ビンクバンク・ツアー最終日の舞台はベルギーのフランドル地方。後半にかけて9ヶ所の石畳坂が設定された難コースで残り3kmから独走したジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が勝利。ライバルたちの攻撃を凌ぎ切ったトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)が総合優勝に輝いた。


メイン集団の先頭を固めるロット・ソウダルメイン集団の先頭を固めるロット・ソウダル photo:TDWsport
ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを駆け上がるミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを駆け上がる photo:TDWsport
オランダ国境の街エッセンからアントワープを通過し、フランデレン地域の自転車競技の中心地ヘラールツベルヘンまで。ビンクバンク・ツアーを締めくくる191.3kmコースには後半にかけてボズベルグやミュール・ファン・ヘラールツベルヘンなどの石急坂が断続的に9ヶ所登場。最後は石畳のヴェステン(長さ600m/勾配7.6%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。

総合1位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)と総合2位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)の総合タイム差が4秒という僅差で迎えた最終ステージは、トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)やエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、グレガ・ボーレ(スロベニア、バーレーン・メリダ)ら9名が逃げグループを形成する展開。メイン集団はこの強力な逃げに2分のリードを与えた。

やがて残り52km地点のミュール・ファン・ヘラールツベルヘン(長さ1100m/勾配8.7%)に差し掛かると先頭はヴィヴィアーニとマルティンの2人に。メイン集団からは続くボズベルグ(長さ1000m/勾配6%)でダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)とシクロクロス世界王者ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスウィレムス・クレラン)がカウンターアタックを仕掛け、長い追走の末に先頭ヴィヴィアーニらに追いついた。

逃げグループとメイン集団のタイム差は広がらず、残り26km地点に位置する2回目のミュール・ファン・ヘラールツベルヘンでメイン集団から加速したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がそれまで逃げていた選手たちを追い抜いて先頭に立つ。しかしサガンのリードは決定的なものにはならず、ライバルたちが追いついて先頭集団は人数を増やした。

ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを登るトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを登るトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:TDWsport
2回目のミュール・ファン・ヘラールツベルヘンでアタックしたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)2回目のミュール・ファン・ヘラールツベルヘンでアタックしたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:TDWsport
サガンを追うティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)サガンを追うティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:TDWsport
そこから先は再びアタックの応酬に。ジロ・デ・イタリア開幕ステージを制したルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)の独走も引き戻され、クイックステップフロアーズやカチューシャ・アルペシン、ロットNLユンボが攻撃を繰り返したが集団は崩れない。

残り6km地点のデンデロールトベルグ(長さ700m/勾配8%)でグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)とサガンが強烈な加速を披露したが、リーダージャージのデュムランは離れなかった。出遅れ気味のウェレンスらも復帰して先頭集団は16名に。残り4kmを切ったところでアタックしたペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ)が引き戻されると、今後は残り3.3kmからストゥイヴェンが飛び立った。

精鋭集団内が牽制によってペースダウンした隙をついて一気にリードを広げたストゥイヴェン。10秒のリードでフラムルージュを通過したストゥイヴェンは、そのままヘラールツベルヘンの街の中を通過し、フィニッシュに至る石畳坂に入っていく。セップ・ヴァンマルク(ベルギー、キャノンデール・ドラパック)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、リーダージャージのデュムランらを先頭に追撃したが届かず、リードを守り抜いたストゥイヴェンが石畳坂の頂上にフィニッシュ。1秒後方では、ジルベールに次いでステージ3位に入ったデュムランが総合優勝を祝うガッツポーズを見せた。

ジルベールとデュムランを振り切ってフィニッシュするジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)ジルベールとデュムランを振り切ってフィニッシュするジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:TDWsport
ガッツポーズでフィニッシュするトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)ガッツポーズでフィニッシュするトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:TDWsport
「アタックは予定していなかった。ただ直感的にアタックしようと決めた。短い登りで後続と距離が開いたのでそのまま踏んだんだ。身体は疲れきっていたけど、ハードな1週間を終えてどの選手も同じ状況だったはず。だから一発賭けに出ることにした。残り150mで振り返った時、十分なリードだと確信したよ。出し尽くしたのでフィニッシュ後はへたり込んでしまった」。タイミングの良いアタックと力強い独走で勝利を飾ったストゥイヴェンはそう振り返る。ステージ優勝のボーナスタイム10秒によってストゥイヴェンは総合3位に入った。

そしてウェレンスらの攻撃を抑え込むとともに、ステージ3位に入って総合優勝を決めたデュムランは「僅差で総合優勝を逃し続けていたので、ようやく勝ててホッとした気分。チームでこの総合優勝を掴み取った。今日もチームが完全にレースをコントロールしてくれた」とコメント。デュムランは前身のエネコツアーでは2013年総合2位、2014年総合3位、2016年総合9位という成績を残していた。ブエルタ・ア・エスパーニャに出場しないデュムランの次戦はまだ決まっていない。

総合優勝に輝いたトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)総合優勝に輝いたトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:TDWsport
ステージ成績
1位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 4:06:48
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 0:00:01
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
4位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
5位 ティエシー・ブノート(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)
7位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
8位 マチュー・ラダニュ(フランス、エフデジ)
9位 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンティ・グループゴベール)
10位 ディラン・ファンバーレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
56位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) 0:04:37
個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 24:34:33
2位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) 0:00:17
3位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 0:00:46
4位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 0:00:51
5位 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール) 0:01:14
6位 ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ) 0:01:15
7位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:01:53
8位 ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) 0:01:59
9位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 0:02:12
10位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ) 0:02:23
46位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) 0:19:13
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 123pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 69pts
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 69pts
コンバティビティ賞
1位 ピート・アレガールト(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) 64pts
2位 エルマー・レインダース(オランダ、ルームポット) 53pts
3位  ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ) 26pts
チーム総合成績
1位 トレック・セガフレード 73:54:33
2位 サンウェブ 0:02:35
3位 アージェードゥーゼール 0:03:04