2021/05/25(火) - 04:59
悪天候による短縮コースとなったタッポーネ(クイーンステージ)。チーマコッピの1級山岳ジャウ峠でライバルを蹴散らしたエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が、マリアローザを示しながら大きな勝利を掴んだ。
5月24日(月)第16ステージ
サチーレ〜コルティナ・ダンペッツォ 153km ★★★★★
ジロ・デ・イタリア第2週を締めくくるタッポーネ(クイーンステージ)。休息日を翌日に控える第16ステージは、本来ドロミテを代表する1級山岳フェダイア峠、チーマコッピ(大会最高地点)のポルドイ峠、1級山岳ジャウ峠という標高2,000mオーバーの峠を立て続けに3つ越える獲得標高差5,700mという恐ろしいコースが設定されていたものの、スタート直前に悪天候によってフェダイア峠とポルドイ峠を迂回することが決定した。
これによってコース全長は当初よりも60km短い153kmとなり、2021年のチーマコッピはポルドイ峠よりも6m低い標高2,233mのジャウ峠に移動した。30分遅れの11時30分、前日発生したピエモンテ州のロープウェイ落下事故で亡くなった17歳の女子サイクリストに1分間の黙祷を捧げ、黒いレインジャケットに身を包んだプロトンがスタートを切った。
サチーレの街を出発し、すぐに1級山岳ラ・クロセッタを駆け上がる序盤戦に飛び出したのは24名という大所帯。マリアアッズーラ(山岳賞)を着用するジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)が狙い通り1級クロセッタ頂上を先頭通過すると、その後先頭グループは分裂。その中から飛び出した6名が逃げ切りを目指してハイペースを刻むこととなる。
逃げた6名
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)
アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)
アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア、トレック・セガフレード)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEエチームエミレーツ)
土曜日のゾンコランで大きく遅れ、前日にはスタート直後の落車に巻き込まれるも「レースを降りることは本当に嫌い。名誉のために最後まで走りたい」と話していたニバリと、そのアシストを担うゲブレイグザブハイアーのトレック・セガフレードコンビ、ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEエチームエミレーツ)を含む超強力なエスケープは、ブシャールやダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)を含むこれまた強力な追走グループを引き離していく。
先頭グループに6分リードを与えたメイン集団では、前日に続いてフィリッポ・ガンナとサルヴァトーレ・プッチョ(共にイタリア、イネオス・グレナディアーズ)という重量級機関車がペースメイクを担った。
霧むせぶ、モノトーンの世界を進む先頭グループではゲブレイグザブハイアーが献身的な働きを見せたものの、メイン集団側でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションNIPPO)の牽引が始まったことでタイム差は下降傾向に。ジャウ峠手前のサンタルチア峠に向けて高度を上げる中、30km以上を残してタイム差は3分を割り込んだ。
サンタルチア峠からジャウ峠に向かう短い下りでは、後続のイサギレがオーバーランしかける勢いでペドレロが抜け出したものの、9.9kmに渡り平均勾配9.3%の登りが続くジャウ峠の麓で吸収。すぐにニバリを千切ったフォルモロが、ネックウォーマーを付けたまま独走に。しかしその勢いを、サイモン・カー(イギリス、EFエデュケーションNIPPO)の牽引でわずか8名(ベルナル、マルティネス、カルーゾ、カーシー、カー、イェーツ、バルデ、チッコーネ)に絞られたメイン集団が上回った。
先頭で脚を使い終わり失速したフォルモロをペドレロがかわし、マリアローザグループからは「思い望んでいた状況にはならなかった」と言う総合2位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)が脱落。すると頂上まで約5kmを残し、カーの牽引が終わったタイミングを突いて、マリアローザのベルナル自らアタックした。
中継ヘリが飛ばずライブ画像が届かない中、「何か特別なことを、そして勝負する舞台に戻ってきたことを示したかった」と言うベルナルはペドレロを捉え、単独先頭に立って雪壁に覆われたチーマコッピを通過する。この時点のタイム差は2番手カルーゾが45秒、3番手バルデが1分13秒。途中パンクした総合4位アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)やイェーツたちは2分40秒という大きなビハインドを負ってしまった。
そのまま標高差1,000mに及ぶダウンヒルをこなし、ベルナルは大観衆が詰め掛けたスキーリゾート地コルティナ・ダンペッツォへと到達。少々のタイムロスを気にせずレインジャケットを脱ぎ、総合首位の証であるマリアローザを示すという王者の走りで勝利した。
下りでベルナルとの差を詰めたバルデとカルーゾが27秒遅れの2位と3位。チッコーネとカーシー、アルメイダがそれぞれ1分18、19、21秒遅れで続き、ウラソフは2分11秒遅れの区間7位、苦しんだイェーツは2分37秒遅れの区間11位に沈む。ベルナルがマリアローザのリードを2分24秒まで広げ、総合表彰台圏内から脱落したイェーツに代わりカルーゾが総合2位、カーシーが総合3位へのジャンプアップに成功している。
2018年第15ステージのSイェーツ以来となる、マリアローザを着てのステージ優勝を決めたベルナルは「素晴らしい勝利だ。マリアローザを着ての勝利ならばより特別だよ。それを示したかったし、いつもマリアローザを着て勝てるわけじゃない。ジャージへのリスペクトを示したかったんだ」と話す。背中の痛みによって苦しい時期を過ごしていたベルナルが、ライバルに大きな一撃を加えてジロ第2週が終了した。
5月24日(月)第16ステージ
サチーレ〜コルティナ・ダンペッツォ 153km ★★★★★
ジロ・デ・イタリア第2週を締めくくるタッポーネ(クイーンステージ)。休息日を翌日に控える第16ステージは、本来ドロミテを代表する1級山岳フェダイア峠、チーマコッピ(大会最高地点)のポルドイ峠、1級山岳ジャウ峠という標高2,000mオーバーの峠を立て続けに3つ越える獲得標高差5,700mという恐ろしいコースが設定されていたものの、スタート直前に悪天候によってフェダイア峠とポルドイ峠を迂回することが決定した。
