5月19日に行なわれた第3ステージは山岳で3人の逃げが決まり、デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が制した。2位はマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)、3位はリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)。総合争いはこの3人に絞られたかに見える。

僅差でロジャースを制したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)僅差でロジャースを制したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) (c)CorVos港町サンフランシスコを出発し、サンタクルーズに至る182.9kmのコースはツアー・オブ・カリフォルニアを代表するおなじみの風景のステージだ。
2009年に使用したコースを多く取り入れ、オーシャンビーチをスタートし、ゴールデンゲートブリッジを渡りパシフィックコーストハイウェーをハーフムーンベイへと走る。曲がりくねったカリフォルニアの海岸線を行く絶景コースは、このレースの代表的シーンだ。

レースのポイントは最後の山岳、ボニー・ドゥーンロードの登りだ。下りきってすぐにサンタクルーズの街でフィニッシュを迎えるカテゴリー2級のこの登りは、昨年ライプハイマーが総合優勝を掴むことに成功した山岳ポイントだ。

追走集団でゴールする7位のイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)追走集団でゴールする7位のイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク) (c)CorVosレースは前日の悪天候とはうって変わり、カリフォルニア州ならではの太陽が降り注ぐなか始まった。

この日も序盤から逃げたのはアメリカンコンチネンタルチームの5人。

ライアン・アンダーソン(アメリカ、ケリー・ベネフィット)、ダヴィデ・フラッティーニ(イタリア、チームタイプワン)、ウィル・ルートリー(カナダ、ジェリーベリー)、エリック・ボワリー(カナダ、スパイダーテック)の5人は、海岸線からタイム差をつけようと強調して逃げる。

ゴールまで80km地点でタイム差は3分。しかしこの5人はいずれも前日のステージで「25人逃げ」のグループに入れレースをコントロールしたランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)。真のコンディションは?レースをコントロールしたランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)。真のコンディションは? (c)CorVosなかった選手で、その中での総合最高位はアンダーソンの1分27秒差・41位だ。

集団は危険でないこの逃げをいつでも捕まえられる射程距離範囲内に収めながら、最後の山岳ポイント"ボニー・ドゥーン"ロードの登りへと向かう。

上りが始まると、集団の前に出てペースを作り始めたのはリーダージャージ擁するサーヴェロテストチームではなく、今日もレディオシャックだ。
アームストロングが目を光らせながらテンポを刻むなか、ツアー・カリ3連覇中のレディオシャックのエース、リーヴァイ・ライプハイマーがアタックを仕掛ける。

リーダージャージを着たブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム)は遅れてゴールリーダージャージを着たブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム)は遅れてゴール (c)CorVosこれに反応したのがマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)とデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) だ。
アタックがかかったときにはアームストロングやクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)もこれにつくが、前を行く3人が差を開きだすと、じわじわと後退する。

果たしてこれは遅れたのか、それとも後方の抑えに回ったのか?

昨年もここで総合優勝へとつなげるライプハイマーのアタックが決まったポイントだけに、後方もブリッヂをかけて追いつこうと選手たちがアタックを試みる。

ステージを制したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)ステージを制したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) (c)CorVosハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロテストチーム)が飛び出すと、すかさず後方にピッタリつけるアームストロング。
トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)がアタックすると、すかさず追いかけるホセルイス・ルビエラ(スペイン、レディオシャック)。
ホーナーに加えてクライマーのヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)もアシストの動きに徹し、前に追いつこうという動きをことごとく封じ込める。

そしてアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)は追走集団について行くことができず、リーダージャージのブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロテストチーム)とともに遅れてしまった。

デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)がサーブボードをもらってご機嫌デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)がサーブボードをもらってご機嫌 (c)CorVosゴールのサンタクルーズまで28kmを残し、逃げる3人と追走集団のタイム差は1分10秒。山頂を越えたとき、1分25秒差へ。

優勝に対して意欲的なアメリカンチームであるガーミン・トランジションズはライダー・ヘジダル(カナダ)がブリッヂをかけるアタックで飛び出す。前にはチームメイトのザブリスキーがいるのに、もうひとりを助っ人として送り込もうという作戦だ。

しかしこの動きはスピードアップした集団が捉えてしまう。3人の逃げ切りが決まった。

ゴールのサンタクルーズまでのダウンヒルをこなす3人は、いずれも昨ステージで25人の逃げ切りグループに入った各チームのエースたち。そのスプリント争いに注目が集まる。

ステージ4位で新人賞をキープしたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス) +17"ステージ4位で新人賞をキープしたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス) +17" (c)CorVosザブリスキーがハイスピードで逃げを試みるが、追いつく2人。そして迫るロジャース。しかし先頭を引くように譲らないザブリスキーはロジャースとのゴール争いを十数センチ程度の差をもって制した。ザブリスキーはゴールラインを割るときとっさに片手を挙げてアピール。

後続のアームストロング集団は17秒差でゴールになだれ込む。この小集団の頭をとったのは新人賞の白いジャージを着るペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)。 

17秒差はまだまだひっくり返すことができる差ではあるが、この3人はいずれも優勝を意欲的に狙うチームのエースたち。山岳をこなすことができ、タイムトライアルで高い能力を持つと言う点で3人ともに優劣つけがたい3人だ。総合争いはひとまずこの3人に絞られたといって良さそうだ。

ステージ優勝したザブリスキーは言う。
「トニー・ボーンの上りではいいフィーリングだった。こんなに良かったのは今シーズンはじめて」とご機嫌。
ライプハイマーは「最後のコーナーは知っていたから巻き返すつもりだったけど、デイブ(ザブリスキー
)が勢いをつけて飛び出していた。そして追い風が吹いてしまった(ので追いつけなかった)。
逃げ出したとき、2人には協調したくなかった。なぜなら彼らはレースで最も危険な2人だからだ。我々は他のすべての選手にタイム差をつけたけれど、それは僕の目指したゴールじゃなかった。実際、僕はボーナスタイムのおかげでタイムを2人に対して失ってしまった」。

ステージに上がった各賞ジャージの選手たちステージに上がった各賞ジャージの選手たち (c)CorVos


第3ステージ結果
1位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) 4h26'09"
2位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス) +17"
5位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)
6位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロテストチーム)
7位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)
9位 フランソワ・パリジャン(カナダ、スパイダーテック)
10位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)

個人総合成績
1位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)13h09'33"
2位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)+4"
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+6"
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)  +21"
5位 マーク・デマール(ユナイテッドヘルスケア・マキシス) +24"
6位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) +27"
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
8位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)
9位 ピーター・ステティナ(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
10位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)

ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTCコロンビア)

山岳賞
トーマス・ラブー(チームタイプワン)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

チーム総合成績
ガーミン・トランジションズ



text:MakotoAYANO
photo:(c)CorVos

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