プロフルシーズン初年度のシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)が世界屈指のTTスペシャリストを下し、パリ〜ニース3日目に勝利。マイヨジョーヌを射止める大金星で自身の名をアピールした。



ステージ優勝(17分34秒):シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)ステージ優勝(17分34秒):シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO) (c)CorVos
パリ〜ニース2021第3ステージコースプロフィールパリ〜ニース2021第3ステージコースプロフィール (c)A.S.O.フランス、サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏の街ジアンを発着する、パリ〜ニース(UCIワールドツアー)3日目の個人タイムトライアル(14.4km)。ここ2年間パリ〜ニースの個人タイムトライアルは15km程度の短距離コースが組まれており、それゆえ手に汗握る僅差の「時間との戦い」が繰り広げられた。

14.4km、時間にして18分前後を走るコースは比較的平坦と言えるが、曲がりくねった丘陵地の農道が組み込まれ、最後には登坂距離400m/平均勾配5%の坂が控えるなど超高速コースとは言い難い。短距離という条件も重なり、TTスペシャリストはもちろん、スプリンターやルーラーといった様々な選手がリザルト上位に絡むこととなる。

ピエール・ロラン(今大会不出場)の故郷でまず好タイムを叩き出したのは2018、2019年のTT世界王者であるローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)だった。優勝候補筆頭のデニスはそれまでの暫定首位タイムを43秒も上回ってホットシートに座ったものの、その王座は安泰ではなかった。

ステージ2位(0.83秒遅れ):レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)ステージ2位(0.83秒遅れ):レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
ステージ3位(6秒遅れ):プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)ステージ3位(6秒遅れ):プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
ステージ4位(9秒遅れ):ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)ステージ4位(9秒遅れ):ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) (c)CorVosステージ5位(10秒遅れ):セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM)ステージ5位(10秒遅れ):セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM) (c)CorVos


デニスを4秒上回ったのは、前日ケース・ボル(オランダ)の勝利で波に乗る、チームDSMのセーアン・クラーウアナスン(デンマーク)。しかし2年連続ステージ優勝を目指したクラーウアナスンは「満足できる走りだった」と振り返るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)に4秒上書きされ、さらに間髪入れず「クレルモンフェランのTGV」ことフランスTT王者レミ・カヴァニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が5秒上回る。

カヴァニャの優勝は堅いかと思われていたのも束の間、その4人後ろを走ったシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)が会場を驚かせた。

勢いよくフィニッシュに飛び込んだビッセガーのタイムは、カヴァニャを僅か0秒83上回る17分34秒12。その後走ったブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)や、終盤スタートのスプリンター勢もビッセガーのタイムには及ばない。マイヨジョーヌ防衛を狙った最終走者マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)は23秒遅れの17位に沈んだことで、ビッセガーがステージ優勝とマイヨジョーヌを射止めた。

23秒遅れの17位に沈んだマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)23秒遅れの17位に沈んだマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) (c)CorVos
大きな勝利を掴んだシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)大きな勝利を掴んだシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO) (c)CorVos
マイヨジョーヌを着用したシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)マイヨジョーヌを着用したシュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO) (c)CorVos
「本当にテクニカルなタイムトライアルだった。リスクを冒しつつ、その一方で冷静で忍耐強くある必要があった。状況をうまくコントロールできたと思うので本当に嬉しい」と語るビッセガーは、トラックを中心に力を伸ばし、今年プロとしてのフルシーズン初年度を過ごす22歳。UAEツアーのTTステージでは優勝したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)に迫る2位となり注目を集めていた。

「大きな意味を持つ結果だ。このために長い時間努力を続けてきた。まだとても若く成長段階にあるけれど、他選手にマークされる存在だと証明できたと思う。短くパンチ力の必要なコースは完全に僕向きだった。どんな可能性がある選手なのかを証明できたし、ここで勝つことができて本当に嬉しい」と、値千金の招勝利を掴んだビッセガーは優勝インタビューに答えている。

スイスのコンチネンタルチーム所属時の2019年にツール・ド・ランで初勝利を挙げ、U23世界選手権で2位に入っていたビッセガー。Stravaに公開したデータによれば、17分57秒間で平均451ワット(体重78kg)を叩き出している。マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)と同じ1998年生まれであり、スイスからまた新たな注目株が登場したことになる。

新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は121位フィニッシュ新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は121位フィニッシュ (c)CorVos
この日のステージ結果がほぼ反映された総合成績の中、ログリッチは総合3位に浮上してライバルたちをリード。ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がログリッチから14秒遅れ、ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)が15秒遅れ、昨年覇者マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)が16秒遅れ、テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が38秒遅れにつけた状態で、翌日に今大会初の山岳ステージ(1級山岳フィニッシュ)を迎える。

パリ〜ニース2021第3ステージ結果
1位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO) 17:34
2位 レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:06
4位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 0:09
5位 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM) 0:10
6位 ローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ) 0:13
7位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
8位 ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) 0:14
9位 イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:16
10位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、イスラエル・スタートアップネイション)
121位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) 1:34
個人総合成績
1位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO) 8:37:11
2位 レミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:06
4位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 0:09
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
6位 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM) 0:10
7位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) 0:12
8位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス) 0:13
9位 ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) 0:14
10位 イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:15
その他の特別賞
ポイント賞 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)
山岳賞 ファビアン・ドゥべ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
ヤングライダー賞 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFエデュケーションNIPPO)
チーム総合成績 ドゥクーニンク・クイックステップ
text:So Isobe