1995年創業のカナディアンブランド、サーヴェロ。同社のエアロロードの頂点に君臨する「S5」がフルモデルチェンジを果たして登場した。数あるエアロロードの中でも、ベンチマークとされるほどの性能を誇った前作からどのように進化したのだろうか。その実力を紐解いていこう。



サーヴェロ S5サーヴェロ S5 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
高性能なレーシングバイクのみをラインナップに持つストイックなハイパフォーマンスブランドとしてその地位を確固たるものにしているサーヴェロ。2015年にやっと20年目を迎えるという、欧州の歴史あるブランドと比較するといささか若く感じられるブランドではあるが、レーサーの間においてサーヴェロの名前は高い価値を認められている。

サーヴェロは常にトップレベルのレースシーンに機材を供給し、プロチームとの緊密な関係を築いてきた。サーヴェロがチームをスポンサードするのは、マーケティングやコマーシャルのためだけではない。プロレースの現場で得られたフィードバックを製品開発に活かし、より速いバイクを開発するためなのだ。

大幅にアップデートが加えられたフロントフォーク大幅にアップデートが加えられたフロントフォーク フォーククラウンが滑らかにダウンチューブへとつながっていくフォーククラウンが滑らかにダウンチューブへとつながっていく テーパードヘッドを採用したテーパードヘッドを採用した


史上最速のエアロロードとの呼び声も高かった前作のS5がデビューしたのは2012年のこと。TTバイク譲りのフォルムに由来する空力性能の高さでスピードマン揃いのガーミン・シャープに愛用され、多くの勝利に貢献した名車として、多くのロードレースファンの記憶に残っていることだろう。

奇抜なフォルムで耳目を集めた先代からはや3年。新しいS5はその優れたエアロダイナミクスと走行性能に更なる磨きをかけるべくモデルチェンジが加えられた。リアタイヤに沿わせたシートチューブやボトルケージを考慮したダウンチューブの形状、リアブレーキを前方から隠す様なデザインのシートステー集合部といったS5をS5たらしめている部分は先代のデザインを受け継ぎつつも、フロント回りに大幅なアップデートが加えられている。

ワイヤーはトップチューブ上部から内蔵されるワイヤーはトップチューブ上部から内蔵される 前作よりボリューミーになったフロント前作よりボリューミーになったフロント

自然なラインを描くリアシフトワイヤー自然なラインを描くリアシフトワイヤー 複雑に入り組んだシートクランプ周辺複雑に入り組んだシートクランプ周辺


特に大きなアップデートが行われたのは、フロントフォーク。細いストレートブレードだった前作に比べると、緩やかにベンドしながらもかなりのボリュームアップが施され、剛性、エアロダイナミクス、快適性にハンドリングといった、走行に関わる基本性能を大幅に向上させている。

ヘッドチューブ下部がえぐれるようなデザインで、フォーククラウンとダウンチューブが流れるようにつながっているのも大きな特徴だ。先代S5でサーヴェロが先鞭をつけたデザインだが、より大胆な設計とされており、乱流を抑える効果も向上している。

ここから更なる空気抵抗の低減を目指して「SYSTEM THINKING」というアプローチを導入した。これはバイクに人を乗せた走行状態を1つのシステムとして想定したCFD解析を行い、その上でフレームや前後ホイール、ボトルといったパーツごとのエアロダイナミクスを算出するというものだ。

サーヴェロオリジナル規格のBBrightを採用サーヴェロオリジナル規格のBBrightを採用 ボリュームのあるボックス形状のボトムブラケットボリュームのあるボックス形状のボトムブラケット


その解析の中で、サーヴェロは全体の30%もの空気抵抗を生み出していることがハンドルバーということを突き止めた。その空気抵抗を削減するために、S5専用のカーボンハンドルをオリジナルで開発した。このハンドルは完成車に標準でアッセンブルされ、フレーム単体でも高いエアロダイナミクスを持つS5を更に高いレベルのエアロバイクへと進化させる。ハンドル単体では一般的なモデルと比較して4.4W、トータルで従来モデルと比較して21.3Wの出力低減に成功しているのだ。

しかし、空力性能の向上だけが新S5の進化ではない。剛性という側面においても、長足の進歩を遂げているのだ。使用されるカーボンファイバーの改良、そして100工程にも及ぶカーボンレイアップを徹底的に見直すことで、フォーク横剛性を17%、ヘッドチューブ剛性を35%、ボトムブラケット剛性を6%向上させることに成功した。

リアタイヤに沿った形状とされたシートチューブリアタイヤに沿った形状とされたシートチューブ 翼断面形状のエアロシートピラー翼断面形状のエアロシートピラー シートステーもエアロ形状になっているシートステーもエアロ形状になっている


