総合優勝:アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)
9月18日 ロード世界選手権個人タイムトライアル エレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)
9月24日 ロード世界選手権ロードレース アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)
text:Sotaro.Arakawa

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