終盤の丘が人数を絞ったツール・ド・フランス第4ステージ。最後の登りでアタックしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が、小集団スプリントでマイヨジョーヌのファンデルプールを退け、記念すべきプロ通算100勝目を手に入れた。



マイヨジョーヌを着用して2日目を迎えたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.

マイヨヴェールを着用するミラン photo:A.S.O.
大歓声がこの日もアラフィリップに飛ぶ photo:A.S.O.


7月8日(火)第4ステージ
アミアン・メトロポール〜ルーアン(丘陵)
距離:174.2km
獲得標高差:2,050m
天候:晴れ
気温:19度


第4ステージ アミアン・メトロポール〜ルーアン image:A.S.O.

大会初日から混沌としたレースが続いている第112回ツール・ド・フランス。その4日目は174.2kmの丘陵ステージで、アミアン・メトロポールを出発し、南西へと進むピカルディ平原は北風が名物。勝負所は残り28.9kmから始まる3級山岳ベルブフ(距離1.3km/平均9.1%)を含む、4つのカテゴリー山岳で、ラスト6kmから駆け上がる3級山岳ランプ・サン・ヒレール(距離0.8km/平均10.6%)は最大15%と強烈。フィニッシュ前も緩斜面のため、激しいアタック合戦が期待された。

スタート地点にはマイヨジョーヌを纏うマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が集団の先頭に並び、緑色のマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)は前日に落車リタイアしたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)ではなくジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が着用。前日から一転、晴天に恵まれたレースは、アクチュアルスタートの旗が振られたkm0から2名の選手が飛び出した。

レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)の動きをきっかけに生まれた逃げは4名 photo:CorVos

メイン集団からまずリードを得たのは、初日に横風分断で遅れて最下位でフィニッシュしたレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)と、開幕18日前のレースで鎖骨を骨折しながらも強行出場したヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)。そこに遅れて2名が合流。2日ぶりに形成された4名の逃げグループに対し、この日もマイヨジョーヌを保持するリーダーチーム、アルペシン・ドゥクーニンクがプロトンの先頭でペースを作った。

第4ステージで逃げた4名
レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)
カスパー・アスグリーン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
トマ・ガシニャール(フランス、トタルエネルジー)
ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)

有望な若手とベテランという実力確かな選手による逃げグループだったものの、プロトンに対し2分前後のリードしか奪うことができない。南西に向かうピカルディ平原では強い横風が吹くこともなく、逃げ集団と、時折リラックスムードも漂うメイン集団は順調に残り距離を消化していく。そしてこの日1つ目の4級山岳が登場する直前の残り53km地点で、セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)やカザフスタン王者エフゲニー・フェドロフ(XDSアスタナ)らを巻き込む落車が発生。直後にもイラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)ら別の落車が発生したものの、低速での落車だったため大きな怪我を負う選手はいなかった。

この日もシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)が長時間、プロトンを牽引した photo:A.S.O.

早くもひまわりが選手たちをお出迎え photo:A.S.O.

1分35秒のリードで4級山岳に入った逃げグループからは、クライマーのマルティネスが先にアタックを仕掛ける。しかしライバルたちを振り落とすには至らず、頂上手前で飛び出したアスグリーンが頂上をトップ通過。中間スプリントは骨折の影響を感じさせないアブラハムセンが先頭を取り、マルティネスが再び仕掛けて単独先頭に立った。

懸命に踏み続けたマルティネスだったが、残り20km地点でプロトンに吸収される。その後はマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るティム・ウェレンス(ベルギー)ら、UAEチームエミレーツXRGが先頭牽引を担い、ミランなどスプリンターを振り落としながら最後から2つ目の4級山岳をクリア。そして最終3級山岳ランプ・サン・ヒレール(距離0.8km/平均10.6%)を前に、ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が高速牽引を始めた。

最後まで1人、粘りを見せたレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:A.S.O.

集団前方で脚を回すマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.

集団の人数を大幅に減らしたカンペナールツが役割を終え、いよいよ3級山岳に突入すると今度はジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)がペースを作る。集団の中程にいたジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が一気に番手を上げて先頭交代すると、最大勾配15%の頂上まで残り300m地点でついにタデイ・ポガチャル(スロベニア)が動く。ダンシングでスピードを上げる世界王者に対し、ファンデルプールやレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)などはついていけず、唯一ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が食らいつく。

アタックしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)に唯一ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が食らいつく photo:CorVos

ヴィンゲゴーは一度後ろを振り向きながらシッティングに切り替えると、「全力で駆け上がるのがプランだった」とレース後に語ったポガチャルとの差が一気に開く。しかし再びダンシングに戻すとヴィンゲゴーは頂上の直後にポガチャルに合流。その後ポガチャルは踏み込むことはなく、追走したファンデルプールやエヴェネプール、オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL)ら総合上位の選手たちが追いつく。そして残り4km地点の緩い下り坂で、ヴィンゲゴーのアシストであるマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)がアタックした。

しかしこの動きをアルメイダが潰し、そのまま7名による精鋭集団の先頭を引く。フラムルージュ(残り1km)直後の直角右コーナーの手前でジョーゲンソンが2度目のアタック。しかしこれもアルメイダが引き戻し、勝負は総合勢にファンデルプールを加えた集団によるスプリントへ。

アルメイダを先頭に最終ストレートに突入し、役目を終えて脚を緩めた瞬間、ファンデルプールが先んじてスプリントを開始。その背後にピッタリとついたポガチャルが踏み込み、横に並ぶと、ファンデルプールは諦めるように腰を下ろす。そして世界王者の証であるアルカンシエルを着たポガチャルが、今大会初のステージ勝利を手に入れた。

スプリントを制し、プロ通算100勝目を掴んだタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

惜しくも敗れた第2ステージのリベンジを達成し、記念すべきプロ通算100勝目を手に入れたポガチャル。「今日は全員が限界まで追い込む厳しいレースだったと思う。ジョアン(アルメイダ)やチームの皆が素晴らしい走りをしてくれたおかげだ。100勝目をツールで飾ることができ、またこのジャージで勝つことができて特別な気持ちがする。これほど良い選手が集い、厳しいレイアウトではナーバスになり、先が読めない展開となる。それが逆にアドレナリンをかき立て、純粋なレースを楽しむことができるんだ」と、ポガチャルはコメントした。

マイヨジョーヌは区間2位のファンデルプールがキープし、ポガチャルはウェレンスからマイヨアポワを引き継ぐ。3位はヴィンゲゴーで、7位だったエヴェネプールは3秒を失うことに。また最終山岳で遅れたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、フィニッシュまでの区間で先頭に追いつくことができず、区間18位で32秒遅れだった。

勝利と共に、再びマイヨアポワ(山岳賞)も着用したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌを守ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.
敢闘賞に選ばれたレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:A.S.O.


ツール・ド・フランス2025第4ステージ
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 3:50:29
2位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)
4位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL)
5位 ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)
6位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)
7位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:03
8位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)
9位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +0:07
10位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +0:10
11位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) +0:30
18位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:32
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) 16:46:00
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +0:08
4位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:19
5位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +0:26
6位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +0:48
7位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +0:55
8位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)
9位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:58
10位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +1:02
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 92pts
2位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) 87pts
3位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) 80pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 5pts
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) 5pts
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 3pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) 16:46:26
2位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +0:29
3位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:32
チーム総合成績
1位 ヴィスマ・リースアバイク 50:19:52
2位 グルパマFDJ +0:44
3位 UAEチームエミレーツXRG +1:34
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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