ヴィットリアがロードチューブレスタイヤ向けのインサート"Air-Liner Road"を発表した。これまでのインサートとは異なり、パンク時にライナーが膨張することで低圧の状態でも走れるようにしたランフラットのような役割を持つプロダクトだ。



ヴィットリア Air-Liner Roadヴィットリア Air-Liner Road (c)vittoria
マウンテンバイク用にはじまりグラベル用のタイヤインサートをリリースしてきたヴィットリアが、ついにロード用タイヤインサート"Air-Liner"を発表した。タイヤインサートというのは、簡単に説明するならばチューブレスタイヤの内側にチューブのように入れるクッションだ。

オフロードライドでは、タイヤインサートを入れることでリム打ちによるパンクや破損のリスク低減という恩恵を受けられることで多くのライダーから支持されているアイテムだ。また、より低圧を可能とすることによるグリップ力や快適性の向上、タイヤの横方向へのねじれを抑える安定性向上など様々なメリットもある。

そんなタイヤインサートだが、ヴィットリアがAir-Liner Roadに高圧で運用するロードタイヤ向けインサートとして与えたメインの役割は、パンク時に帰宅するためのクッションになること。シーラントで塞ぎきれない穴を開けてしまった場合、チューブに入れ替えるとしてもシーラントで濡れたバルブを外すなど作業は面倒で、特に出先では難しいシチュエーションも多いはず。

ヴィットリア Air-Liner Roadヴィットリア Air-Liner Road (c)vittoria
このタイヤインサートを入れておけば、空気が抜けてしまってもリムにダメージを与えることなく、ある程度まで自走が可能になる。落ち着いて作業できる場所まで移動できる可能性が生まれることは有難いはずだ。そして、修理せずそのまま家まで帰着できれば御の字。シーラントがワンミスをカバーしてくれるとしたら、Air-Liner Roadはシーラントでは防ぎ切れなかった事態をカバーしてくれる存在と言えるだろう。

また、インサート自体は発泡素材で出来ているため、高圧になると縮むほど柔軟性に優れている。このため通常使用時はタイヤのしなやかさはそのまま活かすことができる。パンクなどで空気が抜けて減圧されると、インサートは膨らんで通常の太さに戻ることで、リム打ちやビードが落ちるリスクを低減し、走行を続けられるという。


推奨事項として、ランフラット状態では20km/hを超える速度で距離50km以上走行しないこととされている。最大システム重量は125kg(ライダー、自転車、機器、装備品含む)。あくまでもトラブルに対応するためのプロダクトのため、使用前は製品の注意事項をしっかりと確認したほうが良さそうだ。

Air-Liner Roadはチューブのように輪になったプロダクトのため、長さを調節する必要がない。インナーチューブのように、タイヤのビードを片側タイヤに装着してから製品を装着し、もう片側のビードを通常通りに嵌めるだけ。その後バルブコアからシーラントを注ぎ入れる。Air-Liner Roadに付属するバルブは、インサートを入れた後でも空気やシーラントを充填できるような構造となっている。

ラインアップはS、M、Lの3種類。それぞれタイヤ幅やリム幅にあわせて選ぶ。重量は24〜39gで、チューブと置き換えると考えれば重量増はごくわずかだ。



ヴィットリアのチャンネルには装着Tipsなどの動画が各種アップロードされているため、使用する際にはチェックして参考にしてもらいたい。


インプレッション

ヴィットリア Air-Liner Roadヴィットリア Air-Liner Road photo:MakotoAYANO
チューブレスタイヤがますます主流になり、使い勝手も向上するなかで、しかしどうしても手を焼くトラブルは存在する。パンクすることがほとんどなくなる(=パンクしてもシーラントですぐ自己修復する)のだが、もし塞がらない穴があいた際にはチューブを入れることで対応することになる。しかし固着したビードを落とすのに四苦八苦したり、シーラントで手を汚したくないといった人も多い。かといってチューブレスの快適性や走行性能はやはり魅力だから、今さらチューブドには戻したくないと、多くのサイクリストが悩んでいるようだ。

