北海道・ニセコ周辺で行われた、アジアで初のUCIグランフォンドワールドシリーズのニセコクラシック。終日雨の中、140kmは北海道在住の松田究(ライドファクトリー)、70kmは高校生の池辺刀那(MUUR-ZERO)と米田和美(Cherry Japan)が優勝した。



140km 7km地点 先頭は松田究(ライドファクトリー)140km 7km地点 先頭は松田究(ライドファクトリー) photo:Hideaki TAKAGI
上位25%が世界選手権へ出場できるのがUCIグランフォンドワールドシリーズ。2016年7月10日(日)、アジアで初のその大会が北海道ニセコ地方で行われた。今年からUCI大会となり海外を含む総参加者は倍近くを数え、前日からニセコ界隈はサイクリストでにぎわった。

世界選手権へつながる大会

140km 世界大会目指してスタート140km 世界大会目指してスタート photo:Hideaki TAKAGI今年で3回目、昨年からはボードマンバイクスジャパンが冠スポンサーとなり「ボードマンニセコクラシック」として行われている。今年の特徴は何といってもUCIグランフォンドワールドシリーズに組み込まれたことであり、上位者は今年9月にオーストラリア・パースで行われるUCIグランフォンド世界選手権への出場権を手にできる。そこで優勝すれば世界チャンピオンとなれることが大きな魅力だ。
140km 45km地点、逃げる2人140km 45km地点、逃げる2人 photo:Hideaki TAKAGI
UCI会長のブライアン・クックソン氏はパンフレットの前書きに「road cycling series for amateur riders」とグランフォンドを説明している。アマチュア選手(コンチネンタルチーム所属やUCIポイント保持者らを除く)が走り方を自由に選べるサイクリングであり、少なくとも上位者間ではロードレースそのものの展開をしているいっぽう、完走を目的とする参加者もいる。現場においてはレース色の濃いサイクリングイベントといえよう。

140kmと70kmの2種類のコース

コースは140kmと70kmの2種類ある。140kmはニセコチセヌプリのKOMを越える山岳コース。70kmは140kmの後半部分を走るものでありこれも中小の峠を含む登坂中心のコース設定。UCIのレギュレーションにより140kmは男子19歳以上49歳以下に限られ、それ以外は70kmに出ることになる。なお非UCIクラスとしてならば距離と性別年齢はおよそいとわない。交通規制はツール・ド・北海道と同じく、片側のみの規制が基本なので対向車線は車が走っている。

大会は140kmが6時50分にニセコヒラフ坂を各クラス同時スタート、70kmは8時20分に蘭越町を各クラス同時スタートとなった。曇りの天気予報に反し、朝7時ごろは曇りだったが雨がちとなり、時折強く雨が降るように。気温は20度を下回り肌寒く、ニセコチセヌプリKOMでは15度以下となり寒さとの戦いになる一面も。

140km 45km地点、メイン集団140km 45km地点、メイン集団 photo:Hideaki TAKAGI
6人の戦いとなった140km

140km 65km地点、集団は一つ140km 65km地点、集団は一つ photo:Hideaki TAKAGI140kmクラスは大集団でスタートし、上りのたびに人数が絞られるが、それでもニセコチセヌプリKOMは40人ほどの集団で越える。大きな動きは105km地点から始まる上り区間。有力選手たちのペースアップで人数が絞られ6人にまで先頭集団は小さくなる。メンバーは松田究(ライドファクトリー)、星野貴也(COW GUMMA)、菅原勇人(札幌じてんしゃ本舗!)、西谷雅史(オーベスト)、岩島啓太(MIVRO)、佐藤秀和(サイクルフリーダムレーシング)。
140km 松田究(ライドファクトリー)が優勝140km 松田究(ライドファクトリー)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
結局この6人によるフィニッシュ前300mの上りスプリント勝負となり、松田がこれを制し140kmクラス総合優勝。松田は北海道出身・在住で早稲田大学時代にツール・ド・北海道に出場、学連選手として活躍し卒業後も北海道選抜で出場している。現在は社会人で「パワーマックスで追い込む」という。
140km男子総合表彰140km男子総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI
140km男子総合優勝 松田究(ライドファクトリー)のコメント

