4月3日(日)ベルギー・フランドル地方で第100回ロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)が開催される。「クラシックの王様」と呼ばれる最高峰ワンデークラシックの見どころをチェックしておこう。



オウデ・クワレモントとパテルベルグを含むフランドルの激坂巡り

ロンド・ファン・フラーンデレン2016ロンド・ファン・フラーンデレン2016 image:Ronde van Vlaanderen「モニュメント」と呼ばれる世界を代表する5つのワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せる「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレンが4月3日(日)、ベルギー北部のフランドル地方で開催される。

ブルージュのマルクト広場をスタートブルージュのマルクト広場をスタート photo:Tim de Waele1913年に初開催された歴史ある大会であり、今年で記念すべき開催100回目。フランス語で「ツール・デ・フランドル」と呼ばれるフランドル地方最大のロードレースであり、そのステータスは「世界一」と言える。

コッペンベルグで思わずバイクを押す選手たちコッペンベルグで思わずバイクを押す選手たち photo:Cor Vos自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに、沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上には黄色のフランドルフラッグが翻る。今年もフランドル地方のクラシックシーズンの熱気はこのロンドで頂点に達する。

オウデクワレモントを駆け上がるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)オウデクワレモントを駆け上がるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleロンド・ファン・フラーンデレンがそれだけ高いステータスを誇っている理由、それは他のクラシックレースには見られない過酷なコース設定だ。テクニカルかつ細い農道を駆け抜け、断続的に登場する石畳に覆われた急坂に挑む。コース全長は255kmで、獲得標高差は2,200m前後。

スタート地点はブルージュで、フィニッシュ地点はレース博物館のあるオウデナールデ。名物の「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」は4年連続で登場しない。代わって勝負を決めるのは「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大小の周回コースだ。

例年レースが本格化するのは2回目の「オウデ・クワレモント」から。渋滞によってバイクを押す選手も続出する最大勾配22%の「コッペンベルグ」を皮切りに、フィニッシュまで一瞬たりとも気が抜けない約1時間の闘いが始まる。登り単体ではなく、チーム力が問われる登り手前の位置取り合戦も重要なファクターを担う。

連続する石畳の登りでのアタック合戦を経て、本命たちが最後の「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」に突入する。この2つの名物坂はいずれも石畳に覆われており、前者が平均4%・最大11.6%・長さ2200m、後者が平均12.9%・最大20.3%・長さ360m。ゴールから13kmしか離れていない最後の「パテルベルグ」で決定的な動きが生まれるはずだ。

天気予報によると、フィニッシュ地点オウデナールデの気温は最高21度/最低11度という暑さ。降水確率は0%に近く、風が弱いという予報が出ている。



ロンド・ファン・フラーンデレン2016ロンド・ファン・フラーンデレン2016 image:Ronde van Vlaanderen


登場する18カ所の急坂
1 103km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
2 114km地点 コルテケール アスファルト 平均6.4% 最大17.1% 長さ1000m
3 121km地点 エイケンベルグ 石畳 平均6.2% 最大10% 長さ1300m
4 124km地点 ウォルヴェンベルグ アスファルト 平均6.8% 最大17.3% 長さ666m
5 137km地点 モーレンベルグ 石畳 平均7% 最大14.2% 長さ463m
6 157km地点 レベルグ アスファルト 平均6.1% 最大14% 長さ700m
7 161km地点 ベレンドリース アスファルト 平均7% 最大13% 長さ940m
8 167km地点 ヴァルケンベルグ アスファルト 平均8.1% 最大12.8% 長さ540m
9 177km地点 カペリイ アスファルト 平均5.5% 最大9% 長さ1000m
10 185km地点 カナリーベルグ アスファルト 平均7.7% 最大14% 長さ1000m
11 200km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
12 204km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
13 210km地点 コッペンベルグ 石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m
14 216km地点 シュテインビークドリシュ 石畳 平均5.3% 最大6.7% 長さ700m
15 218km地点 ターインベルグ 石畳 平均6.6% 最大15.8% 長さ530m
16 229km地点 クルイスベルグ 石畳 平均6.5% 最大9% 長さ1000m
17 238km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4% 最大11.6% 長さ2200m
18 242km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m