柔軟性のあるフォーム素材で、6角の断面形状をもつ柔軟性のあるフォーム素材で、6角の断面形状をもつ チューブレス・マルチウェイバルブ 48mmチューブレス・マルチウェイバルブ 48mm


出先では修理不能なパンクを、せめて工具や交換タイヤの揃った自宅に帰ってから修理することができれば。あるいは、自分で修理できなくても、頼れる人やショップのところまで自走で向かうことができれば、どんなに安心だろう。ヴィットリア Air-Liner Roadはそれを可能にするお助けプロダクトだ。

Air-Liner Road インストール手順

「まず中にライナーを仕込むのが絶対に難しそう!」という先入観満々で、まずは実際に取付作業を行ってみた。

セットの中には英文ながら写真とキャプションで手順を解説する取り扱い説明書がある。それに加えてこの記事内にある動画を視聴し、理解してから作業に移った。

チューブレス・マルチウェイバルブを取り付けるチューブレス・マルチウェイバルブを取り付ける 滑りを良くするために水スプレーでライナーを濡らす滑りを良くするために水スプレーでライナーを濡らす


リムテープに傷み等が無いか確認したら、まずはチューブレス・マルチウェイバルブをセットする。これは根本に横方向の孔があり、ライナーを組み込んだ状態でもシーラント注入が可能になっている専用バルブだ。

まずタイヤの片側のビードをリムに嵌めてから、滑りを良くするために軽く水で塗らしたライナーをタイヤ内に仕込んでいく。ライナーはよく伸びるため、チューブよりもタイヤ内には収めやすい。

片側のビードを上げたらライナーを収めていく片側のビードを上げたらライナーを収めていく ビードを全周に渡ってリムセンターの溝に落としていくビードを全周に渡ってリムセンターの溝に落としていく


もう片方のビードをリムに嵌める作業の前に、嵌っているほうのビードを改めてリムのセンターの溝の中心にくるように落としていく。全周に渡ってセンターに落としたら、滑りを良くするための石鹸水を全周に塗る。

ビードとリムの接触部に石鹸水を塗ると滑りが良くなるビードとリムの接触部に石鹸水を塗ると滑りが良くなる ライナーを伸ばしながらタイヤ内に収めていくライナーを伸ばしながらタイヤ内に収めていく


もう片方のビードを嵌めていく際も、石鹸水で濡らしてからビードを収めていく。最後はキツイ部分がでてくるが、タイヤレバーを使って収めていく。キツくなったらビード全周を改めてセンターの溝に寄せていけば、ビードに余裕が出てくる。

タイヤレバーを使用して最後のビードを上げたら、ポンプ(またはコンプレッサー)で空気を入れ、両ビードを上げる。塗布した石鹸水でリムウォールとビードの間が濡れていれば、ビードがスムーズにあがりやすい。

クリップで上がったビードを留めるクリップで上がったビードを留める ロード チューブレス・ ツールキットでビードを上げるロード チューブレス・ ツールキットでビードを上げる


最後のビード上げの際に今回併せて発表された新製品「ロードチューブレス・ツールキット(TLタイヤ脱着ツール)」を使用することが推奨されている。上がったビードの端をクリップで留めながらバインダーで掴んでビードを上げることができるため、非力な人でも作業はしやすい。

全周に渡ってビードが均一に上がったことを確認できたら、エアを抜いてバルブコアを外し、シーラントを規定量注入する。Air-Liner Roadはシーラントを吸い込まないため、注入量は影響を受けない。ただし流入スペースが狭いためゆっくりと注入するのがコツ(逆流しないように)。

ポンプアップするとビードがスムーズに上がったポンプアップするとビードがスムーズに上がった バルブコアを外してシーラントを注入するバルブコアを外してシーラントを注入する


今回のテストではマヴィックのキシリウムSLホイールとヴィットリアRUBINO PROタイヤを用いたが、最後の部分のみタイヤレバーを使ったものの、ビードは簡単に上げることができた。Air-Liner Roadはよく伸びるため、タイヤ内に収まるよう揉み込むように作業すれば、ほぼ影響なくビードを上げることができるようだ。

