コロナ禍でバーチャルサイクリングを楽しむインドアサイクリストが増加した昨今、自転車とローラーが一体化したスマートバイクに注目が集まっている。今回は堅牢性や安定性を兼ね備え、ポジションの変更がしやすいステージズサイクリングのスマートバイク、STAGES BIKEをインプレッションする。



ステージズサイクリング STAGES BIKEステージズサイクリング STAGES BIKE
パワーメーターブランドとしてお馴染みのステージズサイクリングがリリースしたスマートバイク「STAGES BIKE」。2020年の6月に発売開始となった注目作をインプレッションしよう。インプレッションを担当するのは年間を通してスマートローラーを使用し、ズイフトなどバーチャルレースに参戦しているCW編集部員の高木。

インプレッションに移る前に簡単にSTAGES BIKEの紹介をしよう。ベースはステージズサイクリングが本国で作っているジム向けフィットネスバイク。STAGES BIKEがスマートバイクたる由縁は、ANT+とANT+ FE-C、Bluetoothの無線通信に対応していること。現在ではポピュラーな存在となったスマートトレーナーと同じ様にズイフトなどで遊べるインドアトレーナーだ。最大再現勾配は25%で、ズイフト内であれば不足を感じることのないスペックだ。

STAGES BIKEに搭載されるパワーメーターはもちろんSTAGES POWERだSTAGES BIKEに搭載されるパワーメーターはもちろんSTAGES POWERだ
パワー計測はもちろんステージズサイクリングが誇る「STAGES POWER LR」にて行う。精度±1.5%のパワーメーターのデータをベースとしており、インドアサイクリングでも正確な数値を計測しながらトレーニングができる。STAGES POWERユーザーであれば、実走と同じ数値を出してくれると期待できそうだ。

さて、ここからインプレッションに移ろう。まずペダリングして明らかになるのが、ペダルに掛けた力がリニアかつスムーズに内部のドライブトレインの駆動に使われているような感覚。通常の自転車ではクランクからチェーン、スプロケットに力が伝わる時、各パーツとチェーンが噛み合い遊ぶようなフィーリングを感じるが、STAGES BIKEの場合はそれを一切感じない。踏力の全てがロスすること無く、フライホイールを回しているようなスパルタンなフィーリングだ。

また、見た目から受ける印象通り、ボディは非常に頑丈でペダリングの力が加わってもボディが左右にしなることはない。ボディが左右に振れないため、いわゆる縦踏みのペダリングがマッチしているという印象だ。一方で、スプリント時にハンドルやフレームを左右に振るライダーの場合はもがきにくさを感じるかもしれない。今回STAGES BIKEを試してみて、改めてスマートローラー+自転車の組み合わせでは、自転車のフレームは非常によくしなることを実感させられた。

ステージズサイクリング STAGES BIKEステージズサイクリング STAGES BIKE
この堅牢性とフィットネス用マシン由来の安定性は、スプリントなどハイパワーでもがく時に発揮される。今回のテストでは、1000Wを超えるパワーでの全力スプリントをしてみたが、一切マシンに不安を感じること無くもがき切ることができた。この安定感がSTAGES BIKEの大きな魅力だ。

また、競輪選手やトラック競技選手が取り入れている高ケイデンストレーニングにも挑戦。最大216rpmまで回してみたが、STAGES BIKEはビクともせず、ペダルを回すことだけに集中することができた。トレーナーが動いてしまう心配もなく、トレーニングには非常にぴったりだと思う。

ダンシングで車体を左右に振りながらハイトルクをかけるスプリントと、ハイケイデンスでパワーをあげるスプリントどちらも試してみて感じたのは、STAGES BIKEの場合は堅牢性を活かしハイケイデンスのペダリングを意識したほうがパワーの数値をあげられるということ。サイクリストごとにパワーを掛けるペダリングの合う合わないがあるので、スマートバイクを検討する時はこの特性を加味したほうが良さそうだ。

ステージズオリジナルのレバーが装備されているステージズオリジナルのレバーが装備されている グリップ力を意識したブラケットフードが採用されているグリップ力を意識したブラケットフードが採用されている

31.8mmのハンドルを装着できるクランプ部31.8mmのハンドルを装着できるクランプ部 車体の前方に巨大なフライホイールが備えられている車体の前方に巨大なフライホイールが備えられている


22.5kgにもなる大型のフライホイールと耐久性に優れたGates Carbonベルトドライブにより、大きなパワーを受けたとしてもビクともせず、高回転で回したとしてもスムーズに回ってくれる。ハードに使ってみたが、しっかりとしている事がわかったので、本格的にレース参戦をしているようなライダーでも満足出来る強度は備えていると思う。

そして暫く回していると気がつくのは、これまで乗ってきたスマートトレーナーとは一線を画する静寂さだ。音はもちろん振動もほとんどなく感じる。テストではマットと併用したのだが、この組み合わせであれば集合住宅でも問題なさそう。

シフト操作はブラケットに備えられた4つのボタンと、ハンドルドロップ部などに装着するサテライトスイッチで行う。ブレーキレバーはフライホイールにブレーキを掛けることも可能だ。シフトフィールは至ってスムーズ。変速時に音が出る設定も備えられており、変速を耳でも確認することが可能となっている。

ブラケットとサテライトスイッチのボタン割当をアプリで行えるブラケットとサテライトスイッチのボタン割当をアプリで行える シマノのラインアップにあるチェーンリングの歯数を選べるシマノのラインアップにあるチェーンリングの歯数を選べる

