2015/07/18(土) - 17:02
ふたたびの酷暑。向日葵が咲き乱れる中央山塊マシフサントラルを行くプロトン。春のクラシックで勝てなかったファンアフェルマートがツールで念願の勝利。サガンは今年のツールで4度目の2位、通算で15度目の2位に猛省、不機嫌が隠せない。
トゥールーズ近郊のミュレを発ったプロトンは0km地点までのローリング走行の後、緩い丘のアップダウンの続く地へ向けてスタートを切った。麦畑に混じって、さっそく行く手に黄色い絨毯が広がる。トゥールーズと言えばひまわり畑。黄色のなかをいく色鮮やかなプロトン。この一帯はいつもツールを象徴する風景に出会える場所だ。
フォトグラファーたちもコンボイの前方を伴走しながら、プロトンと向日葵畑を一緒に写真に収めようとポジションを探す。うまく絡み合う場所はなかなかないため、好条件のスポットにはスチル&TVカメラマンたちが鈴なりに。こうして撮りながら観るツールは美しい。
例年ならピレネーとアルプスを繋ぐステージはスプリンター向きの単調な平坦コースになりがちだが、今年は一味違う。例年通過するモンペリエ周辺の平野部ではなく、北側の中央山塊「マシフ・サントラル」を通過する。高い山はないが、ひくい山が広がるフランスきっての田舎エリア。
今日のコースは逃げ屋やパンチャー向け。3つの山岳の他にカテゴリーの付かない上りも多く、スプリンターを悩ませるアップダウンが組み込まれている。ゴール前の最後は570m、9.6%を登ってフィニッシュ。プロフィールマップでこそ詳細がわかりにくいが、フィニッシュまでに至る残り2kmはコースが大きく蛇行し、U字カーブを2回、そして街中にあって「ブラン台地」と呼ばれる高所へ、サン・ピエール坂を登ってフィニッシュする。
ティンコフ・サクソのステフェン・デヨンフ監督が昨日「今日のステージはサガン向け。マイヨヴェールのためにサポート要員もつける」と話したとおり、今日のティンコフ・サクソはサガンのアシストにチームで取り組んだ。開幕当初、チームはコンタドールのマイヨジョーヌのために動くため、サガンはすべてひとりで対処することを言い渡されていたが、今日から作戦は変わったようだ。コンタドールも調子が上がりきっていなことを認めている。
「調子が上がるにはもう少し時間が必要だ。日に日に良くなってきており、それが僕を勇気づける。いつもと違う方法でツールに臨まなければいけない」とコンタドールは言う。第3週アルプスに向け調整する。チームはすでにマイヨジョーヌの望みを捨て現実的になっているが、コンタドールだけは諦めていないはずだ。
ピュアスプリンターには難しいが、小集団スプリントに持ち込むこともできる今日の上りフィニッシュ。「ピュア」でなくクラシック系スプリンターのジョン・デゲンコルブで勝利に持ち込みたいジャイアント・アルペシンが集団前方で逃げとのタイム差をコントロール。140km以降はティンコフ・サクソのフルメンバーが加わった。
フランス人も「canicule(カニクル)」と形容する酷暑は今日も続いた。プロトンも水、水、水と求め続け、ボトルでの受け渡しでは足りずに市販のペットボトルまで総動員された。選手たちに言わせれば、いくら補水しても水分がとにかく足りなかったそうだ。
4度目、通算15度目の2位に不機嫌なサガン
長い登りの570mを登り切ったあとに引かれたフィニッシュライン。ル・アーブルのステージを思い出させるレイアウトに、先行グループの逃げ切りの可能性も混じった。登り口から早すぎるスプリントを開始したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)。
登り切る手前でその後輪にサガンがぴったりとつけ、まさに次のスプリントで料理しようかというタイミングでファンアフェルマートの次の加速があった。意表を突かれたように離されたサガン。フィニッシュへの平坦路では再び並びかけるも、脚が回らず、スピードに乗せられずにファンアフェルマートの先行を許してしまう。
春のクラシックが主な活躍の場のファンアフェルマート。今季ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベで3位、アムステルゴールドレースで5位と、メジャークラシックの主役級でありながら大きな勝利には恵まれなかった選手だ。その理由はスプリント力の欠如。決定的な逃げや動きには入るものの、最後の一発のパンチがないばかりに勝利には結びつかず、ビッグスターにはなれない選手だ。
