2021/11/07(日) - 14:55
大きな進化を果たしたボッシュの新型ヘッドユニット"KIOX"。今回はトレックのE-MTBであるRail5のヘッドユニットを完成車仕様のPurionからKIOXへと換装してみたレポートをお届けしよう。
スタイリッシュなルックスとE-MTBの性能を100%発揮する操作性に加え、高性能なGPSサイクルコンピューターに匹敵する機能を統合したボッシュの新型ヘッドユニットKIOX。(概要はこちらの記事を参照いただきたい)
完成車としてKIOXが搭載されているモデルの他に、これまで多くのE-BIKEに採用されてきたPurionからの換装も可能となっているため、ボッシュユニットを搭載しているE-BIKEユーザーはその恩恵を受けることが出来るのだ。
今回は、トレック Rail 5のKIOX仕様へと換装すべく、作業経験の豊富なバイクプラス所沢店へ。スタッフの皆さんもRailを所有し、その仕様を隅々まで知悉しているプロフェッショナルに作業をお願いした。
ちなみに、結論から先に申し上げると、かなりの重整備作業となるので、この選択は大正解。作業内容としては、取り付けてあるPurionの配線を全て外し、その代わりにKIOXを配線するというもの。
ヘッドユニットだけを入れ替えるという訳にはいかず、基本的にはパワーユニットに接続する配線ごと差し替えとなるため、バッテリーや場合によってはパワーユニットも一旦取り外す必要がある。再取り付け時に配線を挟みこんでしまうと、断線してしまう可能性もあるので、なるべく専門店に依頼するのが賢明だ。
なお注意点としては、ショップへと持ち込む際にバッテリーを取り外すための鍵を忘れずに。鍵がないとバッテリーにアクセスできず、作業不可能となるからだ。そう、お察しの通り、私は鍵を忘れてしまい編集部へとんぼ返りする羽目になったのだ。皆様におかれましてはどうか同じ轍を踏まないように……。
ちなみに通常はコラム上部、トップキャップの代わりに純正マウントを装着することになるのだが、Railはトレック独自のKNOCK BLOCKキャップを対応品に交換することでトップチューブにディスプレイを装着することが出来る。見た目の面でもまとまりがあり、また実用面でも落車時に損傷しづらく、車体をさかさまに置く際にも邪魔にならないなど様々なメリットがあるため、Railユーザーはこの方法を選んだ方が良いだろう。
さて、バッテリー扉の鍵を忘れるというハプニングを除けば、実作業時間は約3時間ほど。手慣れたメカニックが作業してこれ程掛かるので、素人がマニュアル片手に取り組めば、間違いなく1日仕事である。
美しく配線も処理され、めでたくKIOXへと換装されたRail5。まず何よりもハンドル周りがすっきりしたのは嬉しいポイントだ。ディスプレイ一体型のPurionと比べると、KIOXのコントローラーは半分ほどの大きさで、バイクのシルエットを崩さない。
電源のオンオフはディスプレイ側で行うことになるが、以前よりもレスポンスが早いようにも感じる。あいにく、Purion時の所要時間を測っていたわけではないので正確な印象ではないが、少なくともガーミンのエッジ530が起動するよりもKIOXの起動時間はスピーディーだ。自転車をこぎ出してからも電源を入れることが出来るので、いちいちユニットの起動を待つようなストレスを感じることは無いだろう。
ちなみに、PurionからKIOXに換装した際に総走行距離などがリセットされないか心配する方もいらっしゃるだろう。実は、それらのデータはパワーユニットの中に記録されているため、ヘッドユニットを交換しても受け継がれるのだ。なお、最初のアクティベーション時に接続するショップ用の設定ソフトウェアでは、これまでのアシストモードの選択比率といったデータも閲覧可能。ちなみにE-MTBモードの比率が高く、その使い勝手の良さがデータにも表れてきた印象だった。
さて、実際に走り出してみる。これまではモードや速度といった基本的なデータしか表示されなかったのに対し、パワーやケイデンスなどが一括で表示されるようになったのはやはり大きい。特に普段他の自転車に乗る際、高性能なGPSサイコンを使用しているのであれば、その恩恵は大きいはずだ。
個人的に面白かったのはやはりパワー表示だろう。パワーメーターを装着したペダルバイクと一緒に走れば、どれだけアシストユニットが助けてくれているのもわかりやすい。E-BIKEだからといって、運動にならないという先入観も覆すこともできる。感覚的に把握していたE-BIKEの得意不得意分野を数値で可視化できるのは面白いと感じた。
