ブエルタ・ア・エスパーニャが、そして2020年シーズンがマドリードで閉幕を迎えた。マドリードでフィニッシュする最終日は写真判定の末にパスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)が勝利。プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)が2年連続となるブエルタ総合優勝を果たした。


総合2位カラパス、総合1位ログリッチ、総合3位カーシーが肩を組む総合2位カラパス、総合1位ログリッチ、総合3位カーシーが肩を組む photo:Unipublic
市内の移動やイベントの開催が大幅に制限されているスペインの首都マドリードが、第75回ブエルタ・ア・エスパーニャの、そして2020年UCIワールドツアーの終着地。いつもより2ヶ月近く遅れて、いつもより3日間短いブエルタがマドリードに凱旋した。

グランツール最終日恒例のパレードランをこなし、83km地点でフィニッシュラインを通過してからシベレス広場を中心にした5.9km周回コース(例年とは逆回り)を7周する。制限時間内に山岳ステージを乗り越えてきたピュアスプリンターたちに最後の活躍の場が用意された。

11月8日(日)第18ステージ サルスエラ競馬場〜マドリード 124.2km11月8日(日)第18ステージ サルスエラ競馬場〜マドリード 124.2km photo:Unipublic11月8日(日)第18ステージ サルスエラ競馬場〜マドリード 124.2km11月8日(日)第18ステージ サルスエラ競馬場〜マドリード 124.2km photo:Unipublic

この日のスタート前、2019年に判明したファンホセ・コーボ(スペイン)のドーピング陽性&タイトル剥奪によって繰り上がりで2011年大会の総合優勝者となったクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)に大会主催者が特別に優勝トロフィーを授与した。キャリアの中で最初のグランツール制覇を祝福されたフルームが、最終日まで生き残った141名の選手たちとともにイネオスジャージで走るラストレースをスタートさせる。

気温20度ほどの陽気に包まれたマドリード近郊を平均スピード35km/h強のゆったりペースで進み、マドリードの周回コースに入るとアタック合戦がスタート。今大会ステージ2勝を飾っているティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が飛び出し、ここに今大会出場選手の中で唯一マドリード出身のゴンサロ・セラノ(スペイン、カハルーラル)とウィリアム・スミット(南アフリカ、ブルゴスBH)、ドミトリー・グルズジェフ(カザフスタン、アスタナ)が追いついて4名の逃げが生まれた。

2011年の優勝トロフィーを受け取ったクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)2011年の優勝トロフィーを受け取ったクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:Unipublic
プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)ら、4賞ジャージが並んで走るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)ら、4賞ジャージが並んで走る photo:CorVos
プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を総合優勝に導いたユンボ・ヴィスマプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を総合優勝に導いたユンボ・ヴィスマ photo:Unipublic
マドリード市内に差し掛かるプロトンマドリード市内に差し掛かるプロトン photo:Unipublic
ウェレンスら4名は最大30秒ほどのタイム差を得たが、2つのUターンを含む周回コースを平均スピード50km/h前後で駆け抜けたメイン集団を振り切ることはできなかった。ドゥクーニンク・クイックステップやUAEチームエミレーツ、ボーラ・ハンスグローエが率いるメイン集団は残り6km地点で逃げを飲み込み、最終周回を平均57km/hという猛烈なスピードで駆け抜ける。

最終コーナーに向けての最高スピード75km/hに迫る超高速な位置取りを経て、各チームのリードアウトトレインが競り合うようにして最終ストレート。UAEチームエミレーツが割って入ったが、ボーラ・ハンスグローエが残り200mでパスカル・アッカーマン(ドイツ)を発射する。アッカーマンの後ろで数秒間待ってから踏み始めたベネットが並び、両者横並びでフィニッシュラインにハンドルを投げ込んだ。

ともに勝利を確信できずに写真判定を待った結果、アッカーマンが5cm程度先着していることが判明した。ベネットの降格によって繰り上げでステージ優勝に輝いた第9ステージに続いて、シーズン8勝目、今大会2勝目で締めくくった。