ファンアフェルマートが早掛けとも言えるスプリントに踏み切ったのは、ル・アーブルのステージでサガンらとお見合いし、スティバルの逃げ切りを許してしまった教訓からだ。そして「ラスト100mは永遠につづくかと思った」と言うほどの早掛けだったとしても、サガンの意表をつくもう一発の加速を残していた。それは今の自分の調子の良さの現れとファンアフェルマートは言う。
勝利の一歩手前で足踏みしてしまうようなサガンのフィニッシュは、今のサガンの状況を象徴しているかのようなシーンだった。「タイミングを待ちすぎてしまった。自分のミスだ。チームメイトのおかげで勝負に持ち込めたのに、彼の後ろで待機しすぎた。もっとも早く仕掛けて、フィニッシュラインまで全開でもがくべきだった。マイヨヴェールのキープを狙っていたわけじゃない。今日は勝ちたかった」と悔やむサガン。
サガンは今ツールで4回めの2位。そして今までのツールでの2位はじつに通算15回目にのぼる。「2位グセ」がついたかのような状況だ。ちなみに1位は4回、2位は15回、3位は6回。
ステージ後の表彰式、そしてマイヨヴェールの記者会見おいてもいつもの笑顔は無く、自分の失敗に対する自責の思いを感じている様が伝わってくる。ぶっきらぼう以上に、不機嫌。サガンから笑顔が消えた。チームは初めて自分のためにフルサポートしてくれたというのに、辛い立場だ。
今はツールに帯同していないチームオーナーのオレグ・ティンコフ氏はおそらく自宅でTV観戦していたのだろう、サガンの2位に高価なBang & Olufsen のテレビを破壊したとツィッターでつぶやいた。この後が怖い。
中盤は中間スプリントをとったグライペルがバーチャルマイヨヴェールを獲得。しかし2位フィニッシュでサガンはヴェールを取り返した。しかし24ポイント差はまだまだ僅差で、シーソーゲームはパリまで続きそうだ。
第15ステージのヴァランスとパリの平坦系スプリントステージに設定されたステージ優勝のポイントは50点と高得点だ。そのためこのステージでグライペルが勝利できればグライペルに勝機がある。
グライペルはフィニッシュと中間スプリント獲得のために手前の山を越えなければいけない。サガンはアップダウンのあるこれからのステージでグライペルを振り落とし、ポイント差を広げたいところだ。チームのサポートが得られる状況となった今、サガンの4度目のマイヨヴェール獲得には有利な展開になっている。
text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:Makoto.AYANO,Kei Tsuji,Tim de Waele,CorVos
トゥールーズ近郊のミュレを発ったプロトンは0km地点までのローリング走行の後、緩い丘のアップダウンの続く地へ向けてスタートを切った。麦畑に混じって、さっそく行く手に黄色い絨毯が広がる。トゥールーズと言えばひまわり畑。黄色のなかをいく色鮮やかなプロトン。この一帯はいつもツールを象徴する風景に出会える場所だ。
フォトグラファーたちもコンボイの前方を伴走しながら、プロトンと向日葵畑を一緒に写真に収めようとポジションを探す。うまく絡み合う場所はなかなかないため、好条件のスポットにはスチル&TVカメラマンたちが鈴なりに。こうして撮りながら観るツールは美しい。
例年ならピレネーとアルプスを繋ぐステージはスプリンター向きの単調な平坦コースになりがちだが、今年は一味違う。例年通過するモンペリエ周辺の平野部ではなく、北側の中央山塊「マシフ・サントラル」を通過する。高い山はないが、ひくい山が広がるフランスきっての田舎エリア。
今日のコースは逃げ屋やパンチャー向け。3つの山岳の他にカテゴリーの付かない上りも多く、スプリンターを悩ませるアップダウンが組み込まれている。ゴール前の最後は570m、9.6%を登ってフィニッシュ。プロフィールマップでこそ詳細がわかりにくいが、フィニッシュまでに至る残り2kmはコースが大きく蛇行し、U字カーブを2回、そして街中にあって「ブラン台地」と呼ばれる高所へ、サン・ピエール坂を登ってフィニッシュする。
ティンコフ・サクソのステフェン・デヨンフ監督が昨日「今日のステージはサガン向け。マイヨヴェールのためにサポート要員もつける」と話したとおり、今日のティンコフ・サクソはサガンのアシストにチームで取り組んだ。開幕当初、チームはコンタドールのマイヨジョーヌのために動くため、サガンはすべてひとりで対処することを言い渡されていたが、今日から作戦は変わったようだ。コンタドールも調子が上がりきっていなことを認めている。
「調子が上がるにはもう少し時間が必要だ。日に日に良くなってきており、それが僕を勇気づける。いつもと違う方法でツールに臨まなければいけない」とコンタドールは言う。第3週アルプスに向け調整する。チームはすでにマイヨジョーヌの望みを捨て現実的になっているが、コンタドールだけは諦めていないはずだ。