一方で、現在選択中のアシストモードの把握しやすさはPurionに軍配が上がりそうだ。モノクロの液晶に大きくモードを表示するPurionに対し、KIOXは高精細なカラー液晶ながらモード表示自体は小さくなっているためだ。一方で、どの表示ページでも常にモードを表示すると同時に項目名の色が変わるので、慣れてくれば問題はない。ちなみにTURBOモードが赤、E-MTBモードが紫、TOURモードが青、ECOモードが緑となっているが、これはボッシュのコーポレートデザインに登場するグラデーションがベースとなった配色だ。
コントローラーには傾斜がつけられており、左手親指が自然に届くような形状となっているのも良く考えられているな、と感じさせる。走行中にアシストモードや表示項目を変更する際に押し間違えることも皆無。Purionのスイッチはすこしチープな印象だったが、KIOXのコントローラーはもう少ししっとりとした上質な感覚で、ついつい操作したくなってしまう。
スマートフォンとの連携も難しくなく、専用アプリを入れるとペアリングの方法が表示されるので、画面の指示に従って操作するだけでシームレスに連携できた。スマートフォンと連携することで、ライド後にデータをアプリ上で確認できるようになるのは非常に便利。まさしくGPSサイコンに求める楽しみ方が、KIOXだけでほぼ完結することが可能というのは大きなメリットだ。
ANT+のE-BIKE規格も制定され、ジャイアントやスペシャライズドなど、一部のブランドのバイクはガーミンやワフーといったサイクルコンピューターへ出力やケイデンス、電池残量といったデータを送信することが出来るようになっているが、既存のコントローラーやヘッドユニットにプラスしてサイクルコンピューターを購入、装着する必要がある。
一方で、KIOXはヘッドユニットとしてアシストシステムの一部を構成しつつ、GPSサイクルコンピューターとしての要件を満たしているため、ハンドル周りに新たなガジェットを装着する必要もなく、非常にシンプルな状態でライドの楽しみを拡張してくれるのは他にはない強みだろう。
「KIOXにすれば、E-BIKEライフが2割増しで楽しくなります!」とはボッシュのE-BIKE担当である豊田さんの弁だが、個人的な印象としてもまさしくその通り。2倍だと言い過ぎだけど、かといって確実にモチベーションはアップする。E-BIKEの本質的な楽しみ方を変えるほどではないが、KIOXがあればライドを深く楽しめるようになるのは間違いない。
スタイリッシュなルックスとE-MTBの性能を100%発揮する操作性に加え、高性能なGPSサイクルコンピューターに匹敵する機能を統合したボッシュの新型ヘッドユニットKIOX。(概要はこちらの記事を参照いただきたい)
完成車としてKIOXが搭載されているモデルの他に、これまで多くのE-BIKEに採用されてきたPurionからの換装も可能となっているため、ボッシュユニットを搭載しているE-BIKEユーザーはその恩恵を受けることが出来るのだ。
今回は、トレック Rail 5のKIOX仕様へと換装すべく、作業経験の豊富なバイクプラス所沢店へ。スタッフの皆さんもRailを所有し、その仕様を隅々まで知悉しているプロフェッショナルに作業をお願いした。
ちなみに、結論から先に申し上げると、かなりの重整備作業となるので、この選択は大正解。作業内容としては、取り付けてあるPurionの配線を全て外し、その代わりにKIOXを配線するというもの。
ヘッドユニットだけを入れ替えるという訳にはいかず、基本的にはパワーユニットに接続する配線ごと差し替えとなるため、バッテリーや場合によってはパワーユニットも一旦取り外す必要がある。再取り付け時に配線を挟みこんでしまうと、断線してしまう可能性もあるので、なるべく専門店に依頼するのが賢明だ。
なお注意点としては、ショップへと持ち込む際にバッテリーを取り外すための鍵を忘れずに。鍵がないとバッテリーにアクセスできず、作業不可能となるからだ。そう、お察しの通り、私は鍵を忘れてしまい編集部へとんぼ返りする羽目になったのだ。皆様におかれましてはどうか同じ轍を踏まないように……。
ちなみに通常はコラム上部、トップキャップの代わりに純正マウントを装着することになるのだが、Railはトレック独自のKNOCK BLOCKキャップを対応品に交換することでトップチューブにディスプレイを装着することが出来る。見た目の面でもまとまりがあり、また実用面でも落車時に損傷しづらく、車体をさかさまに置く際にも邪魔にならないなど様々なメリットがあるため、Railユーザーはこの方法を選んだ方が良いだろう。
さて、バッテリー扉の鍵を忘れるというハプニングを除けば、実作業時間は約3時間ほど。手慣れたメカニックが作業してこれ程掛かるので、素人がマニュアル片手に取り組めば、間違いなく1日仕事である。