「過去、ニセコクラシックでは猛暑にやられて思うような走りが出来なかったので、今年の天候は自分にぴったりだと感じていました。ですが、さすがに大雨の中でのアンヌプリからの下りでは心が折れかけましたね。その後の向かい風区間では体が冷えてしまい、歯がガタガタ言うくらい寒かったですが、その後の追い風区間で何とか持ち直すことができました。

事前のイメージとは少し違った展開になったけれど、岩島さんや西谷さんといった強豪選手がいる中で優勝できたことは、地元選手としてとても嬉しいです。世界大会へも、都合がつけばぜひ出場したいですね。ニセコクラシックはワンウェイの市民レースというだけでも貴重なイベントですが、それに加えてダイナミックなコースや景色、ニセコという地域のホスピタリティがとても魅力的な大会。ぜひ来年はもっと多くの人と走ることができると嬉しいですね!」

高校1年生が優勝した70kmクラス

蘭越町をスタートした70kmクラスは前半平坦のコースのため集団で進む。変化が起きたのは35km地点から始まる上り。ここで集団は分裂し10人ほどの先頭集団にまとまる。ここからさらに池辺刀那(MUUR-ZERO(音威子府美術工芸高校スキー部))と江田圭一郎の2人が抜け出し、さらに55km地点からの上りで池辺が独走する。池辺はここから15kmを独走して優勝。女子は藤村祥子(美十)が先行したが米田和美(Cherry Japan)が追いつき、フィニッシュでは米田が先着、3連勝を飾った。

70km 37km地点70km 37km地点 photo:Hideaki TAKAGI70km 38km地点、米田和美(Cherry Japan)70km 38km地点、米田和美(Cherry Japan) photo:Hideaki TAKAGI

Cw niseko-1370km 46km地点、メイン集団Cw niseko-1370km 46km地点、メイン集団 photo:Hideaki TAKAGI70km 58km地点、逃げ続ける池辺刀那(MUUR-ZERO)70km 58km地点、逃げ続ける池辺刀那(MUUR-ZERO) photo:Hideaki TAKAGI

70km 66km地点、激しい雨に見舞われるメイン集団70km 66km地点、激しい雨に見舞われるメイン集団 photo:Hideaki TAKAGIニセコクラシックには3回連続で出場しているという池辺。「山岳KOMで逃げた選手にブリッジを掛け、そのまま二人でローテーションを回すことになりました。2回目の登りでそこから抜け出して、独走に持ち込むことができました。マークしていた高校2年の中谷選手がトラブルで脱落したので、思ったよりも難しい展開にはならなかったですね。70㎞の総合で優勝できたのは初めてなので、最高の気分です。世界大会には出てみたいですが、高校生ですから難しいですね(笑)」とコメント。XCスキーの全国大会で3位に入ったことも。

70km男子総合表彰70km男子総合表彰 photo:Hideaki TAKAGI今大会はUCIグランフォンドとなり倍近くの参加者、海外からの参加者を数えた。延長上に世界選手権があることは大きな魅力であり、加えて30年を数えるツール・ド・北海道の実績により円滑に公道大会が開ける環境、さらに海外に開かれたニセコの地という条件が相まって絶好の開催地となっている。日本国内でこれほどの大会を開けるのはここだけといってもよいほどだ。翌年以降もUCI大会を開く方向であり、定着化に向けて今後に大いに期待できる。
70km女子 45-49でワン・ツーのチェリージャパン70km女子 45-49でワン・ツーのチェリージャパン photo:Hideaki TAKAGI全員がメダリスト全員がメダリスト photo:Hideaki TAKAGI親子で表彰親子で表彰 photo:Hideaki TAKAGI70km男子65+優勝者を囲んで70km男子65+優勝者を囲んで photo:Hideaki TAKAGI
結果