これによってコース全長は当初よりも60km短い153kmとなり、2021年のチーマコッピはポルドイ峠よりも6m低い標高2,233mのジャウ峠に移動した。30分遅れの11時30分、前日発生したピエモンテ州のロープウェイ落下事故で亡くなった17歳の女子サイクリストに1分間の黙祷を捧げ、黒いレインジャケットに身を包んだプロトンがスタートを切った。
サチーレの街を出発し、すぐに1級山岳ラ・クロセッタを駆け上がる序盤戦に飛び出したのは24名という大所帯。マリアアッズーラ(山岳賞)を着用するジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)が狙い通り1級クロセッタ頂上を先頭通過すると、その後先頭グループは分裂。その中から飛び出した6名が逃げ切りを目指してハイペースを刻むこととなる。
逃げた6名
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)
ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)
アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター)
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)
アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア、トレック・セガフレード)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEエチームエミレーツ)
土曜日のゾンコランで大きく遅れ、前日にはスタート直後の落車に巻き込まれるも「レースを降りることは本当に嫌い。名誉のために最後まで走りたい」と話していたニバリと、そのアシストを担うゲブレイグザブハイアーのトレック・セガフレードコンビ、ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAEエチームエミレーツ)を含む超強力なエスケープは、ブシャールやダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)を含むこれまた強力な追走グループを引き離していく。
先頭グループに6分リードを与えたメイン集団では、前日に続いてフィリッポ・ガンナとサルヴァトーレ・プッチョ(共にイタリア、イネオス・グレナディアーズ)という重量級機関車がペースメイクを担った。
霧むせぶ、モノトーンの世界を進む先頭グループではゲブレイグザブハイアーが献身的な働きを見せたものの、メイン集団側でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションNIPPO)の牽引が始まったことでタイム差は下降傾向に。ジャウ峠手前のサンタルチア峠に向けて高度を上げる中、30km以上を残してタイム差は3分を割り込んだ。
サンタルチア峠からジャウ峠に向かう短い下りでは、後続のイサギレがオーバーランしかける勢いでペドレロが抜け出したものの、9.9kmに渡り平均勾配9.3%の登りが続くジャウ峠の麓で吸収。すぐにニバリを千切ったフォルモロが、ネックウォーマーを付けたまま独走に。しかしその勢いを、サイモン・カー(イギリス、EFエデュケーションNIPPO)の牽引でわずか8名(ベルナル、マルティネス、カルーゾ、カーシー、カー、イェーツ、バルデ、チッコーネ)に絞られたメイン集団が上回った。
先頭で脚を使い終わり失速したフォルモロをペドレロがかわし、マリアローザグループからは「思い望んでいた状況にはならなかった」と言う総合2位サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)が脱落。すると頂上まで約5kmを残し、カーの牽引が終わったタイミングを突いて、マリアローザのベルナル自らアタックした。
中継ヘリが飛ばずライブ画像が届かない中、「何か特別なことを、そして勝負する舞台に戻ってきたことを示したかった」と言うベルナルはペドレロを捉え、単独先頭に立って雪壁に覆われたチーマコッピを通過する。この時点のタイム差は2番手カルーゾが45秒、3番手バルデが1分13秒。途中パンクした総合4位アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)やイェーツたちは2分40秒という大きなビハインドを負ってしまった。
そのまま標高差1,000mに及ぶダウンヒルをこなし、ベルナルは大観衆が詰め掛けたスキーリゾート地コルティナ・ダンペッツォへと到達。少々のタイムロスを気にせずレインジャケットを脱ぎ、総合首位の証であるマリアローザを示すという王者の走りで勝利した。
下りでベルナルとの差を詰めたバルデとカルーゾが27秒遅れの2位と3位。チッコーネとカーシー、アルメイダがそれぞれ1分18、19、21秒遅れで続き、ウラソフは2分11秒遅れの区間7位、苦しんだイェーツは2分37秒遅れの区間11位に沈む。ベルナルがマリアローザのリードを2分24秒まで広げ、総合表彰台圏内から脱落したイェーツに代わりカルーゾが総合2位、カーシーが総合3位へのジャンプアップに成功している。
2018年第15ステージのSイェーツ以来となる、マリアローザを着てのステージ優勝を決めたベルナルは「素晴らしい勝利だ。マリアローザを着ての勝利ならばより特別だよ。それを示したかったし、いつもマリアローザを着て勝てるわけじゃない。ジャージへのリスペクトを示したかったんだ」と話す。背中の痛みによって苦しい時期を過ごしていたベルナルが、ライバルに大きな一撃を加えてジロ第2週が終了した。
ジロ・デ・イタリア2021第16ステージ結果
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 135pts |
2位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 113pts |
3位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | 110pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 136pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 107pts |
3位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 53pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | トレック・セガフレード | 200:08:30 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:6:46 |
3位 | バイクエクスチェンジ | 0:26:12 |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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