誰もトレック・セガフレードの連携を崩すことはできなかった。難易度の低い石畳でアタックしたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)が、33kmを逃げ切りパリ〜ルーベ・ファム制覇。トレック女子チームが大会2連覇を射止めた。



ドゥナンの街から、124.7km先のフィニッシュを目指してスタートを切るドゥナンの街から、124.7km先のフィニッシュを目指してスタートを切る photo:CorVos
「クラシックの女王」あるいは「北の地獄」と形容され、レースカレンダーの中でも一際異質な存在感を放つパリ〜ルーベの週末が土曜日開催の女子レース「パリ〜ルーベ・ファム」を皮切りに開幕。ドゥナンからルーベの屋外競技場を目指す124.7kmコースに、世界屈指のクラシック選手が多数顔を合わせた。

男子レースよりもコースは短いものの、残り84km地点からは男子と同じ石畳区間を辿り、17のパヴェセクターの合計距離は29.2kmに及ぶ。「No.11 モンサン・ぺヴェル」と「No.4 カルフール・ド・ラルブル」という難易度5つ星の2区間も入るが、この日は難易度1つ星のパヴェで決定的な動きが生まれることとなった。

この日はレーススタート前に昨年大会2位で優勝候補筆頭のマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)のコロナ感染が分かり、急遽レース参加を取りやめるという波乱が起きた。「甚大な失望。ずっとこのレースを楽しみにしていたので陽性が分かった時に世界が崩壊してしまった。家に戻って休養し、気分が回復するのを願いたい」という言葉と共にフォスはレースを離れている。

序盤に逃げたケイティ・クラウス(アメリカ、ヒューマンパワードヘルス)たち序盤に逃げたケイティ・クラウス(アメリカ、ヒューマンパワードヘルス)たち photo:CorVos
石畳区間に入り、トレック・セガフレードがメイン集団のペースアップを開始する石畳区間に入り、トレック・セガフレードがメイン集団のペースアップを開始する photo:CorVos
レースが始まるとケイティ・クラウス(アメリカ、ヒューマンパワードヘルス)を含む5名が逃げ、時間を置いてトレック・セガフレード率いるメイン集団が追撃を開始。42.3km地点の第1セクターを皮切りにパヴェ区間が始まると落車やメカトラブルが頻発したものの、この日は昨年と異なりドライコンディション。プロトンもろとも崩壊するようなカオスには至らなかった。

当初の逃げメンバーは60km以上を残して引き戻され、ここから本格的なペースアップが始まった。70.7km地点のNo.12「オシー・レ・オルシー・ベルセ(距離2,7km/☆☆☆☆)」でロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)がペースアップ。マルタ・バスティアネッリ(イタリア、UAEチームADQ)とルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)が追従し、一時バラバラになったメイン集団から20秒リードを奪うことに成功した。

No.12「オシー・レ・オルシー・ベルセ」でアタックするロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)No.12「オシー・レ・オルシー・ベルセ」でアタックするロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス) photo:CorVos
逃げるマルタ・バスティアネッリ(イタリア、UAEチームADQ)とコペッキー、ルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)逃げるマルタ・バスティアネッリ(イタリア、UAEチームADQ)とコペッキー、ルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード) photo:CorVosチームカーからボトルを受け取る際に反則、失格となったエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)チームカーからボトルを受け取る際に反則、失格となったエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos


逃げを目指すコペッキーとバスティアネッリに対し、チェック役として加わったブラントはローテーションに加わらず、メイン集団も追撃体制を整えたことでタイム差は広がらない。ベルギーチャンピオンジャージを着るコペッキーはこの時の様子を「ルシンダはスピードを上げなかった。私たちの考えは他チームにプレッシャーをかけることだったので、ローテーション中はリードを維持しつつ、あまり力を使わないようにしていた」と振り返っている。

比較的慌てることなく3名を追う集団後方では、ロレーナ・ウィーベス(オランダ、チームDSM)とエリーザ・バルサモ(イタリア、トレック・セガフレード)という2大スプリンターが力無く遅れていくシーンも。一時パンクから復帰し、その後チームカーから「スティッキーボトル」を受けたバルサモには失格判断が下されている。

