パリ~ルーベを7度優勝したスペシャライズドのエンデュランスロード「S-Works Roubaix」の最新モデルをインプレッション。Future Shock2.0をはじめとした最新技術によって更なる進化を果たした生粋のパヴェレーサーの実力に迫る。



スペシャライズド S-Works Roubaixスペシャライズド S-Works Roubaix (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
エンデュランスロードというカテゴリーの中で、ひと際大きな輝きを放つのがスペシャライズドの名作、Roubaix。北の地獄として知られる、過酷な石畳レース「パリ~ルーベ」を制するために生み出されたスペシャルモデルである。

地元のサイクリストが「あそこはロードバイクで走る道じゃないよ」と嘯くほど過酷な石畳の数々を飛ぶように駆け抜けるクラシックハンターたち。その極限の戦いを支えるべく、スペシャライズドは代々のRoubaixを高い振動吸収性と反応性を兼ね備えたバイクとして開発してきた。

新型Paveシートポストによってリアセクションの振動吸収性も向上する新型Paveシートポストによってリアセクションの振動吸収性も向上する シンプルなシルエットのフォークブレードシンプルなシルエットのフォークブレード Smooth Bootによって更にスマートなルックスとなったSmooth Bootによって更にスマートなルックスとなった


石畳を走破するための快適性と、ライバルたちを引き離すための走行性能。二律背反ともいえる命題に対するスペシャライズドのアプローチは時代ごとに進化してきた。最初にスペシャライズドが試したのが「ゼルツ」と呼ばれるエラストマーをシートステーとフォークに配置すること。振動を減衰し、ライダーに蓄積する疲労度を引き下げる狙いは達成され、レースでも大きな成績を残してきた。

幾つかの世代にわたり、ゼルツをコアとしたフレーム設計を軸としてきたRoubaixだったが、2017年に大きな転換点を迎えることとなった。フレームの基本設計からゼルツを廃し新たなメカニズムを取り入れたのだ。それが、ヘッドチューブ内蔵型のサスペンションシステム、Future Shockだ。

ステアリングコラムの内側にサスペンションカートリッジを挿入することでハンドルが沈み込み、振動を吸収する革新的なFuture Shockにより、従来モデルから垂直方向の追従性を2000%向上させたのが、前作となるRoubaix SL5だった。

オリジナルのS-Works Carbon Hover Dropを採用 アップライトなポジションを実現オリジナルのS-Works Carbon Hover Dropを採用 アップライトなポジションを実現 Future Shock 2.0はトップキャップ部にダンピング調整ダイヤルを設置Future Shock 2.0はトップキャップ部にダンピング調整ダイヤルを設置


レースバイクらしい反応性を実現するボリュームあるダウンチューブレースバイクらしい反応性を実現するボリュームあるダウンチューブ 緩く弧を描くトップチューブ緩く弧を描くトップチューブ


本格的なサスペンションを再びロードバイクに導入し、なおかつレースユースに耐えうる完成度を持ったバイクとして完成させたスペシャライズド。だが、その挑戦は止まるところを知らず、2019モデルとして登場した最新作のRoubaix SL6において、更なる進化を果たすこととなった。

進化のキモとなるのは、新世代のRoubaixをRoubaixたらしめるFuture Shockだ。入力に対する応答性の向上を最優先目標とし、コイルスプリングのみのシンプルな構造とされていた前作に対し、油圧ダンパーが追加され、より洗練された挙動を実現。Future Shock”2.0”と呼ぶに相応しい進化を果たした。

新たに追加されたダンピングシステムは、コンプレッション/リバウンドを同時に調整できるシステムを採用する。トップキャップ部分にダイアルを設置し、ライド中でも容易にダンピング特性を調整できるのも大きな特徴だ。走行中の路面状況に合わせ、細かく動きを変更できる。

路面追従性を高めるデザインのチェーンステー路面追従性を高めるデザインのチェーンステー 内蔵型ドロップシートクランプを採用し、すっきりした見た目とエアロ性能を両立内蔵型ドロップシートクランプを採用し、すっきりした見た目とエアロ性能を両立


