イタリアのロッサーノ・ベネトに拠点を構える老舗ブランドのウィリエールが、エアロロード"FILANTE SLR"を発表した。新しいエアロチュービングやZero SLRで投入した新素材を採用することで、空力特性向上と軽量化を果たした。



ウィリエール FILANTE SLR(レッド)ウィリエール FILANTE SLR(レッド) (c)wilier
ウィリエールのレーシングバイクとして双璧を成すZero(ゼロ)とCento(チェント)シリーズ。ブランドの100周年にあたる2006年にデビューしたCentoは、改良が重ねられ110周年にあたる2016年のCento10 AIR(チェント・ディエチ・エアー)へと続く。現在はプロ選手からの要望を反映させ、剛性を強化したCento10 PROがシリーズの頂点に立っていた。

2019年のZero SLR発表後、次に登場するのはウィリエールの歴史を紡ぐCentoシリーズの最新作と思われたが、ウィリエールが発表したのは"FILANTE(フィランテ)"というネーミングの新型。Cento10 PROの後継らしくエアロロード然としたフレームワークは承継しているが、モデル名は全く新しいものとなった。

ヘッド周りもカムテールとされているヘッド周りもカムテールとされている フォーククラウンのインテグレーテッドデザインも進化しているフォーククラウンのインテグレーテッドデザインも進化している


カムテールの角部分を落とすことで横風の影響を低減するカムテールの角部分を落とすことで横風の影響を低減する
進化したポイントはエアロと軽量性という2つの要素。エアロダイナミクス面でのアップデートは、NACAエアロフォイルチューブの形状をブラッシュアップしたこと。前作は翼断面の後端部を切り落としたカムテールの切り口部分が直線的なデザインとされていたが、今作では切り口部分の角が落とされたラウンドシェイプとなっている。

これは真正面からの風だけではなく、ヨー角のついた風(横風)を受けた時に空気を綺麗に流すため。実走行ではありとあらゆる方向から風が吹き付け、コーナーの度に受ける風の方向は変化する。また、集団内で走行していると周りにいるライダーが掻き乱した風を受けてしまう。ウィリエールは様々な状況で空力効果を発揮するために、今作のエアロダイナミクス設計を行ったという。

今作はシートチューブがタイヤを覆うようなデザインとなった今作はシートチューブがタイヤを覆うようなデザインとなった
フォークブレードの前後幅を広げることでエアロダイナミクス向上を狙ったフォークブレードの前後幅を広げることでエアロダイナミクス向上を狙った Cento10 PROよりも7mm広いクリアランスとすることで空力性能を向上させた。ブレードの厚みは左右で異なるCento10 PROよりも7mm広いクリアランスとすることで空力性能を向上させた。ブレードの厚みは左右で異なる


もちろんアップデートはチューブ断面だけではない。フレームワークにもしっかりと手が入れられており、シートチューブがタイヤを覆うようなデザインとなったり、フォークの前後幅が広げられたりと様々な部分がブラッシュアップされている。具体的には、フロントフォークをCento10 PROよりも7mm拡幅したワイドスタンスとし乱流発生を抑えるとともに、シートステーとデザインや配置を揃えることで、エアロダイナミクスを向上させたとウィリエールは説明する。

チューブのラウンドシェイプは重量面でもメリットをもたらした。角張ったデザインよりもレジンのコントロールが行いやすくなり、余分なレジンを取り除くことが可能となったという。結果としてFILANTEはフレームで870g、プロトン屈指の軽量バイクであるZero SLRと比較してもプラス90gに留まったエアロフレームを実現。フォークは360g、ハンドルバーは365g、シートポストは165gとされている。

シートステーとフォークの肩のデザインと高さを揃えたデザインにシートステーとフォークの肩のデザインと高さを揃えたデザインに (c)wilier
Cento10 PROよりも11%の重量削減を果たしたFILANTEに使用される素材は、Zero SLRと同じHUS-MODカーボンとLCPの組み合わせだ。剛性と軽量性を向上させるカーボン素材に、高い弾性を持ち路面からの衝撃を和らげる液晶ポリマーを加えることで、軽く硬く、乗りやすいフレームを作り上げたという。カーボン素材等の詳しい情報は、Zero SLR登場時の特集ページをチェックして欲しい。リンクは→こちら

