3月15日にイタリア東部で行なわれたティレーノ〜アドリアティコ第6ステージは、逃げグループから終盤に飛び出し、激坂を独走で駆け上がったミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)が勝利。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)はライバルの攻撃を防ぎ切り、リーダージャージを守った。

急勾配の上りをこなすマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)急勾配の上りをこなすマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vos第6ステージのゴール地点はマチェラータ。第4ステージのキエーティや第5ステージのコルムラーノに続いて、丘の上に佇む中世の都市にゴールが置かれた。当然その市街地に向かうためには上りを通過しなければならず、ゴールの手前には平均勾配11.3%・最大勾配18%の短い上りが設定されている。

コース全長は134kmと比較的短いが、レース後半には、この最大勾配18%の上りを含む周回コースを4周。最終日を前に、この短距離・激坂・頂上ゴールが総合争いを決定づける。

マチェラータの激坂区間を独走するミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)マチェラータの激坂区間を独走するミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ) photo:Cor Vosスタート後すぐに形成されたのは、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)、ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)、ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)らを含む強力な12名の逃げグループ。

メイン集団はリーダージャージ擁するアンドローニ・ジョカトーリがコントロール。総合で1分36秒遅れのポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)が入っていたため、逃げグループのリードは上限2分。レース後半の周回コースに突入すると、逃げグループ内のアタック合戦が始まった。

積極的にペースを上げるステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)積極的にペースを上げるステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) photo:Cor Vosロヴクヴィストやベリトスの積極的なアタックは成功せず、最終周回、ラスト8km地点でイグナチエフが単独アタックを成功させる。イグナチエフは追走ベリトスから12秒、BMCレーシングチームとリクイガスが牽引するメイン集団から36秒のリードを保ってラスト1kmを通過。

ベリトスを含め、他の全ての逃げ選手が吸収される中、イグナチエフが集団の追撃を5秒振り切ってゴールに飛び込んだ。過去にU23の世界TTチャンピオンに輝いているイグナチエフは3年ぶりの勝利だ。

マチェラータの激坂をこなすカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)マチェラータの激坂をこなすカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vos「アタックしてからはゴールまで個人タイムトライアルだった。脚は良く回っていたし、何かチャレンジしたいと思っていたんだ。ずっと勝ちたいと思っていた。ようやく手にした勝利は格別だよ」。ティンコフ時代から何度もアタックを繰り返していたイグナチエフの努力が久々に報われた。

イグナチエフの後方で加熱したのが総合争いだ。前日に落車したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)に対し、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が攻勢をかけた。

マチェラータのゴールに独走で飛び込むミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)マチェラータのゴールに独走で飛び込むミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ) photo:Cor Vosしかしスカルポーニはライバルたちのペースアップに食らいつき、ガルゼッリとエヴァンスから2秒遅れでゴール。ステージ2位のガルゼッリがボーナスタイムを獲得したため、両者のタイム差は2秒にまで縮まったが、何とかスカルポーニがリーダージャージを守り切った。

スカルポーニは大会連覇に王手をかけた。翌日の最終ステージはアドリア海沿いのサンベネデット・デル・トロントにゴールするスプリンター向きの平坦ステージだ。

レース展開と選手コメントはレース公式サイトより。


ティレーノ〜アドリアティコ2010第6ステージ結果
1位 ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)          3h18'09"
2位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)       +05"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
4位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)              +07"
5位 ブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
8位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)           +09"
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)   +11"
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)

個人総合成績
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)  26h59'00"
2位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)       +02"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)       +12"
4位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)           +22"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)              +27"
6位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)     +29"
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)   +33"
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)           +42"
9位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ)               +1'04"
10位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)         +1'07"

ポイント賞
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)

山岳賞
ドミトロ・グラボフスキー(ウクライナ、ISD・ネーリ)

新人賞
ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)

チーム総合成績
ランプレ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos