レース主催者A.S.O.やRCSスポルト、フランドルクラシックは連名でプレスリリースを出し、主催する主要レースの1チームあたりの出場人数を減らすことを発表した。ツール・ド・フランスをはじめとするグランツールは1チーム8名の編成で争われる。



合計198名の選手たちが出場する現在のグランツール合計198名の選手たちが出場する現在のグランツール photo:Kei Tsuji


フランドルのクラシックレースも1チーム8名から7名にフランドルのクラシックレースも1チーム8名から7名に photo:Tim de WaeleUCIワールドツアーレースを含む多くのビッグレースを主催するA.S.O.とRCSスポルト、フランドルクラシックが、出場人数の縮小に乗り出した。AIOCC(国際自転車レース主催者協会)の会合を経て、三者がプレスリリースにて発表した。

連名で出されたプレスリリースによると、2017年からグランツール(ジロ、ツール、ブエルタ)の1チーム出場人数が9名から8名に、そしてその他の主催レースは1チーム8名から7名に変更される。それぞれの主催レースは以下の通り。


A.S.O.
ツアー・オブ・カタール(UCIワールドツアー:2月6~10日)
ツアー・オブ・オマーン(UCI2.HC:2月14~19日)
パリ~ルーベ(UCIワールドツアー:4月9日)
フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー:4月19日)
リエージュ~バストーニュ~リエージュ(UCIワールドツアー:4月23日)
ツール・ド・ヨークシャー(UCI2.1:4月28~30日)
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(UCIワールドツアー:6月4~11日)
ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー:7月1~23日)
アークティックレース・オブ・ノルウェー(UCI:8月10~13日)
ブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー:8月19日~9月10日)
ツール・ド・ラヴニール(UCIネーションズカップ:8月19~26日)
パリ〜トゥール(UCI1.HC:10月8日)

RCSスポルト
ドバイ・ツアー(UCI2.HC:1月31日~2月4日)
アブダビ・ツアー(UCIワールドツアー:2月23~26日)
ストラーデ・ビアンケ(UCIワールドツアー:3月4日)
ティレーノ~アドリアティコ(UCIワールドツアー:3月8~14日)
ミラノ~サンレモ(UCIワールドツアー:3月18日)
ジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー:5月5~28日)
ミラノ~トリノ(UCI1.HC:10月4日)
イル・ロンバルディア(UCIワールドツアー:10月7日)

フランドルクラシック
オムループ・ヘット・ニュースブラッド(UCIワールドツアー:2月25日)
ドワーズ・ドール・フラーンデレン(UCIワールドツアー:3月22日)
ヘント~ウェヴェルヘム(UCIワールドツアー:3月26日)
ロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー:4月2日)
シュヘルデプライス(UCI1.HC:4月5日)
ブラバンツ・ペイル(UCI1.HC:4月12日)



RCSスポルトが主催するジロ・デ・イタリアRCSスポルトが主催するジロ・デ・イタリア photo:Kei Tsujiプレスリリースによると、1チームの出場人数縮小には2つの目的がある。1つ目は、今までよりも小さな集団で争うことで道路標識や中央分離帯などのコース上の障害物との接触リスクを下げ、安全性を向上するため。そしてもう1つは、1チームによる独裁体制を避け、観客を魅了するよりエキサイティングなレースを演出するためだ。例えばグランツールではこれまで198名(22チーム x 9名)だった集団が176名(22チーム x 8名)になる。

これに対しUCI(国際自転車競技連盟)はすぐさま反論。主催者にはUCI規則を変更する権限がないことを主張した。「チームサイズに関してUCIの見解を明らかにしておきたい。特定の主催者によるチームサイズ縮小が議題に上っているが、男子プロロードレースの規定の変更には、すべてのレース主催者が参加するPCC(プロサイクリング協議会)の承諾が必要である」。

UCI規則(2.2.003)は「1チームの出場人数は最小4名から最大8名までの間で主催者が決定する。グランツールの出場人数は1チームにつき9名。UCIワールドツアーレースは1チームにつき8名。PCCの承諾があれば1チーム7名に変更可能だが、その場合は1月1日までに主催者はPCCに申請を行うこと」と取り決めている。またUCIは出場人数の削減に関しては「2016年11月に行われたPCCの会合で議論を交わしてきたが、(翌シーズン開幕までの)数ヶ月で詳細を決定することが困難であると判断し、2017年は変更を加えないことを決定した」と述べている。

2017年はUCIワールドツアーレースが10レース増加する。複数のレースが並行して行われる時期もあるため、メンバー編成を含めた年間のスケジューリングに頭を抱えるチームが多い。なお、主催者が取り決めたメンバー数に満たない状態でUCIワールドツアーレースに出場した場合、チームは1名の欠場者につき5,000スイスフラン(約56万2,000円)の罰金を払わなければならない。出場人数の削減はメンバーの少ないチームにとって今回の発表は歓迎だが、シーズン開幕が数ヶ月後に迫ったタイミングでの出場人数変更に対して批判的な声が多く上がっている。UCI規則に背く形でレース主催者は出場人数縮小に踏み切る見通し。改めてUCIと主催者の確執が浮き彫りになった。

text:Kei Tsuji