そしてヘッドチューブは昨年登場したS3に引き続き下側1-3/8インチの上下異径ヘッドを採用し、ハンドリング性能の向上を果たしている。また、ボトムブラケットシェルはサーヴェロが独自に展開する左右非対称のBB rightとなり、駆動効率を高めている。

これだけ多くの点で進化しながらも、前作のS5 VWDと比較して重量増加はゼロに抑えた新型S5。今回インプレッションしたバイクは、機械式のシマノ アルテグラにイーストンEC90AEROを組み合わせている。専用ハンドルバーは残念ながらアッセンブルされず、丸断面のハンドルが装着されていた。それでは早速インプレッションに移ろう。



ーインプレッション

「速く遠くへと行きたいというときには自然とこのバイクを連れ出してしまう」山崎敏正(シルベストサイクル)

潔く速さを追求したバイクです。平坦できれいな路面のコースをいかに速く駆け抜けるかを主眼に置いて設計されたことがひしひしと伝わってきますね。ロングライドで快適に走るとか、荒れた路面をスムーズにいなすとか、そういった性能はひとまず置いておいて、高速巡航に特化したスペシャルなバイクです。

「速く遠くへと行きたいというときには自然とこの自転車を連れ出してしまう」山崎敏正(シルベストサイクル)「速く遠くへと行きたいというときには自然とこの自転車を連れ出してしまう」山崎敏正(シルベストサイクル) 加速性能ももちろん高いレベルにあります。ある程度の高速域で巡航しているところから、さらに速度を上げるというシチュエーションが得意ですね。もちろん得意とする巡航速度域も非常に高いところに設定されています。具体的には少なくとも40km/h以上、一番気持ちいいところでは45km/hといったところでしょうか。

このようにいうとかなり尖った性格のピーキーなバイクに聞こえるかもしれませんが、全ての性能において非常に高いレベルに達しているため、どこかが破綻しているという様な事はありません。ただ、バイクの持っている実力をあますところなく引き出すということにおいては、ある程度の脚力が無いとこのバイクの本当においしいところを味わうことが難しい、ということです。ただ、下りや追い風を使えばその性能を味わうことができるので、本当に脚力がないと楽しめないというわけでもありません。

ここまで高速域の性能が高いとTTバイクでもいいと思う人も多いと思います。でも、使えるシチュエーションが限られるTTバイクに近いフィーリングをもちながらも汎用性が高いS5は本当に良いと思います。複数台自転車を持っている人でも、週末のチーム練習という様な、速く遠くへと行きたいというときには自然とこの自転車を連れ出してしまうのではないでしょうか?

ちなみに登り性能もかなり高いレベルにあります。ダンシングでもシッティングでもきびきびと登っていきますね。ヒルクライムレースで上位を争う様なクライマータイプの選手が使っても、なんら不満の無いフィーリングだと感じました。昔と違って、新しいサーヴェロってエアロダイナミクスのための余計な重量増加が少なく、軽く仕上がっています。少なくともエアロロードの中ではトップレベルのクライミング性能を持っているバイクですね。

振動吸収性も、ハイエンドレーシングバイクらしくロードインフォメーションを伝えながらも、余計な振動は素早く収束させるという上質な特性を持っています。縦に突き上げが硬いというエアロロードらしい癖もなく、長時間乗っても疲れやすいということはないですね。ハンドリングも素直で、コーナーも自信を持って攻めていけます。

やはり、このバイクはレースでがつがつと勝利を求めて走る人にこそうってつけのバイクと言えます。特にツール・ド・おきなわのような長いレースが得意分野でしょう。逃げたい人にもぴったりですね。もちろんホイールは、エアロ効果の高いディープリムがベストマッチでしょうね。あと、一昔前のTTフレームよりも優れたエアロダイナミクスを最大限に活かしてディスクホイールまで揃えれば、TTイベントでも大活躍できるでしょうね。


「BBとリアバックの柔軟性でスピードが乗っていく。意外に扱いやすく魅力的」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)

一言で言うと「平地番長」に尽きると思います。今回の試乗車にはディープリムホイールがセットされていましたが、それを差し置いても下りの伸びや、平地の速度維持が素晴らしい。大きなパワーで踏み込めば後ろから押し出されるような加速感があり、非常に軽快。そうした長所と比較すると登り性能こそ少し落ちますが、乗りやすく扱いやすいハイスピードバイクだと感じました。