クリストフ、サガン、ファンアフェルマート、カンチェラーラが激突

アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waele昨年の第99回大会はアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)の一騎打ちに持ち込まれ、登りとスプリントで力を見せたクリストフが初勝利を飾った。

ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Tim de Waeleクリストフは今年も優勝候補に挙げられるが、発熱によって1週間前のヘント〜ウェヴェルヘムを欠場。復調してデパンヌ・コクサイデ3日間レースでステージ1勝&総合3位の成績を残したが、本人曰く「昨年の方がコンディションは良かった」という。ヘントで3位に入ったヴィチェスラフ・クズネツォフ(ロシア)の他、カチューシャはリードアウト要因を豊富に揃えてクリストフをアシストする。

グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleヘント〜ウェヴェルヘムで6ヶ月ぶりの勝利をつかんだ世界チャンピオンのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)は2013年の2位が自身最高位。「アルカンシェルの呪い」を脱したサガンは勝利の波に乗れるだろうか。石畳クラシックで安定した走りを見せるオスカル・ガット(イタリア)は心強い存在だ。

トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waeleそんなサガンを今シーズン2度打ち負かしているグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)は過去2年連続で表彰台に上っている。ダニエル・オス(イタリア)やマヌエル・クインツィアート(イタリア)のサポートを受け、フランドルの期待を背負って勝負に挑む。

ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)とペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)とペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:Tim de Waele100回記念大会だけに、地元ベルギーのエティックス・クイックステップやロット・ソウダルは全力で勝利を狙ってくるだろう。エティックス・クイックステップは昨年2位のテルプストラの他、3度の優勝経験者トム・ボーネン(ベルギー)、ゼネク・スティバル(チェコ)、トニ・マルティン(ドイツ)らを揃える鉄壁の構え。チーム力では他の追随を許さない。

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleロット・ソウダルは2013年3位のユルゲン・ルーランズ(ベルギー)や成長著しいティエシー・ベノート(ベルギー)を中心に据えて戦うことになるだろう。

E3ハーレルベーケでサガンを破ったミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)はゲラント・トーマス(イギリス)とともにチームスカイのエースを担う。石畳の番人イアン・スタナード(イギリス)やルーク・ロウ(イギリス)らがダブルエースを支える。

3度の優勝経験者ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)はキャリア最後のロンドを走る。カンチェラーラはE3ハーレルベーケとヘント〜ウェヴェルヘムで4位。自身も2度優勝しているステイン・デヴォルデル(ベルギー)らがカンチェラーラの4度目の優勝をサポートする。

ラース・ボーム(オランダ)とリエーベ・ヴェストラ(オランダ)を揃えるアスタナや、セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)もレースを動かしてくるだろう。

ミラノ〜サンレモ優勝者アルノー・デマール(フランス、FDJ)は昨年の23位が最高位。ヘント〜ウェヴェルヘムで5位に入っており、調子の良さをキープしている。2012年に2位に入っている34歳のフィリッポ・ポッツァート(イタリア、サウスイースト)はミラノ〜サンレモで8位、ドワーズ・ドール・フラーンデレンで4位に入っており、その力はいまだ健在だ。



ロンド・ファン・フラーンデレン歴代優勝者
2015年 1位クリストフ、2位テルプストラ、3位ファンアフェルマート
2014年 1位カンチェラーラ、2位ファンアフェルマート、3位ファンマルク
2013年 1位カンチェラーラ、2位サガン、3位ルーランズ
2012年 1位ボーネン、2位ポッツァート、3位バッラン
2011年 1位ナイエンス、2位シャヴァネル、3位カンチェラーラ
2010年 1位カンチェラーラ、2位ボーネン、3位ジルベール
2009年 1位デヴォルデル、2位ハウッスラー、3位ジルベール
2008年 1位デヴォルデル、2位ナイエンス、3位フレチャ
2007年 1位バッラン、2位ホステ、3位パオリーニ
2006年 1位ボーネン、2位ホステ、3位ヒンカピー
2005年 1位ボーネン、2位クリアー、3位ファンペテヘム

text:Kei Tsuji