ニュージーランドのバイクブランド、CHAPTER2の最新モデル TOA(トア)をインプレッション。カムテール形状によるエアロ化、ケーブルフル内蔵、32mmタイヤクリアランスなど現在のトレンドをすべて取り込んだオールロードバイクを120kmの山岳グランフォンドで実走してインプレッションする。



CHAPTER2 TOA  小田原城にてCHAPTER2 TOA 小田原城にて photo:Makoto AYANO
かつてニールプライドのバイク部門を指揮していたマイク・プライド氏が、自身の人生の”第2章”という意味を込めて2017年に創業を開始したニュージーランドのバイクブランド、CHAPTER2(チャプター・ツー)。最新モデルの「TOA(トア)」は同ブランド5作目となるロードバイクだ。

マオリ語で「戦いに勝利する」という意味のTOAは、同ブランドの初代モデルであるTERE(テレ)をもとに開発されたレースバイク。

エスニックなマオリの文様があしらわれるエスニックなマオリの文様があしらわれる
トップチューブはホリゾンタルに近く、エアロ効果を重視していることが分かるトップチューブはホリゾンタルに近く、エアロ効果を重視していることが分かる
「コンパクトエアロ」をコンセプトとしたTEREのフレーム形状を受け継いだTOAは、オールラウンド性能に加えてエアロダイナミクスを向上すべく、ダウンチューブやヘッドチューブ、シートチューブ後部などの随所に適度なカムテールデザインを採用。同時にグラベルモデルのAO(アオ)の持つ万能性も取り込んで設計された「パフォーマンス・オールロード」だ。

インテグレート設計の専用MANAバーにケーブル類が内蔵されるインテグレート設計の専用MANAバーにケーブル類が内蔵される
ヘッド周りは同社オリジナルの一体型エアロハンドル「MANA(マナ)バー」の使用を前提としたフルインテグレーション設計で、ハンドルからヘッドチューブ、フォークコラムへとステアリング周りのケーブル類はフル内蔵される。

シートステイは新UCI規格に沿ってシートチューブの低い位置で接合するドロップドシートステイを採用し、快適性向上と空気抵抗低減を両立。フレームのカムテール形状とあわせて最大限のエアロ効果を狙う。

接合部の下がったチェーンステーがエアロ効果を高める接合部の下がったチェーンステーがエアロ効果を高める
ケーブル類は新型MANAバーと分割式スペーサーによってハンドル〜ヘッドチューブ〜Fフォークへと導かれて完全内蔵されるが、一般的なステムとハンドルを組み合わせてのセミインターナルケーブルルーティング(半内蔵)も可能となっている。

MANAバーのステム部はケーブルのアールが緩くなる形状だMANAバーのステム部はケーブルのアールが緩くなる形状だ 内部にケーブルが内蔵されるMANAバー。コラムスペーサーは分割式だ内部にケーブルが内蔵されるMANAバー。コラムスペーサーは分割式だ


タイヤクリアランスは32mm対応という余裕のあるもの。これは最近とくに性能向上が顕著なチューブレスホイール&タイヤ、リムのワイド化に合わせた設計で、ディスクブレーキ化に伴って28mm以上のワイドタイヤ仕様ホイールが標準化する流れに対応したもの。今後ますますワイド化するタイヤを使用する可能性と、グラベルライドにも対応するマージンを持たせた設計だ。

ラウンド形状フォークが振動吸収性を高めるラウンド形状フォークが振動吸収性を高める シートピラーはD型断面によりしなりを生み出すシートピラーはD型断面によりしなりを生み出す シートチューブ〜シートステーまでカムテール形状がつながるシートチューブ〜シートステーまでカムテール形状がつながる


ボトムブラケットにはT47を採用。フレーム側に備わるアルミスリーブへと挿入される形式で、プレスフィット方式に比べて少しの重量増はあるものの、BB周辺の剛性向上によるたわみの減少、クランクのメーカーや種類を選ばない汎用性と高いメンテナンス性を兼ね備え、設計上ワイドリム&タイヤのホイールへの対応にも優れるといったメリットがある。