Future Shock2.0に注目が集まりがちな新型Roubaixであるが、その他の部分でも大きな進化を遂げている。Roubaixらしく振動吸収性に関するところで言えば、新たに採用されたPaveシートポストによって、リアセクションのコンプライアンスを大幅に向上している。Tarmacに採用されたD型断面シートポストを更に進化させ、上部をさらにしなるよう設計したPaveシートポストが更なる快適性の向上に寄与している。

前作ではシートステー接合部にインテグレートされたデザインのシートクランプを採用していたが、新型Roubaixではフレーム内蔵型の臼式シートクランプに。クランプが外側に露出しないスマートなルックスと、ドロップインデザインによってシートポストの出代を増加させることによる高い柔軟性を実現した。

ドロップドシートステーにより高い反応性を実現ドロップドシートステーにより高い反応性を実現 機械式コンポーネントであればダウンチューブ上からフレーム内に内装される機械式コンポーネントであればダウンチューブ上からフレーム内に内装される タイヤクリアランスも広めで様々なシチュエーションに対応するタイヤクリアランスも広めで様々なシチュエーションに対応する


エンデュランスレーサーとして、向上しているのは快適性だけではない。重量やエアロダイナミクスといった性能についても大幅な進化を果たしている。フレーム重量は56サイズでアンダー900gと、常勝マシンである同社のVengeを上回る軽量性を獲得している一方で、FreeFoil Shape Libraryによって決定されたチューブ形状を採用することでTarmacよりも高いエアロダイナミクスを実現する、ハイレベルなレーサーとして完成している。

サガンやジルベールといった一流のクラシックハンターらの走りを支えるために開発された最速のパヴェレーサー、スペシャライズド Roubaix。今回は、フラッグシップグレードであるS-Worksグレードのスラム RED eTap AXS仕様の完成車をインプレッション。世界最高峰のエンデュランスバイクの実力に迫るインプレッションをお届けしよう。



― インプレッション

「ユニークなメカニズムとロードバイクとして完成度を両立した一台」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

先代から、かなりロードレーサーらしくなりましたね。フロントのサスペンションの動きが非常に洗練されて、無駄な動きが減っているのを感じます。以前のRoubaixは入力に対して劇的に動いていて、それはそれで面白い自転車だったんですけど、レースバイクとしてみると疑問符がつくバイクでした。

その印象があったので、「あれ?これ動いてる?」と思うくらい、違和感の無い乗り味になっていたのが驚きでした。イメージとしてはしなやかなフォークがついたロードバイクぐらいの乗り心地です。ロックアウト機能もついているのですが、よほどのシチュエーション、例えば下ハンを握ってスプリントするような状況でなければその必要性も薄いでしょう。

「ユニークなメカニズムとロードバイクとして完成度を両立した一台」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)「ユニークなメカニズムとロードバイクとして完成度を両立した一台」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
そこまで違和感の少ない味付けに仕上げつつ、衝撃自体はしっかりと吸収してくれています。実際の効果としては前作と遜色の無いレベルを維持しつつ、ロードレーサーとして十分使える乗り味を実現した、メーカーとしての高い技術力に感心しました。一つ懸念点を挙げるならば、可動部が増えることによっておこるトラブルの可能性ですね。これは長く乗ってみないとわからない点ではあるので、杞憂となる可能性も大きいですが。

登りもとても軽快で、シッティングでもダンシングでも好印象。どちらかといえばダンシングの方が得意なバイクですね。ハンドルに体重がかかるダンシングでも、一定ペースを保つような乗り方であればサスペンションの動きが邪魔に感じるようなこともありません。フレームはもちろん、ホイールなどを含めたトータルのライドパフォーマンスが優れているのだと思います。

振動を吸収するためにフレームはある程度しなるような構造なので、ホイールの剛性を確保することが、走りの良さにつながっているのだと思います。ワイドでしっかりしたリムのホイールとの相性が良いでしょうし、完成車の仕様がベストマッチなのだと思います。

個人的に乗るとすれば、レースというよりはロングライドを楽しみたいですね。性能的な意味で不足があるというわけではなく、あえて日本のレースシーンでこのバイクを選ぶ必然性は薄いと思います。付け加えるならば、高めのハンドルポジションが平均的な体格の日本人レーサーにとっては敬遠する部分になるでしょう。