美しく配線も処理され、めでたくKIOXへと換装されたRail5。まず何よりもハンドル周りがすっきりしたのは嬉しいポイントだ。ディスプレイ一体型のPurionと比べると、KIOXのコントローラーは半分ほどの大きさで、バイクのシルエットを崩さない。
電源のオンオフはディスプレイ側で行うことになるが、以前よりもレスポンスが早いようにも感じる。あいにく、Purion時の所要時間を測っていたわけではないので正確な印象ではないが、少なくともガーミンのエッジ530が起動するよりもKIOXの起動時間はスピーディーだ。自転車をこぎ出してからも電源を入れることが出来るので、いちいちユニットの起動を待つようなストレスを感じることは無いだろう。
ちなみに、PurionからKIOXに換装した際に総走行距離などがリセットされないか心配する方もいらっしゃるだろう。実は、それらのデータはパワーユニットの中に記録されているため、ヘッドユニットを交換しても受け継がれるのだ。なお、最初のアクティベーション時に接続するショップ用の設定ソフトウェアでは、これまでのアシストモードの選択比率といったデータも閲覧可能。ちなみにE-MTBモードの比率が高く、その使い勝手の良さがデータにも表れてきた印象だった。
さて、実際に走り出してみる。これまではモードや速度といった基本的なデータしか表示されなかったのに対し、パワーやケイデンスなどが一括で表示されるようになったのはやはり大きい。特に普段他の自転車に乗る際、高性能なGPSサイコンを使用しているのであれば、その恩恵は大きいはずだ。
個人的に面白かったのはやはりパワー表示だろう。パワーメーターを装着したペダルバイクと一緒に走れば、どれだけアシストユニットが助けてくれているのもわかりやすい。E-BIKEだからといって、運動にならないという先入観も覆すこともできる。感覚的に把握していたE-BIKEの得意不得意分野を数値で可視化できるのは面白いと感じた。
一方で、現在選択中のアシストモードの把握しやすさはPurionに軍配が上がりそうだ。モノクロの液晶に大きくモードを表示するPurionに対し、KIOXは高精細なカラー液晶ながらモード表示自体は小さくなっているためだ。一方で、どの表示ページでも常にモードを表示すると同時に項目名の色が変わるので、慣れてくれば問題はない。ちなみにTURBOモードが赤、E-MTBモードが紫、TOURモードが青、ECOモードが緑となっているが、これはボッシュのコーポレートデザインに登場するグラデーションがベースとなった配色だ。
コントローラーには傾斜がつけられており、左手親指が自然に届くような形状となっているのも良く考えられているな、と感じさせる。走行中にアシストモードや表示項目を変更する際に押し間違えることも皆無。Purionのスイッチはすこしチープな印象だったが、KIOXのコントローラーはもう少ししっとりとした上質な感覚で、ついつい操作したくなってしまう。
スマートフォンとの連携も難しくなく、専用アプリを入れるとペアリングの方法が表示されるので、画面の指示に従って操作するだけでシームレスに連携できた。スマートフォンと連携することで、ライド後にデータをアプリ上で確認できるようになるのは非常に便利。まさしくGPSサイコンに求める楽しみ方が、KIOXだけでほぼ完結することが可能というのは大きなメリットだ。
ANT+のE-BIKE規格も制定され、ジャイアントやスペシャライズドなど、一部のブランドのバイクはガーミンやワフーといったサイクルコンピューターへ出力やケイデンス、電池残量といったデータを送信することが出来るようになっているが、既存のコントローラーやヘッドユニットにプラスしてサイクルコンピューターを購入、装着する必要がある。
一方で、KIOXはヘッドユニットとしてアシストシステムの一部を構成しつつ、GPSサイクルコンピューターとしての要件を満たしているため、ハンドル周りに新たなガジェットを装着する必要もなく、非常にシンプルな状態でライドの楽しみを拡張してくれるのは他にはない強みだろう。
「KIOXにすれば、E-BIKEライフが2割増しで楽しくなります!」とはボッシュのE-BIKE担当である豊田さんの弁だが、個人的な印象としてもまさしくその通り。2倍だと言い過ぎだけど、かといって確実にモチベーションはアップする。E-BIKEの本質的な楽しみ方を変えるほどではないが、KIOXがあればライドを深く楽しめるようになるのは間違いない。
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