第6世代に進化したワフーのフラッグシップローラーKICKRと、KICKRシリーズにマッチした後付けフレームのインサイドライド"E-FLEX"をテストした。通信の安定性を高めた最新世代のスマートローラーと、自然な走行感を実現する台座の魅力をそれぞれ探った。



ワフー KICKR V6ワフー KICKR V6
サイクルコンピューターやスマートローラーを筆頭にパフォーマンス向上をサポートするフィットネス機器を展開するワフー。多岐にわたる製品をひとつのエコシステムに内包し、屋外や屋内、バイクやランニング、スイミングまで様々なアクティビティでワフー製品を横断的に活用することで、一括管理されるデータを元にトレーニングの質向上を支えているブランドだ。

そのエコシステムの中心的な存在、インドアトレーニング機器のコアでもあるフラッグシップ・スマートローラーのKICKRがモデルチェンジを果たす。6代目となる今作はKICKRらしいルックスと静粛性や安定性といった機能はそのままに、Wi-Fi通信を実現しインターネットとの接続安定性を向上させている。

ワフーのスマホアプリからWi-Fiに接続するワフーのスマホアプリからWi-Fiに接続する
青帯で選択している項目がWi-Fiで接続しているKICKRだ。Bluetoothも選択可能青帯で選択している項目がWi-Fiで接続しているKICKRだ。Bluetoothも選択可能
接続安定性が向上するメリットはバーチャルサイクリング中に接続が切れにくいという点に尽きるだろう。レース中や、ズイフトであればアルプ・ドゥ・ズイフトを登っている最中に切断されてしまったら、途中までの頑張りが水の泡となり消えてしまう。インドアライドのユーザー体験としては最低な部類と言ってもいいだろう。その点を改善し、最後まで力を出し切れるスマートローラーに進化した恩恵はどのようなサイクリストも受けられるはずだ。

ワフーのスマホ・アプリを介してKICKRをWi-Fiに接続すると、ズイフトの場合は機器とのペアリング画面でイーサーネットポートのアイコンでKICKRをリストアップしてくれる。このとき同じKICKR(Bluetooth接続)もリストアップされるため、選択を間違えないように注意したい。

装備されているハンドルは使い勝手を大きく高めている装備されているハンドルは使い勝手を大きく高めている 第6世代の外見は先代よりほぼ変わりがない第6世代の外見は先代よりほぼ変わりがない

負荷装置の熱を逃す通気口が積極的に開けられている負荷装置の熱を逃す通気口が積極的に開けられている さまざまなサイズの車体にフィットさせられるさまざまなサイズの車体にフィットさせられる

Wi-Fiで繋いだKICKRの接続性を確認してみようと思ったのだが、接続が「落ちない」というのは再現が難しい。ズイフトのレースに出てみても落ちなかったので、備えあれば憂いなしという感じだろうか。データ転送速度が65%以上向上しているというアナウンスも体感でデータ転送の速度を体感するのは難しいが、心なしかズイフト内に現れる勾配変化に対してよりリニアに追従していたよう。

元々KICKRは勾配変化が激しい場所でも負荷が一気に重くなったり、軽くなったりという極端な動きが無く、ライドに集中できるのが魅力だった。そのため今回のアップデートで強化されたデータ転送速度や接続安定性は、レースやトレーニングでの質を高めたい方が満足できるマージナルゲインといったら良さそうだ。

自然な動きを実現するAxis Feetが標準装備となっている自然な動きを実現するAxis Feetが標準装備となっている
そして今回のテストで改めて感じたのはAxis Feetの絶妙な柔軟さ。一般的なダイレクトドライブ式トレーナーはリアエンドとトレーナー自体が完全に一体化しピクリとも動かないような印象を与えるが、Axis Feetが搭載されたKICKRはペダリングの動きを自然にフォローしてくれるため、フレームにストレスが掛かるような嫌な感触は一切ない。

静粛性もモデルごとにアップデートしており、V6でもドライブトレインの駆動音の方が大きいほど。Axis Feetが床に伝わる振動を吸収してくれるため、トレーニングマットと併用することで集合住宅でも周りに迷惑をかけることはないだろう。今回テストを行なってみて、改めてKICKRのトレーナーとしてのハードウェア面は完成度が高いと感じ、V6では電子機器としての完成度と全体的なクオリティを向上させたと実感した。スマートローラーの接続性に悩むサイクリストは一度試してみても良さそうだ。

