UCIワールドチームの選手がツール・ド・フランスなどのグランツールで使用し、多くの勝利を支えているシマノのシューズRC9。そして、トラック競技やスプリンター向けに設計された「RC902T」がラインアップされた。優れたフィット感とパワー伝達性能を備えたRC902Tをインプレッションしよう。



シマノ S-PHYRE RC902Tシマノ S-PHYRE RC902T photo:So Isobe
UCIワールドチームのプロ選手たちが着用するシマノのフラッグシップロードシューズ"RC902"。この新型フラッグシップシューズをベースにトラック競技やスプリンター向けに改良された"RC902T"が2022モデルで新たにラインアップされた。

ロードモデル"RC902"とトラックモデル"RC902T"の大きな違いはクロージャーシステムと、アッパーにある。足首側のBOAシステムは、ロードモデルの前足部に配置されたような8の字ルーティングのBOAクロージャーに置き換えられ、前足部はBOAからベルクロにスイッチ。

シマノのフラッグシップロードシューズであるS-PHYREシリーズシマノのフラッグシップロードシューズであるS-PHYREシリーズ photo:So Isobe
BOAシステムにはパワーブーストシューレースガイドが設けられ、ライダーの好みに合わせたフィット感に調整することが可能とした。前足部のベルクロはトゥクリップやストラップに干渉しにくい、トラックならではの作りとなっている。

アッパーの素材も前足部に強化メッシュを用いているロードモデルに対し、トラックモデルでは前面にマイクロファイバーの合成皮革が採用される。伸びに強い生地のため、1000Wを超える高い出力でのペダリング、特に思い切り足を引き上げる時にもパワーロスを最小限に抑えてくれるはずだ。

クロージャーシステム「BOA Li2ダイヤル」クロージャーシステム「BOA Li2ダイヤル」 photo:So Isobe
さらにアッパーにタンを備えることで、引き足時にストラップが食い込みにくくなっているはずだ。もちろんサラウンドラップ構造はロードモデルと共通の360°仕様で、足の裏から包み込むようなフィッティングを実現。快適かつ足をしっかりホールドすることで、ライダーのパフォーマンスは発揮されるだろう。

ラスティングボードを廃止するシームレスミッドソール構造によって、低スタックハイト化を実現。ペダルと足の距離を近づけることで、ペダリングストロークが安定するという。さらにアンチスタビライザーヒールカップが踵をしっかりと固定してくれ、効率の良いペダリングが可能に。

パワーブーストシューレースガイドを搭載パワーブーストシューレースガイドを搭載 photo:So Isobe
広範囲にパンチングが施され、通気性が高まっている広範囲にパンチングが施され、通気性が高まっている photo:So Isobe
ソール剛性12のカーボン製のアウトソールソール剛性12のカーボン製のアウトソール photo:So Isobe
中空カーボン製のアウトソールは、軽量でありながらシマノの剛性指数で最高値の12をマークしている。スプリンターのハイパワーでも受け止められる高い剛性を備えており、まさにトラックライダー向けと言えるだろう。クリートの取り付け範囲も拡大され、多くのライダーのクリート位置に対応している。

重量は42サイズで235g、カラーはホワイトのみの展開となる。サイズは38~48(39~43にはハーフサイズあり)まで用意されており、多くのサイズから自身の足に合った一足を選ぶことができる。価格は46,200円(税込)。



―編集部インプレッション

トラック競技やスプリンター向けに改良された「RC902T」をテストトラック競技やスプリンター向けに改良された「RC902T」をテスト photo:So Isobe

シマノのS-PHYRE RC9と言えばプリモシュ・ログリッチやワウト・ファンアールト、マチュー・ファンデルプールら今を輝くトッププロたちが使っているフラッグシップモデルで、今回インプレを担当するCW編集部の高木も注目していたシューズ。

その派生モデルである「RC902T」は、スプリンターやTTスペシャリスト、クリテリウムスペシャリスト向けに設計されたS-PHYREのトラックレーシングシューズとあって、トラック競技もやっている筆者は履く前から期待感は高め。

シューズのタンによって足あたりが柔らかいシューズのタンによって足あたりが柔らかい photo:So Isobe
BOAダイヤルが1つの搭載モデルでありながら優れたフィット感BOAダイヤルが1つの搭載モデルでありながら優れたフィット感 photo:So Isobe
私が普段のレースやライドで履いているシューズはスペシャライズドの42サイズ。シマノやジロ、DMTの場合ではモデルによって異なるが42~43サイズを選択している。今回テストを行ったのは42.5サイズで、厚みのあるソックスにおいてはジャストサイズ、薄手のソックスの場合は42サイズが良さそう。

RC9シリーズは初代と第2世代を履いたこともあったが、その時はつま先にかけて細身の印象。親指が大きく、ワイドモデルのシューズを好む筆者にはサイズ選びが非常に難しかった記憶がある。しかし第三世代のRC9からは足型が改良され、つま先部分のボリュームが増え、私の足でも履きやすくなっている。

つま先部にはベルクロを搭載し、高い固定力を備えるつま先部にはベルクロを搭載し、高い固定力を備える photo:So Isobe
引き足を使う場面でも好印象引き足を使う場面でも好印象 photo:So Isobe
360°サラウンドラップ構造のアッパーが足全体を包み込むためフィット感も良好。BOAダイヤルが1つのモデルでありながら、パワーブーストシューレースガイドによって、足をしっかりと締め上げられるため、生地全体が足の甲にフィットしているようだ。ピタリとしたフィット感は、足が守られている安心感にも繋がるほどだ。

生地の構成もロードモデルと異なるアッパーは、高いケイデンスで使用することが想定されるトラック競技モデルならではの設計だろう。急加速時に200回転以上にケイデンスを上げても、フットポジションがズレることなく足をしっかりと保持し続けてくれた。タンがクッションとなり、引足時も快適なフィーリングはそのままだ。

通気性にも優れる通気性にも優れる photo:So Isobe
スプリントではパワーの入力に対してレスポンスが速いスプリントではパワーの入力に対してレスポンスが速い photo:So Isobe
さらにシームレスミッドソール構造によってスタックハイトが低いため、ペダリングパワーがダイレクトにペダルに伝わっているように感じる。カーボンソールの剛性はもちろん硬く、1000Wを超えるスプリントでも素早いレスポンス、入力した力が全て推進力になっているように感じられた。

今回のテストではトラックではなくロードバイクでシューズを試したが、ロードシーンでも十分使えるはずだ。特にロードレーサーのなかでも、瞬間的に大出力を発揮するタイプのライダーにはこちらのモデルの方がマッチするのではないだろうか。優れたフィット感と高いホールド力を求めるサイクリストにこそオススメの一足だ。



シマノ S-PHYRE RC902T
ソール剛性:12
重量:235g(サイズ42)
カラー:ホワイト
サイズ:38-48(ワイドタイプあり、39-43ハーフサイズあり)
価格:46,200円(税込)
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