シーラントを注入し終えたら、再度コアを取り付けてポンプアップ。空気圧を高めると、中のAir-Liner Roadは縮んで細くなる。予想に反してインストールは簡単だった。

■パンクを想定した走行テスト

エアが抜けてパンクした状態を再現したエアが抜けてパンクした状態を再現した photo:Gakuto Fujiwara
さっそく路上でパンク時を再現したフラット走行テストをしてみた。しかしまずシーラントを入れていれば、ほとんどのパンクならシーラントで自己修復させることができるだろう。それ以上の修理不能な穴が空いたケースの再現として、バルブを開けて空気をすべて抜いてみた。

タイヤの空気がすべて抜けても中にAir-Liner Roadの芯があるタイヤの空気がすべて抜けても中にAir-Liner Roadの芯がある
空気の抜けきったタイヤを手で押し込んで見れば、中に膨らんだAir-Liner Roadの存在を感じることができる。そのままでバイクに乗ってみると、タイヤは潰れるものの、中に芯がある状態のためなんとか走ることができる。底づきしないので、リムも傷まない。

やや不安定になるためスピードを上げて走る気にはならないが、パンクしたのが後輪なら、スラロームを繰り返すことも可能だった。対して前輪の場合はコーナリングはやや難しいだろう。

スピードが出ていなければコーナリングは十分に可能だスピードが出ていなければコーナリングは十分に可能だ photo:Gakuto Fujiwara
急な下り坂やダンシング(立ち漕ぎ)も難しいが、上下動の少ないペダリングを意識すれば平坦路を直線的に走ることなら不安定な感じもなくできるため、例えば「20km先のサイクルショップまでそのまま自走で向かおう」という気になるぐらいには十分に現実的だ。

リムに底づきしないためカーボンリムも傷めないだろうリムに底づきしないためカーボンリムも傷めないだろう タイヤは潰れても芯があるためスラロームは可能だタイヤは潰れても芯があるためスラロームは可能だ


段差の衝撃もいなすため、高価なカーボンリムを痛めることもなく、タイヤも自走後にパンク修理すれば再使用できる状態をキープできるだろう。

チューブレスタイヤユーザー限定のニッチなニーズに応える製品だが、パンク修理を苦手とする人にとってはメリットの大きな画期的な製品だと思う。クリンチャータイヤでさえ修理できないという人は居るから、それならばAir-Liner Roadを仕込んだチューブレスタイヤならパンクのリスクが少なく、シーラントで自己修復できないパンクをした際も自走が可能になる「保険」と考えれば、これで救われるユーザーはかなり多そうだ。

なお同時に開発された大型のプライヤーのような「ロード チューブレス・ ツールキット」は、固着したビードを落とす際にもタイヤを傷めずに非常に力を入れやすいツールになっている。今回はタイヤレバーだけでビードが上がったため活躍する機会はなかったが、相性の悪いチューブレスタイヤとリムの組み合わせの際のビード上げ便利ツールに仕上がっていると感じた。プロ用ツールとしても使いでがありそうだ。

(インプレッション:綾野 真/CW編集部)
ヴィットリア Air-Liner Road
サイズ 推奨タイヤ幅 最大タイヤ幅 最大リム内幅 重量
Small 25 mm 28 mm 21 mm 24 g
Medium 28 mm 30 mm 23 mm 31 g
Large 30 mm 32 mm 26 mm 39 g
Air-Liner Road 販売スペック
品名 付属品 価格(税込)
Air-Liner Road チューブレス・マルチウェイバルブ 48mm 5,280円
ロードチューブレス・ツールキット(TLタイヤ脱着ツール) クリップ(6個) 3,630円
Air-Liner Road Kit エア ー ライナ ー ・ ロード x 2、チューブレス・ マルチウェイバルブ x 2、ユニバーサル チューブレス タイヤ・ シーラント 80ml x 1、ロード チューブレス・ ツールキット x 1) 14,300円

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