スポーツ仲裁機構は女子エリート&女子U23(WE+WU23)の全日本ロード開催見送りの判断について、申立人の請求を棄却すると判断を出した。これにより今大会における当該レースの開催は、見送られることが確定した。



今年のJプロツアー第2戦の女子レース今年のJプロツアー第2戦の女子レース photo:Saotru Kato
申立人側は主張の中で、開催見送りの決定は「6月の最終週に国内選手権を開催しなければならない」とあるUCIの競技規則に反する。その中で、UCIは重大な状況下においては特別許可を与えることができるとしているが、本件においてそのような特別許可は与えられていないとした。

その上で、本件レースを開催することにより現実的な危険性が差し迫っているとはいえず、安全性の確保を理由とした開催見送りには根拠がないこと。さらには男女平等の観点から、チームカーの随行を認めない形での開催が強行され、男子に関しては大会を開催し、女子については開催しないという点でそれに反する、としていた。

これを受けて、仲裁パネルは先例があることを示し、まず「日本においてスポーツ競技を統括する国内スポーツ連盟については、その運営について一定の自律性が認められ、その限度において仲裁機関は国内スポーツ連盟の決定を尊重しなければならない。」と言う一文を記した。

結果として、UCI規則に基づき、国内選手権の6月末開催の必要性と、各チームに1台のチームカーの随行がなされてもなお、安全性を確保することのできるコースを選定する義務があることについては認め、「見送りとなった原因はJCF側のUCI 競技規則違反であり、開催見送りについて申立人が一切の責任を負わないこと」を付言しつつ、安全性の判断は各スポーツ連盟がその専門的知識と経験とに基づいてなすべきものである、としてこれを棄却した。

仲裁機構は裁定にあたり、次の基準を示している。

①国内スポーツ連盟の決定がその制定した規則に違反している場合、②規則には違反していないが著しく合理性を欠く場合、③決定に至る手続に瑕疵がある場合、または④規則自体が法秩序に違反しもしくは著しく合理性を欠く場合において、それを取り消すことができると解すべき。

文書の中で「決定の前提となった安全性の判断に関する限り、開催見送り決定は、取り消しに相当するほど著しく不合理とまでは言えず、それを認めることはできない」と結論づけている。

尋問の中でJCFは、当該コースにおいて各チームに1台のチームカーの随行を認めるとの条件の下で本件レースを開催することが安全性の面で問題があることを詳細かつ具体的に証言したともあり、本件においては、安全面を最優先としてきたJCFの主張が認められたこととなる。

男女平等の観点については、女子の他レース(タイムトライアルやパラサイクリング)が同大会内で開催されている点が指摘され、あくまで当該レースに対する判断とし、男女不平等とは言えないと述べられている。

今後のWE+WU23の大会開催は現時点では不透明な状況だが、これで今大会におけるWE+WU23のロードレース開催見送りについては確定し、ひとまずの決着を見ることとなった。

text: Yuichiro Hosoda, So Isobe

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