スイスの誇る総合バイクブランド、BMCのエンデュランスモデル「Roadmachine 01」をインプレッション。フルモデルチェンジを果たし、BMCらしい先進的かつ独創的なフォルムを身に着けた第2世代のRoadmachineの素顔に迫る。



BMC Roadmachine 01BMC Roadmachine 01 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
高級時計や光学機器など精密機械産業を得意とする工業国スイス。そのモノづくりに対する情熱をスポーツバイクの世界へと持ち込んだのが、総合バイクブランドであるBMC。Bicycle Manufacturing Campany(自転車製造会社)のイニシャルという、なんともシンプルな由来を持つブランドネームであるが、その飾り気の無さはブランドの在り方でもある。

常にユーザーが必要とするものと真摯に向き合い、その時点で実現可能な最高のバイクを送り出す。そんなバイクづくりを進めてきたBMCがグランフォンドライダーのために開発したのが、Roadmachineシリーズだ。

33mmまで広げられたタイヤクリアランス33mmまで広げられたタイヤクリアランス 肩下から前方にオフセットする独特の形状のフロントフォーク肩下から前方にオフセットする独特の形状のフロントフォーク フラットマウント台座がフォークと一体になるような座刳りフラットマウント台座がフォークと一体になるような座刳り


BMCのシニアプロダクトマネージャーを務めるマルト・オッテン氏語りて曰く「サイクリストたちのニーズは、より遠くへ、より高く、より過酷な路へと向いています。彼らを受け入れるサイクリングイベントも同様です。そこで我々はあらゆる路面で、登りでも、下りでも輝くバイクを作ろうと考えました。」

先代のRoadmachineはライバルブランドに先んじたケーブルルーティングのフル内装、ディスクブレーキ化といったトレンドを2016年の段階で網羅し、BMCの先進性を印象付けた。それから3年、BMCはRoadmachineを更に深化したサイクリングシーンに対応するバイクへとアップデートを施し、再びホビーライダーにとって最適の選択肢として完成させた。

トップチューブにもストレージマウントが設けられるトップチューブにもストレージマウントが設けられる ケーブル類をフル内装し空力的にもルックス的にも優れるケーブル類をフル内装し空力的にもルックス的にも優れる

機械式コンポーネントの場合はこちらからケーブルを導入する機械式コンポーネントの場合はこちらからケーブルを導入する 専用のICSステムを使用することでケーブルを内装する専用のICSステムを使用することでケーブルを内装する


新型Roadmachineのテーマは快適性や汎用性を向上させつつ、高剛性化による走行性能を改善すること、そして更なるインテグレーション化とジオメトリーの最適化を推し進めること。これらによって、よりハードかつ多様性を深めるサイクリングシーンを余すところなく受け止めるラグジュアリーなユーティリティバイクとして生まれ変わった。

Roadmachineをエンデュランスロードとして捉えた場合、最もわかりやすく進化したポイントはタイヤクリアランスだろう。最大33mm幅のタイヤに対応し、荒れた舗装路から未舗装路まで走破できるCXバイク並みのキャパシティーを身に着けた。更に、「Dfender」と呼ばれる専用フェンダーも取り付け可能となっており、オールウェザーでライドを楽しむこともできる。

直線的なラインが集まるBB周辺直線的なラインが集まるBB周辺 リアエンド周辺もステルス機を思わせる直線的な仕上げリアエンド周辺もステルス機を思わせる直線的な仕上げ


走行性能向上の要となるのは、フレーム設計を根底からやり直したことによるもの。外観上は先代のエッセンスを引き継いでいるものの、中身は全くの別物だという。振動吸収性とねじれ剛性のバランスを高める「TCC(tuned compliance concept)」を再設計し、先代比でBB剛性+5%、ヘッドチューブ周辺のねじれ剛性+20%、フォーク剛性+10%、同時に垂直方向の柔軟性+25%と、全方位に性能を伸ばしている。それでいて、フレーム重量895gと軽量に抑えられていることにも触れておくべきだろう。