剛性へのアプローチは形状からも行われている。左右非対称であることが当たり前となったリア三角のように、ディスクブレーキ専用マシンとなったことでフォークもアシンメトリカルデザインに。ディスクブレーキの制動力を受け止めるためにブレーキキャリパー側のレッグが太く設計された。ちなみにスルーアクスルはスピードリリースが採用されている。

Zero Barによってケーブル内装化を果たしているZero Barによってケーブル内装化を果たしている 大径過ぎないサイズのヘッドとすることで前方投影面積を低減している大径過ぎないサイズのヘッドとすることで前方投影面積を低減している

コンパクトなリア三角はCento10 PROを踏襲しているコンパクトなリア三角はCento10 PROを踏襲している シートポスト周りも新しいチューブデザインとされているシートポスト周りも新しいチューブデザインとされている


FILANTEに付属するステム一体型ハンドル"Zero Bar"は、2016年に登場したALABALDAと比較し約50~60gの軽量化に成功しているという。もちろんワイヤー類はフルインターナルルーティングのため、ハンドルバー内部を通り各所に配線される。ウィリエールは独自のヘッドセットシステムを開発し、ステアリングコラムをD型ではなく丸型としたことで優れた強度と剛性を確保している。

Zero Barは5つのサイズ展開が行われており、6種のフレームサイズとそれぞれ組み合わせることで、非常に多くのセッティングを可能としている。シートポストも0mmオフセットと15mmオフセットの2種類が用意されている。フレームは電動変速専用で、ボトムブラケット規格はBB86。

ウィリエール FILANTE SLR(マットブラック/レッド)ウィリエール FILANTE SLR(マットブラック/レッド) (c)wilier
国内での販売パッケージはフレームセット+Zero Bar、シマノDURA-ACE DI2完成車、シマノULTEGRA DI2完成車の3タイプ。サイズはXS、S、M、L、XL。カラーはレッドで、受注発注カラーとしてマットブラック/レッドが用意されている。価格はフレームセットが590,000円(税抜)、DURA-ACE DI2完成車が1,200,000円(税抜)、ULTEGRA DI2完成車は840,000円(税抜)。

ウィリエールの次世代エアロロード FILANTE SLRウィリエールの次世代エアロロード FILANTE SLR (c)wilier


FILANTE解説動画(英語)



ウィリエール FILANTE SLR 販売ラインアップ/価格
フレーム:HUS-MODカーボン+L.C.P
サイズ:XS、S、M、L、XL
カラー:レッド(受注発注カラー:マットブラック/レッド)

フレームセット+Zero Bar:590,000円(税抜)
シマノDURA-ACE DI2完成車:1,200,000円(税抜)
シマノULTEGRA DI2完成車:840,000円(税抜)

シマノDURA-ACE完成車スペック
BB:シマノSM-BB92 (プレスフィット)
ヘッドパーツ:フィランテ SLR専用
ステム&ハンドル:ウィリエール ゼロバー
サドル:プロロゴ ディメンションNACK
シートポスト:ウィリエール フィランテ SLR専用
シフトレバー:シマノST-R9170
ブレーキ:シマノBR-R9170
ブレーキローター:シマノSM-RT900 (F:140mm,R:140mm)
チェーンホイール:シマノFC-R9100 (50x34T)
チェーン:シマノCN-HG901
Fディレイラー: シマノFD-R9150 直付
Rディレイラー:シマノRD-R9150 SS
スプロケット:シマノCS-R9100
ホイールセット:シマノWH-R9170-C40-TL
タイヤ:アリスン700x25C

シマノULTEGRA DI2完成車
BB:シマノSM-BB72 (プレスフィット)
ヘッドパーツ:フィランテ SLR専用
ステム&ハンドル:ウィリエール ゼロバー
サドル:プロロゴ スクラッチⅡ
シートポスト:ウィリエール フィランテ SLR専用
シフトレバー:シマノ ST-R8070
ブレーキ:シマノ BR-R8070
ブレーキローター:シマノ SM-RT800 (F:140mm,R:140mm)
チェーンホイール:シマノ FC-R8000 (50x34T)
チェーン:シマノ CN-HG701
Fディレイラー:シマノ FD-R8050 直付
Rディレイラー:シマノ RD-R8050 SS
スプロケット:シマノ CS-R8000 (11-30T)
ホイール:シマノ WH-RS770-TL
タイヤ:アリスン700x25C

リンク