30km以上を「そこそこのペースで」逃げた先頭3名はNo.8「タンプルーブ(距離200m/☆)」で吸収され、連続する石畳区間では矢継ぎ早に新たな動きが生まれた。

30秒リードでパヴェを駆け抜けるエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)30秒リードでパヴェを駆け抜けるエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
33kmに及ぶ独走に成功したエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)33kmに及ぶ独走に成功したエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
前走車が蹴立てる土煙を浴びながら、アタックを成功させたのはのエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)だった。サプライズ的に低難易度の石畳で仕掛け、追撃を振り切って単独となったロンゴボルギーニ。33kmを残して仕掛けたイタリアチャンピオンは、一気に30秒リードを稼ぎ出すことに成功した。

淡々とハイペースを刻むロンゴボルギーニに対し、追う立場となったSDワークスはシャンタル・ブラーク(オランダ)を使って追走を企てた。石畳のたびにペースを上げてメイン集団を分断したものの、4名に減ってもなおトレック・セガフレードはブラントとTTスペシャリストのエレン・ファンダイク(オランダ)をチェック役として置き続ける。コペッキーは最後の難関石畳「カルフール=ド=ラルブル(距離2.1km/☆☆☆☆☆)」でもトレック勢を振り払うことはできず、レースはトレックの思惑通りに距離を消化していった。

諦めモードに支配された追走グループを尻目に、ヴェロドロームまでの平坦路を駆け抜けたロンゴボルギーニ。リードを40秒台にまで広げ、ルーベ市街地の鏡のように整った最後の石畳も難なくクリア。最後まで集中した表情を崩すことなく、イタリアチャンピオンジャージが歓声に包まれたヴェロドロームに姿を現した。

力強いガッツポーズでフィニッシュしたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)力強いガッツポーズでフィニッシュしたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
追走グループのスプリントはロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)が先着。ルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)が1位&3位を喜ぶ追走グループのスプリントはロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス)が先着。ルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)が1位&3位を喜ぶ photo:CorVos
栄光の競技場1周半。最後の最後まで踏みを緩めなかったロンゴボルギーニが、最終コーナーを立ち上がってから力強くガッツポーズ。感情を爆発させながら、トレックがこの日初披露した新型バイクに乗って、イタリアチャンピオンが勝利した。

副鼻腔炎によって、この春に成績を残せていなかったロンゴボルギーニの力強い独走勝利。圧倒的なチーム力を見せつけたトレック・セガフレードにとって大会2連覇であり、後続集団スプリントでコペッキー(2位)に続いてブラントが3位入賞。女子の石畳最強チームとしてその名を今一度知らしめることとなった。

「私にとってこの春は辛く、1ヶ月に渡り副鼻腔炎に苦しめられ、思うような走りができないでいた。自分の力を発揮できず、ずっとフラストレーションを感じでいた。とても辛い時期を支え、励ましてくれた家族とボーイフレンドに感謝を伝えたい」と、ロンゴボルギーニはチームに感謝する。「また、そんな中でも私を信じてくれたトレック・セガフレードにも感謝したい。トップコンディションではない私を「あなたは大丈夫。勝利を狙えるレベルにある」と言い、この場に連れてきてくれた。そしてチームの言う通り、勝利することができた」とも。アムステルゴールドレースとブラバンツペイル出場を見送り、回復に専念していたことが最良の結果に繋がったと言う。

パリ〜ルーベ・ファム2022表彰台:2位コペッキー、1位ロンゴボルギーニ、3位ブラントパリ〜ルーベ・ファム2022表彰台:2位コペッキー、1位ロンゴボルギーニ、3位ブラント photo:CorVos
重いトロフィーを掲げるエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)重いトロフィーを掲げるエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
一方、「ロンゴボルギーニのチームメイトは良い働きをしていた。全力で踏んだけれどギャップを埋めることはできず、残念」とは、トレックのチーム力の前に敗れたコペッキー。「失望に支配されている。自分の脚の状態は完璧で主導権を握ることができたはずなのに。残念ながら今日はその通りにはならなかった」と加えている。

選手コメントは別記事で紹介します。
パリ〜ルーベ・ファム2022結果
1位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) 3:10:54
2位 ロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス) +0:23
3位 ルシンダ・ブラント(オランダ、トレック・セガフレード)
4位 エリーズ・シャベイ(スイス、キャニオン・スラム)
5位 マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)
6位 フローイチェ・マッカイ(オランダ、チームDSM)
7位 エレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)
8位 シャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス) +0:32
9位 ファイファー・ジョルジ(イギリス、チームDSM) +2:22
10位 サンドラ・アロンソ(スペイン、セラティツィットWNTプロサイクリング)
text:So Isobe

最新ニュース(全ジャンル)