ピュアスプリンターには難しいが、小集団スプリントに持ち込むこともできる今日の上りフィニッシュ。「ピュア」でなくクラシック系スプリンターのジョン・デゲンコルブで勝利に持ち込みたいジャイアント・アルペシンが集団前方で逃げとのタイム差をコントロール。140km以降はティンコフ・サクソのフルメンバーが加わった。
フランス人も「canicule(カニクル)」と形容する酷暑は今日も続いた。プロトンも水、水、水と求め続け、ボトルでの受け渡しでは足りずに市販のペットボトルまで総動員された。選手たちに言わせれば、いくら補水しても水分がとにかく足りなかったそうだ。
4度目、通算15度目の2位に不機嫌なサガン
長い登りの570mを登り切ったあとに引かれたフィニッシュライン。ル・アーブルのステージを思い出させるレイアウトに、先行グループの逃げ切りの可能性も混じった。登り口から早すぎるスプリントを開始したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)。
登り切る手前でその後輪にサガンがぴったりとつけ、まさに次のスプリントで料理しようかというタイミングでファンアフェルマートの次の加速があった。意表を突かれたように離されたサガン。フィニッシュへの平坦路では再び並びかけるも、脚が回らず、スピードに乗せられずにファンアフェルマートの先行を許してしまう。
春のクラシックが主な活躍の場のファンアフェルマート。今季ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベで3位、アムステルゴールドレースで5位と、メジャークラシックの主役級でありながら大きな勝利には恵まれなかった選手だ。その理由はスプリント力の欠如。決定的な逃げや動きには入るものの、最後の一発のパンチがないばかりに勝利には結びつかず、ビッグスターにはなれない選手だ。
ファンアフェルマートが早掛けとも言えるスプリントに踏み切ったのは、ル・アーブルのステージでサガンらとお見合いし、スティバルの逃げ切りを許してしまった教訓からだ。そして「ラスト100mは永遠につづくかと思った」と言うほどの早掛けだったとしても、サガンの意表をつくもう一発の加速を残していた。それは今の自分の調子の良さの現れとファンアフェルマートは言う。
勝利の一歩手前で足踏みしてしまうようなサガンのフィニッシュは、今のサガンの状況を象徴しているかのようなシーンだった。「タイミングを待ちすぎてしまった。自分のミスだ。チームメイトのおかげで勝負に持ち込めたのに、彼の後ろで待機しすぎた。もっとも早く仕掛けて、フィニッシュラインまで全開でもがくべきだった。マイヨヴェールのキープを狙っていたわけじゃない。今日は勝ちたかった」と悔やむサガン。
サガンは今ツールで4回めの2位。そして今までのツールでの2位はじつに通算15回目にのぼる。「2位グセ」がついたかのような状況だ。ちなみに1位は4回、2位は15回、3位は6回。
ステージ後の表彰式、そしてマイヨヴェールの記者会見おいてもいつもの笑顔は無く、自分の失敗に対する自責の思いを感じている様が伝わってくる。ぶっきらぼう以上に、不機嫌。サガンから笑顔が消えた。チームは初めて自分のためにフルサポートしてくれたというのに、辛い立場だ。
今はツールに帯同していないチームオーナーのオレグ・ティンコフ氏はおそらく自宅でTV観戦していたのだろう、サガンの2位に高価なBang & Olufsen のテレビを破壊したとツィッターでつぶやいた。この後が怖い。
中盤は中間スプリントをとったグライペルがバーチャルマイヨヴェールを獲得。しかし2位フィニッシュでサガンはヴェールを取り返した。しかし24ポイント差はまだまだ僅差で、シーソーゲームはパリまで続きそうだ。
第15ステージのヴァランスとパリの平坦系スプリントステージに設定されたステージ優勝のポイントは50点と高得点だ。そのためこのステージでグライペルが勝利できればグライペルに勝機がある。
グライペルはフィニッシュと中間スプリント獲得のために手前の山を越えなければいけない。サガンはアップダウンのあるこれからのステージでグライペルを振り落とし、ポイント差を広げたいところだ。チームのサポートが得られる状況となった今、サガンの4度目のマイヨヴェール獲得には有利な展開になっている。
text:Makoto.AYANO in FRANCE
photo:Makoto.AYANO,Kei Tsuji,Tim de Waele,CorVos
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