マイク・プライドがデザインした旨のサインが入るマイク・プライドがデザインした旨のサインが入る メンテナンス性と剛性のバランスが良いT47BBを採用するメンテナンス性と剛性のバランスが良いT47BBを採用する


カーボン素材には日本のTORAY(東レ)製カーボンを100%採用。フレーム製造時にラテックス・マンドレルを使用する成型方法により高精度なフレーム成型を可能にしているという。

AOTEAROAはマオリ語でニュージーランドを意味するAOTEAROAはマオリ語でニュージーランドを意味する カムテール形状の大口径ダウンチューブカムテール形状の大口径ダウンチューブ


振動減衰性に優れるD型断面形状の細身のシートポストと内蔵シートクランプにより、縦方向の振動吸収性を効果的に発揮し、エアロ効果と快適な乗り心地を実現。リアルレーシングに対応する性能と「オールロード」とも言える快適性を両立している。

レースバイクでありつつ道を選ばないオールロードモデルとしての性格も持つTOA。「チャプター2の考えるエッセンスを凝縮した、最高峰に位置する集大成モデル」だという。

箱根周遊120kmグランフォンドでインプレッション

ディンプルの刻まれる激坂では優れた登坂力を実感したディンプルの刻まれる激坂では優れた登坂力を実感した photo:Naoki Yasuoka
今回はチャプター2ジャパン代表マイケル・ライス氏が案内する箱根周遊グランフォンドにおいてTOAの試乗車を駆り、120kmを実走してのインプレッションをお届けする。ロングヒルクライムとアップダウンの連続、林道の荒れた路面あり、獲得標高2,900mにのぼる厳しい道のりでテストライドした。これからの時代をリードする可能性を秘めたオールロードバイクとしてのポテンシャルや可能性を考察するライドとなった。

箱根周遊グランフォンドでTOAのオールラウンド性能を試す箱根周遊グランフォンドでTOAのオールラウンド性能を試す photo:Naoki Yasuoka
筆者(CW編集部・綾野)は今までにマイキー氏と数々のライドをともにし、Chapter2のモデルすべてを乗り込んできた。そのいずれもがハードな行程で、今回も例にもれず厳しい山岳グランフォンドで、バイクについて知る試乗としては絶好の機会だった。

セットされたホイールはASTUTO EV-ADB36 PLUS。群馬在住のティム・スミス氏がプロデュースする36mmハイトのカーボンホイール。特筆すべきはリム内幅26mmという超ワイド&フックレスリムを採用していること。ワイドリムはチューブレスタイヤの空気量を増し、性能をより引き出す。セットされた28Cタイヤが実測で31mmの太さになっても、フレーム側のクリアランスにはなお余裕があった。

私は日常的に28Cのチューブレスタイヤを常用しているが、31Cは行き過ぎのように思えても、実際に走り出すとタイヤの重量以上に転がりの良さのメリットが有るように感じる。箱根の峠への延々と続く登りにおいてもタイヤの空気量によってホイールがよく転がることでの快適さ、コーナーでの踏ん張りの良さが際立つ。「これからは30Cぐらいが主流になるのでは」と実感している。TOAはこうしたホイール&タイヤの使用を想定しているのだろう。

剛性がありつつも硬さを感じないため距離を走っても脚が残せる剛性がありつつも硬さを感じないため距離を走っても脚が残せる photo:Naoki Yasuoka
TOAのフレームの剛性はかなり高めに感じつつ、振動の角が丸められたような快適性がある。長くて急勾配のダウンヒルをこなしても一切ヨレない安心感があり、太くてがっしりしたフレームながらマイルドな乗り心地で、8時間を超えるライドだったのにまったく脚に来なかった。