このルックスから「硬そう、乗りにくそう」と思う方も少なからずいらっしゃると思います。でも実際は硬すぎず、レーシングバイクとして絶妙なバランスがあります。BB周辺からリアバックに掛けては柔軟性があって、硬さが原因のパワーロスが少ない。脚が弾かれにくいためハイスピードを持続しやすいと感じました。私が平地番長といったのには、エアロ以上にこの部分を感じたからです。高速巡航のための作り込みが並みではないんでしょう。

「BBとリアバックの柔軟性でスピードが乗っていく。意外や扱いやすく魅力的」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)「BBとリアバックの柔軟性でスピードが乗っていく。意外や扱いやすく魅力的」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
また使いやすさという面で、一般的なエアロロードバイクの中でも剛性がしっかりとしていることでブレーキの効きが良いことも挙げられるでしょう。キャリパーブレーキを使っていますし、リアも一般的な位置にあることで整備性も良いですね。BB下や専用エアロブレーキだとどうしても使い勝手が落ちてしまいます。ハンドリングに関してもクセがありませんでした。

乗り方としても、平地ではどんな踏み方をしてもキッチリと前に進みますね。ある意味ペダリングスキルが悪くても、それを隠してしまうほどに良く走ってしまうんです(笑)。この辺りがハイエンドバイクたる所以でもあるかもしれません。

確かに横方向のヨレはあります。特徴的なチュービングに由来する部分も多少なりはあるでしょう。平地に比べれば登り性能は落ちますが、軽めのギアを使えば中級カーボンバイク以上には登りもスイスイ走りましたし、そこは一長一短。登りを重視するなら同社のRシリーズを選ぶべきなのです。

世界のトップ選手が使っているバイクですからその性能はお墨付きです。ホビーライダーが使うと考えれば、一番向いているのはサーキットでのレースイベントでしょうか。それも例えば筑波9時間など、高速を長時間維持するような状況こそがベストでしょう。前述したように脚へのダメージも超高剛性バイクと比較すれば少ないですし、エアロという面においてもマッチしますよね。リムハイト高めのホイールを履かせればきっと注目を集めること間違いなしだと思いますよ。

加えて、ロードレースが中心だけれど、熱が高まっているトライアスロン参加も視野に入っている方にも最適でしょう。TTバイクだと敷居が高く使えるシチュエーションも限られてしまいますからね。

一応お話しておきますが、決してゆったり走るためのバイクではありません(笑)。例えばロングライドに使うのであれば、早めのテンポで長距離をこなしたい方に。平地を得意とするのはルックス通りですから、見た目で購買欲をそそられてしまった方が購入しても、乗ってがっかりということも無いでしょう。

完成車としては、チーム仕様でROTORのNoQリングがアッセンブルされているあたりも面白い。機械式で組むとどうしてもワイヤーの取り回しが窮屈になってしまうため、できればDi2やEPSで組むことをおすすめしたいですね。

分かりやすい良さがあって、乗りやすく、見た目通りの走り心地。決して誰もが購入できる金額ではありませんが、それだけの価値があるバイクだと思います。

サーヴェロ S5サーヴェロ S5 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ S5
サイズ:48、51、54、56
フォーク:Cervélo All-Carbon, Tapered S5 Fork
ヘッドセット:FSA IS2 1-1/8 x 1-3/8”
シートポスト:Cervélo Carbon, Aero
ボトムブラケット:Rotor PF-30
価 格:670,000円(税抜、フレームセット)、850,000円(税抜、アルテグラ完成車)、1,200,000円(税抜、デュラエース完成車)、1,400,000円(税抜、デュラエースDi2完成車)



インプレライダープロフィール

山崎敏正(シルベストサイクル)山崎敏正(シルベストサイクル) 山崎敏正(シルベストサイクル)

「てnち」のニックネームで親しまれているシルベストサイクル総括店長。選手としてはモスクワオリンピックの日本代表に選出された経験を持つ一方で、サンツアーの開発部に在籍していたことから機材への造詣も深い。現在もロードレースで現役で、実業団ロードで入賞する好調ぶり。シルベストサイクルは梅田、箕面、京都と関西に3箇所に店舗を構え「頑張るアスリートのためのショップ」として信頼の技術力や確かなフィッティングサービスなどを提供している。加えて、ロードレースやロングライド、トライアスロン、トレイルランなど様々なジャンルのソフトサービスを展開している。

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鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)

スポーツバイクファクトリー北浦和スズキの店長兼代表取締役を務める。過去には大手自転車ショップで修行を積んだ後、独立し現在の北浦和に店を構える。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。ショップでは個人のポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考えている。「買ってもらった方に自転車を続けてもらう」ことをモットーに魅力あるバイクライフを提案する日々を送っている。

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