140kmクラス

男子総合
1位 松田究(ライドファクトリー)3時間56分20秒
2位 星野貴也(COW GUMMA)
3位 菅原勇人(札幌じてんしゃ本舗!)+08秒
4位 西谷雅史(㈱オーベスト)+09秒
5位 岩島啓太(MIVRO)+13秒
6位 佐藤秀和(サイクルフリーダムレーシング)+37秒

男子 19-34
1位 松田究(ライドファクトリー)3時間56分20秒
2位 星野貴也(COW GUMMA)
3位 菅原勇人(札幌じてんしゃ本舗!)+08秒

男子 35-39

1位 岩島啓太(MIVRO)3時間56分34秒
2位 澤野敦志 +3分42秒
3位 小山田智也(CYCLES WAKASA)+3分55秒

男子 40-44
1位 佐藤秀和(サイクルフリーダムレーシング)3時間56分58秒
2位 ステファノ・ジョルダーノ +3分18秒
3位 アンディ・ウッド +5分37秒25

男子 45-49
1位 西谷雅史(㈱オーベスト)3時間56分30秒
2位 岩波信二 +3分45秒
3位 セバスチャン・ピロッテ +5分49秒

70kmクラス

男子総合
1位 池辺刀那(MUUR-ZERO(音威子府美術工芸高校スキー部))
2位 苗村徹(クラブシルベスト)+1分05秒
3位 江田圭一郎 +1分06秒
4位 山本二郎(チーム物見山)+1分07秒
5位 花田清志(天狗党)+1分08秒
6位 佐々木暁夫(弘前大学医学部自転車競技部)+1分10秒

男子 50-54
1位 苗村徹(クラブシルベスト)2時間10分21秒
2位 山本二郎(チーム物見山)+01秒
3位 宇野一成 +07秒

男子 55-59
1位 花田清志(天狗党)2時間10分24秒
2位 マーク・ノルデン +06秒
3位 佐藤修(札幌高等技術専門学院)+06分55秒

男子 60-64
1位 ジェームス・スローン(Albury/Wodonga Cycling)2時間20分36秒
2位 工藤久雄(青森方面隊)+01分25秒
3位 生島則明(チームリミッツ)+11分17秒

男子 65+
1位 形本静夫 2時間22分13秒
2位 山口俊一(CYCLES WAKASA)+06分08秒
3位 田邉孔男 +10分05秒

女子総合
1位 米田和美(Cherry Japan)2時間13分00秒
2位 藤村祥子(美十) +12秒
3位 小林可奈子(Cherry Japan)+10分39秒
4位 青木紗矢香(BH ASTIFO)+11分28秒
5位 村上純子(玄米酵素)+13分18秒
6位 上原稔子 +15分04秒

女子 19-34
1位 藤村祥子(美十)2時間13分13秒
2位 青木紗矢香(BH ASTIFO)+11分15秒
3位 檜垣侑里 +21分08秒

女子 35-39
1位 石井美絵(AQULS内房レーシング)2時間34分34秒
2位 中山由美子(Catteni Positivo)+11分10秒
3位 イザベラ・タン +17分24秒

女子 40-44
1位 上原稔子 2時間28分05秒
2位 ジェーン・グリフィス(Project852)+8分23秒
3位 早瀬久美(日本ろう自転車競技協会)+10分53秒

女子 45-49
1位 米田和美(Cherry Japan)2時間13分00秒
2位 小林可奈子(Cherry Japan)+10分39秒
3位 スー・ディンガス +23分23秒

女子 50-54
1位 村上純子(玄米酵素)2時間26分19秒
2位 山本真紀恵(チーム物見山)+15分04秒
3位 杉浦友季子(WESTY C.P.)+24分25秒

女子 55-59
1位 山口日出(Team O-VEST)2時間56分05秒

女子 60-64
1位 ジュリア・エンブリン(JayParker)2時間29分50秒
2位 赤岩江美 +29分41秒

photo:Hideaki TAKAGI
text:Hideaki TAKAGI、Naoki YASUOKA