KICKRのライドフィールをより自然に演出するインサイドライド E-FLEX

インサイドライド E-FLEXインサイドライド E-FLEX
今回のテストではワフーを取り扱うインターテックが展開を開始したインサイドライドのE-FLEXも借り受け、併せてテストを行なったので使用感をお届けしよう。E-FLEXとはKICKRとKICKR COREに前後、傾きの動きを付与するサードパーティーのローラー台用フレーム。フロントフォーク台座も用意されており、こちらは前後の動きとハンドルを左右に切ることが可能となっている。

E-FLEXはケイデンスの高低にかかわらずペダリングのリズムに合わせて傾き、前後にスライドしてくれるためライドフィールは非常に自然。スプリントやヒルクライムでのダンシングでも、車体の動きを妨げることがなく、バーチャルサイクリングへの没入度が高まるような印象だ。

フロント用の台座は非常にシンプルな作りだフロント用の台座は非常にシンプルな作りだ ハンドリングの動きもゴムバンドによって制御されているハンドリングの動きもゴムバンドによって制御されている

ダイヤルでハンドリングの振れ具合を調整するダイヤルでハンドリングの振れ具合を調整する QRを使う際は専用アダプターを使い、12mmスルーアクスルの場合はアダプターを外して使用するQRを使う際は専用アダプターを使い、12mmスルーアクスルの場合はアダプターを外して使用する


リアにフォーカスした場合は、KICKRのAxis Feetも自然なペダリングが可能という点では同じだが、比較するならばE-FLEXの方がダイナミックにスマートローラーが動いてくれる。加えてE-FLEXではハンドルを左右に切ることができ、車体が傾くと同時にハンドルが左右に可動するため、スマートトレーナーにありがちな違和感を消してくれる。

ただライド序盤などペダリングが安定している時は車体がぶれないのか、E-FLEXとAxis Feetの印象は乖離しない。一方で、ヒルクライムなどでがむしゃらにペダリングをすると、車体が前後に大きくスライドし始めペダリングが乱れていることをライダーに伝えてくる。体の動作を妨げないため、疲れてきた時こそE-FLEXのダイナミックな働きが効果を発揮する。

インサイドライド E-FLEXのリア用台座インサイドライド E-FLEXのリア用台座 装着はKICKRの脚をクランプするだけ装着はKICKRの脚をクランプするだけ

板バネでスマートローラーを支える板バネでスマートローラーを支える リア側もゴムバンドで前後の動きを制御するリア側もゴムバンドで前後の動きを制御する

今回はビンディングシューズを履いた状態と、履いてない状態でテストを行なっており、ここまでの印象はビンディングシューズを着用した時のもの。シューズを固定しない状態では、ハンドルに荷重をかけてしまうし、ペダリングがドタバタしたためか、前後の動きが大きくなってしまい違和感があった。もしテストを行う場合は、実際の使用状況を再現した方が良さそうだ。

また、E-FLEXのフロント側は車輪の代わりにフロントフォークを台座に固定し、リア側も中央の脚をクランプするだけというシンプルな装着方法だが、リア側は調整が少し難しい。というのもクランプが左右に傾くように設計されており、KICKRから手を離した時にローラーが自然に直立させるのに少しコツ、もしくは慣れが必要なので、自宅で装着する際はインターテックの案内をよく読もう。

KICKR単体とE-FLEXとの組み合わせを同時に行なった今回のテスト。KICKRは単体でも素晴らしいスマートローラーに仕上げられているが、E-FLEXはスマートローラーのキャパシティを広げてくれる魅力的なアイテムだと感じられた。インドアサイクリングでも没入度を大事にしたい方はE-FLEXを試してみてはいかがだろうか。




ワフー KICKR
最大出力:2,200W
データ誤差:+-1%
最大斜度設定:20%
ホイールサイズ:24”、650C、700C、26”、27.5”、29”
ソフトウェアアップデート方法:自動(ワイヤレス)
無線通信方法:2.4GHz Wi-Fi、ANT+、ANT+ FE-C、Bluetooth Smart
価格:193,105円(税込)

インサイドライド E-FLEX(KICKR/KICKR CORE用)
対応トレーナー:KICKR(全年式)、KICKR CORE(全年式)
アクスルタイプ:QR、12mmスルーアクスル
重量:5.5kg
価格:132,000円(税込)


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