各チューブに採用されたカムテールデザイン。とくにダウンチューブなどはかなり角が丸められた形状で、この形状もマイルドな乗り心地に貢献していると感じる。空気抵抗の削減に関しては風洞実験のデータなどで数値化されているものを信じるとして、流れるようにスムーズに走るフィーリングはエアロバイク独特のものだ。

機械式シフターを使用しても内蔵ケーブルの抵抗は気にならない機械式シフターを使用しても内蔵ケーブルの抵抗は気にならない photo:Naoki Yasuoka
インテグレート(統合)された一体型ハンドルは剛性感バッチリながら、上バーの平たい形状によって路面の振動もよく吸収してくれる。ケーブルは一露出していないので、乗り心地はスムーズかつ空気の流れも乱していない感じは確かにある。

今回は機械式デュラエースで組まれていた。DI2と違ってケーブルシフトのため、ハンドルからヘッド〜フォークコラム内部には4本の変速/油圧ブレーキケーブルが通されている。ハンドルを左右に切っても変速操作を行っても、それが抵抗にはなっていなかった。XSという小さなサイズではヘッドチューブが短いためケーブルのアールがキツくなるのにその影響が出ないのは設計の良さが光る。これについては反例としてDI2組みが強く推奨される欧米ブランドのバイクもあるほどだ。

登りで並走するTOA(XSとSサイズ)。ペダリングの軽やかさが印象的だ登りで並走するTOA(XSとSサイズ)。ペダリングの軽やかさが印象的だ photo:Naoki Yasuoka
ユニークなのはシートピラーだ。カムテールデザイン以上に細身のD型形状になっていて、これが縦方向によくしなるのだ。勾配のきつい激坂でトラクションを掛ける漕ぎ方の時にもこのしなりが効いて、推進力の助けになると感じた。平坦路でサドルに腰を落ち着けてペダリングしているときの振動吸収性も高く、リズムが取りやすい。突き上げがマイルドなことで疲労感の軽減にもつながっているようだ。

箱根やまなみ林道のアップダウンは永遠に終わらないかに思えた箱根やまなみ林道のアップダウンは永遠に終わらないかに思えた photo:Naoki.Yasuoka
熱海峠からのダウンヒルはあまりにも急勾配で、荒れた路面のつづら折れを落ちるように下っていく。こうした状況でのワイドリムに組み合わされたチューブレスのワイドタイヤによるグリップ感と路面追従性、モノコックハンドルの剛性感、安心感はとても高く、ディスクブレーキ化による副産物とも言えるそれらの性能がバイクを次の次元に押し上げていると感じる。がっしりしたFフォークとリアバックはホイールやブレーキからの高い負荷をしっかりと受け止め、かつマイルドな乗り心地が快適性も併せ持つ。

32Cタイヤはライトグラベルも難なくこなせる32Cタイヤはライトグラベルも難なくこなせる photo:Naoki Yasuoka
カムテール形状、低い位置に下げられたシートステー、インテグレート設計の専用ハンドルにケーブルフル内蔵という現在主流のエアロロードのトレンドをすべて取り入れつつ、タイヤクリアランスは32Cにまで拡充。エアロ、快適性、スピードを追求したTOAはレースバイクであり、かつどんな状況もこなしてしまう性格も併せ持つこれからのオールロードバイクだ。

CHAPTER2 TOACHAPTER2 TOA photo:Makoto AYANO
CHAPTER2 TOA
フレームサイズ:XS, S, M, L & XL
フレーム重量:1105g Size M
フォーク重量:425g
シートポスト重量:135g
MANAハンドルセット重量:395g (100-420mm)
スルーアクスル:FR 12x100mm, RR 12x142mm(E-Thru M12x1.5mm)
価格:387,090円(ブラック)、404,690円(カスタムカラー) いずれも税抜

text&photo:Makoto AYANO
photo:Naoki.Yasuoka
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