それよりも、どこか知らない場所やこれまで走ったことの無い裏道を探検するような。今回のテストでも路面が荒れているところをわざわざ探してしまいましたし、そういう楽しみ方が出来るのは、このバイクならでは。普段はロングライドを楽しみつつ、たまにレースにでるような、大多数のサイクリストにとっては、VengeやTarmacよりもスタイルにマッチするバイクだと思います。

「レースもロングライドも楽しめるオールラウンドで楽しいバイク」遠藤健太(サイクルワークスFin’s)

「レースもロングライドも楽しめるオールラウンドで楽しいバイク」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)「レースもロングライドも楽しめるオールラウンドで楽しいバイク」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)
いやー、軽くてびっくりしましたよ。先代に比べると、かなり進化しましたね。やはり大きいのはFuture Shockの進化です。ストローク感が強かった前作に比べると、まるで別物のようにナチュラルなフィーリングになりました。一方で、しっかりと衝撃は軽減してくれるので、腕の疲れも少ないですし、とても気に入りました。

たくさんギミックが搭載されているのに注目しがちですけど、どこかが突出して効果を発揮しているようなイメージではないですね。フレームもよくしなるし、ホイールやタイヤもいい働きをしている。そこにFuture ShockもPaveシートポストがダメ押しで快適性をプラスしているような振動のいなし方だと感じます。

Future Shockは2.0になってダンピングが調整できるようになりましたが、劇的に変わるという印象ではないですね。ロックアウトしたらわかるのですが、オープンにしてもそこまで違和感がないんです。前作はとにかくバネ感が強かった。それはそれでガレた路面で動いている感があって面白かったんですが(笑)。2.0はしっかり仕事はしているのに、動いていることを感じさせず自然に衝撃吸収してくれています。ロードバイクとして、正当かつ大きな進化を果たしています。

どんなシチュエーションで使っても、どんなレベルの人が乗っても楽しいでしょうね。レースだって十分走れるし、ロングライドにももってこい。登りも軽くて、他のバイクだとインナーに落とすところもアウターで登れちゃうような軽快感がありました。タイヤもかなり太めですが、全く気にならない走りの軽さが魅力です。

正直、Tarmacとの差がかなり少なくなっているなと感じました。スペシャライズドのS-Worksシリーズは、Tarmacも、Vengeも、Roubaixも、それぞれ得意な分野はありつつも、非常に高いレベルでまとまっています。軽量性、エアロダイナミクス、快適性と、それぞれ特化した性能を持ちつつ、他の要素を犠牲にしていない。3モデルとも、良いところを残しつつ、少しずつ近づいてきているな、という印象です。

軽いし、進むし、乗り心地もいいので、レースで使うのであれば長い距離であればあるほどアドバンテージになりそうです。脚当たりが優しいし、身体へのダメージが少ないので、最後まで力を温存しておけそうです。もちろんレースで勝利を目指すのであれば、TarmacやVengeが向いていると思いますが、普段はロングライドを楽しみつつ、たまにレースに出場して自分の限界を知りたい、というような方にはこれ以上ないパートナーとなるでしょう。

スペシャライズド S-Works Roubaixスペシャライズド S-Works Roubaix (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
スペシャライズド S-works Roubaix
フレーム:FACT 11R, Rider First Engineered, FreeFoil Shape Library tubes, threaded BB, 12x142mm thru-axle, flat-mount disc
フォーク:Future Shock 2.0 w/ Damper, Smooth Boot, 12x100 mm thru-axle, flat-mount
シートポスト:S-Works Pave
コンポーネント:SRAM RED eTAP AXS, 12-speed
ホイール:Roval CLX 32 Disc
タイヤ:Turbo Cotton, 700x28
サイズ:44、49、52、54、56、58
価格:1,265,000円(税込)



インプレッションライダーのプロフィール

西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。

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遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)遠藤健太(サイクルワークス Fin’s) 遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)

新潟県長岡市に店舗を構えるサイクルワークス Fin’sの店長。学生時代にBMXから始まり、MTBやロードバイクまで幅広く自転車を楽しむバリバリの走れる系店長。2012年には全日本選手権ロードに出場した経験も。お店は完璧なメカニックサービスを提供するべく、クオリティの高い整備が評判だ。ショップ主催のサイクリングやレース活動に積極的で、初めての人から実業団レースで活躍したい人まで手厚いサポートを心がける。

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text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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