逃げグループとメイン集団の人数を絞り込むチンクエテッレの絶え間ないアップダウン。ジェットコースターのような150kmレースで、逃げグループから終盤の山岳で抜け出したダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)がプロ初勝利を掴みました。



レース序盤の3級山岳でアタックが繰り返されるレース序盤の3級山岳でアタックが繰り返される photo:Kei Tsuji
笑顔で出走サインに向かう別府史之(トレックファクトリーレーシング)笑顔で出走サインに向かう別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji第4ステージを迎えた石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)第4ステージを迎えた石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2015第4ステージジロ・デ・イタリア2015第4ステージ image:RCS Sport引き続きジロ・デ・イタリアはリグーリア海岸を南下。第4ステージは後半にかけて世界遺産にも指定されている風光明媚な海岸線チンクエテッレを駆け抜ける。

総勢29名の逃げグループを率いるトム・ダニエルソン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)ら総勢29名の逃げグループを率いるトム・ダニエルソン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)ら photo:Tim de Waeleコース全長は150kmで、登場するカテゴリー山岳の難易度はいずれも3級。難易度としては前日の第3ステージよりも低いが、絶え間ないアップダウンと、絶え間ないワインディング。主催者はドロミテやアルプスの本格山岳ステージ同等の難易度4つ星を与えている。

メイン集団を長時間牽引したアスタナメイン集団を長時間牽引したアスタナ photo:Tim de Waele平均勾配7%弱の3級山岳テルミネ峠を越えてフィニッシュ地点ラ・スペツィアを一度通過し、そこから3級山岳ビアッサを駆け上がる。このジェットコースターのような気の休まらないステージはアタック合戦で幕開けた。

別府史之(トレックファクトリーレーシング)も加わったアタックは熾烈を極め、最初の3級山岳で次々に選手が飛び出して先頭グループにジョインする。最終的に29名が先頭グループを形成し、2日連続で20名を超えるメンバーが逃げる展開に。

ティンコフ・サクソ、チームスカイ、アスタナといった総合系のチームもこの逃げに選手を送り込むことに成功。中でもロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)の存在が際立ったが、メイン集団は反応を見せずにタイム差は10分まで拡大した。

アスタナとエティックス・クイックステップがメイン集団のコントロールを開始するとタイム差は縮小を開始する。リグーリア海を見下ろすワインディングロードに差し掛かる頃には、タイム差は6分台にまで縮まる。

前日までのティンコフ・サクソからバトンを渡されたかのように、この日はアスタナが積極的に集団を牽引した。メンバー5〜6名で集団先頭を固めたアスタナに対し、ティンコフ・サクソやチームスカイ、エティックス・クイックステップはアシスト陣が希薄な状態に。マリアローザを着るマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)をはじめ、別府史之や石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)も集団から脱落した。



レース中盤、集団内で走るマリアローザのマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)レース中盤、集団内で走るマリアローザのマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
急峻なリグーリアの山を進む急峻なリグーリアの山を進む photo:Tim de Waele追走グループを率いるロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)追走グループを率いるロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ) photo:Tim de Waele
アスタナ率いるメイン集団が逃げを追うアスタナ率いるメイン集団が逃げを追う photo:Kei Tsuji



最後の3級山岳でアタックするダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)最後の3級山岳でアタックするダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン) photo:Tim de Waeleフィニッシュまで50kmを残した3級山岳テルミネ峠で先頭は一旦フォルモロ、マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ベリソル)、サルヴァトーレ・プッチォ(イタリア、チームスカイ)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)らに絞られたものの、アップダウンを繰り返すうちに後続が追いついて再び大所帯に。

追走するアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)とジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)追走するアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)とジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター) photo:Tim de Waele2分リードをキープしたまま残り17km地点でフィニッシュラインを通過した逃げグループから、最後の3級山岳ビアッサでフォルモロがアタック。フィニッシュまで13kmを残したこの動きには誰も反応できず、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)とアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)を振り切ったフォルモロが独走に持ち込んだ。

並んで3級山岳を終えるファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)並んで3級山岳を終えるファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiメイン集団はファビオ・アル(イタリア、アスタナ)のアタックによって形をなくし、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)が軽快なダンシングでアルをマーク。この動きにリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)は脱落してしまう。

独走でフィニッシュするダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)独走でフィニッシュするダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン) photo:Tim de Waeleその他の逃げメンバーがコンタドールグループに吸収される中、3級山岳を先頭通過し、ラ・スペツィアに向かうハイスピードダウンヒルをこなしたフォルモロがフィニッシュへ。後続を22秒引き離したまま、フォルモロが余裕のガッツポーズでフィニッシュラインを駆け抜けた。

「3級山岳の頂上近くでアタックしてたら逃げ切れていたかどうか分からない。だから早めに動いた。早めにカードを切ったんだ。今日のステージはとてもハードだったけど、自分はピュアクライマーであり、リズムの変化には慣れている」。あどけなさの残るプロ2年目の22歳はプロ初勝利をそう振り返る。

「まだ22歳で、初めてのジロで、初めてのグランツール。3週間のレースで身体がどんな反応を見せるのかも分からない。1週目は大人しく走る予定だったけど、チャンスがあれば狙うべき。今日はそのチャンスだった」。イタリアの将来を担うと期待されるフォルモロが、今シーズンここまで大きな勝利から遠ざかっていたアメリカチームに成功をもたらした。

22秒遅れの集団スプリントで先着したサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がマリアローザ獲得。安全に集団フィニッシュしたコンタドールやアル、ポートに対し、ウランやファンデンブロックが42秒ものタイムを失う結果となった。マリアビアンカは総合2位エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が手にしている。

現地の様子や日本人選手のコメントなどは現地レポートでお伝えします。



ステージ優勝を飾ったダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)が表彰台に上がるステージ優勝を飾ったダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)が表彰台に上がる photo:Tim de Waele
22秒遅れの集団スプリントで先着したサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)22秒遅れの集団スプリントで先着したサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waeleマリアローザに袖を通したサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)マリアローザに袖を通したサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele


ジロ・デ・イタリア2015第4ステージ結果
1位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)       3h47’59”
2位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        +22”
3位 ヨナタン・モンサルベ(ベネズエラ、サウスイースト)
4位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
5位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
7位 アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)
8位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
11位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)
12位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)
13位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)

18位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)        +1’04”
21位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
24位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)       +2’24”
37位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)         +5’25”
83位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)             +20’00”
191位 石橋学(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)              +23’38”

個人総合成績
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      11h54’48”
2位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)          +10”
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)             +17”
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
5位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                     +23”
6位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)             +29”
8位 アマエル・モワナール(フランス、BMCレーシング)               +31”
9位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)              +37”

マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

マリアアッズーラ 山岳賞
パヴェル・コチェトコフ(ロシア、カチューシャ)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)

チーム総合成績
アスタナ

text&photo:Kei Tsuji in La Spezia, Italy