更に、スタックとリーチを軸にジオメトリを煮詰めることでホビーライダーにとっても扱いやすいポジションを実現する。特に56サイズ以上のビッグサイズのリーチ量を減らすことによって、長距離ライドでの疲労軽減を実現する。ケーブル類のフル内装化に貢献するICSステムは、0°が55、70、80、90、100mm、-12°が90、100、110、120、130mmの合計10種類と豊富なバリエーションが揃うほか、ハンドルバーは汎用品も使用可能となっているため、ポジション面で悩むことは無いだろう。更に、D型断面のシートポストも0mmと15mmのセットバックが用意されている。

現在でこそ主流となったドロップシートステーだが、BMCは先駆者のひとり現在でこそ主流となったドロップシートステーだが、BMCは先駆者のひとり D型断面のシートポストが快適性を向上させるD型断面のシートポストが快適性を向上させる ダウンチューブはボリューム感のあるデザインダウンチューブはボリューム感のあるデザイン


ケーブルの内装システムに関しては先代の設計をそのまま継承している。0型断面のコラムを使用し、ヘッドチューブ内に各ケーブルを通す仕組みだ。変速に関してはフル内装に対応するのは電動コンポーネントのみとなっており、機械式コンポーネントの場合はダウンチューブ上部からフレーム内へとケーブルを導入する。

最新のライディングシーンをキャッチアップし、更なる進化を果たした”Roadmachine”。今回インプレッションするのはスラムの無線電動コンポーネントForce eTap AXSと、DTスイスの47mmハイトホイールを組み合わせたRoadmachine 01 THREE。国内展開される中でもハイエンドなアセンブルの完成車モデルとなる。それではインプレッションへ移ろう。



― インプレッション

「非常にフラットな性格で誰でも扱いやすいバイク」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

エンデュランスバイクって、なんなんでしょうか。このバイクに乗るとそんなことを考えさせられますね。最新のエンデュランスバイクはいろんなギミックを搭載して、どれだけ乗り心地を良くするかに各社注力していますが、このバイクは少し違ったアプローチをしていますね。衝撃の少なさがそのままライディングフィールの良さに繋がっているのではないと、BMCは考えているのでしょう。

エンデュランスバイクが最も重要とする、より正確を期するならば最も重要とするとされることが多い振動吸収性については、そこまで特筆するレベルではありません。というのもライバルたち、特にサスペンションなどのメカニズムによって積極的に振動を吸収することに特化しているバイクたちに比べると、やはり路面からの振動は伝わってきやすいです。

「非常にフラットな性格で誰でも扱いやすいバイク」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)「非常にフラットな性格で誰でも扱いやすいバイク」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
ですが、それは決して不快感のあるものではありません。しっかりと衝撃の角を丸めつつライダーに伝えてくれる。全ての情報を吸い取ってしまうのではなくって、不快な要素だけをフィルタリングしてくれるので、路面状況もつかみやすいですし結果として安心して乗れます。どちらのアプローチにも利があり、理があると思いますが、ロードバイクとして王道を行くのはこちらでしょう。

バイク自体はしっかりとした剛性感があり、ハンドリングもスパスパ決まってくれて、いわゆるレーシングバイクとカテゴライズされるモデルに対しても遜色ないレベルの性能を持っています。少し穏やかな印象はあるのですが、それすらもエンデュランスバイクというラベリングによるものではないのか、と思ってしまうぐらい、優れた走行性能を発揮してくれます。

とても良く走ってくれ、踏めばしっかり応えてくれる。でも、このバイクの本質はそこじゃない。速く走ろうと思えばいくらでも速く走れそうなポテンシャルを感じさせてくれますが、一方で脚を削っていくような荒々しさは皆無です。この足への優しさこそが、このバイクの最も重要な特徴なのだと思います。

