ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)が残り1kmで飛び出したロマンディ第1ステージは、ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)がフィニッシュ手前で差し切り勝利。2位に甘んじたデニスがリーダージャージに袖を通している。



前日のプロローグで圧巻の走りを見せたリーダージャージのイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)前日のプロローグで圧巻の走りを見せたリーダージャージのイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
スイスアルプスを舞台に争われる6日間のステージレース「ツール・ド・ロマンディ(2.UWT)」。前日のプロローグを終え、ロード初日となる第1ステージはヌシャテル湖畔のラ・グランド・ブロッシュからロモンまでの178km。レース後半は3級山岳を含む46.5kmのコースを2周し、ラスト1km手前には最大勾配11%の登坂が待つパンチャー向けのレイアウトだ。

トマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)やティム・ナーベルマン(オランダ、チームDSM)など全員が24歳以下の5名が形成した逃げグループは、メイン集団から3分のリードを奪うことに成功。それを3分差前後で追うプロトンは、前日のプロローグを制したイーサン・ヘイター(イギリス)擁するイネオス・グレナディアーズがコントロールした。

序盤から逃げ集団を形成したトマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)ら5名序盤から逃げ集団を形成したトマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)ら5名 photo:A.S.O.
プロトンは終始イネオス・グレナディアーズが牽引を担当したプロトンは終始イネオス・グレナディアーズが牽引を担当した photo:CorVos
3つの3級山岳をトップ通過し、山岳ジャージを確定させたシャンピオンが最後まで残った逃げ集団は、ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)が牽引するプロトンに残り30km地点で吸収。ここから一気にペースが上がり、区間優勝と総合を争う戦いが始まった。

ユンボ・ヴィスマやフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)が先頭で牽引し、終盤に向けて速度を上げていった残り14kmで大規模落車が発生。これに後方を走行していたヘイターやヨン・イサギレ(スペイン、コフィディス)などが巻き込まれ、完走を果たしたものの総合争いから脱落する事態に。

この落車とペースアップにより約40名まで人数が減ったプロトンから、残り6kmでフランス王者のレミ・カヴァニャ(クイックステップ・アルファヴィニル)がアタックする。しかし最大勾配11%の登坂を前に引き戻されると、アユソのカウンターアタックに反応したローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)が飛び出し、独走体制に持ち込んだ。

残り6kmで飛び出したレミ・カヴァニャ(クイックステップ・アルファヴィニル)残り6kmで飛び出したレミ・カヴァニャ(クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
デニスは過去世界選個人TT2連覇の独走力を発揮し、短い登坂や連続するテクニカルコーナーを難なくクリア。そのまま独走勝利かと思われたものの、「残り数百メートルで脚が空っぽになった」というデニスのスピードが一気に落ちてしまう。追走するディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)が猛烈な加速を見せ、その差は一気に縮まっていった。

そして白熱の追走劇の行方は、フィニッシュ手前1mでデニスを差し切ったトゥーンスが先着。7日前にラ・フレーシュ・ワロンヌを制覇をしたトゥーンスが、ロマンディ第1ステージ(2日目)の勝者に輝いた。

ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)に迫るディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)に迫るディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
ハンドルを投げ、ラスト1kmで勝利を掴んだディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)ハンドルを投げ、ラスト1kmで勝利を掴んだディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
「タイミングが重要だったレースを、上手く走ることができた。残り200mでもまだ勝てるとは思っていなかったが、残り25m地点でようやく”ローハンを捉えた”と思ったんだ。ラスト1kmを前に完璧な位置取りをしてくれたチームメイトのおかげだよ」と、劇的な逆転勝利を挙げたトゥーンスは語っている。

総合1位ヘイターが脱落したため、総合2位デニスが薄緑色のリーダージャージを獲得。首位を明け渡したイネオス・グレナディアーズは、ゲラント・トーマス(イギリス)が16秒遅れの総合3位に入っている。

劇的な勝利を挙げたディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)劇的な勝利を挙げたディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
勝利は逃したものの、総合首位に立ったローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)勝利は逃したものの、総合首位に立ったローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
ツール・ド・ロマンディ2022第1ステージ結果
1位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) 4:23:58
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)
3位 マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ) 0:02
4位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)
5位 クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
6位 ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) 0:04
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)
9位 ステフ・クラス(ベルギー、ロット・スーダル)
10位 マウロ・シュミット(スイス、クイックステップ・アルファヴィニル)
個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ) 4:29:48
2位 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:16
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
4位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) 0:18
5位 マウロ・シュミット(スイス、クイックステップ・アルファヴィニル) 0:20
6位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)
7位 ミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)
8位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック) 0:22
9位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:23
10位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)
その他の特別賞
ポイント賞 ローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 トマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)
ヤングライダー賞 マウロ・シュミット(スイス、クイックステップ・アルファヴィニル)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos