大分市で開催されたJプロツアー第13戦「おおいたサイクルロードレース」は、サバイバルレースの終盤に抜け出した3名の勝負となり、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ )が優勝した。女子は前日のクリテリウムに続き、唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)が連勝した。



昭和電工ドーム大分をバックにスタート昭和電工ドーム大分をバックにスタート photo:Satoru Kato
スタート3分前を告げるラウンドガールスタート3分前を告げるラウンドガール photo:Satoru Katoコースの最も低いところに位置する折り返しのコーナーコースの最も低いところに位置する折り返しのコーナー photo:Satoru Kato

大分市でのJプロツアー2連戦2日目は、2019年ラグビーワールドカップの会場にもなった「昭和電工ドーム大分」のある大分スポーツ公園を会場としたロードレース。本来であればUCIレース「おおいたアーバンクラシック」として開催される予定だったが、コロナ禍による情勢から今年はJプロツアーとしての開催。コースはUCIレース用の10kmコースではなく、大分スポーツ公園内に設定された4kmコースを使用する。短距離の周回とは言え、平坦区間が少なく、下って登る折り返しコーナーと、そこから続く長めの登りが集団を自然と絞っていくハードなコースだ。

朝方は雲が多めだったものの、Jプロツアーのスタートに合わせて日差しが強くなり、前日同様に夏を感じさせる暑さ。そのため補給を受け取れる周回が各クラスタで増やされる処置が取られた。

なお、前日のクリテリウムも含め無観客での開催予定だったが、コースの立地条件から立ち入りを完全規制することは難しいと判断されたため、観戦の自粛と応援のための大声を出さないなどのお願いをするに留めての開催となった。

スタート直後からアタックが繰り返されるスタート直後からアタックが繰り返される photo:Satoru Katoアタックの繰り返しで集団が徐々に長く伸ばされていくアタックの繰り返しで集団が徐々に長く伸ばされていく photo:Satoru Kato

Jプロツアーのレースは25周100km。スタート直後からアタックが繰り返され、キナンサイクリングチーム、チームブリヂストンサイクリング、チーム右京、愛三工業レーシングチームなどが集団前方で動きを見せる。要所ではマトリックスパワータグのフランシスコ・マンセボが、リーダージャージのレオネル・アレクサンダー・キンテロ・アートアーガを引き連れてチェックに入るため、決定的な逃げが発生しないままレース中盤へ向かう。

登り区間の中腹からは別府湾が見える登り区間の中腹からは別府湾が見える photo:Satoru Kato
14周目、風間翔眞(シマノレーシング )と高木三千成(さいたまディレーブ)が飛び出す14周目、風間翔眞(シマノレーシング )と高木三千成(さいたまディレーブ)が飛び出す photo:Satoru Katoレース後半に形成された6名の先頭集団レース後半に形成された6名の先頭集団 photo:Satoru Kato

ハイスピードな展開で先頭集団が30名ほどまで絞られた14周目、風間翔眞(シマノレーシング )と高木三千成(さいたまディレーブ)の2名が飛び出し、さらに小石祐馬(チーム右京)、今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)、山本大喜、新城雄大(以上キナンサイクリングチーム)、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)の5名が合流。その後高木が遅れ、6名の先頭集団となって後続に50秒差をつける。

マトリックスパワータグがリーダージャージのレオネル・キンテロを引き連れて追走マトリックスパワータグがリーダージャージのレオネル・キンテロを引き連れて追走 photo:Satoru Kato
先頭集団からアタックする小石祐馬(チーム右京)先頭集団からアタックする小石祐馬(チーム右京) photo:Satoru Kato
メイン集団はマトリックスパワータグが先頭を固めてコントロールする一方、先頭集団はトリビオが先頭交代に加わらないだけでなく、一緒に行きたくないメンバーが揃ってしまった為か協調する雰囲気にならない。レース終盤に向けてメイン集団との差は縮まっていき、吸収を嫌った小石のアタックに山本と新城が追従するが、愛三工業レーシングチームも協力して追走するメイン集団が残り3周までに全ての逃げを吸収する。

残り2周 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)とホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ )の2人が先行残り2周 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)とホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ )の2人が先行 photo:Satoru Kato最終周回 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が追いついて3名での勝負へ最終周回 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が追いついて3名での勝負へ photo:Satoru Kato

残り2周、伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)のアタックにトリビオが飛びつき、2名が先行。後続との差は10秒以上まで開いて最終周回に入る。そこに阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)がメイン集団からジャンプして追いつき、勝負は3名のスプリントへ。残り100mにトリビオが先頭で姿を現し、その直後に阿部がぴたりとつける。しかし阿部は前には出られず、トリビオが先着。過去4回Jプロツアーチャンピオンを獲ったトリビオが今季やっと1勝目を挙げた。

ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ )が今季初勝利ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ )が今季初勝利 photo:Satoru Kato
「厳しいレースだったけれど、チームメイトがコントロールしてくれたおかげで自分が自由に動けて良い展開に持ち込めた。特にパコ(マンセボ)が登りの下から上まで良いペースで登って他の選手を消耗させ、自分が動きやすい状況を作ってくれた。伊藤(雅和)選手と一緒に抜け出せた時は勝てると思ったけれど、阿部(嵩之)選手が追いついてきた時には危ないと思った。でも追走に脚を使って疲れているはずだから、ロングスプリントを仕掛ければ勝てると思った」と、レースを振り返るトリビオ。「パコのレースコントロールのおかげで余裕が出来るので、勝負に集中できる」と、マンセボの存在の大きさを語る。

次戦はJプロツアーの中で最もステータスの高い大会「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」が控えるが、「次のことはレース会場に行ってから考えるよ」と、笑ってみせた。

表彰式表彰式 photo:Satoru Kato敢闘賞は小石祐馬(チーム右京)敢闘賞は小石祐馬(チーム右京) photo:Satoru Kato

一方、今季2勝目を目前で逃した阿部は「前の広島(西日本ロードクラシック広島大会)ではスプリントでホセ(ビセンテ・トリビオ)に勝ってるので、今日も行けるかもと思っていたけれど、脚がなくてホセに並ぼうとした時点で全然ダメだと悟りました。2人に追いついた後、思ったよりも回復の時間が足りなくてそのままスプリントになってしまいました。たらればは無いけれど、もう少し下りが長ければ・・・休める時間があればと考えてしまいましたね」と、悔しさを滲ませる。

宇都宮ブリッツェンは、この大分2連戦は阿部と小坂光、中村魁斗の3名での出走。他チームより数的に不利な状況だったが、「それを考えれば、表彰台を確保したことは良かったと思います。特に今日のコースはキツくてチームとしてまとまりづらい部分もあったので、それが味方してくれたのかなとも思います。次の最終戦も今日のような展開が出来れば結果につながると考えています。まずは僕が群馬(サイクルスポーツセンター)にあまり良いイメージを持てていないので、今から良いイメージをつくって臨みたいと思います」と、語った。 
Jプロツアー第13戦 おおいたサイクルロードレース  結果(100km)
1位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ ) 2時間16分18秒
2位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +0秒
3位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム) +5秒
4位 レオネル・アレクサンダー・キンテロ・アートアーガ(マトリックスパワータグ ) +11秒
5位 大前 翔(愛三工業レーシングチーム)
6位 阿曽圭佑(eNShare レーシングチーム)
敢闘賞 小石祐馬(TeamUKYO)

中間スプリントポイント
3周回完了時 山本元喜(KINAN Cycling Team)
6周回完了時 対象なし
15周回完了時 山本大喜(KINAN Cycling Team)

Jプロツアーリーダー レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ )
U23リーダー 織田 聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)



女子は唐見実世子が2連勝

女子 1周目から登り区間でペースアップしていく大堀博美(MOPS)女子 1周目から登り区間でペースアップしていく大堀博美(MOPS) photo:Satoru Kato
女子 レース中盤までに3名となった先頭集団女子 レース中盤までに3名となった先頭集団 photo:Satoru Kato
女子のレースは15周60kmの予定だったが、時差スタートのE1クラスタで発生した落車のため12周48kmに変更された。

1周目から大堀博美(MOPS)が登り区間でペースアップして集団の人数を絞り、レース前半を終えるまでに先頭集団は早くも3名まで絞られる。メンバーは、大堀、唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)、牧瀬翼(MiNERVA-asahi)。レース終盤に入っても登りで大堀のペースアップは繰り返され、牧瀬が遅れる。最後は大堀と唐見のマッチスプリント勝負となり、唐見が前日のクリテリウムに続き2連勝。総合首位の足場を固めた。

女子 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)が2連勝女子 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)が2連勝 photo:Satoru Kato
唐見実世子コメント

「前回の広島でふっきれた感じになって、パフォーマンスも上がってきてると感じています。特に昨日は久々に独走できたので、それがまた自信になりました。昨年の一番良い時のイメージでしたね。今日はどのクラスも厳しいレースになっていて、Jプロツアーのレースを見ていても動いた選手がちぎれていく展開だったので、自分から動くならレース後半と考えてました。

大堀選手が強かったので全部任せ、スプリントで勝負すれば勝てると思っていました。最後は早いタイミングで牽制を初めてしまいましたが、遅れた牧瀬選手が追いついてくれた方が面白いかなとも考えていました。次の群馬は今年の総決算のつもりで、力を全部出し切るつもりで走ろうと思います」

女子 表彰式女子 表彰式 photo:Satoru Kato女子 フェミニンリーダージャージは唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)女子 フェミニンリーダージャージは唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Satoru Kato
F(女子) 結果(48km)
1位 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) 1時間17分5秒
2位 大堀博美(MOPS) +1秒
3位 牧瀬 翼(MiNERVA-asahi) +19秒
フェミニンリーダー 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)




その他結果

E1 本多晴飛(ALL OUT reric)が優勝E1 本多晴飛(ALL OUT reric)が優勝 photo:Satoru KatoE2・E3 木村純気(VC福岡エリート)が優勝E2・E3 木村純気(VC福岡エリート)が優勝 photo:Satoru Kato

E1 結果(68km)
1位 本多晴飛(ALL OUT reric) 1時間36分20秒
2位 大町健斗(Team Eurasia-iRC TIRE) +1秒
3位 坂口裕芳(ALL OUT reric) +2秒
4位 池田渓人(VC福岡(エリート)) +3秒
5位 野中秀樹(ホダカファクトリーレーシング) +5秒
6位 檜室建斗(VC福岡(エリート))
E2・E3 結果(60km)
1位 木村純気(VC福岡(エリート)) 1時間27分46秒
2位 川勝敦嗣(MiNERVA-asahi) +0秒
3位 畝原尚太郎(チームGINRIN熊本)
4位 本庄義人(チーム大永山) +3秒
5位 井上健志(チームGINRIN熊本)
6位 柳澤和宏(サイクルフリーダム・レーシング) +4秒
text&photo:Satoru Kato