ドゥクーニンク・クイックステップを先頭にマドリード周回コースを駆け抜けるドゥクーニンク・クイックステップを先頭にマドリード周回コースを駆け抜ける photo:Unipublic
ハンドルを投げ込むパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)ハンドルを投げ込むパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)のフォトフィニッシュパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)のフォトフィニッシュ photo:Unipublic
「サム(ベネット)にどっちが勝ったか聞いたけど、無線で結果を聞くまで勝ったのかどうかわからなかった。素晴らしいリードアウトを見せてくれたチームに感謝。最高の形でシーズンを終えることができた。サムが降格になったステージの勝利をカウントするつもりはないので、これで彼とステージ1勝ずつ。みんなハッピーな気分で大会を終えることができる」と僅差のスプリントを制したアッカーマンは語る。総合上位陣が独占するポイント賞ランキングの中で、アッカーマンは『スプリンターの中で最高位』となる6位に入っている。

そして総合優勝はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)の手に。ログリッチのブエルタ総合優勝とポイント賞獲得は2年連続。最終日前日に逆転されたツール・ド・フランスの悔しさを、シーズン最終戦の大会連覇という形で晴らした。

チームメイトたちと喜びながらフィニッシュするプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)チームメイトたちと喜びながらフィニッシュするプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
愛車のビアンキを掲げるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)愛車のビアンキを掲げるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
「こうした形でシーズンを締めくくることができて幸せだ。家族に、チームに、そしてこの困難な状況下でレースを開催した主催者に感謝したい。そして来年またこのブエルタに戻ってきたいと思う」。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュとブエルタの同年制覇を果たしたログリッチ。参考までにモニュメントとグランツールの同年制覇は、過去20年間でダミアーノ・クネゴ(2004年ロンバルディア&ジロ)とダニーロ・ディルーカ(2007年リエージュ&ジロ)しか果たしていない。ユンボ・ヴィスマのブエルタ制覇は、ラボバンク時代の2007年デニス・メンショフ(ロシア)以来となる。

総合1位ログリッチと総合2位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)の最終的なタイム差は24秒で、最終日に28秒遅れた総合3位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)は1分15秒遅れ。参考までに、ログリッチが合計48秒のボーナスタイムを獲得したのに対し、カラパスのボーナスタイムは合計16秒。ボーナスタイムを考慮しない実際の走行時間を比較すると、カラパスがログリッチよりも8秒少ない時間で2,892.6kmを走り切っていることになる。カラパスに2度マイヨロホを奪われながらも、今大会ステージ4勝を飾り、合計12のステージでトップ10フィニッシュしたログリッチが総合優勝に輝いた。

ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)が山岳賞、エンリク・マス(スペイン、モビスター)がヤングライダー賞、モビスターがチーム総合時間賞、そしてレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が総合敢闘賞を獲得している。ユンボ・ヴィスマとNTTプロサイクリングは3週間を通して罰金ゼロだった。

総合表彰台 2位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)、1位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)、3位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)総合表彰台 2位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)、1位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)、3位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) photo:CorVos
プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が総合優勝とポイント賞を獲得プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が総合優勝とポイント賞を獲得 photo:CorVos総合敢闘賞を獲得したレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)総合敢闘賞を獲得したレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Unipublic
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第18ステージ結果
1位パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)3:28:13
2位サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位マックス・カンター(ドイツ、サンウェブ)
4位ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)
5位ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、サンウェブ)
6位エマヌエル・モラン(フランス、コフィディス)
7位レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、NTTプロサイクリング)
8位ロレンゾ・マンザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
9位ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
10位ジョン・アベラストゥリ(スペイン、カハルーラル)
マイヨロホ 個人総合成績
1位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)72:46:12
2位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)0:00:24
3位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)0:01:15
4位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)0:02:43
5位エンリク・マス(スペイン、モビスター)0:03:36
6位ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)0:07:16
7位ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)0:07:35
8位ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)0:07:45
9位フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)0:08:15
10位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)0:09:34
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)99pts
2位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)34pts
3位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)30pts
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)204pts
2位リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)133pts
3位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)111pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位エンリク・マス(スペイン、モビスター)72:49:48
2位ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)0:04:09
3位アレクサンドル・ウラソフ(カザフスタン、アスタナ)0:06:00
チーム総合成績
1位モビスター218:37:21
2位ユンボ・ヴィスマ0:10:23
3位アスタナ0:40:09
text:Kei Tsuji