走りも良くて、落ち着いた挙動で扱いやすく、乗り心地も良くって不快な印象が全くない。非常にフラットな性格で、バイクになにか尖ったキャラクターを求める人にとっては物足りなさを感じるかもしれません。でも、一台のバイクと長い時間をかけて付き合っていく中で、より良い経験が出来るのはこういったバイクなのだと思います。

「ホビーライダーにとって最高の選択肢」錦織大祐(フォーチュンバイク)

めちゃくちゃ完成度が高いですよね。レースをやらない人であれば、最高のバイクですよ。前作の出来も良かったですけど、その基本的なコンセプトの良さをきちんと引き継ぎつつ細かなディテールアップを施すことで、よりラグジュアリーなバイクになりました。

キャラクターを一言で表すならばSUVのような位置づけですよね。ワールドツアーで使用されるようなレースレプリカを所有することの喜びというのは確実にありますし、個人的にも良くわかるんですけど、そういったところと一線を画したポジショニングがこのバイクの魅力です。

 「レースをしない人にとって最高の一台」錦織大祐(フォーチュンバイク) 「レースをしない人にとって最高の一台」錦織大祐(フォーチュンバイク) 走りも良いですし、見た目もかっこいいですよね。どこをとっても複雑な造形で、横位置のカタログフォトだとこの魅力の半分も伝わってないんじゃないかと思います。レーシングユースを念頭に置いていないのにエアロっぽい造形をしているのも、外連味があっていいですよね。ロゴグラフィックの配置も写真ではシンプルに見えるんですが、実際にまたがってみるとちょうど良いところに見えるんですよ。そういったところまで計算されつくしている、芸の細かさが伝わってきます。

登りも下りも平坦も、舗装路もグラベルも、どんなコース、シチュエーションでもパーフェクトにバランスが取れています。フロントフォークやリアバックも一見線が細くて華奢に見えますが、ハードなブレーキングや下りのコーナーでもしっかりと車体を支えてくれますし、グラベルを走ってみてもバタつく素振りも見せません。ただ、コーナーの立ち上がりでモガき倒して前に追いつくとか、ハイテンポのヒルクライムから更に抜け出しを図るとか、そういう緩急のある走りをしたいのであれば、別のバイクのほうが向いています。BMCであればそれはSLRやTMRの役割でしょう。

でも、そういったシチュエーションで走ることが少ない大多数のサイクリストにとって、このバイクがトータルで最も速く走ることが出来るバイクでしょう。乗り手の脚力レベルまで幅広く包摂するクセの無い乗り味は、BMCの特色でもありますね。

「良い走りをして、良い旅をして、大切な思い出を残してほしい。その時、傍にある自転車にBMCのロゴが入っていれば最高なんだよね」とBMCのスタッフは良く言うんですけど、まさにそういう楽しみ方が似合うバイクだし、このバイクを通じていろんな場所に行きたくなります。

常に最新のトレンドを追いかけ続けて、剛性がいくらアップした、空気抵抗がどれだけ減った、というのを追い求めるモデルサイクルから、一番遠いところにいるバイクだと思います。非レーサーがトータルで速くはしれて、所有欲も満たしてくれるという存在は本当に貴重です。レースもたまに出るけど、普段から自転車をアクティビティとして楽しみつつ、本物志向という人にとってこれ以上なくフィットする一台です。

BMC Roadmachine 01BMC Roadmachine 01 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
BMC Roadmachine 01 THREE
フレーム&フォーク:Roadmachine Premium Carbon
シートポスト:Roadmachine D-shape carbon, 15mm offset
BB:PF86
メインコンポーネント:SRAM Force eTap AXS
ホイール:DT Swiss ERC 1400 Spline db 47 Carbon
タイヤ:Vittoria Corsa Control, 28mm
カラー:Petrol Blue
サイズ:47, 51, 54
価格:880,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。

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錦織大祐(フォーチュンバイク)錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)

幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。

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text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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