ドリームドライブはありえないギア構成に設定できるドリームドライブはありえないギア構成に設定できる バーチャルサイクリング内の勾配再現を調節できる「勾配スケール因子」バーチャルサイクリング内の勾配再現を調節できる「勾配スケール因子」


シフトの各ボタンへの割当はスマホ/タブレット用アプリ「ステージズリンク」を介して設定する。シマノやスラムなどを仮想的な再現、ギア比調整、リア50段など現実ではありえないドリームドライブというセッティングも行える。

アプリで設定できる項目で面白いのは、勾配スケール因子というもの。これはバーチャルサイクリング内に表れる勾配の再現度合いを調整する項目であり、勾配再現を2倍や1/2倍とすることが可能。自動負荷調整機能で遊びたいが、坂はしんどいという方などでもバーチャルサイクリングを楽しめるはずだ。

タブレットホルダーとスマホホルダーの2種類が備えられているタブレットホルダーとスマホホルダーの2種類が備えられている USBポートが2口備えられているUSBポートが2口備えられている

ダウンチューブに当たる部分にボトルホルダーが用意されたダウンチューブに当たる部分にボトルホルダーが用意された ドロップ部に装着できるサテライトスイッチも用意されているドロップ部に装着できるサテライトスイッチも用意されている


オールインワンのトレーナーとして細部の作りも抜かり無い。私が気に入ったのが、シマノDURA-ACEペダルなど軽量化のためにペダルレンチ非対応のペダルを使用できる点。本格的インドアトレーニング機器やジムに設置されているようなフィットネスバイクでは、ペダルレンチを使用しなければペダルを装着できず、ロードのハイエンドペダルで練習することは叶わなかった。

フィットネスバイクに端を発するSTAGES BIKEもペダルレンチを使用することが前提の作りだが、少しだが六角レンチを差し込む余裕が設けられている。ホームトレーニングと言えど実際のバイクと違和感なく同じ感覚でペダルを踏むことができるかはトレーニングにおいては重要だ。愛用しているものを使えるメリットは非常に大きい。

クランク長は4種類から選ぶことができるクランク長は4種類から選ぶことができる ペダルレンチ非対応のペダルも装着できるペダルレンチ非対応のペダルも装着できる

スタックやリーチも調節することができるスタックやリーチも調節することができる サドルのセットバック量も調節できるサドルのセットバック量も調節できる


もちろんペダルだけではなく、ハンドルやサドルも好きなモデルを使うことができ、クランク長も165mm、170mm、172.5mm、175mmという4サイズを選択することができる。愛用している自転車を再現できるのは非常に有り難い。サドルハイトやセットバック量、リーチ、スタックを工具無しで調整できるため、ポジションで悩んでいる方が様々なポジションを試すことに向いている。

実際に自宅に設置することを考えると大きさや重さは気になるところ。私も実際にSTAGES BIKEを目の当たりするまでは非常に大きな物かと思っていたが、実際に見てみたら意外とコンパクトな印象を受けたほど。重量は62.5kgと非常にヘビー。ただ、ボディ本体には移動するためのローラーが備えられているので、移動させることは可能だ。

ステージズサイクリング STAGES BIKEステージズサイクリング STAGES BIKE
スマートバイクのメリットはチェーン、スプロケットがむき出しになっていない点にもある。小さなお子さんやペットがいる家庭の場合は不意に触れてしまうなど事故の可能性もあるため、ベルトなどが全て内装されているスマートバイクは安心して使うことができそうだ。

また、スマートバイクはメンテナンスフリーであるため、チェーンやスプロケット、タイヤなど消耗品を交換する必要がなく、ランニングコストを抑えられる。STAGES BIKEの価格は330,000円(税抜)とロードバイク一台分に匹敵するが、自転車+スマートトレーナーの価格と思えば高くはないはず。

STAGES BIKEはインターテックのオンラインストアと正規ショップどちらで購入した場合でも、無料での配送で自宅に届けられ、簡単な設置作業まで行ってくれるというから、有り難い。冷蔵庫や洗濯機のような家電を想像してもらえればわかりやすいと思う。配送には7-10日ほどかかるという。STAGES BIKEは電極プラグがアース付きの3点式プラグが標準装備であること。配送前にユーザー自ら別途アダプターを用意しておこう。

心拍センサー Stages Pulseが付属するキャンペーン中だ心拍センサー Stages Pulseが付属するキャンペーン中だ
現在、1月31日までステージズの心拍センサー Stages Pulseも付属してくる「インドアトレーニング応援キャンペーン!」も開催中。

非常に優れた堅牢性と安定性を備えたSTAGES BIKEは、常にトレーニングを積み重ね、本格的にレースに取り組むシリアスなレーサーにこそ向いているスマートバイクだ。もちろんコロナ禍で外で運動を控えている方が多い昨今、気軽にフィットネスをしたい人でも満足できるはず。質実剛健なスマートバイクを探している方にオススメできるプロダクトだ。




ステージズサイクリング STAGES BIKE
接地面積:ベースサイズ1.1m、最大長さ1.58m x 0.56m
本体重量:62.5kg(フライホイール22.5㎏)
勾配再現:+25%
最大出力:2,200W
パワー計測装置:Stages LR power meter
パワーメーター精度:+/- 1.5%
通信規格:ANT+、ANT+ FE-C、Bluetooth
対応身長:1.47m~2.08m
対応体重:136kgまで
クランクアーム長:165/170/172.5/175mmの4サイズ対応
価格:330,000円(税抜、送料込・簡易設置料込)


impression:Michinari Takagi